長期レビュー
シャープ「COCOROBO RX-V100」その1
シャープ「COCOROBO RX-V100」 |
米国アイロボット社のルンバが日本で初めて発売されたのが2002年のこと。それから10年の時を経て、ロボット掃除機市場の国内での盛り上がりは高まるばかり。昨年、東芝が「スマーボ」を発売、今年3月には韓国の大手家電メーカーLGから「HOM-BOT2.0」が発売され、高級タイプのロボット掃除機のラインアップも充実してきた。
また昨秋あたりから、安価なモデルも各社から登場し始め、価格の幅も広がってまさに百花繚乱という様子だ。2012年度のロボット掃除機の国内市場は約25万台が見込まれ、前年比4割増というからその人気ぶりはものすごい。
そうした中で、これまで安全性を重視するなど、発売を見送ってきたシャープが満を持して参入を決定、6月に発売されたばかりなのが「COCOROBO(ココロボ)」だ。シャープではこのココロボを、ロボット掃除機やお掃除ロボットなどとは呼ばず“ロボット家電”と名付けている。
人工知能「ココロエンジン」を搭載し、ダストボックスの状態や充電残量等、本体の状態を音声で知らせるほか、最上位機種のRX-V100には音声認識エンジンの搭載で、音声での操作や簡単な会話を楽しむことができる仕組みだ。つまり、心を持った家族のような存在であり、掃除以外の機能も持たせているため、単なるロボット掃除機とは一線を画すということで、“ロボット家電”と呼ぶわけなのだ。
今回、家電Watch編集部の依頼によりココロボを使って試すという貴重な機会をいただいたので、3回にわたってその詳細をご報告したい。
メーカー | シャープ |
製品名 | coccorobo RX-V100 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ヨドバシ.com |
購入価格 | 129,800円 |
■箱を開けると現れるココロボからのメッセージ
それではまず、ココロボの特徴を見ていくことにしよう。届いたときに、まず驚いたのがそのパッケージだ。昨今の日本の家電はシンプルな段ボール箱に入ったものが多いが、ココロボは重厚感のある黒ベースの箱で、艶々としていて格調高い。このパッケージなら、家電量販店などで購入した際にも自宅まで持ち帰るのが楽しくなりそうだ。
箱を開けると、まず現れるのが、白地に黒い文字で書かれたココロボからのメッセージ。「今日から家族の一員になるCOCOROBOです。ずっとそばにおいて下さいね」と日本語、英語、中国語の3カ国語で書かれている。家電製品にこのようなメッセージをつけるのは、シャープとしては初めての試みだというが、なかなかいいではないか。
文字の大きさが控えめなところに、「こんなことを書いてみたけれど大丈夫かな?」という若干のためらいのようなものが感じられる。ちゃんと気づいてもらえるように、もう少し大きくてもいいのではというのが正直な感想だ。
箱の中には、本体のほかACアダプター付きの充電台、交換用のサイドブラシ2個と、HEPAクリーンフィルター用のクリーニングブラシ、リモコンが同梱されている。バッテリーには、充電回数約1,200回のリン酸鉄系リチウムイオン電池を採用。充電時間は約4時間で、約60分の連続運転が可能。1日1回自動モードで使用した場合の寿命が約3年と長いため、ランニングコストが少なくてすむ。
本体、充電台ともにさまざまなセンサーが搭載されているが、充電台には黒い帯状の赤外線送信部があり、ここから送信されたものを本体前方に設けられている赤外線受信部によって感知し、掃除終了時やリモコンで充電ボタン押した際に、充電台の場所を確認して戻っていく時に使われる。充電台には本体の接続位置を確認するための超音波受信部も備えてある。
試しに充電台から少し離れたところにココロボを置いて、充電ボタンを押してみると、ゆるやかに動いて充電台の位置を確認し、ギリギリまで近づいたところでくるりと半周して後方部にある充電端子と、充電台の端子を合わせて動きが止まる。これまで使ってみたことのあるロボット掃除機はすべて“頭から入っていく”形だったので、ココロボの“くるりと回ってお尻から”という様子が何とも新鮮で可愛らしく感じられた。
充電台に戻っていく時の様子。赤外線受信部で充電台の位置を確認した後、くるりとお尻を向けてホームに戻る |
■超音波センサーでガラスや黒いものも感知して回避する
