家電製品ミニレビュー
ANABAS「SZ-300」
■安いロボット掃除機を試す
ANABAS「SZ-300」 |
私の部屋は約7畳の洋室だが、ダブルサイズのベッドを置いているので、ちょっと掃除をさぼっていると、床がホコリっぽくなってしまう。ベッドの下に溜まった綿埃が、扇風機やエアコンの気流に押されて、部屋中に広がってしまうのだ。
ベッドの下は15cmほど高さがあるので、フローリングワイパーなどで掃除をするのだが、やっぱり面倒くさいので、気を抜くと半年ぐらい掃除をしていないこともある。
これは、自分で掃除をするのは無理だと判断して、ロボット掃除機を導入することにした。初代ルンバを持っていた頃は、ベッドの下はルンバ任せだったのを思い出したのだ。そのルンバは、先日、長年の勤めを終えて退役したばかりだ。
今回もルンバを買えればよかったのだが、予算の都合もある。それなら、安いロボット掃除機の実力も知っておきたい。というわけで、2万円以下で買えるANABASの「SZ-300」という製品を試して見た。
ANABASは、太知ホールディングスという会社の家電ブランドで、ロボット掃除機以外にも、ラジオとかマッサージ機をはじめ、電動ワインオープナーなどのアイデア商品まである。家電一筋というよりは、海外で面白いネタを拾ってきては自社ブランドで出すというスタンスの会社のようだ。
SZ-300は、ヨドバシやビックカメラでは扱っていないが、Amazonマーケットプレイスや楽天市場では複数の店舗が扱っている。ちなみに、SZ-300は、最新機種ではなく、1つ前の製品だ。最新機種のSZ-350と比べると、ボディカラーが地味とか、タイマーの設定時間が3通りしかないなどの制限はあるが、筐体や基本性能に大差はない。実売価格に差があったので、こっちにしたのだ。Amazonでは、2万円を切る価格を提示している店が多い。
メーカー | 太知ホールディングス |
製品名 | ANABAS「SZ-300」 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 15,780円 |
到着したSZ-300の箱は大きかった。ルンバの箱と同じぐらいだ。まぁ、本体が同じぐらいの大きさなので、当然かもしれない。ちなみに、本体は345×360×85mm(幅×奥行き×高さ)だ。
一方で、付属品は少ない。本体以外は、充電台、充電池、ACアダプターなど必須のものを除くと、交換用の集塵フィルターとリモコンぐらいしか入っていない。
一番の違いは「ヴァーチャルウォール」が入っていないことだろう。これは、ロボット掃除機に掃除してほしくない境界の部分に置くもので、赤外線で仮想的な壁を作るものだ。部屋を区切って掃除するときには必須のものだが、部屋全体を掃除する分のなら必須ではない。
とりあえず、充電池を本体に入れようとしたのだが、なんと正しくない方向でも簡単に入ってしまう。本体の端子を良く確認して入れないと、逆に入れて動かないということもあると思うので、気をつけたい。
本体上面。前端部はバンパー | 上に30cm定規を置いてみると大きさがわかる。昔風に言えば、LPレコードを一回り大きくしたぐらいある | 操作ボタンは少なめ |
ゴミは下から吸い上げられて、集塵ケースに溜まる | 集塵ケースにはフィルターが付いている。ここが一番メンテナンスを必要とする場所だが、水洗いもできる | 本体の裏側。紫外線ランプがあるので「直視禁止」と貼られている |
パッケージに書かれている本体の機能。段差を感知するセンサーは複数ある | 充電台への電極と電池の位置関係 |
思いのほか多機能なリモコン。紫外線ランプの点滅など、リモコンでしかできない機能は多い | リモコンは本体の中央部に納まる |
SZ-300の基本的な動かし方は簡単で、電源ボタンを押し、タイマーボタンで動作時間(20/40/60分の3段階)を設定し、スタートボタンを押せば良い。これらの操作はリモコンでできる。
部屋の隅に充電台を置き、本体を充電する。充電が足りない時は、充電台のスタートボタンを押しておけば、充電が終わりしだいスタートしてくれる。
ユーザーが最初に設定できるのは、動作時間だけだ。つまり、ちゃんと部屋全体が掃除できるように、ユーザーが時間を決めてあげる必要がある。
パッケージを開けたところ。備品類は少なめ | 電池はニッケル水素で2,500mAh | 電池は片手でつかめる大きさ |
ACアダプタと充電台 | 充電台のボタンも含めて表記は日本語なのでわかりやすい |
ACアダプタのケーブルを充電台に接続する | セッテング完了。帰ってくるときのことを考えると部屋の隅に充電台がある方が良い |
■機能はシンプルだが、実用性あり
充電ができたら、リモコンでスタートの操作をする。
動作音は、かなりうるさい。かなりうるさいと思っていた初代ルンバに比べても明らかにうるさい。特に、「ヒュィィィィーン」という吸排気音が、耳につく。ウチのようなマンション住まいでは、隣人に迷惑をかけそうで夜間は使えない。昼間でも、後のことは機械に任せて置いて、自分は部屋から出た方が良い。
掃除中は、本体の脇にあるLEDがピカピカと光る。警告の意味があるのかもしれない。なくても良いと思うが楽しそうではある。
