老師オグチの家電カンフー

カメラに残っていた18年前のフィルムを現像したらエモかった

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
昔のフィルムを現像に出す旅に出た

昔使っていた古い一眼レフカメラが防湿庫から発掘されました。キヤノンの「EOS 5 QD」。発売日は1992年11月で、おそらく93年ぐらいに購入したものです。プライベートはもちろん、雑誌の取材など仕事で使っておりました。まだデジカメが出てくる前、Windowsは3.1の時代です。

中にフィルムが残っていましたが、電池切れで動作せず。新たに電池(リチウム電池の2CR5)を購入してセットしたところ、ディスプレイが表示されました。デジカメ世代には意味不明かもしれませんが、写真に日付を入れるクオーツデート機能はまた別の電池(CR2025)で動いており、こちらも切れています。シャッターを切ったところ、すでにフィルムを使い切っていたらしく、「ウィーーーン」と懐かしい音をさせながら巻き取られていきました。

キヤノン「EOS 5 QD」。中古の相場は数千円ぐらい
リチウム電池の2CR5を交換したところ
電源が入った! シャッターも切れる
残っていたフィルム

このフィルム、一体何が写っているのか自分でも分からず、現像・プリントに出してみることにしました。とはいえ、家の近所にあった写真屋さんはすでに廃業しています。徒歩で30分ほどの駅にあるパレットプラザへ。しかし、ここの店には現像の機械がなく「仕上がりまで1週間かかる」と言われ、さらに電車に乗って別の店へ。デジカメやスマホの普及を思い知らされます。

2駅隣のパレットプラザで現像とプリントをお願いする際、「軽く10年以上前のフィルムなので、何も写っていない可能性もあります」と言ったところ、「真っ黒なものはプリントしないようにしますね」と対応いただきました。写っているのがゼロだったら恥ずかしいな、黒歴史の写真だったらどうしよう、と思いながら待つこと1時間。

受け取った写真は、周囲が白っぽくなっていましたが、小さい頃の我が子の姿が確認できました。おそらく2004年か2005年、今から18年ほど前の写真です。もう上の娘なんて成人してますからね。フィルムってタイムカプセルだなと、富士フイルムの技術力にも感嘆することしきり。白っぽさも、ある種のエフェクトと考えられなくもない。ケミカルなエフェクト。娘にLINEで送ったら「エモいwwwww」という反応が返ってきました。まぁいろんな意味でエモいよね。

現像されたプリント。周囲が白っぽいが思い出は伝わる
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>