大河原克行の白物家電 業界展望
“創業100周年は多くの人に関係ない話”パナソニックが「Creative! セレクション」に込めた想いとは
2017年9月1日 07:30
パナソニックが、100周年を機に開発した第1弾の商品群として、ななめドラム洗濯乾燥機やロボット掃除機、ルームエアコンなど、13商品を発表した。これらの商品を「Creative! セレクション」と呼び、今後、第2弾以降の商品が順次投入されることになる。そして、新たなプロモーションとして、「Creative!」キャンペーンをスタート。モノづくりメーカーであるパナソニックが、コトづくりにも挑む姿勢を訴求する。「Creative! セレクション」と、「Creative!」キャンペーンに込めた思いを探った。
Creative! セレクション第1弾に13商品
パナソニックは、2018年3月に、創業100周年を迎える。アプライアンス社では、この節目に向けて、約3年前から、新たな家電商品の開発を進めてきた。
パナソニック 常務執行役員 CS担当 アプライアンス社上席副社長 日本地域コンシューマーマーケティング部門長の中島幸男氏は、「創業者である松下幸之助が打ち出した経営理念を、いまの時代の言葉に置き換えたのが、“A Better Life,A Better World”。よりよい暮らしを実現し、生活の質を高めるための商品づくりを目指して、商品企画や技術部門、マーケッター、デザイナーが、同じ方向性を持ち、形にしたのが、創業100周年を機に開発したCreative! セレクションである。ここには、若い人たちにもチャレンジしてもらった。AVや白物家電を持つ、総合家電メーカーだからこそ、開発できた商品」と胸を張る。
Creative! セレクションの第1弾として発表したのは、ななめドラム洗濯乾燥機「Cuble(キューブル)」やロボット掃除機「RULO(ルーロ)」、ルームエアコン「Eolia(エオリア)」、ヘアードライヤー「ナノケア」、メンズシェーバー「ラムダッシュ」、ポータブルテレビ「プライベート・ビエラ」、次亜鉛素酸空間除菌脱臭機「ziaino」、Jコンセプト紙パック式掃除機、ロティサリーグリル&スモーク、ホームベーカリー、パーシャル搭載冷蔵庫、電動アシスト自転車、補聴器の13商品。Cubleなどは新たなモデルを発表したが、そのうち、半数を超える7商品はすでに発表済みのものだ。
これらの商品をCreative! セレクションと称しており、「Change for the Next 100」をキーワードに、「提供価値の革新」と、「お客様とのつながり強化」という2つの観点から挑戦すると宣言。家電の本質的機能に、美しいデザイン、素材感、ストレスのない気持ちいい使いやすさ、使うときの喜びを加えることで、「感性価値の追求」や「モノからコト提案へ」とつなげ、「毎日を、ちょっとクリエイティブに」していく商品であることが、「Creative! セレクション」の基本コンセプトとした。
主要ターゲットは「デュークス」
実は、2017年1月にCES 2017の会場で、パナソニックの津賀一宏社長に、100周年記念商品について質問したことがあった。
その時に津賀社長は、「BtoCにおいては、我々がもっと画期的な商品や、もっとチャレンジした商品を出していかなくては、お役立ちを果たせないという気持ちがある」とし、「これまでにはないような尖った商品を、日本の市場に向けて出していきたい」と発言していた。津賀社長のそうした気持ちを踏まえながら開発をしてきたのが、今回発表したCreative! セレクションということになる。
パナソニックの中島常務執行役員は、「Creative! セレクションは、当社のプレミアム商品群のなかで、かなりの比率を占めることになるだろう」と期待する。
主要ターゲットとするのは、子供を持つ共働きの30~40代を指す「デュークス」だ。「共働き世帯へのお役立ち」を掲げ、「家事シェアでゆとり」、「おいしい7days」、「どこでも楽しむAVライフ」、「健康なわが家」の4つの観点から訴求する。
Creative! キャンペーンを担当したパナソニックアプライアンス社 日本地域コンシューマーマーケティング部門コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部クリエイティブ課主幹の高須泰行氏は、「家電を最も購入する層がデュークス。ここを主要ターゲットとしながら、幅広い層に対して訴求していくことになる」とする。
今回のCreative! セレクションには、補聴器のように、デュークスを狙った商品以外も含まれている。また、Jコンセプトの掃除機も、もともとはアクティブシニア層を想定して開発されたものであり、これもデュークスを狙っただけの商品ではない。つまり、デュークスを中心に置きながらも、幅広い顧客層を視野に入れているというのが基本姿勢だ。
そして、来年3月を目標に発表されるCreative! セレクション第2弾商品も、デュークスを狙うという基本路線は踏襲するものの、若い世代やアクティブシニア世代までを視野に入れながら商品展開することになりそうだ。
なぜ100周年記念モデルではないのか?
