老師オグチの家電カンフー

時間と電波に追われる現代人のブレまくる電波時計選び

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
新たに購入したセイコータイムクリエーション「KX268K」

なるべく「こだわり」を持たずに生きていきたい。

そう思っているのですが、なかなか難しい。それを思い知らされたのが、時計選びです。

先日、仕事部屋の壁に掛かっている電波時計(セイコー「KX301H」)が止まりました。電池交換したものの電波を拾わず、リセットボタンを連打するも、ついには秒針が微動だにしない状態に。2006年発売の製品ですが、いつ購入したものかは確認できませんでした。メールの履歴を検索するもヒットせず、購入した可能性が高いヨドバシ.comも購入履歴は2019年までしか遡れず。たぶん2010年前後の購入だと思われるので、10年以上は使った計算になります。壊れることで時の長さを告げる時計かな。

今は、もう、動かない〜セイコー「KX301H」。縁の部分も透明なので壁の高いところに掛けていても視認性が高くてお気に入りだったのですが……

2〜3日時計なしで過ごしてみましたが、時間を確認するために壁方向を見上げる習慣が身についていて、そのつどがっかりするので、新しい電波時計を買うことに。

条件はさほど多くないつもりです。1から12まで全ての数字が読みやすく配置されており、針がシンプルで見やすく、秒針がカチカチ言わない「連続秒針」であること。メーカーにも特にこだわりはありません。

ただし、電波時計であることだけは必須です。なぜ電波時計にこだわるかといえば、スマホで時間を確認することが増えたから。スマホより不正確なのは許せないという気持ちと、スマホの画面にはない秒単位で時刻を知るために必要としています(混み合う予約受付の電話にジャストの時刻にかけるなど)。

しかし、うちのリビングの時計は10分ぐらい進んだままです(電波時計に変えたいが奥まった場所なので電波を拾いにくい)。家人などは「進んでいた方が予定に遅れずに済む」と言って直そうとせず。まぁ、価値観は人それぞれです。

ヨドバシ.comでもかなりの種類がある電波時計ですが、なかなかこれといった決め手に欠けます。SMAPのヒット曲になぞらえれば、「いろんな花があるけど、どれもこれも、少しずつ気に入らないね」みたいな。腕時計と違い、気分で交換するものではなく、壁に掛けっぱなしなので、そこそこデザインにもこだわってしまう。

結局選択したのは、同じセイコー(セイコータイムクリエーション)の「KX268K」。

シンプルで連続秒針なので、後悔はしないかなと。実際届いた製品を見ると、ザ・セイコーという感じの文字盤デザインで、アルミの金属枠の質感も高いです。そして、電池を入れてから電波の受信も高速。なかなか感度も良さそうです。

ただし、これまで使ってきた「KX301H」に比べると、サイズが少し小ぶりになったので、視認性に若干の不満はあります。まぁこれもすぐに慣れるでしょう。

新旧の違い。数字のサイズと枠の有無で、前の方が見やすかった

「KX301H」の在庫が市場にあるうちに買い直すことも考えたのですが、設計が古くてまた故障に見舞われても嫌なので断念。同じ筐体でメカ部分(ムーブメント)を新しくした製品を出してくれませんかね。

普段「時計なんて時間が見られればいいんだよ」とか言っていても、いざ選ぶとなるとこのザマです。電波時計と違ってブレまくり。

いやはや、人生からこだわりをなくすのは難しいものです。

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>