家電製品レビュー

料理好きのテンションが上がる! 本当に美味しく仕上がる、魔法のような「真空低温調理器」にベタ惚れ!

 この頃時々聞く「真空低温調理」。名前の通り「食材を真空状態にして」「低温で調理する」という調理法だ。真空状態なので、「酸化しにくい」「肉汁や旨みが流れ出ない」「少しの調味液で全体を浸せる」などと、色々なメリットがあるのだけれど、そんな難しい事よりも何よりも「めちゃくちゃ美味しく仕上がる」と言うのが1番のメリットだ。家にいながら完全にレストランの味、しかも美味しいレストランの味になるらしい。

 今回はそんなめちゃくちゃ美味しい真空低温調理を実現してくれる、貝印の低温調理器をじっくりしっかり使い倒して食べ倒してみたよ。

メーカー名貝印
製品名KaiHouse The Sousvide Machine 低温調理器
実売価格54,000円

 こちらが、低温調理器一式。これがただの低温調理器ではなく、真空低温調理器と言う名の通り、「ジップ袋に入れて空気を抜いて!」なんてアナログではなく、専用袋に入れた後は、自動で空気を抜いて、熱接着してくれる専用シーラーが付いている。

 ある意味低温調理器とシーラーの2台なんだけれど、コンセント2つ占領する必要はなく、シーラーは低温調理器本体が電源になっている。たとえ本体が動いている最中でもシーラーは使えるので、かなり便利。

 そもそも「低温調理って何で美味しいの!?」って感じなんだけれど、まさしく「料理は科学」だ。お肉や魚には色々な菌が付いているけれど、細菌は熱に弱いものが多い。熱で殺菌すると安全に食べられる。そして、お肉や魚は、火を通すと色が変わるだけではなくて、水分を蓄えているタンパク質が破壊されて硬くなってくる。

 なので、殺菌はしつつもタンパク質を壊さない絶妙な温度で調理することで、中まで熱は通っているけれど、高温で調理したのとは全く違う食感を実現できるのだ。その絶妙な温度は食材次第。科学すぎてよくわからない人も、購入者特典でプロのシェフが作ったオリジナルレシピが見れるので、温度と時間を自分で頭を捻らなくても大丈夫なので安心!

横から見ると中々スリム。キッチンに置いてもオシャレ
シーラーは本体のコンセントから電源をとる
専用袋はMサイズ、Lサイズのほか、ロールタイプもある
料理は科学!分解とか凝固とか、理科の時間に習った気もする

ここはどこのレストラン? 絶品ローストビーフもお手軽にできちゃう

 さっそく代表的な料理ローストビーフを小手調べに作ってみる。でっかいビーフに塩胡椒を振ってから専用袋に入れて真空準備を行なう。袋の口をシーラーのちょうど中央に合わせて「V」ボタンを押すと、ぎゅいーーんという音と共に脱気した上で、自動でシーリングしてくれ、あっという間にビーフの真空パックの出来上がり。

まずはシーラーで真空食材を準備するよ
こんな美しい真空食材、買ったことはあるけど作ったことはない!

 深めのお鍋など、本体のクリップがしっかり挟める容器に水を入れて本体を固定し、本体menuの「M」ボタンと上下ボタンを使って、食材に合わせた温度と時間を設定する。ローストビーフは58℃で60分らしい。そして「ON」ボタンを押すと、設定温度まで水を温めてくれ、設定温度に達したら「ピーピーピー」とお知らせアラームが鳴る。そうしたらば真空の食材をお湯の中にドボン。

 あとは設定時間一定の温度を保って勝手に調理をしてくれるのだ。真空状態で空気が入っていないので、食材が浮いてくる心配もない。1,000Wのハイパワーで水流を起こしながら全体に均一に熱を通してくれるので、途中何もする必要がない。ただ放置するだけ。設定時間の調理が終わったらタイマーでお知らせしてくれる。

コントロールパネルのボタンもわかりやすい
空気がないので、浮いてこないし熱が入るのにムラも出ない
調理器はクリップで固定するので、そこそこ深い容器が必要
じゃじゃーん。1時間調理しました

 出来上がったローストビーフを袋から取り出し、仕上げにフライパンで表面に焼き目を付ける。ドキドキしながらイザ切ってみると……。うわーー! めっちゃ美味しそう! 美しく輝くピンクのビーフに歓喜。袋に残った肉汁を使ってグレービーソースを作って、それをかけて食べると美味しすぎる。

 リーズナブルなオージービーフだったけれど、本格的で柔らかく美味しいローストビーフになるなんて信じられない。切ってみるまで仕上がりがわからないローストビーフも、これならば失敗も偏りもなく、簡単に作れてしまうなんて。美味しい赤身肉をたっぷり堪能できる幸せよ。ここはどこのレストランだ?