Creative! セレクションは、100周年を機に開発した商品群とするものの、「100周年記念商品」とは呼ばない。記者会見でも、記者の質問に答える形で、そのあたりに言及していた。では、「100周年記念商品」と呼ばない理由はなにか。会見では明確にはしなかったが、それにはいくつかの理由があるようだ。
ひとつは、100周年という節目は、パナソニックの社内的な節目であり、これを、対外的なマーケティング施策には活用しないと判断したことだ。津賀社長も、「節目において、よりグローバルに、より挑戦を広げていくことは大切だが、我々の100周年という話は、多くの人には関係がない話である」と語っていた。
趣向性の高い製品であれば、記念モデルの販売というのは効果的かもしれないが、白物家電のような日常的に利用する商品の場合には、記念モデルを打ち出しにくい点もその背景にはあるのだろう。
もうひとつは、100周年記念商品とした場合に、100周年の節目を過ぎると、この商品群の寿命が終了してしまうことだ。パナソニック 執行役員 コンシューマーマーケティングジャパン本部の河野明本部長は、「Creative! セレクションは、第2弾以降もある」とし、「2020年までは継続して出していく商品になる」とする。
つまり、Creative! セレクションの商品を、2018年以降も継続するためには、100周年記念商品という表現のままでは、2018年度以降は、過去の商品というイメージになってしまう。そうした観点から、100周年記念商品という言い方を避けたということが推測される。
モノづくりに加えて、コトづくりを強化
では、Creative! セレクションは、どんな使命を持った商品なのか。
パナソニックの河野本部長は、「パナソニックが、モノづくりの会社から、コトづくりの会社へと移行するなかで、白物家電単品だけで提案するのではなくは、モノ同士が結びつきあって、コトを提案するといったことを目指すのが、今回のCreative! セレクションである」と語る。
また、パナソニックの中島常務執行役員は、「パナソニックはここ数年、事業部だけのモノづくりではなく、カンパニー全体が連携し、さらに、製販連携で価値を伝えたいと考えてきた。すでに、エコナビやJコンセプト、ふだんプレミアムなど、キーとなる技術やコンセプトを統一した提案を行っている商品群もあるが、それをさらに進めたものが、Creative! セレクションである。こうした群製品によるマーケティングを進めやすい体制ができあがっている。エアコン、テレビ、冷蔵庫といったそれぞれの事業は大切だが、それぞれの事業部がひとつの思いのなかで、群商品として提案していくことになる」とする。
ただ、先にも触れたように、発表された商品は、半分以上が発表済みのものであり、改めてCreative! セレクションと位置づけたものである。そして、新たに発表された商品も、それほどカタチには変化が見られない。Creative! セレクションに位置づけられた冷蔵庫は、従来商品に比べても見た目のデザインには変化が感じられない。ロボット掃除機の「RULO」も三角のスタイルはそのままだ。そのカタチからは、津賀社長が言う「これまでにはないような尖った商品を、日本の市場に向けて出していきたい」という言葉を具現化したものとは言い難い。
だが、中島常務執行役員は、「RULOはカタチは同じだが、大きく進化しており、中身はぜんぜん違う。それは冷蔵庫も、洗濯機も同じだ」と語り、「ワクワクするようなものをお客様にも感じてほしい。そうした価値をしっかりと伝えていくことが大切である」と述べる。
たとえば、ななめドラム洗濯乾燥機は業界初の液体洗剤、柔軟剤の自動投入機能を搭載。計量や投入の手間を減らすことができるという。またRULOは、3種類の障害物検知センサーと位置認識カメラセンサーを、業界で初めて1台に搭載し、約2cm幅の障害物まで見分けて細かく掃除ができるように進化を遂げている。
そして、これらの商品を連動したマーケティングを行うことで、「毎日をちょっとクリエイティブにする」という住空間を実現することを目指すことになる。
「Creative!」キャンペーンで見えるパナソニックのこだわり
こうしてみると、第1弾のCreative! セレクションにおいては、少なくとも、個別の商品の機能を積極的に訴求したり、IoTのような切り口で商品同士の横連携を推進したりするというよりも、マーケティングの観点から、商品群として訴求することによって、Creative! セレクションを引き立たせることになりそうだ。これがパナソニックの言う、新たな群商品展開ということになるのかもしれない。
