家電製品ミニレビュー

サンワサプライ「ワットモニター」

~いますぐにできる、数十ワットの“節電募金”
by 正藤 慶一
サンワサプライの「ワットモニター」。今日はこれを使って、家庭ですぐにできる節電ポイントを調べる

 東京電力の電力不足による計画停電が実施され、数日が過ぎた。17日には初めて、午前と午後の2回にわたって停電が実施された。

 午後に行なわれた2回目の停電は、もともとは電気の需要が増加し、供給力の不足が懸念される場合に停電されるというものだったが、17日は寒さが厳しくなったことで、暖房の需要が増え、供給力が不足したのだ。海江田経産大臣の声明によれば、17日午前の段階で、電気の供給力3,350kWに対し、ピーク時の需要は3,292万kWと、需要が供給をオーバーするギリギリのラインだったという。

 というわけで、家庭でも今すぐに節電対策が必要になるわけだが、だからって何から何まで電気を切っていると、生活することができない。「暖房の温度を下げろっていっても、寒いのはイヤ」「テレビを消すと、情報が入ってこない」というのは、至極当然の意見だ。

 そこで今回は、家電の消費電力を簡単に測定できる家庭用の消費電力計を使って、普通の生活を問題なく送りながらも、簡単に節電できるポイントを紹介しよう。

 今回使用する消費電力計は、サンワサプライの「ワットモニター TAP-TST8」。60×44×60mm(幅×プラグ部含む奥行き×高さ)と小型で、家庭のコンセントと家電製品のプラグの間にはさみこむことで、その家電の消費電力を、本体のモニターで表示するというものだ。消費電力のほか、電気料金やCO2排出量、積算電力量なども計測できるが、今回はてっとり早く、消費電力だけにスポットを当ててみよう。


メーカーサンワサプライ
製品名ワットモニター
品番TAP-TST8
希望小売価格6,090円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格3,380円

 我が家のあらゆる家電製品に接続してみたところ、結果的に手軽に節電が図れそうなのは、以下の3点だ。詳細はあとで述べるが、まずは以下の要点だけを確認していただきたい。


(1)【照明】消費電力の高い白熱電球は、すべてLED電球、または電球形蛍光灯に変える
(2)【待機電力】待機電力はAV・PC・ゲーム機器を中心に主電源を切る
(3)【暖房】エアコンの設定温度はやはり低い方が節電効果高い

 なお、本稿に記載している消費電力は、あくまで私の生活環境での測定結果であり、使用する機器によって大きく異なる場合がある点は、あらかじめ最初に明記しておきたい。


【その1・照明】消費電力の高い白熱電球は、LED電球など省エネタイプに変える

白熱電球の消費電力は、53.2Wと高い。絶好の節電ポイントだ

 最も簡単にできる節電は、家庭で使用している白熱電球の使用を止め、LED電球、または電球形蛍光灯に変えることだ。

 ワットモニターで測定した60W形の白熱電球の消費電力は「53.2W」。それに対し、同じ60W形電球形蛍光灯は「13.2W」と約1/4、同程度の明るさのLED電球に至っては「8.3W」と約1/6に抑えられる。つまり、白熱電球1個で、LED電球6灯が点灯できてしまうのだ。特に、リビングなどで使用時間の長い白熱電球を使用している場合は、交換した方が良いだろう。

 我が家では、すべての照明をLED電球と電球形蛍光灯に交換。普段はLED電球1灯だけで過ごしている。「LED電球は暗い」とよく言われるが、現在使用している東芝の「E-CORE 一般電球形8.7W」は、交換してもほとんど差が感じられなかった。それでいて、白熱電球よりも消費電力は1/6にカットできる。10時間使用した場合の消費電力量を比較すると、その差で消費電力880Wの暖房器具が30分動かせることになる(※)。1カ所の節電量はこれだけでも、いくつもの部屋や家で重なれば、それなりの効果はあるはずだ。

 ※白熱電球10時間が消費電力量0.532kWh、LED電球10時間が0.083kWh、その差が0.449kWh。消費電力880Wの暖房器具を30分運転した場合、消費電力量は0.44kWh

我が家で使っているLED電球「E-CORE 一般電球形8.7W 電球色タイプ」は、消費電力8.3W。白熱電球に近い明るさで、消費電力を1/6に抑えてくれる電球形蛍光灯も、白熱電球に比べればはるかに省エネ。消費電力13.2Wは、白熱電球の約1/4だ我が家では現在、LED電球を1灯のみ使っている。部屋が狭いということもあるが、これだけでも十分に明るい

 先ほど「ウチは全部省エネ電球」と言ったが、実は1つだけ交換し忘れていたところがあった。電気スタンドだ。一般的なE26口金とは違い、幅が狭いE17口金だったので、用意していたものの交換しそびれていたのだ。というわけで、さっそく交換。消費電力は、55.5Wから5.8Wと、これまでの約1/10にカットした。

