家電製品ロングレビュー

暑さ・寒さ対策だけではなく1年中使える“快適エアコン”~ノクリアXレビュー後篇

ハイブリッド冷房でカラリと快適に

富士通ゼネラル「nocria(ノクリア)X」AS-X40E2W

 富士通ゼネラルのエアコン「ノクリアX」のレビューをお送りしている。前編では、両サイドについたファン「デュアルブラスター」による気流、送風モードの快適さをまとめた。後編ではノクリアXならではの「冷房」のことや、みまもりやスマートフォン連携など、便利な機能を紹介する。

メーカー名富士通ゼネラル
製品名ノクリアX AS-X40E2W
希望小売価格オープンプライス
店頭価格245,160円(yodobashi.com)

 今年の夏は雨が多く、なかなか本格的な暑さがやってこないが、今回はノクリアXならではの冷房の特徴についてご紹介したい。普通、冷房時には設定温度が近づくにつれ、除湿能力が下がってしまい、それを補うために風量を落としたりするため、室温は下がったものの「蒸し蒸しする」「風感がなくて暑く感じる」という不満が起こり、結局は室温設定を下げてしまうなどということにもなりかねない。

 ノクリアXはサイドファンを活用したハイブリッド冷房運転が可能なため、設定温度に近づいても、自然に近い(快適な)風の気流を送りつつ、しっかりと除湿をする。実際に冷房運転をさせてみたときにも、温度が下がるのと同時に、湿度がしっかりと下がってからりとした空間に変化するため、とても快適に感じられた。

 冷房時、通常は「おまかせ快適気流」により、冷気は上方に、サイドファンからの涼風は下に向けて送られることによって包み込まれるような涼しさが得られる。ただ、アトリエではエアコンの真向かいにデスクを置いてあるため、冷気がどうしても当たってしまうことになり、送風運転の際に設定したように、壁に沿って気流を起こすような向きと角度に調整して使っている。

まだ気温が高い日がほとんどなかったので、室温より少し低めの26.5℃設定で冷房運転してみることに
エアコンの正面に原稿執筆などで使用するデスクが置いてあるため、冷風が直撃しないような「風向き」の設定は不可欠
中央のファンから出る冷風はもっとも上方向に、左右の向きは左に向けて壁に沿わせるように設定している。サイドファンも同様に上向き&左方向に設定することで、冷風が壁に沿って流れていく気流を作るのを手助けしている

 一見、面倒で複雑な作業に思えるかもしれないが、理屈がわかり、設定に慣れてしまえば簡単なこと。それに一度停止させても、ファンの設定については記憶されているので、毎回設定し直すという手間はいらない(冷房運転の翌日に送風を行なうときには、再設定が必要。ここはぜひ改善してほしいところ)。

除湿モードの上手な使い方、見つけた!

 前篇の最後にも除湿運転について紹介したが、その後、さらに快適に使える方法を編み出したので、改めてお知らせしたい。

除湿モードは2種類。その日の気温によって、除湿モードを選ぶと、より快適に使えることがわかった

 ノクリアXの除湿運転には「再熱除湿」と「弱冷房(ソフトクール)除湿」の2種類ある。再熱除湿は除湿のために冷やした後で、冷えた空気を内部で暖めてくれるため、“寒くならない”のが特徴だ。若干、電気代はかかるが、からだにやさしい空調を使うのは贅沢なことではないはず。上手に使いたいと思う。

 さて、この再熱除湿だが、「室温はこのままでいいけれど、じめじめして不快だから、なるべく手早く除湿してほしい」というときの上手な使い方としては、

 ・再熱除湿モードで、室温設定をやや低めにする
 ・湿度が下がったと感じたら、再熱除湿モードのまま設定温度を上げる
 ・湿度が下がったからといって、除湿運転を停止するのはNG

 この使い方だと、除湿がスピーディに行なわれ、乾いた空気を保ったまま、設定温度を維持するようにインバーターで上手にコントロールしてくれるので、快適性を維持できるのだ。運転を停止してしまうと、外の湿気に影響されてすぐにムシムシしてしまうことになる。

 もう1つの弱冷房除湿はどのような時に使うのが最適かというと、普通の冷房をするほどではない(27~28℃くらいのイメージ)が、湿気を取りたいというとき。「温度が低いときの除湿優先冷房」と言ったらわかりやすいかもしれない。先ほど、ご紹介したハイブリッド冷房では、設定温度に近づくと、まさにこの「弱冷房除湿」をしているのだ。