パナソニックは、Creative! セレクションの発表にあわせて、8月25日から、新たに「Creative!」キャンペーンをスタートさせている。このキャンペーンは、同社がCreative! セレクションの開発に、どれだけの強い思いを持って取り組んできたのかを示す上で、重要な意味を持つ仕掛けだと言えよう。
むしろ、「Creative!」キャンペーンを通じて、商品に対するパナソニックのこだわりが見えてくる。一見すると、従来の商品とは大きな変化がないように見えるが、「Creative!」キャンペーンに登場するパナソニックの社員の声を聞くと、Creative! セレクション商品の意味がじわりとわかってくる。
100年の感謝と、今後の100年に向けた想い
「Creative!」キャンペーンでは、テレビCMや新聞広告、特設サイトなどを通じて、パナソニックが取り組む「次の100年をつくろう」をコンセプトとした、モノづくりとコトづくりに関する発信を行っている。
パナソニックアプライアンス社日本地域コンシューマーマーケティング部門コンシューマーマーケティングジャパン本部コミュニケーション部WEB&宣伝課の古長亮二担当課長は、「Creative! キャンペーンは、これまでの100年に対する感謝を伝えるとともに、これからの100年に向けた想いを伝えるものになる。ノスタルジーにふけるのではなく、パナソニックに対する期待感や、将来性も伝えていきたいと考えた」とする。
その象徴的な映像が、120秒のスペシャルテレビCMだ。
綾瀬はるかさん、西島秀俊さん、遠藤憲一さん、水原希子さん、駒井蓮さんといったパナソニックのイメージキャラクターのほか、このCMソングを歌っているアンドリュー・マクマホンさんが出演。さらには、創業者である松下幸之助氏や、パナソニックの津賀一宏社長なども登場する。ここでは、創業当時の商品や、100周年を記念して発表した商品など、約350種の家電が登場する。
また、これとは別に2種類の30秒の映像を制作。モノづくりとコトづくりにフォーカスした「MONO・GATARI/情熱」や「MONO・GATARI/人」と題した30秒の映像により、開発者の苦悩と喜びを表現した。
「つくることをはじめて100年」というメッセージとともに、「つくることは生きがい」という言葉のほか、つくることにおいては「対立」や「失敗」「矛盾」「孤独」が生まれる一方、つくることに「遊び」の要素を盛り込んだり、「未来」につながることも表現した。そして、「次の100年を作ろう」、「次の100年へと続く、開発者たちのストーリー」というメッセージとあわせて、「時代とともに変わり続ける暮らしに、つねに寄り添う家電を」という、パナソニックのモノづくりの基本姿勢を示す内容になっている。
「パナソニックにとって、モノを作るのは当たり前のこと。だが、冷蔵庫を作っているメーカーだから、単に冷蔵庫を作り続けているのではなく、冷蔵庫を通じて、新たな価値を作るところに意味がある。そうした気持ちで、100年間に渡ってモノづくりをしてきたパナソニックの姿勢を、映像のなかに込めている」と、パナソニックアプライアンス社日本地域コンシューマーマーケティング部門コンシューマーマーケティングジャパン本部コミュニケーション部クリエイティブ課の新宮俊夫AV担当課長は語る。
この考え方は、商品群およびキャンペーンのキーワードとなった「Creative!」に対する基本姿勢でもある。「Creative! の名称を決定したのは2016年8月のこと。アプライアンス社が、メーカーとしての意志や決意を表現した言葉がCreative! であった」と、新宮AV担当課長は続ける。
パナソニック社員の情熱を伝える「Creative! ストーリー」
一方で、モノづくりとコトづくりを支える人にフォーカスし、パナソニック社員の情熱や想いを映像のなかで表現する「Creative! ストーリー」も制作した。
これは、「Creative!」キャンペーン特設サイトで展開しているもので、パナソニックのイメージキャラクターである綾瀬はるかさん、西島秀俊さん、遠藤憲一さん、水原希子さんが、100周年にあわせて発売される商品に携わったパナソニック社員と対談する映像であり、まずは4本が公開されている。すでに約20本が制作されており、来年までに約30本が公開される予定だ。