フローリングの廊下を掃除するANABASくん。こういう狭いところを繰り返し掃除をしている様子を見ると、楽しんでやってるように見える | 動作モードは5つあり、自動的に切り替えている |
動作の様子は、ルンバに近い。ともかく前進して、バリバリ掃除をする。モノに当たると、バンパーが押され、センサーが働いて、斜め方向へと動いていく。だいたい、このバンパーを当てにしているようで、モノにぶつかるまでは果敢に進む。
動作モードは自動で切り替えているが、うまくハマると、このように廊下の壁際をきれいに掃除してくれる。また、棚の下の空間でも恐れることなく果敢に突撃する |
動作パターンは、「ランダム」、「スパイラル1/2」、「壁沿い」、「ジグザク」の5つがある。指定しなくても、時間ごとに切り換えているようだ。スパイラル1と2の違いは、1は丸い渦巻きで、2は少しカクカクした渦巻きになるが、外からだとあんまり違いがわからない。ある方向に立て続けに当たると、壁沿いに切り替わるようで、放っておいても、壁際はシコシコとうまく掃除している。リモコンで、5つのモードを指示することもできるが、いくつかの部屋で試した限りでは、自動に任せて置いて良いと思う。
ちなみに、初代ルンバは、自分で掃除が終わったと判断すると、自動で停止していた。つまり、その部屋の形をある程度把握して、掃除が終わったかどうか判断しているように見えた。
それに比べるとSZ-300は、部屋の形などは判断していないように見える。ともかく、いろんなパターンで時間いっぱい走り回って見ました! というやり方のようだ。だからダメかというと、わりとそうでもなくて、今回のように、せいぜい10畳相当ぐらいの広さしかない部屋だと、60分走り回っていれば、ほぼもれなく掃除できてしまう。いくつかのパターンを切り換えて動くことで、掃除できない場所という穴を、そこそこ小さなものにしている、という印象だ。
それでも、特定の場所をやけに繰り返し掃除したり、1度しか通らないところがあるなどの様子も見えた。部屋の様子を把握して動いているわけではないので、特定の場所を掃除しないという可能性はゼロではない。でも、これぐらいできれば、充分に合格点だろう。
ちなみに、床の段差は複数のセンサーで見ているので、玄関にある数cmの段差でも落ちたことはない。
段差はきちんと検出するので、土間に落ちずにヘリを掃除してくれる |
また、リモコンで紫外線ランプを点灯すると床を除菌できる。SZ-300は、床をサァーっと通り過ぎていくものなので、どれぐらい有効なのかは、よくわからない。ただ、少しだけ気分が良いことは確かだ。
充電池が消耗したり、ストップボタンが押されると、自分で充電台に戻ってドッキングする。部屋の形を把握していないのに、どうやって戻るのか不思議だったが、何回か充電台を置く場所を変えてみたら、方法が分かった。まず、壁に当たるまで真っ直ぐ進む。そして、その壁を伝って走っていく。ずっと走っていくと、いつかは充電台にたどり着く。なので、見通しの良い場所でストップボタンを押しても、真っ直ぐに充電台には戻れない。
壁を伝い歩きしてたどりつく、その様子を見ていたら、初めてかわいいと思った。充電台が近づくと、小刻みにぶつかりながら位置を直してドッキングする。この動作は、トイレの位置が気に入らないときの犬に似ている。
ドッキング直前の動き |
■ロボット掃除機とのお見合い用に推薦
SZ-300は、全体に安っぽい。たとえば、リモコンを本体に固定できるようになっているのだが、ハマリ方がきつくて、固定するのに力がいる。また、ゴミが溜まるボックスを固定するレバーのところも、精度が悪くて、ちょっと苦労する。音がうるさいのと、LEDがピカピカするのは、前に書いたとおりだ。
じゃあ、役に立たないというと、そんなことはない。最初の目的だったベッドの下はきれいになったし、それ以外の場所でも、大きな問題なく掃除してくれる。ウチはほとんどの床がフローリングなので、コイツ向きだとは思うが、ちゃんと実用になる道具だ。
とりあえず、ロボット掃除機を試してみたいけど、ちょっと不安という人が試しに使ってみるのはアリだと思う。予備の集塵フィルターが2個ついてくるので、お試し期間には十分だろう。
ただし、自動車に例えればルンバなどは高級車でSZ-300は軽自動車だ。基本は同じだが、質感や操作性などには差がある。それでも、ロボット掃除機の基本というのは分かるのではないだろうか。
たとえば、ロボット掃除機を使う前には、部屋の床を必ず片付けた方が良いとか、けっこう頻繁に溜まったゴミを掃除しなければいけないとか、凄く頭が良く掃除してくれて感動することもあれば、えらく簡単に素通りするところがあるなどの、ノウハウはSZ-300でも十分に得ることができる。
「大丈夫! ロボット掃除機と付き合っていける! 」という確信ができ、バーチャルウォールや決まった時間に掃除をしてくれる機能がほしいなどの要望が出てきたら、高級機に買い換えれば良いだろう。
また、小さめの部屋や廊下を専属で掃除させるのであれば、これで事足りる場合もあると思う。完全な機械を求めると、不満を感じることが多いロボット掃除機だが、得意な点を生かしてほどほどで満足するという付き合い方を覚えるには、本機は十分な製品と言えそうだ。
2012年8月31日 00:00