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【和菓子歳時記4】江戸時代に花開いた夏のモチーフ「朝顔(あさがお)」
2016年 8月 10日 06:30
夏休みの宿題で「朝顔の観察日記」を付ける子どもさんも多いですね。今回は、和菓子でも夏のモチーフに多く使われる「朝顔」を紹介します。比較的育てやすく、すくすく育つ朝顔は、江戸時代に庶民の間で栽培ブームがあったそう。そのころから身近なお花なのですね。
和菓子でも夏のモチーフとして人気の「朝顔」
朝顔は和菓子でも人気のあるモチーフで、あじさいが終わる6月半ばから8月半ばごろまで販売されます。6月に真夏のモチーフは早いと思われるかもしれませんが、旧暦では4月から6月が夏のため、実際の気候より早くお店に並ぶのです。円形の花を模して、練り切りあんを丸く形成することが多いですが、円錐形でつぼみの形を表現したものも。また和菓子屋ごとに、寒天を原料とする錦玉羹や求肥などに意匠を凝らしたりと、さまざまな素材や形で「朝顔」が表現されています。
色付けと成形で季節を表現する和菓子素材「練り切りあん」
和菓子の材料「練り切りあん」は、白テボウ豆や白インゲン豆を原材料とした白あんへ、山芋やもち粉を加えて練り上げたもの。色付けと成形で季節を感じさせる生菓子を作っていきます。この「練り切りあん」で作った生菓子を「練り切り」と呼びます。和菓子屋で作る本格的な練り切りあんは、素材の下準備を含めると練り上げまでに2日間掛かります。つなぎに白玉粉などを使って手軽に作れる練り切り風のあんのレシピなどもネット上にあるようなので、ご自宅で作ってみても楽しいと思います。
江戸時代の庶民に愛されたお花
日本での朝顔は、平安時代から奈良時代に遣唐使が中国から種を持ち帰ったことが始まりとされています。当時は、薬用植物として知られ、種子を下剤や利尿剤に利用していたようです。その後だんだんと観賞用に栽培されるようになり、江戸時代には庶民の間で朝顔栽培ブームが起こります。ブームによって珍しくて美しい突然変異の株が多数発見され、高価で取引されたため、庶民の園芸愛好家だけでなく武士の内職としても栽培されたという話しも。大輪咲きの朝顔などは、この江戸時代朝顔ブームで作られたものだそう。今でも栽培されている朝顔がたくさんあるようです。
夏の和のモチーフには欠かせない朝顔、実は秋のもの?
浴衣やうちわの柄として、夏の和のモチーフによく用いられる朝顔ですが、旧暦では立秋の翌日(新暦の8月7日前後)から秋になってしまうため、実は秋の季語に分類されています。和菓子の季節も旧暦に合わせて展開するので、本来は秋のモチーフになりますが、実際は真夏なので現代の気候にあわせて8月後半ごろまで夏のお菓子として販売するお店が多くなっています。
まとめ
朝顔を眺めていると夏休みの思い出がよみがえってきて、とても懐かしい気持ちになりますね。時間が経つとしぼんでしまうことから、花言葉は「儚(かはな)い愛」ですが、清々とした美しさと生命力を感じさせます。さらに江戸時代に栽培が盛んになった理由の一つに、早朝に咲く朝顔に江戸庶民が自身の勤勉さを重ね合わせていた、という説もあるそうですよ。