 冷房が苦手な人の就寝時の運転としても「弱冷房除湿」は向いているだろう。

お手入れ不要が嬉しい! フィルターの自動おそうじ機能

 ノクリアXの先代モデルでは、フィルターの自動おそうじ機能が搭載されていなかったのだが、このモデルにはしっかり搭載されており、日ごろのお手入れもほとんど必要なく便利になっている。省エネのためにも嬉しい。

 フィルターの自動清掃は、1日8時間程度使用した場合、標準設定ではおよそ5日に1回行なう仕組みになっている。これはリモコンで短め(=3日に1回)、長め(=8日に1回)と変更することも可能だ。1日あたりの使用時間が短い場合、これよりももっと頻度が少なくなる。なお、自動清掃が始まっても、音も静かで全く気にならないレベル。動いている様子さえ感じられないほど静かに、約13分間で完了する。

室内機前面のカバー部(吸込グリル)を持ち上げたところブルーの部分にエアフィルターや自動おそうじ機構、ダストボックスなどがある
黄色のストッパーを外すと取っ手が持ち上がる仕組みになっている
エアーフィルターは左右に2分割されており、それぞれが個別に取り外せる仕組みだ
カバーを開けると取り外し方が図解されているので、取扱説明書とにらめっこしなくても大丈夫
エアーフィルターの奥に搭載されているプラズマクリーンユニットの取り外し(取り付け)方法も図解されている
取っ手を持って回転させるとエアーフィルターが現れる
取っ手を持って手前に引き出すとフィルターも一緒に外れる
奥のほうまで覆ったフィルターがするりと外れたところ。ここまでの一連の操作は力も要らず、簡単だ
向かって右手のエアーフィルターも取り外したところ

 フィルターの上下をブラシで挟み込んで掃除をする仕組みで、集められたホコリはダストボックスに集められる。部屋の状況や使用頻度にもよるが、ダストボックスのホコリは5年に1回捨てればOKというのだから、ほとんどお手入れ不要だと言っても過言ではない。キッチンが近いところなどに設置し、油が付着した場合などはフィルターを取り外して水洗いしたり、ダストボックスの丸洗いなども可能だ。

エアーフィルターとダストボックス部
通常はお手入れの必要がないが、油汚れなどが気になる場合は、エアーフィルターを取り外して水洗いすることもできる
ダストボックス部にブラシが取り付けられており、フィルターを上下に挟んで掃除する仕組みなので、しっかりと汚れが落ちるのが特徴。ブラシについたホコリをきれいに落としてダストボックスに収納するためのセルフクリーンブラシもついている
非常に薄く、目の細かいツルツルした材質でできたエアーフィルターなので、ホコリがつきにくく、ついた汚れも落としやすい
取り外したフィルターをダストボックスにセットするのもとても簡単
エアーフィルターの下部を左右の△マークに合わせて取り付け完了
再びこの状態になったら、室内機に取り付ける
奥まで到達したら、ダストボックスを手前におろして取っ手を下げると自動でロックされる仕組みだ
最後に「お手入れリセット」ボタンを押すと、エアーフィルターが正しい位置に移動して、取り付け完了となる

 今回、フィルターのやダストボックスの取り外しをしてみてわかったのだが、フィルターの右奥にはプラズマクリーンユニットが設置されている。これは、静電気の力で花粉やハウスダストなどの微細な汚れ物質を集めて空気をきれいにするというもので、より清潔な空間を保つためのものとして心強い。

フィルターの奥にはグリーンのプラズマクリーンユニットがあり、これも簡単に取り外して洗える
静電気の力で花粉やハウスダストなどの微細な汚れ物質を集めて空気をきれいにする「プラズマクリーンユニット」
本体のプラズマクリーンランプが青く点滅したら、お手入れが必要の合図。バケツにお湯を入れ、台所用の中性洗剤を入れて漬け置き、ゆすって洗った後、すすいでよく乾かせばOK

 また、冷房や除湿運転を行なった後は、内部を乾燥させてカビの発生を抑える「内部クリーン運転」を行ない、熱交換器と送風ファン、送風路を乾かす機能も備えている。1回あたり約90分間かけて行なうが、運転後半は微弱暖房運転を行なうため、冷房や除湿を停止して、そのまま仕事をしていると暖気で暑く感じられることもある。外出する、帰宅する場合はよいが、そうでない時には、冷房運転もしくは除湿運転を停止した後には、いつもどおりの「送風運転」をするようにしている。

冷房や除湿運転を行なった後は、内部を乾燥させてカビの発生を抑える「内部クリーン運転」を行ない、熱交換器と送風ファン、送風路を乾かす
内部クリーン運転は、1回あたり約90分間かけて行うが、運転後半は微弱暖房運転を行なうため、冷房を消してそのまま仕事をしていると暖気で暑く感じられることも

