家電は共働き家庭を救うか!?

家族のイライラも吸い取ったダイソン「Digital Slim」掃除の負担は体感5分の1

息子が中1のときに初めて結婚した著者が、家電偏差値35ながらに、時短家電を使いこなす日々を綴ったコーナーです
コード付きやロボット掃除機を持っていても、コードレスは活躍する

高額家電を買うかどうかの選択は、商品の良さだけでなく、予算や住居の構造などライフスタイルにも左右される。この連載でレビューした家電のうち、私が実際に購入したのはロボット掃除機だけだ。欲しい家電は他にもあったが、設置・収納場所が確保できないため、見送らざるを得なかった。ステイホームで料理の負担が増える中、調理家電はなんぼあってもいいのだが、キッチンのスペースは限られている。

ロボット掃除機を購入したのは、広い戸建てに引っ越して物理的に掃除が追い付かなくなったこと、そしてキッチン以外に置ける家電だったからだ。そこそこきれいな環境を保てればいい私にとって、あれは強力な助っ人だった。だが、まさかのWithコロナでロボット掃除機の出番が減った。

ステイホームで増殖するゴミ

我が家は夫が2月から在宅勤務に入り既に半年が経つ。息子の高校も3月から5月まで休校となり、一時期は家族全員が完全在宅モードになった。夫とは朝、昼、夜を一緒に食べる生活が長期間続き、老後を見据えた修行だと考えることにした。

老後と違うのは、私たち夫婦はともにフルタイムの労働者であることだ。だから夫婦在宅勤務になると、家は家でなくシェアオフィスに変わる。リビングは私の仕事場になり、団らんどころではなくなった。

そしてこれが今回のレビューの本題でもあるが、家族皆の在宅時間が増えた結果、食費、光熱費だけでなく、ゴミが看過できないほど増えた。

夫婦完全テレワーク、3食家で食べる生活で、段ボールや発泡スチロールが床を占拠するようになった
コロナで出番が減ってしまったロボット掃除機

宅配の中身を取り出した後の段ボール、クール便の発泡スチロール、ペットボトル、家飲みの空き缶。そして髪の毛とホコリが床を占拠する。さらには在宅勤務に必要なPCやディスプレイなど電化製品が次々に導入され、何本ものケーブルが這うようになった。部屋が汚れやすくなったのに、ロボット掃除機の障害物が増えて、使いづらくなってしまったのだ。

中でも一番汚くなったのが息子の部屋だ。「部屋を片付けろ」「掃除機かけろ」と言うと、息子は最近よく流れているダイソンのCMを指し、「こういう掃除機があれば、掃除する」と答えた。

実はこれまで、ダイソンの掃除機は何となく避けてきた。吸引力の高さは何度となく聞いていたが、「そこそこきれい」であればいい私にとって、スペック過剰な家電だと感じていたからだ。しかしコード付き掃除機は面倒で、ロボット掃除機も活躍しづらい今、コードレス掃除機を使う価値が相対的に上昇している。息子の部屋も多少はきれいになるかもしれない、ということで6月下旬に発売されたダイソンのコードレススティッククリーナー「Dyson Digital Slim」をレビューすることにした。

Dyson Digital Slim(右)
メーカー名ダイソン
製品名Dyson Digital Slim(ダイソン デジタルスリム)
直販価格64,900円~97,900円(税込)。付属ツールにより異なる

従来のコードレス掃除機から25%軽量化

ダイソンから送られてきた箱を開けてびっくり、これは掃除機というより、組み立て型ロボットに近い。組み立てるとコードレス掃除機になったが、今や高機能掃除機は一種のロボットなのだ。

送られてきたデジタルスリムは、組み立て式ロボットのようだった

吸引力は「エコ/中/強」の3段階だが、私はエコしか使わなかった。スイッチを入れると手元の液晶ディスプレイに使用可能時間が表示される。フル充電時だとエコモードで約40分使用できる。たいていの人にとっては1回の掃除に十分な時間だろう。

実は、家電に詳しいママ友にも「デジタルスリムはダイソンのほとんど唯一の欠点だった“重さ”が解決されたから、浦上さんでも使いやすいかも」と勧められていた。掃除機の重量が従来比25%減り、1.9kgまで軽量化したという。確かに身長153cm、体重36kgで、向かい風が吹くだけで倒れそうになる私でも、ほとんど負担を感じない重さだった。

デジタルスリムは1階の和室に設置し、髪の毛や食材のくずを見つけたら掃除機を取りに行き吸い取る。コード付きの掃除機なら「ひと仕事」だが、コードレスだと必要な労力は5分の1くらいに感じた。大げさでなく、床の上に落ちていた輪ゴムを拾って片付けるのとそう変わらない作業感だった。

スイッチを入れると残りの使用可能時間が表示される

これまでは見て見ぬふりをしていた髪の毛やホコリをすぐに処理できるのは、精神衛生上大変よかった。我が家は夫の方がきれい好きで、ゴミに気づくのも早く、私の知らないところでストレスをためていた。ダイソンのデジタルスリムは、夫のイライラまで吸い取ってくれた。

