家電製品ミニレビュー
デロンギ「オイルヒーター ドラゴンデジタルTDD0915W」
■“次世代デロンギ”の進化ぶりを試す
デロンギ「オイルヒーター ドラゴンデジタルTDD0915W」適用畳数は4~10畳。今回は8.5畳程度の書斎兼寝室で使用した |
2年前の冬にデロンギのオイルヒーターを購入し、仕事部屋兼寝室で愛用してきた。実際に使い始めてみると、温風が出ないため肌やノドが乾燥することがなく、音も静か。部屋全体がふんわり暖かで換気の必要もない……など、とにかく快適。部屋の中を移動しても温度差がなく、顔ばかりが火照ってしまうということもない。
だが、アナログタイマーを搭載しているため、タイマー設定がわかりずらい、暖房自体は静かなのに、タイマーのカチカチという音が気になる、さらに、温度設定や省エネに関しては不満点があったことも確かだ。慣れてしまえばどうということもないが、使い方が難しいと感じる人もいることだろう。
そこで、今回紹介するのはデジタル操作が可能で、エコ運転モードも搭載した「ドラゴンデジタル」だ。“次世代デロンギ”という冠がつけられたこの製品。その進化ぶりが気になるところだ。
メーカー | デロンギ・ジャパン |
製品名 | オイルヒーター ドラゴンデジタルTDD0915W |
希望小売価格 | 64,800円 |
購入場所 | ヨドバシ.com |
購入価格 | 39,800円 |
壁面のコンセントに直接差し込んで使う。消費電力が高いため、差し込み口が2つあるコンセントの場合、空いているところに他の家電製品を使用するのはNG。延長コードなども使えないので注意が必要だ | 折り畳み式のキャスターなので外側に開いて使う。ゴム巻きなのでフローリングの床を移動させる際にも安心して使える |
■部屋の隅々まで暖かで乾燥しない
製品の詳細に入る前に、オイルヒーターの仕組みについて触れておこう。オイルヒーターは、本体内部に入れられた難燃性のオイルが電気によって温められ、放熱板であるフィンの中を循環しながら放熱していく仕組みになっている。波長の長い放射熱が物に直接熱を伝えて表面温度を上げる“輻射熱(ふくしゃねつ)”を利用した暖房器具だ。温風で室内を温めるエアコンや、石油やガスを使う燃焼系の暖房器具とは異なり、床や壁、天井、人体などに熱をじんわりと伝えて、部屋全体をふんわりおだやかな暖かさで包んでくれる点が特徴だ。
手のひらサイズのリモコン。操作できるのは「電源のオン・オフ」「設定温度の上げ下げ」「電力レベル(3段階のヒーターの設定の切り替え)」の3つ。本体をチャイルドロック設定にしているときも、リモコンでの操作は可能 | 取扱説明書と厚紙で出来た「簡易版の使い方ガイド」 | 裏表に操作パネル、リモコンの名称とはたらきが書かれているほか、基本的な操作方法も明記されていてわかりやすい |
こうした輻射熱を利用した暖房に向くのは、ドアの開閉が少なく気密性の高い個室だ。さっそく、自宅の部屋で使ってみた。
今回使用した部屋は約8.5畳で窓が2つ。本当なら、冷気を遮断するように窓の下に置くのが良いそうだが、それぞれ仕事机とベッドが置いてあり、ドアに近い場所への設置となった。窓にはレースのカーテンと厚みのある遮光性カーテンの2枚を使用して、熱を逃がさないようにしている。
オイルヒーターは、暖まるまでに少し時間がかかるため、電源を入れた直後は温度設定を22℃程度と高めにしておくのがおすすめ。内部のオイルが暖まり、部屋の温度が上がってきたところで好みの温度(仕事をするには18~19℃が適温)まで下げて使うと良い。ドラゴンデジタルは、デジタル表示で、リモコンも付属しているので、強・中・弱のヒーター設定や、温度設定の変更が手元で簡単にできる。