電球をすべて省エネ化したつもりだったが、電気スタンドの小型電球をそのままにしていたのを忘れていた。消費電力は55.5Wというわけで、E17口金のLED電球に交換。写真では光が白い「昼光色」タイプを使っているが、電球色タイプも用意されているちなみに、電球形蛍光灯のボール型の消費電力は、17Wだった

 LED電球の弱点は、白熱電球のように光が広がりにくい点に加え、安いものでも価格が千円台後半と、割高感があるところだ。高くて手が出せないと感じたら、千円以下のものも多数出ている電球形蛍光灯を選ぶと良いだろう。

 というわけで、白熱電球を使っている方は、LED電球・電球形蛍光灯への交換をお勧めする。交換するだけで節電効果が得られるので、こんなにラクなことはないだろう。


【その2・待機電力】待機電力はAV機器を中心に主電源を切る

 今回ワットモニターを使って気付いたのが、意外と「待機電力」に電気が使われていることだった。待機電力とは、機器を使用していないものの、電源をコンセントに接続しているだけで消費される電力。特にAV機器・ゲーム機・PC関連機器に待機電力が多く見られることが分かった。

 待機電力が1Wを越えたもので具体例を挙げると、デスクトップPCとモニターが合わせて5.2W、プリンタが5.1W(主電源ONの場合)、XBOX360が2.1W、Wiiが1.7W、PS3が1.3W。また、22V型の地デジテレビを測定したところ13.5W(主電源ONの場合)と高い数値が表示されたが、これは冷却ファンなどが作動しているためかと思われる(カタログの待機電力は0.5W)。これらを合わせると28.9Wで、ほぼ電球形蛍光灯2本分の消費電力に匹敵する。決して大きな数値ではないが、かといって電力不足の現在、甘く見れない。

デスクトップパソコンとモニターの待機電力は、2つ合わせて5.2Wだった。使用時は120Wプリンタの待機電力は5.1W(主電源ONの場合)
XBOX360の待機電力は2.1W。使用時は139WWiiの待機電力は1.7W。使用時は15WPS3の待機電力は1.3W。使用時は155Wだった

【お詫びと訂正】初出時、テレビの待機電力の表現とキャプションの機種名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします

 使用していない時は電源プラグをコンセントから抜くのが節電のためには良いが、いちいち使用後に抜くのは、正直面倒臭い。これからも計画停電は継続するのだから、もっとラクにこなすことを考える方が建設的だ。

 一番簡単なのは、電源を抜かずに主電源をOFFにすること。これだけでも、待機電力はカットできる。地デジテレビは0.3W、プリンタに至っては0.0Wと、ワットモニターで計測できないレベルにまで減らすことができた。

 ゲーム機など主電源がない機器については、コンセントにスイッチが付いたタップを使うのが良いだろう。これならプラグをイチイチ抜かなくても、スイッチを押すだけで電源を切ることができる。タップ自体の待機電力は「0.0W」の表示だったので、あまり気にするほどではないだろう。

22V型の地デジテレビの主電源を切ると、待機電力は0.3Wだったいちいちプラグを抜くよりも、スイッチで電源のON/OFFを切り替えるタップを使った方が便利だ

 我が家の生活家電では、洗濯機に電子レンジに炊飯器などは待機電力がゼロ。唯一、エアコンのみが「1.7W」だった。AV機器で待機電力が多かったことを合わせて考えると、リモコンで操作できるものは、待機電力がある可能性が高いかもしれない。ただし、会社にあった大型の液晶テレビは、待機電力がゼロだった。

洗濯乾燥機の待機電力は「0.0W」の表示。なお、洗濯乾燥機の取扱説明書には「コンセントは単独で使う」とあったため、この状態で実際に運転はしていない電子レンジの待機電力も「0.0W」だった
エアコンの待機電力は1.7Wだった待機電力が「0.0W」のテレビもある

【その3・暖房】エアコンの設定温度はやっぱり低い方が節電

我が家のエアコン。珍しいLG製だ

 さて、最後に紹介するのが「暖房」。17日も、気温が低いため暖房を使う人が多いため、電気の需要が供給量を逼迫したわけだ。

 そこで良く言われているのが「エアコンの設定温度を下げてください」というお願い。夏にも「設定温度を28℃にしてください」ということが言われているが、果たして温度を下げるだけで、そんなに節電に効果があるものなのか?

