老師オグチの家電カンフー

袋タイプの低温調理器なら職場でもサラダチキンが作れるぞ!

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
完成したサラダチキン

我が家で4年ほど使用してきた低温調理器が壊れました。保証期間はとっくに切れているので、新たな低温調理器を探し中です。低温調理器といっても、様々なタイプがあり、それぞれ一長一短ありますが、今回は袋タイプの低温調理器を試してみることにしました。

アイリスオーヤマの「ポケットシェフ」は、その名の通り、本体がポケット状で、内側のフィルムヒーターで食材を直接加熱する仕組みです。すごいシンプル。水も鍋も必要ありません。

アイリスオーヤマ「低温調理器 ポケットシェフ PLTC-M01」。本体は230×240×10mm(幅×奥行き×高さ)、重量約240gと収納性に優れる

さっそく作ってみたのが、わが家の定番サラダチキン。鶏むね肉を耐熱の密閉袋に入れて、本体にセット。公式レシピに則って80℃×120分に設定します。設定温度の割りには調理時間が長いと感じますが、水を使わないので予熱はあっという間に完了します。

サラダチキン作りに便利なハーブ塩。エスビー食品の「マジックソルトオリジナル」
マジックソルトを鶏むね肉にすりこんで、耐熱密閉袋にイン(真空シーラーがあると便利です)
本体の奥まで入れたらファスナーを閉める。薄型のフィルムヒーターは、同社のヒーター付きウェアから着想を得ているという
操作はシンプルで、温度と時間を設定し、スタートボタンを押すだけ。予熱中は表示が点滅し、予熱が完了すると調理時間のカウントダウンが始まる。あとは酒でも飲んで待つ

少し高めの温度設定なので、肉が固くなるんじゃないかと予想していましたが、そんなことはありませんでした。コンビニなどで売られているサラダチキンをかなりジューシーにした感じで、家族にも好評でした。

続いて作ったのはローストビーフ。公式レシピでは、牛ももブロック肉のサイズの目安は「5cm以内200g」とあります。ところが、肉のハナマサで購入してきた肉は350g以上あり、このままだとポケットシェフに入りません。そこで、カットして袋に収めることにしました。

最初に塩・コショウとおろしニンニクをすりこみ、フライパンで軽く焦げ目をつけてから分割することで、無事ポケットシェフに収まりました。

お次はローストビーフ。買ってきた牛モモブロックが約350g超なので、このままだとポケットシェフに収まり切らなそう
まずは、塩コショウとおろしニンニクをすりこみ、オリーブオイルを引いたフライパンで表面に焼き目を付ける
分割して密閉袋に入れることで、ポケットシェフに収まった。公式レシピを無視して70℃×240分で調理開始

公式レシピの温度・時間設定は、80℃×150分です。これまでは60℃台で作っていたので、弱気すぎる(安全方面に大きく振っている)設定だと思い、70℃×240分で調理を開始(これでも余裕を持ったつもり)。ちなみに、ポケットシェフの設定可能温度は40℃から80℃で、5℃刻み。設定可能時間は1分から9時間となっています。

結果、この設定でもしっかり中まで火は通っていましたから、次回は60℃台で挑戦したいと思います。まぁローストビーフに関しては、低温調理器の性能よりも、肉のクオリティーがものを言う世界かもしれません。元の肉が高級ならば、火の通りが甘かろうと、通り過ぎてようと、美味しいですからね。

ローストビーフの完成。余裕で中まで火は通っています

さて、我が家ではこれまで鶏ハムなどを作った後のお湯で、温泉玉子も作っていたのですが、ポケットシェフのレシピには載っていません。試しに冷蔵庫の卵を3つほど、70℃×120分加熱してみましたが、全く生卵のままでした。

卵は球体なので、熱の伝わりが悪いんでしょうね。袋に水を一緒に入れれば調理可能かもしれませんが、水漏れが怖いので避けたいところです。

ここまで見てきたとおり、調理できる容量が限られていることと、温泉玉子を作るのが苦手な点は、水を使う低温調理に対して弱いところです。比較的パワーが弱め(定格消費電力90W)なので、調理時間も長くなりがちです。

とはいえ、非常にコンパクトで音もなく調理できるのは大きなメリットで、リモートワークをしながらでも気兼ねなく使えますし、極端な話、会社のデスクで調理しても誰にも気づかれないでしょう。定格消費電力が90Wってことは、AC電源が取れる自動車やポータブル電源でも使えるわけで、アウトドア含め場所を問わず低温調理ができちゃいます。

【お詫びと訂正】(12月18日10時10分)
記事初出時、本体のフィルムヒーターがアイリスオーヤマの電熱ベストに使用されていると記載しておりましたが、実際には使用されていませんでした。お詫びして訂正いたします。

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>