ぷーこの家電日記

第505回

今年はコツコツと写経のように、フォント作りにいそしむのである

正月に休んでいたり、インフルエンザで寝込んでいたり、そんなことをしているうちに、2024年も1カ月があっという間に終わりそうになっていてかなり驚いている。「え? もう1月終わるの? もう2月が来るの?」とキツネにつままれたように唖然としてしまうのだ。

いつもならこの時期は「大寒だなぁ。お味噌でも漬けるか」とか、「今年の冬は白菜でいくつキムチ作っちゃう?」とか、家で過ごす時間をそれなりに楽しんで、「2月から始まる夏野菜の育苗、今年はこれとこれを」と家庭菜園の計画も立てて種とか買い揃えちゃう時期のはず! それが何一つやれていない。加齢のせいなのか、はたまたインフルエンザで寝込んだりして体力が戻っていないのか、夜更かししたりちょっとした踏ん張りがきかない。あぁ時間と体力が欲しいー! と、切に感じている1月の終わり。

このままじゃ今年も何もしないまま、あっという間に1年が終わってしまう。高尚な目標もなければ、こうなりたい! というような大きな野望があるわけでもない。毎日をなるべく楽しく過ごしていけたらいいなぁとは思うけれど、そのためにコツコツと努力するということができない私。

でも「今年も何もせずに1年が終わってしまった……」という年末の後悔は大きくそれは避けたい。ということで、2023年の終わりに2024年の目標として「1年かけて手書きフォントを作ってみる」という目標を立てていた。

たいして頭を使うわけでも、「成長した」という成果を残せるわけではないのだけれど、やったかやらなかったかのゼロイチの目標ではなく、「進捗率がわかる」、「それなりのボリュームがある」ことを何か一つ達成したいという、飽き性の私が時間をかけてコツコツとものを作ることを、今年の目標にしたわけである。

そして、今年の正月から早速制作を開始した。フォント作りの手順としては、ざっくりと下のとおり。

  1. 1文字1文字を手書きする
  2. PCに取り込んでIllustratorでトレースする
  3. フォントエディタに全文字登録する

カタカナひらがな英数くらいの文字だったらすぐに出来上がるけれど、それでは作ってもほぼ使えない。どうせ作るならば、漢字も第2水準くらいまでは網羅したい。手書きフォントを使ったチラシを作ったりお手紙を書いたりと、日常でちゃんと使えるフォントが作りたいのだ。ちゃんと販売するに耐えうるフォントセットを作るのだ! ということで、Adobe-Japan 1-3という規格のフォントを制作することにした。漢字7,014文字と非漢字2,340文字の合計9,354文字を[1]〜[3]の手順で地道に作るのだ。

手順を把握するために、最初に数文字全行程を辿ってみる。後は効率よく進めるために、工程[1]の、ひたすらに文字を書いていく。文字を書くのには、普段使い慣れているiPadとProcreateというアプリを使うことにした。一文字ずつレイヤーを分けて、ひたすらコツコツ。数百文字を1セットにして、ファイルを分けながら文字を書いていくことに。

1万文字近い文字を書くので、ちゃんと管理しないと大変なことになる。数百文字を書いた時点で一旦PCに取り込んで、工程[2]のトレースをして並べてみた。1文字ずつ書いているときはそこまで思わなかったのだけれど、取り込んで並べてみると「私って字が下手だなぁ」とげんなりした気分になる。第1の壁はそこだ。出来が悪いとやり直したくなるし、それでも上手くいかないとやる気が落ちて辞めたくなるのだ。これではいつもの3日坊主! ここは振り返らずに前に前に! とひたすら文字を書いているけれど、どうにもしっくりこないし書きづらい。

千文字ちょっと書いたところでそのやり辛さの原因が分かった。1文字ずつレイヤーを分けているから、手書きでサラサラ書くというよりも、書道の作品のようにカチッカチッと枠内にみっちり収めようとして、とても窮屈に感じてしまう上に文字に動きがないのだ。試しに包含紙のように枠を付けた画像を作り、そこに文字を書いていくと、ちょっと雑に書いても自然な手書きの感じで出てサラサラと書けた。せっかく書いた千文字を捨てるにはちょっと勇気がいるけれど、残り90数%の作業効率を考えると、戻った方が良いと判断。また0から作業を始めることに決めた。

方針転換は正解で、不要なストレス無く文字を書き進めることができている。写経をやっているような気分だ。そして書き進めながら「あ、この文字あの人の名前の文字だ」とか、「こんな文字初めて見た! 一生使うことなさそう」とか、「こんなにたくさんの文字を使いこなしているのってマジですごいな」とか、色んな発見があって、作業自体は静かで地味なんだけれど、頭の中は騒がしくめちゃくちゃ面白い。

「球って文字は意味と逆に漢字は全然丸みおびてないな」とか、「この漢字、バランス悪くない? このスペース何か埋めたくならない?」とか、「ここまで複雑にする必要あった?」とかとか、漢字へのツッコミ込みでの気付きとかもたくさんあって、思っていた以上にずっとずっと楽しい。

飽きて途中でやめてしまうのを避けるために「有言実行だ!」と今年の目標を宣言したけれど、1月の進捗はおそらく10%弱。振り出しに戻ったり寝込んで手を付けられなかったりした期間を考えると、まあまあいいペースで進んでいる気がする。これが出来上がったら、きっと今年私は「達成感」という大きなものを得られる年になるだろう。いい年にできるように前に前に! ここで止めたら恥ずかしい「宣言の力」で2月以降もひたすらに文字を書いていくのであります。あぁ、もう少し字が上手だったらよかったなぁ(笑)。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。