 ご飯の上にたっぷりローストビーフを乗せて贅沢なローストビーフ丼なんてのもできる。温泉卵も低温調理器を使って60℃で30分で失敗なくできる。殻に覆われた卵は真空にしなくてもいいかなって思ったけれど、ハイパワーな水流にめっちゃぶつかってしまうので、真空パックでまとめてしまった方が安心かもしれない(笑)

出来上がったローストビーフの表面をフライパンで焼いて表面は香ばしく仕上げる
思わず「きゃー!」と声が出てしまう美しさ
そのままで食べるのはもちろん、ローストビーフ丼なんて豪華すぎる
温泉卵も作れるよ

魚もしっとり! コンフィにツナ、サーモンタルタルも

 お肉だけじゃなくて、もちろんお魚料理にも使える。ちょっとオシャレに白身魚のコンフィなんて作ってみた。コンフィは食材を油に浸して、低温でじっくり煮ていく調理法。真空低温調理なら、少ない油で全体を浸せるのでもってこいの方法だ。

 油や調味液など、液体と一緒に真空にする場合は、「V」ボタンで脱気して、液体も吸われる前に一旦止めて「S」ボタンで手動シーリングを行なう。今回は60℃で60分調理してみた。

 お刺身でもOKなお魚なので、自分のベスト温度とベスト時間を見つけると良いと思うけれど、迷った時はとりあえずデフォルト設定の60℃から始めてみよう。フライパンかバーナーで皮面だけパリッと仕上げると、身は柔らかくしっとりとした仕上がりで、旨味も閉じ込められていて絶品!夫も「このしっとりさ、初めて食べる食感。美味しい!」と絶賛していた。

塩胡椒でもいいけれど、市販のシーズリングで味付けしてみた
手動シーリングを使うと、油や調味液などが入っていても真空にできる
コンフィって不思議な食べ物。油で茹でる感じ
バーナーじゃなくてフライパンでも良い。皮パリッとするとさらに美味しい

 真空調理は長時間漬け込みをしなくても味がしっかり染み込むので、マグロの柵を漬け用のタレと混ぜて調理してみた。調味料の量も漬け込み時間も大幅ダウンというのも、真空低温調理のメリットなのである。薄味にしていたので表面にちょっとお醤油垂らして、わさびを乗せて仕上げてみた。お刺身の漬けとも、煮魚とも全く違う別物。「これは、超高級ツナだな。」という感じ。ほぐして和風サラダなどに入れても絶対に美味しいだろうと思った。

 サーモンの柵を使って、タルタルサーモンにしてみたら、自分で天才かと思うほど美味しかった。天才なのは決して私ではなく、真空低温調理器なんだけれど(笑)。でも、自分の料理の腕が恐ろしく上がったような錯覚に襲われるのだ。

マグロの漬けみたいな。真空なので少量の液でOK
盛り付けはちょっと課題あり!?(笑)
接写しても美味しそう
柵ってやっぱり便利。サーモンも調理
柔らかくて絶品!手作りタルタルソースと合わせて

韓流も! タイ風も! 本格アジアン料理も簡単

 ローストビーフやコンフィなど、ビストロのメニューっぽいメニューが得意かと思いきや、メニューの範囲はとっても広く、きっと現地の方も驚くんじゃないかと思うほど、美味しいアジアン料理も簡単に作ることができる。

 大きな豚肉の塊に何も下味つけずに、60℃でじっくり6時間。出来上がったら温かいまま厚めに切って、サムジャンやコチジャンと共にレタスに巻いてポッサム風に食べるの最高! 6時間も加熱してもうっすらとピンク色と言うのは、低温調理ならでは。ジューシーで柔らかく、一口噛む度に、豚肉の美味しさが口中に広がる。