安心&便利機能もいろいろです

 ノクリアXには、ほかにも便利な機能がいろいろ搭載されている。代表的なものとしては、室温と湿度に応じて、運転停止時にも自動で冷房運転を開始したり、音声で注意を促す「みまもり」機能だ。このエアコンは高齢者向けとしてもとても向いていることを考えると、こうした「みまもり」機能は安心で理にかなっていると思う。

 また、人感センサーを搭載しているため、ちょっとした外出時に運転を自動でセーブしてくれる「オートセーブ」、人の不在が1時間(もしくは3時間)続くと自動で運転を停止する「オートオフ」、人が戻ったタイミングで自動で運転を再開する「オートオン」などの『不在ECO』モードを使い、より省エネ運転をすることも可能だ。

 もう1つ、使っていていいなと思うのが、「節電お知らせ」機能。室外機によって外気温を検知しているため、「外の温度が設定温度よりも下がっています」と音声で知らせてくれるなどして、窓を開けることを促してくれるのだ。「今日の電気代が昨日の電気代に近づきました」というお知らせが打ち合わせ中に流れると「黙っていて!」と思わないでもないが、部屋の状況に応じたさまざまな節電設定をアドバイスしてくれるのは便利だと思う。

リモコンの「機能」ボタンの1ページ目に、「みまもり」運転の設定ボタンがある
不在ECO機能もノクリアXシリーズの便利な省エネ機能だ
節電お知らせは、音声で節電に関するアドバイスをすることで「気づき」を与えてくれる機能

別売の無線アダプターでスマホ操作もOK

 無線LAN環境が整っている場所で使える、別売の無線アダプターも設置してみることにした。専用のアプリ「どこでもエアコン」をダウンロードし、簡単な初期登録をするだけで、スマートフォンをリモコンとして使ったり、運転状況をアプリで確認したりできる。

別売の無線アダプターの設置でスマートフォンでの操作が可能になる
無線アダプターAPS-12B

 アトリエで使っているときにも、普通のリモコンで運転を開始すると同時に、スマートフォンにプッシュ通知され、その連動性に驚き、機能の確かさに安心する。

エアコンのオンオフ状況が、スマートフォンにプッシュ通知される
専用アプリ「どこでもエアコン」で登録したエアコンの運転状況も確認できる
運転モードのほか、室温、湿度、外気温、電気代も表示される
消し忘れて外から運転を停止にしたいときにも「停止」を押せばOK
停止ボタンを押し、OKを押す
エアコン操作の確認表示が出るのでOKを押す
送信完了→停止となる
アプリで運転状況を確認すると「停止」の表示になっている

 離れていても、運転モードのほか、室温、湿度、外気温、電気代も表示されるので、家庭内でも隣の部屋から寝室やこども部屋の温度設定や運転のオンオフができるのはとても便利だ。前モデルまでは無線リモコンだったが、今回から赤外線リモコンになり、こうした設定ができなくなっていたので、それに代わるものとしてもいいのではないだろうか。

暑さ・寒さ対策だけではなく1年中使える“快適エアコン”

 これまでエアコンというのは暑さに耐えられないときの冷房、冬の寒さ対策のための暖房という夏と冬のための空調機器という印象がぬぐえなかった。春や秋には窓を開けるなどすればいいし、それが出来ない場合も室温が適温であれば、特にエアコンを使う必要はないのだと。

 ところが1日のうちで長い時間を過ごす仕事場で、このノクリアを使い始めてみて、暑さ・寒さ対策だけではない、その上の快適さが得られる夢のような“魔法の箱”なのだと認識を新たにした。たとえ室温が適温だったとしても、そこにかすかな風の流れがあると、高原の別荘のような自然空間に変わる。それを可能にしているのが、サイドファンとの組み合わせによる送風運転だ。

 もしも湿度の高さが気になるようなら、除湿運転を利用すればからだの冷えを気にすることなく、からりとした空間を作ることもできる。暖房についてはその季節が来たら、またレポートしたいと思うが、とにかくノクリアは季節家電ではなく通年使える家電であることに間違いない。

デザインの美しいノクリアX
サイドファンのカバー部の陰影がアクセントになっているところが特にお気に入り

 2015年モデルからは室内機本体がコンパクトになり、6畳用タイプからラインアップされているので、寝室にもとてもいいのではないだろうか。高級モデルであり、価格も高めではあるが、寝室は実は1日のうちでも長く過ごす場所だ。極上のねむりのためにもノクリアXを選ぶというのはありだと思う。実際、自宅の寝室への導入も検討しているところだ。

 長時間過ごすほどに冷房時や送風時の自然に近い風の心地よさが体感できるので、家で過ごす時間が長い高齢者の方にもぜひおすすめしたい。

神原サリー