リモコンで離れたところから、こまめに設定を変えられるので便利。使用しないときには本体のディスプレイ下の窪みに収納できる | 設定温度18℃、ヒーターレベル弱で運転しても十分に暖かい | 設定温度18℃の時の室温は18.9℃。この後も19℃前後で安定していた |
40~50分後には、部屋の温度がかなり暖まったのを実感できたので、温湿度計で部屋の温度をチェック。オイルヒーターとは離れた、部屋の対面で計測したにもかかわらず、18.7℃とかなり暖まっている。20℃未満では寒いのではないかと思われる方もいるかもしれないが、オイルヒーターの特徴として、輻射熱の効果により部屋の温度よりも体感温度のほうが高いというのがあり、この温度でも「ふんわりちょうどよい暖かさ」と感じた。
湿度は69%。加湿器がまったく必要のない状態なのは、使用した部屋が北東に位置するため日当たりがよくないこともあるが、温風による乾燥がないこともその理由だろう。以前、この部屋でエアコン暖房を使用していた際には、肌やノドの乾きが気になって加湿器を使用していたこともあるので、オイルヒーターは“乾燥しない暖房”なのだ。
また、ドラゴンデジタルはフィンの表面積を2倍に広げ、X字型に加工しているため、従来よりサイズが一回り小さくなり、表面温度も約60℃と低温化したという。実際に手のひらで触れてみても「熱い」と感じるほどではなく、しばらく触れていられる温度。これなら小さい子どものいる家庭でもガードなどを設置する必要がないだろう。
■“エコ運転”とはどんなもの?
では次に、新たに搭載された「エコ運転モード」を試してみよう。このオイルヒーターでは電力レベルを弱=600W、中=900W、強=1,500Wの3段階で設定できるようになっている。
閉め切った部屋で使用していることもあり、最初のうちは中、暖まってきたら弱で使用するようにしていたが、ともすると、この切り替えを忘れてしまいがちだ。そんな時に便利なのが、今回から新たに搭載されたエコ運転モードだ。
グリーンの「ECO」ボタンを押せば、エコ運転モードに切り替わり、選択している電力レベルを上限として自動で電力レベルを変えてくれる。しかも、設定している温度よりも約0.5℃~2℃低い温度で運転するため、より少ない消費電力で済む計算だ。
実際のヒーターの稼働状況は3つのランプのうち、まん中の「電力レベルランプ」で示されるが、部屋の温度が安定した状態で試してみると、電力レベルを「中」にしておいても「ECOボタン」を押すと、ランプの表示が黄色から緑色に切り替わり、省電力になったことがわかる。
試しに電力レベルを「強」にしてエコ運転モードにしてみると、ランプの表示が赤から緑に切り替わり、設定温度と室温状況に合わせて自動で電力レベルを切り替えていることが実感できた。
電力レベル「強=1,500W」ではまん中の電力レベルランプは赤色に点灯する | 電力レベルボタンが「強」になっていても、エコ運転モードにすると自動で電力レベルを切り替える。この時点では緑色になっているため、弱で稼働していることになる |
エコ運転モードでは設定温度を低めに設定するため、しっかりとした暖かさを望む人には向かないかもしれないが、経済性を優先したい人には便利。ただし、一度電源をオフにすると「エコ運転モード」は解除されるので、使うたびに「ECO」のボタンを押す必要があることをお忘れなく。
■タイマー予約は1日2回のオンオフが可能
タイマー設定はA:オン/オフ、b:オン/オフの2セットが可能 |
オイルヒーターは暖まりにくく冷めにくいという特性があるため、起床時間や帰宅時間の少し前に電源が入るようにし、出かける1時間前にはオフにする…といった具合にタイマーを上手に使うことで快適性と省エネ性が高まる。
これまでの電子タイマーでは、15分刻みでオンにしたい時間帯はピンを内側に、オフにする時間帯はピンを外側にするというものだった。これも慣れてしまえば簡単なのだが、ピンを1本1本押しこんでいくのを面倒に感じた人も多かったようだ。また、冒頭でも述べたように、カチカチ音がするのも少々耳ざわりだった。
