家電レビュー

すき間に入るポタ電 ジャクリのSlimPower H1は日常使いしやすい

厚さ67mmのJackeryポータブル電源「SlimPower H1」

過去いくつかのバッテリーメーカーに取材してわかったことだが、日本でバッテリーが大幅に売れるのは、自然災害が起こった後である。災害にあった地域ではなく、それ以外の地域で防災意識が高まり、自治体や個人でバッテリーの需要が増大する。

ただ防災用品として購入したとしても、災害が起こるまで保管していては、いざ災害にあったときに買ったことを忘れている、どこにしまったかわからない、奥にしまいすぎて取り出せないといったことが起こる。

また、いつ起こるかわからない自然災害に備えて、数万円程度の投資ができる家庭はまれだろう。ポータブル電源は、災害も視野に入れつつ日常的にどう使っていくかがポイントになる。

7月9日にJackery(ジャクリ)から発表された新型ポータブル電源は、「SlimPower H1」という、薄型モデルである。従来の箱型ポータブル電源は、フットプリントが大きく、置き場所に困った挙句、押入れの奥にしまわれるという課題があった。一方SlimPower H1はスペパ(スペースパフォーマンス)に注目した商品である。

公式サイトでは、定価119,800円のところ、9月10日まで30%OFFの83,860円で購入できる割引が実施されている。今回はJackeryからSlimPower H1を提供いただいたので、早速自宅で試してみた。

厚さ67mmの薄型構造

SlimPower H1は容量1024Whで、ポータブル電源としては一番売れ筋の容量である。このぐらいの容量が一番小型化が進められているところだが、Jackeryは小型化というより、薄型化へ振った。

厚さ67mmなので、家具と家具の間に差し込めるというのがポイントだ。排熱フローは前面吸気/背面排気なので、サイド方向は塞がっても問題ない。

前面に円形のステータスディスプレイを配置
前面の吸気口も円形
背面の排気口

「SlimPower H1」の目的は、実はシンプルである。米国では、これに近い仕様の製品が「FridgeGuard」という名前で売られているように、メインは冷蔵庫用のバッファ電源だ。

冷蔵庫と家具のすき間に配置できる

米国は地域によって停電が頻発する。これに備えて家庭内全電源をバッファするような大型蓄電池を備える家庭もあるが、集合住宅などではそこまで用意できない。しかし冷蔵庫は電気が来ないと困るというわけで、冷蔵庫向けのポータブル電源が登場した。

構成としてはシンプルで、AC入力1系統と、定格800W出力が1系統あるだけだ。日本で売られている600Lクラスのファミリー向け大型冷蔵庫でも、常時稼働は40Wぐらいである。コンプレッサー稼働時の最大電力でも300Wぐらいなので、かなり余力がある。

設置方法としては、米国では冷蔵庫の上に乗せることが想定されている。一方日本で販売されている冷蔵庫の中には、天面で放熱するタイプのものがあるため、冷蔵庫の上に乗せることは推奨していないそうである。よって日本では、冷蔵庫の横のすき間に置くことが想定されている。

筆者宅の冷蔵庫はAQUA製の433Lモデルだが、説明書には「天板にものを乗せると落下して怪我の危険性がある」として注意書きがある。放熱を妨げるといった理由ではないようだ。

また米国では、取り付け金具を使って壁掛けにするという設置方法も取られている。米国ではコンクリート壁が多いからだろう。

側面には壁取り付け用のネジ穴がある
壁掛けにも対応する(7月9日発表時の写真)
横置きでも使える(7月9日発表時の写真)

一方日本の家屋の場合、モルタルや木造壁では耐荷重が足りないケースもあるため、耐荷重を確認するよう求められている。ちなみに重量は10.5kgだ。

冷蔵庫につないでみた

冷蔵庫用として用意されているコンセントは、大抵は上部に用意されている。これは下にあると冷蔵庫自体でコンセントを塞ぐことになってしまうからだ。

もちろん各家庭では様々なコンセントの配置があり、冷蔵庫の置き場所も色々なので、やっぱりコンセントが冷蔵庫で隠れてしまうケースもあるだろう。冷蔵庫メーカーではそうした事情も考慮して、(主に大容量モデルの)電源プラグは出っ張りが少ないL字形にしてある。

日本の大容量冷蔵庫のプラグはほとんどがL字型

SlimPower H1を冷蔵庫のバッファとして使う場合、冷蔵庫の電源プラグが刺さっていた家庭内コンセント部分にSlimPower H1を挿し替えるということになる。しかしSlimPower H1付属の電源ケーブルのプラグは、一般的なストレートタイプなので、コンセントからかなり出っ張ることになる。ここは日本の家庭に合わせるならば、L字型のプラグを採用すべきだった。