掃除を諦めていた階段で大活躍

デジタルスリムがコード付きの掃除機やロボット掃除機と比べて圧倒的に強さを見せたのは、「階段」と「段差」だ。我が家は築60年の2階建て戸建てに住んでいるため、前回レビューしたロボット掃除機はこの2点が弱点で、最大のウリであるはずのマッピング機能も、段差のせいで使えなかった。

そんな階段掃除がクイックルワイパーと同程度の負担で済ませられるのは、地味に嬉しかった(階段周りは家族全員が諦め気味だった)。

段差と階段は付属のノズルを適当に選んで掃除
コード付きやロボット掃除機では諦めていた階段掃除に大活躍

ゴミを溜めるダストカップはクリアビンという透明なもので、どれくらい溜まっているのかも分かりやすい。最初は溜まる様子が見えるのが楽しくて溜めすぎてしまったが、2回目以降は都度都度捨てるようになった。1回ごとの掃除で捨てられるほど処理は簡単だ。さらにクリアビンは食器を洗うのと同じ感じで水洗いできる。

溜まったゴミはレジ袋に簡単に移せた
クリアビンやフィルターは普通の食器のように水洗い可能

付属のアタッチメントは掃除好き向き

掃除が苦痛で仕方ない私にとって、デジタルスリムは「ガイドメロディー」付きで歌うカラオケのようなものだった。苦手な人でも「これならできるかも」という親切さに満ち溢れている。

小型のミニモーターヘッドは、固形の物や家電のホコリなど細かい場所に。コンビネーションノズル、先端が細く長い隙間ノズルなどアタッチメントも豊富だったが、こちらは「こんな機能もあるのね」とソファの端っこやテレビボードに使ってみただけですぐ飽きた。掃除機が悪いのではなく私の掃除偏差値の問題なので、使いこなせる人には便利だと思う。

ソファの下まで届くヘッド

2週間のレビュー中、私はほぼ毎日デジタルスリムを使っていた。「休憩がてら気になる部分をささっと」という使い方だったので1回の利用時間は4~5分。

一方息子は、一度だけ自室で利用したが、「やっぱり、普通(コードあり)の掃除機の方がいい」との返事だった。我が家にはコード付きの普通の掃除機もあって、息子がそれを使っているところも見たことがないから、どんな掃除機にも言いがかりをつけて、汚い部屋で過ごし続けるのだろう。食器洗いやトイレ掃除など、ほかの家事は嫌がらず引き受けてくれるので、掃除を期待することはやめた。

物置になっている息子の部屋。掃除機をかける以前の問題だ

買うのを迷っていたらサブスクもあった

ダイソンのデジタルスリムがとても使いやすいことは分かった。勧めてくれた友人にもそう伝えると、「価格がそれなりでしょ。その点はどう?」と聞かれた。ダイソンのデジタルスリムは付属品によって複数のラインナップがあるが、一番安い「Dyson Digital Slim Fluffy Origin」が税込64,900円だ。前述したように私は複数のアタッチメントは不要なので、これで事足りる。

毎日使うものであることを考えると、高くないと思う。時短家電の代表格である自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」も卓上型食器洗い乾燥機も同価格帯で、ちょっといいスマホもそれくらいする。ただし我が家にはコード付きの掃除機があり、ロボット掃除機を今年初めに購入した。さらに掃除機に6~7万円使うか、となると躊躇する。

夫の在宅勤務があと数カ月続くなら、コードレス掃除機は必要だ。家族が家で過ごす時間が長くなると、きれい好きとは言えない私でも気になるほど、小さなゴミが増える。しかし夫が近いうちに出勤を再開してくれれば、今彼がテレワーク用に占領している個室に私の仕事道具を移し、リビングとダイニングの物を片付けてケーブルをなくすことで、少なくとも家族の共有空間では再びロボット掃除機を活躍させられる。

前述したように、我が家は「家がオフィス」となってくつろげない問題に直面しており、抜本的な解決のために、シェアオフィスを借りる、引っ越すなどの選択肢も夫婦の間で出ている。夫のテレワークが「緊急措置」である以上、あらゆることが流動的で、場所と予算を取る買い物はしにくい。

「無印良品が家具のサブスクリプションを始めたし、ダイソンの掃除機も一時的に借りられたらいいのになあ」と思っていたら、実はやっていたのだった。私が利用していたデジタルスリムは月2,500円、別のコードレス掃除機は月1,000円で借りられる(別途事務手数料必要)。詳細は公式サイトにて確認できる。

外出自粛で不要になったモバイルWi-Fiルーターを解約して、浮いたお金を掃除機のサブスクに充てると、私の予算・スペース問題はほぼ解決する。同じように迷っている人がいたら、サブスクサービスもぜひチェックしてほしい。

今後の見通しが立たない状況にサブスクという選択肢も

浦上 早苗

新聞記者歴12年。2010年に小1の息子を連れ中国に博士留学。その後現地での大学教員を経て2016年に帰国。息子が中1のときに初めて結婚し、シングルマザー生活に終止符を打つ。フリーランスで経済ジャーナリスト、翻訳、MBA教員など。公私ともに何でも一人でやってきたので、効率化とマルチタスクは得意分野ですが、家電偏差値は35くらい。取扱説明書を読む時間ももったいないので、直感で動かせる電気製品、デバイスであるかは購入の重要な決め手。 息子に、「公式戦のユニフォームと練習用のズボンとはだしで超ダサい」と言われた写真。