たとえば、パナソニックの女性向けドライヤーの商品化に関わった「チーム・パナソニックビューティ」が登場する映像では、「人の仕事に口を出す。私たちの摩擦が、商品を磨く」をテーマに、水原希子さんのインタビューによって、いい商品を生み出すために、社員同士が遠慮なく指摘しあう様子が明らかになる。
映像の作り手側でありながら、この映像にも参加したパナソニックアプライアンス社日本地域コンシューマーマーケティング部門コンシューマーマーケティングジャパン本部コミュニケーション部クリエイティブ課の齊藤美和子主幹は、「パナソニックは大企業というイメージがあり、どうしても画一的なイメージで見られることも多い。一方で、専業メーカーやベンチャー企業の力強い突破力が注目されることも多い。だが、大きな企業だからこそできる面白さがパナソニックにはあり、それぞれの分野の専門家がプライドを持って作り上げる商品は、総合電機メーカーであるからこその強みでもある。映像を通じて、外にはあまり見えていなかったパナソニックの姿を伝えたかった」とする。そして、「社員同士の摩擦をあえて見せるのもこれまでにない取り組み」と笑う。「Creative! ストーリー」では、パナソニックの真の姿を表現することにこだわっているのだ。
そのほか、すでに公開されている映像では、パナソニックのメンズシェーバーの開発において、65万回の試験の末にリスクを発見したという開発者の努力が、西島秀俊さんのインタビューによって明らかに。また冷蔵庫では、「大きくしないで広くする。それは矛盾との闘い」として、外側を大きくせずに庫内を大きくするために、開発者が日夜取り組んでいる様子を、綾瀬はるかさんが迫る内容になっている。
そして、「Creative! ストーリー」には、開発部門のエンジニアだけでなく、マーケティング部門やデザイナー、品質管理部門、コンタクトセンターの社員たちも登場する予定だ。ここでは、コンタクトセンターの社員が、常に背筋を伸ばした姿勢で対応している様子などが紹介されるという。電話の向こう側の見えない部分にも気を遣っているパナソニックならではの姿勢が明らかになる。
「Creative!を実現するのは、開発者だけではなく、マーケティング部門、品質管理部門、コンタクトセンター部門など、すべての社員によって実現されるものである。そして、今回のCreative! ストーリーの映像は、クリエイティブ課の社員だけで作ったものではない。パナソニックの多くの社員が一緒になって作り上げたものである。社員が中心になって、次の100年に向かって、家電の将来性や、パナソニックの将来性を語ることができた」(パナソニックの新宮AV担当課長)
実は、これらの撮影は、映像に登場する社員なども含めて、約300人が見学するなかで行なわれたという。それも社員が意識を共有化するために、あえて行なった仕掛けのひとつだ。Creative!は、パナソニック全社のメッセージではなく、白物家電やビューティ商品、AV商品などを担当するアプライアンス社が打ち出すメッセージである。
「創業者である松下幸之助をはじめとする先輩たちをリスペクトしながらも、次の100年に向けて、それを超える商品と価値を生み出していくことを、アプライアンス社の全社員が宣言するものになる」(同)というわけだ。
A面とB面が存在する「Creative!」キャンペーン
実は、パナソニック社内では、「Creative!」キャンペーンにおいて、「A面」と「B面」という言い方が存在する。
どちらがA面であり、どちらがB面であるという正式な定義はないようだが、ここでは、これらの映像制作を担当したパナソニックのコンシューマーマーケティングジャパン本部クリエイティブ課に断りを得て、便宜上、A面とB面を区分けするが、A面はモノづくりとコトづくりにフォーカスし、120秒テレビCMを中心に情報を発信。B面はモノづくりとコトづくりを支える人にフォーカスし、「Creative!ストーリー」によって展開していくものになる。
パナソニックアプライアンス社 日本地域コンシューマーマーケティング部門 コンシューマーマーケティングジャパン本部コミュニケーション部クリエイティブ課の高須泰行主幹は、「メーカーとしてのモノづくりを忘れずに、そこにコトづくりを加えていく。そして、それを支える人たちにフォーカスし、これまでにはなかったパナソニックの姿を発信することになる」と話す。
パナソニック・津賀社長が突如撮影に参加?