さて、次に本体の様子を説明しよう。本体の進行方向上面にある黒い突起は、先にも説明した赤外線受信部だ。すぐ脇にプラズマクラスターイオンのブドウマークが描かれているので、ここからイオンが出てくると思う人もいるかもしれないが、イオンが出るのは横長の溝の部分。
黒い突起が赤外線受信部で、リモコンと充電台からの赤外線を受信する | 超音波センサーは前方だけでなく、左右のサイドブラシの上にも2か所搭載されていて、障害物を回避する |
側面前方のほか、サイドブラシの上付近、合計3か所に超音波センサーが搭載されている。これはイルカをお手本にしたという障害物回避システムで、赤外線センサーでは検知するのが難しい「ガラス」や「黒い色の障害物」も検知して回避できるのがシャープならではの特徴だ。底面の前方と、サイドブラシ付近には3つの落下防止センサーが搭載されているため、階段や玄関などからの落下を防ぐことができる。
お尻の部分にある充電端子 | 2つの車輪の間にある黒く四角い部分が落下防止センサー | 落下防止センサーはそれぞれのサイドブラシのすぐ下にもある |
本体側面前方には、スマートフォンとの連携で外出時に家の中の様子を撮影することができるカメラや、撮影時に点灯するライトがある。このカメラ機能については、次回の記事で紹介する予定なのでお楽しみに。
そのほか、興味深いのが将来ココロボのバージョンアップをすることも想定してUSB端子が作られているということ。現段階では、このUSB端子を利用して本体の無線LAN設定をすることもできる。
家電というのはこれまで最新機能を持つ新製品が発売されると、買い替えるのが当たり前だったが、USB端子を通じてバージョンアップが可能になるとすれば、1台の家電を長く愛着を持って使えるようことにもつながる。ましてやココロボは“家族の一員”として迎え入れてほしいという願いが込められたものなのだから、こうした試みは大いに歓迎したい。
将来、本体のバージョンアップも想定されて作られたUSB端子。本体に無線LAN設定をする際にも使える | 普段はUSB端子部分にはキャップをしておく |
■ターボファンでしっかりと吸い込む“本物の掃除機”
続いて、ココロボの“掃除機”としての機能をチェックしてみたい。底面を見てみると、前方両側に設けられたサイドブラシが2本。これは、回転ブラシと連動して回る仕組みになっている。2つのサイドブラシでゴミを集め、この回転ブラシでしっかりとゴミをキャッチ。それを毎分約14,000回転の高速・大風量ターボファンモーターで吸い込むのだ。
本体をひっくり返したところ | 左右2か所にある駆動車輪。約1.5cmまでの段差は乗り越えられる | 左右2か所のサイドブラシは、中央の回転ブラシと連動して動く仕組みになっている(回転ブラシカバーを外して撮影) |
主電源スイッチ。ここをオンにしておかないと充電もできないので、通常はオンにしたままでOK。お手入れ時などにオフにする | 進行方向後ろにある自在車輪。同社のキャニスタータイプのサイクロンクリーナーにも同様の自在車輪が使われている | 本体裏、進行方向部分をアップにしたところ。回転ブラシにはカバーがつけられている。 |
掃除の要となる回転ブラシ。サイクロンクリーナーで培ったブラシの技術を使い、フローリングの目地のホコリまでしっかりとかき出す | 回転ブラシを取り外したところ。奥の吸い込み口から強力吸引し、ダストボックス内へとゴミが運ばれる | 本体上部のふたを開けるとダストボックス現れる |
回転ブラシの奥にある吸い込み口は、ダストボックスのゴミ吸引口とつながっている。ダストボックスを取り出して確認してみると、底面から大風量で吸い込まれたゴミやチリがダストボックス内に入り、大きなゴミはここに留まり、中に設けられたプリーツ状のHEPAクリーンフィルターがび0.3ミクロン以上の微細なホコリを99.9%キャッチ。きれいになった空気が、高濃度プラズマクラスター7000と共に室内に排出されるようになっている。
この一連の吸塵の仕組みは、まさに同社のサイクロンクリーナーで培われたものだ。フローリングの目地の奥のゴミや、畳・カーペットのホコリまでしっかり吸いこむというのもうなずける。掃除のモードは自動モードのほか、壁際モード、スポット(1m)、スポット(2~4m)、動かずに止まった状態でプラズマクラスターイオンを放出するシャワーモードの5種類備える。