SlimPower H1のプラグはストレート型

筆者宅ではそのままでは冷蔵庫自体が邪魔になってコンセントに刺せなかったため、別途L字型プラグになっているテーブルタップを用意して、そこにSlimPower H1を繋ぐことにした。

動作状況は、アプリを使って遠隔からモニターできる。電力料金の高い/安い時間帯が設定できるので、安い時間帯のみ系統電力から充電し、高い時間帯はバッテリー出力に切り替えるといった運用も可能だ。変動型や深夜電力が安い料金プランを契約している家庭なら、ちょっとずつではあるが電気料金が下がることが期待できる。

専用アプリで遠隔から稼働状況がモニターできる
電気料金の時間帯設定もできる

もう一つほかにはない機能が、停電時の遅延起動という設定だ。通常系統電源が停電した場合、UPS機能により10msec程度でバッテリー運用に切り替わるというのはよくあるが、本機では「ACソケット遅延有効化」という設定がある。これは停電復旧直後など、系統電力が不安定なタイミングで即座に給電を開始せず、一定時間が経過してからAC出力をONにする機能だ。

停電後、一定時間経過後にAC出力をONにできる機能を搭載

この意味がなかなか理解しづらいところではあるが、まれに停電時にポータブル電源からのAC出力に、完璧に切り替わらないと困るという時の対策だ。例えば熱帯魚のヒーターなど、確実に切り替わらないと死活問題になるケースがある。また冷蔵庫も、一旦ダウンした後、すぐにコンプレッサーを再起動すると、負荷がかかってダメージを与えることがある。

このように絶対に失敗できない電源切り替えの時に、一旦電源を遮断し、回路が安定した後に改めてポータブル電源から電力を供給するというわけだ。

冷蔵庫以外の活用方法とは

もし冷蔵庫用のポータブル電源として使うならこれで十分だが、常時繋いでいる意味はあまりない。停電したときにつなぎ直せばいいだけである。

ポータブル電源としてはデザインもよく、どこに置いても違和感なく溶け込めるのも一つのポイントなので、普段どうやって活用できるのかの方が重要だ。米国向けモデルはシルバーだが、日本向けにはホワイトにしたのも、リビングに置いて違和感のないポータブル電源を目指したのは明らかだ。

重量は約10kgなので、両手で持てば移動はできる。ただ持ち手がないので、ボディの両脇を抱える感じになる。トップにハンドルでもあれば、もう少し気軽に持ち歩きを検討できたのではないだろうか。

あるいは底面のスタンドは、キャスター付きでもよかったかもしれない。日本の家屋は昨今フローリングが増えており、移動のしやすさを考えれば、こうした工夫もアリだろう。

底面のスタンド部

活用の一例としては、電源としてプロジェクターの投影場所に持っていくというのも考えられる。映画やアニメにとどまらず、スポーツイベントも昨今は積極的にネット配信されている。コンセントの位置に縛られず、どこでも自由に投影できるのは大きなメリットだ。

逆に電源ケーブルを長々と這い回していると、照明を落とした状態では飲み物を取りに行った時に引っかかったりするものだが、こうしたトラブルを避ける意味でも、ポータブル電源は積極的に利用したいものだ。

一方で電源出力がAC1系統だけというのは、惜しいところだ。せめてUSB-Cポートが1つあれば、緊急時のスマホ充電など、もうちょっと用途が広がっただろう。

SlimPower H1は、これだけでは容量が足りない場合に備え、同型の拡張バッテリーとの接続にも対応している。これを繋げば容量が倍になる。

同形の拡張バッテリーが1台増設可能

またソーラーパネルからの充電にも対応する。上部の拡張端子に、別売のDC Inputモジュールを使って接続する。100Wパネルで15時間でフル充電可能だが、1日の日照時間が15時間もないので、2〜3日かかることになる。200W以上が現実的だろう。コンセントからの充電は1.5時間、コンセントとソーラーパネルを併用すれば、最速58分でフル充電可能だ。

上部に拡張用端子がある

薄さをどう利用するかがポイント

1kWhのポータブル電源は、容量や出力、重量など非常にバランスがいいポジションにある。よって非常に競争が激しいところではあるが、SlimPower H1をうまく使うなら、その薄さをどう使うかが勝負だ。

家具と家具のすき間に入れるというのがオーソドックスな使い方だが、家具の足の下とか、壁に沿って置くといった使い方もできる。オートキャンプでも座席の下など、本来デッドスペースになっている部分に押し込めるのはメリットが大きい。

もちろん冷蔵庫のバッファとして、深夜電力を利用した電力シフトで電気代を節約というのも現実的な活用方法だ。災害時にだけ役に立てばいいというのでは、購入意欲も薄れる。普段から「回しておく」という重要性に気づかせてくれるポータブル電源だ。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。