 というわけで、エアコンにワットモニターを接続し、温度別に暖房運転をしてみた。なお、撮影時の室温は約20度の状態。以下に消費電力の数値を掲載するが、室温や環境によって異なるはずなので、あくまで1つのケースとして見ていただきたい。

 まず、一番高い「暖房 30℃」だと、消費電力は805W。うーん、これは確かに高い。白熱電球約15個分の電気を使っていることになる。

 続いて、設定を4℃下げ「暖房 26℃」にすると、消費電力は760W。確かに下がったのは下がったが、45Wだけしか下がらなかったのはちょっと物足りない印象。ただ、白熱電球は約14個分と、30℃の時よりも1個分減らすことができた。

 最後に、さらに4℃下げた「暖房 22℃」にしてみると、数値は602W。おっ、これはなかなかすごい。26℃設定よりも158Wの節電、30℃と比べれば203Wも削減したことになる。602Wを白熱電球で例えると約11個。つまり、30℃のフル運転時よりも白熱電球4個分をカットできることになる。やはり節電効果は確かにあったのだ。

暖房の設定温度をMAXの30℃にすると、消費電力は805W26℃に抑えると、消費電力は760Wに下がったさらに22℃に抑えると、消費電力は602W。MAXの状態よりも203W抑えることができた
暖房効果を上げるために、空気を攪拌するサーキュレーターを使用するのも良い。写真の機器なら弱運転で17.2Wと、消費電力も少ない

 ただし、それだけ電力が少なくなるということは、暖房効果も落ちることが予想される。それを助けるのが、サーキュレーターだ。暖かい空気は部屋の上に行ってしまう性質があるが、サーキュレーターで部屋の空気を攪拌することで、足元にも暖気を届ける効果がある。我が家にあるサーキュレーターの消費電力は、弱運転で17.2Wと、22℃設定のエアコンと合わせても619.2Wと、26℃設定、30℃設定よりも断然に低い。

 寒い寒いといって、エアコンをフル能力で運転し、電力不足を引き起こすよりも、温度を抑えたマイルドな運転でそこそこに暖まるのが、今の状況には適っている。今こそ、温度設定ができるエアコン――いわゆるインバーターエアコンの性能を活用する時なのだ。

電気式のセラミックファンヒーターは、消費電力1,092Wととても高かった。これなら温度設定を低めにしたエアコンの方が良い

 ちなみに、我が家には電気式のファンヒーターもあるが、消費電力が1,092Wと、エアコンのフル運転よりもさらに高い。白熱電球でいえば約20個だ。スイッチ一つですぐに温めてくれるというメリットはあるものの、暖房する範囲はエアコンよりも狭い。現在の状況には適さないだろう。


【その他】節電といえど、使わなければならない家電もある

 さて、ここまで家電の節電について話してきたが、それでもやっぱり、家電製品を使わなければいけないシーンは出てくる。

電子レンジは出力が1,000Wを越えるものの、短時間で済むなら気にしすぎることもないだろう

 例えば、電子レンジ。お腹が減ったので冷凍食品を解凍したいが、節電したいから食べないでおこう……というのは過剰な我慢だ。我が家の電子レンジでごはんの解凍をしたところ、消費電力は1,350Wと非常に高い数値を示したが、使用時間はたった3分程度。気にするとしたら、電力の需要が集中する18~19時の時間帯を避ける、長時間の調理は避ける、といったくらいで良いだろう。

 このほか、冷蔵庫や炊飯器など、生活の基礎となる食に関わる家電は、過剰な節電をしなくても良いだろう。気にしすぎるがゆえに、無駄にストレスを生んでしまうかもしれない。


除湿乾燥機の消費電力は436W。運転するなら夜間にしておきたい

 逆に、洗濯機の乾燥機能や除湿乾燥機などは、今の時点では使わないで済ませたい。晴れていれば外に干せば良いし、外に干したくないのなら部屋干しをすれば良い。我が家にある縦型洗濯乾燥機の消費電力は、洗濯運転が290W(スペック値、白熱電球約5個分)に対し、乾燥時は1,340W(スペック値、白熱電球25個分)。除湿乾燥機は消費電力が436W(白熱電球8個分)。これが何時間も運転し続けるのだから、電力の逼迫に拍車をかけることになるだろう。

 とはいっても、雨の日はこうした機器・機能を「どうしても使いたい」という場面は出てくるはず。その時は、計画停電が行なわれていない夜22時~朝6時の間にすれば、影響は少ないはずだ。

たった数十ワットの“節電募金”

 というわけで、ワットモニターを使って我が家の節電ポイントを見てきたが、ここまで無駄な電気を使っていたのか……と、家電Watchという媒体に居ながら、改めて気付かされてしまった。

 これまでに記した節電方法は、私一人がやっても微々たるもの。しかし、多くの人からわずかなお金を集める募金のように、節電が集まれば、状況が少しは変わるかもしれない。皆さんもワットモニターやワットチェッカーを使って、たった数十Wの“節電募金”を集めてみてはいかがだろうか。私はもう“寄付”しました。





2011年3月18日 00:00