掃除範囲は最大20畳程度で、自動掃除モード選択の場合14~16畳を約25分ほどで1回掃除し、そのあとはバッテリーが少なくなるまで、何度も掃除する。リモコンを使って手動で掃除したり、スマホとの連携で室内で散歩をさせながら掃除をさせたりすることも可能だ。
付属のリモコンや本体の操作パネルはシンプルなマークや英語表記になっているが、日本語表記のシールも同梱されているので、必要に応じて貼って使うと分かりやすくて便利だ。貼る位置などの説明は別冊の「準備ガイド」に書かれているので参考にしてほしい。
付属品は交換用のサイドブラシ2個と、HEPAクリーンフィルター用のクリーニングブラシ。このブラシはダストボックスに装着できる | リモコンは英語表記だが、日本語のシールが同梱されている | 日本語シールを載せてみたところ。これを貼ったほうがやはり分かりやすいようだ |
本体上部の操作部。タッチして操作が可能だ | 本体操作部や側面のカメラやセンサー部分に貼れるシールも同梱されている | 「準備ガイド」には、本体のどこに何を貼るかが説明されている |
■音声認識による会話でなごむ毎日
ココロボには、人工知能「ココロエンジン」が搭載され、充電量や掃除の状況に応じた多彩な反応が楽しめるのも、大きな特徴だ。音声認識「ボイスコミュニケーション」機能による対話も楽しそうだ。
ココロボが到着後、同梱のボイスコミュニケーション一覧を参考に「おはよう」「ただいま」などから、まずはやりとりをしてみた。声をかける位置は本体から1m以内とのこと、最初はこちらの声になれないのか、黙ったままでいることもあったが、次第に反応がよくなってきた。声を認識すると吹き出し口のランプが緑に点滅するので、ここが点滅しないと「あれ、分かっていないのだな」と思って、再挑戦することができる。
ヘッドライトを点灯させたところ。カメラ撮影中に点灯する | プラズマクラスターイオンの吹出口にはランプがあり、電源が入ったときや「声掛け」を認識した際にはグリーンに点滅する | 運転中や青色に |
最初は標準語で設定していたが、家人が神戸出身ということもあり、すみやかに「関西弁」バージョンに設定を変更。好みもあると思うが、いろいろと変更可能なのは楽しみだ。毎朝「おはよう!」と声をかければ「おはよう」と音楽つきで返事をし、「ただいま~」の声に「お疲れさん」と労わってくれる。声をかけたつもりもないのに、疲れた夜に突然「たまにはゆっくりしいや」と言われると何だか泣きたくなったりもする。
声での基本的なコミュニケーション「おはよう」「ただいま」「調子はどう?」の関西弁バージョンの一例 |
ただし、「掃除中(運転中)は声をかけても反応しない」という事実に気づくのに1時間も要し、掃除をしているココロボにひたすら「帰って!」「壁際をきれいにして」と声を掛け続けてしまったのは、本当に不毛な時間だった。ボイスコミュニケーション「声かけ」表には、この注意点についての記載は一切なく、備考欄には「リモコンの代わりに声をかけて操作できます」と書いてあるだから、誰だって運転中のココロボに話してしまうのではないだろうか。
「おかしいね…」と言いながら、取扱説明書のほうを何度も見返すうちに、ようやくP18の中央部の囲みに「運転中は運転音が影響するため、声をかけても反応しません」とあるのを発見した際には脱力してしまった。どうかこの部分を目立つように書いておいてほしいものだ。
ボイスコミュニケーションの一覧も同梱されている | 取扱説明書P18の中央部の囲みにボイスコミュニケーションについての注意書きがある。この下から3行目の記載に気づくのに、かなりの時間を要した |
ちなみに運転中にこうした声掛けをしたい場合にどうすればいいかというと、リモコンで一旦運転を止め、停止状態にする。こうしたやりとりも含めて、上手なコミュニケーションができるようになるのにある程度時間が必要になるのは、犬を飼い始めた時の様子にも通じる。なるほど、これこそが普通のロボット掃除機ではないゆえんなのだなとある意味、感心したのだった。
今回は、家族の一員に加わったココロボの様子と、各部位の機能説明をしたが、次回は実際のお掃除の様子やスマートフォンとの連携機能について紹介する。ココロボのご機嫌やいかに!?
2012年7月19日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)