老師オグチの家電カンフー

やる気スイッチが壊れた凡人の集中力マネジメント

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
使っていた歴代キッチンタイマー(の一部)。右の初代タニタ「ぴよぴよタイマー」は、タニタさんにも残っていないというが、うちにはあるぞ!

仕事とは何だろう? なんて考えるだけ無駄です。偉い人、成功した人の仕事論も、凡人にはほとんど役に立たない。そう思う凡人です。

凡人としては、目の前の仕事をこなすだけです。しかし、どうにもやる気が起きない、集中力が続かない。そんな凡人たちに向けてこの原稿は書いています。

なぜ仕事のやる気が起きないのか。それは、やらなくてもすぐには死なないから。もしくは、大きな成果が見えないから。拳銃を頭に突きつけられて、「1時間でこの仕事を終わらせないと撃つ」と言われれば、経験したことがない集中力が出るでしょうし、「1時間でこの仕事を終わらせたら1億円あげます」でも同じレベルの集中力が出るでしょう。しかしながら、われわれが普通やってる仕事は、罰も褒美もそこそこです。やっても大した利益にならないし、やらなくても大きな損失が出るわけではない。

とくに上司に厳しく怒られることがないフリーランスや自営業者、子供にとっての勉強は、その傾向が強い。そこが罠で、長期的に見れば大きな差となるのでしょうが、凡人だからそこを乗り越えるのは難しい。

じゃあ、どうしましょう。心理学的には「やる気は実際にやり始めないと発生しない」と言われます。これは事実で、手を付けてないと、いつまでも「やりたくないな〜」という気持ちが頭にありますが、実際に始めると、「作業が楽しい」まではいかなくても、やっている状態が普通になり継続しやすくなる。没頭できてしまうことも、たまにあります。

しかし、ある程度で「集中が途切れる→やめる→やる気が起きなくなる」を繰り返してしまうことも多い。「やる気は実際にやり始めないと発生しない」ので、やめるとまたやる気がなくなるジレンマ……。

そこで、自分に縛りをかける方法が、キッチンタイマーを使った方法です。「ポモドーロテクニック」とも呼ばれますが、例えば、「25分作業→5分休憩」を繰り返します。1時間に2セット、3時間に6セット集中することになります。自分はもうちょっと長く集中したいので、「45分作業→15分休憩」にすることが多かったです。

キッチンタイマーを使った時間管理は、かなり効果があります。ただし、最初にタイマーをセットして「やるぞ」というモチベーションが必要です。それに、しばらく使わないと忘れてしまい習慣として定着しない。どうです、見事に意識が低いでしょう?

それを乗り越えるには、どうするか? キッチンタイマーを定期的に買い替えるのです。新しい服を買うと出かけたくなる、みたいな感覚です。自分をだましだまし、を繰り返す。自己啓発本を読んだときだけやる気が出る人に近いような気もしますが、いいんです、凡人なんですから!

最近買ったのは、「TIME TIMER MOD Home Edition」。子供向けとして売られている製品ですが、残り時間がアナログで可視化されるのが特徴です。多くのキッチンタイマーはデジタル表示で、「あと何分かな」と確認するときに注意力が途切れがち。アナログの方が直感的に残り時間がわかるので、注意力が途切れにくい気がします。これでもダメなら、恐い上司のような外圧、強制力に頼るしかないですね。

おっと、45分にセットしてこの原稿を書き始めましたが、ここまで書き終えて今残り1分です。はかどった!

「TIME TIMER MOD Home Edition」。実売価格2,750円。TIME TIMER社は20年以上の販売実績があり、サイズや形状、カラーも豊富
アラームはスイッチでオフでき、オフィスや図書館でも周囲の迷惑にならない
電源は単三形乾電池1本
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>