ドラゴンデジタルのタイマー設定は「タイマーA」と「タイマーb」のそれぞれのオン/オフ時刻のほか、Abともにオンタイマー、オフタイマーのみの設定もできるようになっている。
デロンギのオイルヒーター初のデジタルタイマーに期待満々だったのだが、設定作業を開始してから5秒何もしないでいると設定がそれで確定してしまうため、テキパキとこなさないとやり直しになってしまう。取扱説明書を片手に設定ボタンを押し、タイマーAの暖房開始時間を設定しようとするとあっという間に5秒経過してしまい、やり直し。ようやく希望時間に設定できても、暖房停止時間を設定する際にまた“5秒の壁”にぶつかり、何度も挑戦という始末。
タイマー設定Aでは朝の6時にオンになるように設定した | 9時前に家を出るため、8時には電源をオフに | 朝用のタイマーAと夜用のタイマーbの2つが設定された状態 |
液晶の明るさ設定画面。夜間にはディスプレイの照明が明るすぎると感じることもあるが、3段階の明るさと消灯の4段階に設定できる |
タイマーb(その日の2回目のオンオフタイマー)の設定の際には、設定ボタンを3回押すことから始めなければならないなど、デジタルで簡単そうに思えたのに、そのハードルは思いのほか高く、使いにくいという印象。もう少し直感的な操作で設定できるといいと思う。
なお、液晶のディスプレイは購入時は最大の明るさになっており、就寝時などには明るすぎると感じるかもしれない。これは「設定ボタンを6回押す」ことで、3段階の明るさ+消灯の4段階の中から好みのものを選択できるようになっている。ただし、この設定変更も少々わかりずらい。
■“石の家”に近づいてきた都市部の住宅にはぴったりの暖房
最後に普段のお手入れとシーズンオフの収納について触れておこう。本体の上部や側面の隙間にホコリがたまったら、こまめに取り除くことが大切。取扱説明書では掃除機の使用を勧めていたが、ハンディモップのようなものでも十分だ。子どもが汚れた手でさわってしまった場合はお湯を含ませた布で拭き取ればきれいになる。
また、従来モデルからデロンギのオイルヒーターには木綿でできた収納袋(エコカバー)が付属されており、デロンギデジタルも同様。お手入れ後に上からすっぽり掛けて押入れなどに収納・保管できる。このカバーは、オイルヒーターが不要になって処分する際に梱包材としても使え、エコカバーを掛けて返送した場合には、再資源化を無料(送料のみ本人負担)で行なってくれるサービスもあるので、なくさずに保管してほしい。
ハンディモップで隙間にたまったホコリを取ると便利 | コードは本体のホルダーに巻いて収納。プラグを差し込み口に差し込んで固定できる | 本体側面にホルダーがある |
同梱されている「エコカバー」 | 収納時にかぶせてホコリよけにできるほか、不用の際の再資源化の依頼にも使える |
オイルヒーターがヨーロッパで愛用されている理由は“石の家”にぴったりだから。暖まるのに時間はかかっても、畜熱効果のあるヨーロッパの石の家の場合、一度暖まったらなかなか冷めることがなく、「弱」もしくは「切」にしても、じんわりと暖かさが続く。
一方、日本の住宅は、材木で作られることが多く、これまでオイルヒーターを使うのには向かないと思われてきた。しかし、最近の住宅は高気密・高断熱になってきており、なかでも断熱材はものすごく進化している。つまり、どんどん「石の家」に近づいてきているのだ。オイルヒーター特有の、ふんわりと包み込まれるような暖かさに加え、エコ運転モードによる省エネ機能の充実で、都市周辺部の住宅にはぴったりの暖房器具といえるだろう。
2011年 12月 21日 00:00
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