 冷めてから食べると、高級ハムのような味わいと食感がする。すぐに食べずに保存するときは真空パックに入れたまま保存しておくと、酸化も乾燥も進まず持ちが良い。専用袋には、いつ、何℃で、何分調理したかを書き込めるようになっている。翌日に残ったお肉を使い、出汁たっぷりの野菜カレー(肉無し)をかけて食べたら、前の日の夕飯の残りなんて言葉で表現したら失礼なくらい最高なランチになった。

 鶏モモ肉にニンニクと生姜のすりおろし(チューブでOK)を刷り込んでから1時間ほど調理すると、むちゃくちゃジューシーでプルップルのカオマンガイなども簡単に出来上がる。これぞ銘店の味だわ! と、内食とは信じられない程の出来栄えだ。

専用袋には保存時にも便利な調理記録をつけられる
大きなお肉も、しっかり中まで均等に熱を通せる。すごい
ポッサム風に韓国味噌とレタスで。バラ肉も美味しいけれどロース肉好き!
休みの日のランチには120点じゃないだろうか
大きなもも肉もLサイズの袋で余裕
本格レストラン並み!?いや、それ以上じゃないか?という美味しさ!

鶏肉だって美味しく! 家飲み最高!!

 高級食材じゃなくても、「え!?こんなに美味しくなるの?」と驚くべく力を発揮するこの真空低温調理器。普通に調理するとちょっとパサっとなりがちな鶏むね肉だけど、軽く塩をまぶしてからタコ糸で固定してから真空にし、1時間ほど調理するだけで、びっくりするほど柔らかくてしっとりした鶏ハムが出来上がる。大葉なんて一緒に巻くと、色も綺麗だし、お弁当のおかずやおつまみにも最高。何この美しいしっとりした鶏ハムは!と感動する。

 スーパーでグラム100円を切っているような安価な鶏レバーだって、血抜きをしてから低温調理すると、全然パサパサしない。「レバ刺しなの?」って位の舌触り。むしろ何も混ぜていないのに、生クリームやバターと共に作るレバーパテかのようになる。ごま油と塩でレバ刺しのようにして食べるも良し、真空するタイミングでブーケガルニなんて一緒に入れて香りを付け、レバーパテみたいに食べるも良し。おつまみにも最高すぎて、外食する気も失せる。家飲み最高!

 私が一番お気に入りのおつまみは、鶏ササミを62℃で15分調理し、わさび醤油で頂くという方法だ。鶏肉についているカンビロバクターやサルモネラという食中毒の原因となる菌をしっかり殺菌しつつ、まるで鶏刺を食べているような食感。調理後はすぐ氷水で締めて、お刺身のように頂く。美味しすぎて何度も何度も作っている。美味しい日本酒を1本用意して、この鶏ササミをつまみに晩酌をするのがめちゃくちゃお気に入り。何度食べても毎回驚いてしまう美味しさで最高すぎるのだ。

何度シーリングしても「美しい!」って思える真空パック
しっとり鶏ハム。鶏胸肉の一番美味しい食べ方かも
鶏レバーは血抜きをしてから袋に入れる
何も混ぜてもないのにレバーパテのような食感!
鶏ササミは、調理完了したら、氷水に入れる
何度試したかわからないほどお気に入りの鶏ササミはわさび醤油で

美味しい手料理が作れてテンションアップ!

 これは、料理に少しでも興味がある人、むしろ美味しいものを食べるのが好きな人全員テンションが上がるキッチン家電と言ってもいいと思う。本当に美味しく仕上がる、魔法のような調理器だ。

 唯一のネックはやっぱり価格だ。この魔法がかった美味しさをを前に、数時間迷えるレベルで考えるところ。落とし所としては、「低温調理器」と「シーラー(真空器)」の2つを買ったと思おう! と自分に言い聞かせる位かな(笑)。低温調理器は幾つか出ているけれど、この専用シーラーの感動の上乗せは、1度味わうと中々譲れない魅力。

 これぞ「ご褒美家電」かもしれないけれど、決して使用頻度の低い飾り家電ではなくて、めっちゃくちゃ使える日常家電にも昇華できちゃう家電なのだ。収納スタンドでスッキリ立てて収納できるので、キッチンに置いていても邪魔にならないし逆におしゃれ!この手軽なのに高級レストラン並みの美味しさがいつでも実現できるこの貝印の低温調理器、一度知ってしまうとトリコになってしまうこと間違いなしであります。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まない30代後半。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。