老師オグチの家電カンフー

散歩中のメモに便利なAIレコーダーMemoket 散漫なつぶやきも整理してくれる

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
Memoketの「Memoket Gem」。10月に正式に日本上陸した。価格は31,980円

歩いているときにアイデアを思いつくことってありませんか? 運動中は血流がよくなり、周囲の環境も刺激となって、発想が出やすくなるらしいです。歩きながら書く内容を考える作家も多いですし、私なんぞもスマホの音声認識機能を使って原稿を歩きながら書くことが増えてきました。

ただ、まとまった文章を書くには、ある程度集中する必要がありますし、スマホを見ながら歩くのは場所によっては危険です。まぁ、最近のAIレコーダーは、要約機能が当たり前になっているので、まとまりのない話し方をしても、内容をきれいに整理してくれます。だったら、過去に録音した内容を横断して整理してくれたらいいのに。そう思っていたところに登場したのが、「Memoket Gem(メモケット ジェム)」です。

Memoket Gemは、ソフトキャンディーを大きくしたような形状で、重量は約11g。リストバンドが付属し、健康管理に使うスマートバンドのように腕に装着します(別売でペンダントやピンクリップのアクセサリーも用意)。

操作は非常にシンプルです。ボタンを押すと1回振動して録音の開始を知らせ、録音中は赤のインジケーターライトが点灯します。もう1回ボタンを押せば、2回振動して録音終了を知らせます。

腕に装着しておけば、歩いているときはもちろん、トイレに入っているときなど、アイデアが降りてきやすい瞬間にすぐ録音できます。スマホを取り出したり、アプリを起動する必要はありません。「後でメモしておこう」と思って、その行為や内容自体を忘れてしまうことも防げます。

リストバンドを装着したところ。録音開始・停止に使うボタンは腕側、マイクやインジケーターライトは手首側にくる。Apple Watchのバンドに取り付けられるタイプも用意されている
充電は付属のケーブルにて行なう(本体をリストバンドに入れた状態でも充電可能)。連続録音は最長20時間
IPX5の防水性能を備え、日常的な水濡れには対応している

さて、散歩中のアイデアメモにどのくらい使えるのか。マイクはノイズキャンセリング機能を搭載し、距離は最大5mとされていますが、おそらくこれは屋内での録音を想定した数字でしょう。そこで、車が行き交う道路で、どの程度実用的かを試してみました。

本体を口元に近づけて、ボソボソと小声で話してみたところ、ほぼ完全に文字起こしされます。しかし、腕を下ろして普通に歩きながらでは、文字起こしできませんでした。大きな声で話せば音を拾うのかもしれませんが、周囲に変な目で見られるので、通常は避けたいところでしょう。口元で話すか、手を自由にしたいなら胸元にクリップで固定するのが最適だと思われます。

口元に近づければ喧騒の中でも音声を記録できた
オプションでピン・クリップとペンダントのアクセサリーも用意される(ともに3,200円)

AIレコーダーに記録する際、話す内容を順序立てて整理する必要はありません。AIの要約機能が進化したため、断片的な情報を散漫に話しても、いい具合にまとめてくれるからです。思いつきをダラダラとしゃべるだけで、AIが整理してくれて、何ならそのまま企画書などに使えるファイルを作成してくれます。

文字起こしデータのほか、「概要」「要約」「1ページまとめ」と最大3種類に整理され、目的用途に応じて使い分けられる

さらに、Memoket Gemが搭載する独自のAIエンジン「KITE」は、過去に録音した複数の会話データを相互に紐付けて記録・整理してくれます。毎週「週間レビュー」として、1週間分の記録をまとめてくれるし、「Memochat」に質問すると、過去の複数の会話を参照して回答してくれます。

日々の記録の蓄積が力になるわけで、たとえば日記をこれで書けば(音声入力すれば)、その週に何があったかをまとめてくれるし、体調や精神状態の傾向を分析することも可能です。仕事なら、抱えているトラブルや上司への愚痴などを漫然と吐き出しておくだけで、AIが要点を整理してくれて解決策まで提示してくれる世界です。

1週間分の記録をまとめてくれる「週間レビュー」

あと、複数の言語が混在していても、しっかり両方を文字起こしできるのもMemoket Gemのメリットです。企業の発表会などでは、外国語と通訳による日本語が混在するシーンが多いのですが、従来のAIレコーダーでは、あらかじめ指定した言語しか文字起こしできないことが多かった。最悪、まったく文字起こしされないケースもあったので、これはかなりありがたい。

さらに驚いたのは、話者の自動認識です。声紋ではなく、文脈から判断しているようで、たとえば会話の中に、「どうも、<名前>です」といった発言があると、その名前が文字起こしデータにタグ付けされます。軽く自己紹介してもらえば、音声を聞き直すことなく話者の名前を割り当てられますね。

ちなみに、ニュース映像のトランプ大統領のコメントから「ドナルド・トランプ」を、スティーブ・ジョブズの伝説のスピーチからは「Steve Jobs」を認識、自動でラベリングしました。「私がトランプです」とか言わないのにですよ。まさに、スーパーインテリジェンス! ジョブズも草葉の陰でたまげているでしょう。

複数言語が混ざる音声でも両方を文字起こし可能。話者も文脈から自動で認識し、ニュース音声から「ドナルド・トランプ」とタグ付けした
スティーブ・ジョブズの伝説のスピーチ音声を1分半ほど聞かせただけで、AIが自動で話者の名前を認識
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>