家電製品ミニレビュー

一人暮らしに「プチドラム」。15年ぶりの洗濯機買い替えでドラム式デビュー

引っ越しを機に新たに購入した、パナソニックのななめドラム洗濯乾燥機「NA-VG740」。ギリギリ収まっている

最近引っ越ししたのに合わせて、洗濯機を購入した。これまでもタテ型の安価な洗濯機を持っていたのだが、洗濯槽がカビで盛大に臭うようになったり内部のホースが外れたりして使わなくなり、15年程前からは近所のコインランドリーを使うようになっていた。引っ越しを機に新たに購入したのは、パナソニックのななめドラム洗濯乾燥機「NA-VG740」(オープンプライス/実売23万円前後)だ。

サイズ選びで失敗、でもドラム式が欲しい……

実は当初、同じパナソニックでもう少し大きなサイズのモデルを購入したのだが、搬入直前の確認で、設置場所のすぐそばにある通路の幅が63cmしかなく方向転換できないことが判明、一旦注文をキャンセルした。搬入スタッフには、幅・奥行ともに60cmなら設置が可能と伝えられた。

洗濯機の幅はどのモデルも概ね60cm前後であまり大きな違いはないが、奥行はドラムのサイズなどで変わり、72cmなど70cmを超えるモデルもある。自宅に搬入・設置が可能という幅60cm、奥行60cmのドラム式洗濯機は全メーカー中1モデルだけで、それがパナソニックの「NA-VG740」だった。

「NA-VG740」は「Cuble」(キューブル)の名前で展開しているドラム式洗濯機で、本体が直線と平面で構成されているデザインが特徴。購入したモデルは「Cuble」シリーズの中でも小型のモデルだ。“60×60のマンションサイズ”とうたわれているように幅も奥行も60cmのため、上から見ると正方形で、搬入の際に問題となった方向転換をそもそもすることなく設置できた。

写真手前の引き戸の開口部は幅63cmしかなく、すぐに設置場所があるため、奥行のあるモデルは方向転換させる場所がない。「NA-VG740」は幅60×奥行60cmの正方形で、方向転換させることなく搬入できた

ドラム式に拘らなければいいのだが……引っ越しを機に(15年ぶりに)最新の洗濯機を使ってみたいという気持ちが大きかったのと、長年コインランドリーで洗濯機と乾燥機を使っていると、洗濯物を干すという作業に対して「可能な限りやりたくない」という気持ちが強かった。乾燥機能はどうしても欲しい機能だったのだ。

もっともこれは、一人暮らしで洗濯物を溜め込みがち→コインランドリーで大量の洗濯物を洗う・乾燥させる→仮に自宅ならこんな量を物干し竿に干したりしたくない、というダメなパターンによるもので、実際にまともな洗濯機が自宅に来ると、事情(印象)は違ったのだが……。

「おまかせ」で使ってみた。洗濯槽の洗浄もしてくれる

新しい洗濯機を使ってみると、ドラム式かどうか以前に、洗濯機の機能自体が豊富なことに驚いた。自動で洗濯物の重さを計って洗剤の量を教えてくれる機能も初めてだ。洗剤の自動投入機能は残念ながら付いていないが、ドラム式専用という市販の液体洗剤のキャップには1杯、0.8杯、0.6杯などと目盛りがあり、洗濯機の液晶に表示される内容と同じになっているので、ピッタリ指定の量を入れられる。適当に入れたり、頭の中で換算したりすることもなくなった。

洗剤の投入口。一人暮らしの1週間程度なら0.6~0.8杯で、洗剤のキャップの目盛り通りに入れるだけだ

ひとまずは全自動な「おまかせ」コースで使っているが、温水や泡を使った頑固な汚れを落とすコースから、丁寧な扱いがいる「おしゃれ着」向けコースまで内容は豊富。取扱説明書が丁寧で分かりやすくなっているため、どういう場合にどのコースを使うのかも理解しやすかった。

以前持っていたシンプルなタテ型の洗濯機は洗濯槽の臭い(カビ)が取れなくなり、このメンテナンスの失敗がちょっとしたトラウマになっていたのだが、「NA-VG740」には洗濯する度に洗浄してくれる「自動槽洗浄」機能や、衣料用の塩素系漂白剤を使った洗浄、黒カビ発生時に対処する専用の洗濯槽クリーナーを使った洗浄と、3つの方法が用意されていて安心できる。洗濯槽クリーナーは、メーカーであるパナソニック製のクリーナーが指定されているが、近くのホームセンターで売っているのを見かけた。いざ必要になってもすぐに入手できそうだ。

洗濯槽の洗浄は、日々の洗濯の際に自動で行うものからカビを除去するものまで3種類が用意されている

フィルターの類は、洗濯用の排水フィルターが下部にひとつ、乾燥機能用の乾燥フィルターが上部にひとつあり、どちらも消耗品ではなく取り外して掃除するタイプ。乾燥フィルターは乾燥機能を使用する度に掃除する必要があるが、フィルターに溜まった毛くずやホコリは固まっていてポロっと剥がれ落ちるため、思いのほか手間がかからない印象だ。

乾燥フィルターは毎回掃除が必要だが比較的簡単だ
排水フィルター。一人暮らしの量ではあまり溜まらない印象だ

乾燥機能は、浴室乾燥の場合とどう違う?