もうひとつ、Creative!キャンペーンへの取り組みで触れておきたいことがある。それは、デザインシンキングの手法を数多く取り入れていることだ。
今回のCreative!キャンペーンでは、パナソニックが取り組んできた従来のワークフローや決裁プロセスなどにこだわることなく、現場主導型で取り組んでいったことが多かったという。これはパナソニックにとっても、大きな挑戦のひとつであったといえる。
たとえば、「Creative!」キャンペーンでは、1964年にLIFE誌に掲載された松下幸之助氏と数々のパナソニック商品が並ぶ写真をモチーフにした、100周年の新たなカットを撮影した。このなかには、綾瀬はるかさん、西島秀俊さん、遠藤憲一さん、水原希子さんといったパナソニックのイメージキャラクターとパナソニック社員が一緒に写っているが、ここにさりげなく、津賀一宏社長も参加している。
この撮影に津賀社長の参加が決定したのは、撮影10日前のことだ。偶然にも津賀社長の日程が空いていることがわかり、秘書を通じて依頼し、参加が決定した。これまでのパナソニックのやり方であれば、まずは社長の日程を押さえ、そこからスケジュールを合わせていくというやり方であっただろう。
また、制作を担当するクリエイティブ課からの依頼も、徐々に組織を上っていき、数多くの決裁を経てから、社長の参加が決定することになるというのが基本だ。そのため、多くの手続きと時間が必要だったといえよう。だが、こうしたプロセスを踏襲することなく、社長の撮影参加を短期間で決定した。しかも、写っている場所は中央ではなく、右の上の方であり、探さないとわからない。
これは、デザイナーの発想や考え方、プロセスなどの手法を取り入れることで、課題解決などを図るデザインシンキングの手法を用いたもの。それ自体も注目に値するが、同時に、Creative! キャンペーンが社員中心で進められていることがわかるエピソードでもある。
毎日をちょっとクリエイティブにする家電を投入する
「Creative!」キャンペーンでは、次のような言葉を使っている。
「時代とともに変わり続ける暮らしに、つねに寄り添う家電をつくること。それが私たちの想い。挑戦し、失敗し、挑戦する。その繰り返しから生まれる家電が暮らしをもっと豊かにすると信じています。来年、創業100周年を迎えるパナソニック。毎日をちょっとクリエイティブにする家電で、これからの暮らしに、もっとゆとりを、おいしさを、健康を、心おどる体験を。次の100年をつくるために、私たちの挑戦は続きます」
今回のCreative! セレクションの商品群をみると、残念ながら、見た目のインパクトは弱い。冷蔵庫は冷蔵庫のカタチであり、洗濯機は洗濯機のカタチだ。CubleもRULOもユニークなデザインではあるが、すでに見慣れたデザインになっている。これまでにない斬新なデザインになっているのは、ロティサリーグリル&スモークぐらいだろう。
しかし、Creative! セレクションへの取り組みを見ると、パナソニックのモノづくりの手法が変化し、コトづくりへと挑んでいること、そして、マーケティング手法やキャンペーン手法も変化していることがわかる。その点で、Creative! セレクションは、100周年記念モデルという一過性の商品づくりではなく、パナソニック全体が変化していることを感じることができるものだともいえる。だからこそ、発表済みの製品もコトづくりという取り組みの成果をあげた商品として、Creative! セレクションのなかに入れたのだろう。
パナソニックにとって、Creative! セレクションは、「変化」を象徴する商品であると感じた。そうした広い視野から捉えれば、創業100年を迎えるパナソニックにとって、Creative! セレクションは、商品の外見以上に、大きな意味を持つ商品群だといえる。