ぷーこの家電日記

第521回

思い出を重ねていくお気に入りのお重弁当

私はお昼にお弁当を持って行くのがあまり好きではない。「熱いものは熱く、冷たいものは冷たく食べたい」というのもあるし、自分が作ったものは、蓋を開けるときのワクワクもなければ味も分かりきっている。テレワークの日に家で前日の余り物を食べたりするのは全然平気なのに、お弁当になると急に気持ちが萎えるというか、残念な気持ちになるのだ。

“お弁当はワクワクするもの”という、自分の中でのお弁当期に対する期待値が高すぎるのだろうか? でも夫が「持っていく?」と時々作ってくれるお弁当は、前日の残りを詰めるだけだったり、おにぎりを握ってくれるだけだったりと、特別なものではないのだけれど、それだけでお昼の時間が楽しみで仕方がなくなるから、人が作ったお弁当の力って不思議だ。

お弁当は作るのも食べるのもあまり好きではないけれど、唯一作るのも食べるのも好きなお弁当がある。それがみんなでワイワイ食べる仕出し弁当というか、ピクニック弁当だ。人と一緒に食べるご飯が好きだし、その準備自体が大好きだったりもする。これを切っている間にこれを火にかけて……と、食材とスペースと時間を組み立ててクリアしていくのがパズルゲームのような感覚で、普段の弁当を作る作業とは全く違って楽しい。

リクエストがあればそれを作るけれど、何でも良いと言われると、自分がその時に食べたいものを気ままに作って詰める。全体の構成を考えてから作るタイプではなく、ただ自分の気分と欲望だけで進めていって最後にまとめるタイプなので、統一感もなければ作る量を間違うこともしばしば(笑)。

8年ほど前に、友人と「ピクニックに行こう!」という話になった。屋外でのんびりくつろぎながらただ好きなお酒を飲み、お弁当をつまみながらただお喋りをするだけの最高の時間だ。その時に「何か適当におつまみ持っていくね!」となり、その時我が家には丁度いい容器がなかったので、100均で使い捨てのパックでも買おうかなと思い、100均も入っている総合ショッピング施設に入った。

でもパックに入れるのも味気ないなぁなんて思いながら、他の店舗などもフラっと見て回っていた時に目に入ったプラスチック素材の3段のお弁当箱。ビビビっと一目惚れみたいに気に入った訳でもないけれど、大きさがちょうど良さそうだし、持ち運びしやすそうだし、収納も嵩張らなさそうだし、「ま、いっかー」みたいな気持ちでその3段のお弁当箱を買った。そんな軽い気持ちで買ったお弁当箱なのに、これがずっと長く大活躍している。何かと丁度いいのだ。

そして先日、久々に3段弁当箱の出番が! 今回は屋外ではなく、最近引っ越したという友人の家に弁当抱えて訪問することに。本当は「女子会のオシャレおつまみデリ重」みたいなコンセプトで、可愛くオシャレなお弁当を作りたいなぁと思っていたけれど、何を作ろうかなぁとゆっくり考えたり準備したりする暇が無く、食べたいものをバタバタ準備して出来上がったお弁当は、がっつり系の運動会の日のお弁当みたいになってしまった。

そして料理に統一感もなければ、彩りもかなり茶色に偏っている(笑)。でも、このカラフルな3段お弁当箱に詰めると、多少の彩りの悪さも何となくいい感じでまとまるので、やっぱりとても使いやすい弁当箱だ。

お弁当を抱えてウキウキしながら友人の家に到着すると、部屋だけじゃなくてテーブルセッティングもとってもオシャレでセンスが良く、飲む前からはしゃいでしまった。そのオシャレなテーブルに弁当箱を広げて並べると、自分もオシャレですみたいな顔して馴染んじゃう図々しさもこのお弁当箱の良さ(笑)。友人がサラダや前菜なんかを用意してくれ、もう1人の友人がこれまた素敵なデリやめちゃくちゃ美味しいエッグタルトなんて持ってきてくれたりして、とにかく豪華で華やか!

お互い忙しくて数年会えなくても、コロナ禍なんていう不測の事態で数年会えなくても、会って話すと全然久しぶりな感じもぎこちなさも無く、一気に時間が取り戻せるみたいな感じがとても嬉しい。まだまだ20代のままのつもりの友人がもう40歳になったって聞いた時は驚きすぎたし、恋バナなんかで盛り上がっていた昔から、健康のことや介護や老後の話なんかに話題もいつの間にか変わっていっているけれど、ずっと変わらないのが「気の置けない友人とたわいもない話とお酒とご飯」の楽しさだ。

もう楽しくて飲みすぎてテロンテロンに酔っ払って、「床って冷たくて気持ちがいいー!」なんて言いながら床に転がる寛ぎすぎ酔いすぎな私。お店でワイワイするのも楽しいけれど、こういうことができる家飲みが大好きなのである。友人の愛猫は私という酔っ払い相手に本気でシャーッと怒っていたけれど(笑)。ゴメンゴメン。

そして楽しかった1日はあっという間に終わってしまって帰路につく。「またねー!」という軽い挨拶が、実は簡単ではなく凄いことだと私たちは体験している。それでも「またねー!」が1番しっくりくる挨拶だ。

行き道の楽しみな気持ちと中身がギッチリと詰まって重たいお弁当箱もワクワクするけれど、帰り道の楽しかったなぁという余韻と軽いお弁当箱もとっても良い。最初そんなに思い入れもなく「ま、いっかー」で買った3段のお弁当箱。特段いいものでも何でもないけれど、年々段々と思い出も積み上がって、どんどん愛着が湧いてきた。

帰ってからお弁当箱を仕舞いつつ、「このお弁当箱すごく大活躍で便利だけど、いつ買ったんだっけ?」とSNSで過去の履歴を見てみたところ、前述の8年前のピクニックの記録と記憶が蘇ってきて、さらにそのピクニックの相手が今回遊びに行った友人だったというのも何とも感慨深い。次回こそもう少しオシャレな弁当作るぞ! 次回こそ飲み過ぎないぞ! と、どちらも全く期待できない2つの決意を固めつつ、またこのお弁当箱を使う近々を楽しみにしているのでありました。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。