洗濯物を干す作業が面倒という理由で大きな期待を寄せていた乾燥機能だが、ある程度予想していたものの、まとまった量だと乾燥には4時間や5時間といった時間がかかり、コインランドリーのガス式の乾燥機とのパフォーマンスには大きな開きがあることを改めて思い知らされた。

コインランドリーの乾燥機は大型でガス式のため、それと比較して時間がかかるというのは仕方がないが、実際に自宅で使ってみて驚いたのは、時間よりも音の大きさ、そして熱の湿気の排出の多さだ。音については洗濯の脱水時にも大きな音がするが、どちらも初期設定を変更することである程度音を抑えた運転に変えられる。この場合、必要な運転時間は少し長くなる。

一番想定外だったのは、乾燥機能を使っている際の熱と湿気の排出の多さだ。冷静に考えると仕方がない仕様だと思えるが、乾燥機能の運転が始まると1畳ほどの広さの洗面室にあっという間に熱と湿気がこもり、洗面台の鏡や洗濯機のドアが結露だらけになってしまうなど、浴室の中のような状態になってしまった。取扱説明書でも窓を開けるなど換気を十分するよう案内されている(そして防犯に注意するようにとも書かれている)が、決して大げさではなかったのだ。

ただ築50年以上の筆者宅は、窓のサッシかなり古く網戸が無い仕様だ。加えて、午後になると階下の焼肉店の臭いが上ってくるため、正直なところ可能な限り窓は開けたくない。現実的な解決策としては、隣のダイニングのエアコンを除湿にしてフル回転させることだろうか。冬になればまた対処法は違うと思われるが……。

洗面室。乾燥機能を使うと洗面台の鏡が結露で見えなくなるなど温かく湿気だらけに。窓を開けたいところだが……

もうひとつ想定外だったのは、引っ越しと同時に新しい洗濯機を導入したため、リフォームされていた住宅設備のことをあまり考慮できていなかったこと。具体的には、浴室に衣類乾燥機能が搭載されており、洗濯機の乾燥機能とさほど変わらない時間で衣類を乾燥できてしまうことだ。これは嬉しい誤算とでもいうべきものだが、浴室の乾燥機能の音は大きくないし、熱や湿気は換気扇で外に排出されるため、他の部屋がジトジトになることもなく、使い勝手がいい。

浴室に衣類乾燥機能が付いていた
浴室の衣類乾燥機能の利用イメージ。天井の換気ユニットから出る温風を衣類に直接当てて乾燥させる。吹出口の前以外は少し乾きにくい

とはいえ浴室の衣類乾燥機能も無敵ではない。浴室の幅が1.1m程度というその狭さから、例えばベッドのシーツなどを乾燥させるのは非現実的だ。また、天井から出る温風を直接洗濯物に当てて乾燥させるという機能であるため、よく乾くポジションが限られているし、吊るせる量も限られる。シーツなどの大きなものは、畳んで入れて乾燥できるドラム式洗濯機を使うなど、使い分けることになりそうだ。

かつての洗濯機の乾燥機能はかなり高温になるため、服が縮んでしまうことも多かったようだが、ひととおりTシャツで使ってみた印象では、縮みにくさは、天日干し→浴室の衣類乾燥機能→ドラム式洗濯機(今回のNA-VG740)という順番だろうか。このモデルを含めた最近の機種は「低温風パワフル乾燥」などとして、縮みにくいよう乾燥時の温度にも配慮されているため、Tシャツや靴下ならあまり縮みを気にしなくていい印象だ。

頼れるサブ

引っ越しに伴って生活スタイルをリセットしたこともあり、前述のように洗濯物を溜め込むことなく、こまめに洗濯するよう心がけている。自宅で過ごすのが中心の一人暮らしでは、1週間分を溜めてもTシャツと下着が日数分、タオル数枚、半ズボンが数着あるかないかといったところで、たいした量ではない。たいした量ではないので、ハンガーに吊るしたり、物干し竿に干したりといった天日干しの作業もすぐに終わり……恐れていたほどの作業ではなかった。つまり、世間一般では当たり前である天日干しに回帰してしまっている。

とはいえ、乾燥させる手段が複数用意されているのはとても心強い。天候を窺いながら洗濯するかしないか決めるということが減らせるし、梅雨の頃など、外に干したものの十分に乾かなかった場合も、補完的に乾燥機能で乾かせた。季節や天候で運用方法は変わるだろうが、今のところ乾燥機能は「頼れるサブ」に落ち着いている。

太田 亮三