老師オグチの家電カンフー
目が見えなくなった時の家電使いこなし術
第2回 ガクッと落ちた視力対策に役立った設定とあのアプリ
2018年4月25日 07:00
前回の続きです。まったく目が見えなくなった状態で入院し、神経の炎症を抑えるステロイドパルス療法を受け、退院時には食事やシャワーなど日常生活が送れるレベルにまで視力は回復しました。
とはいえ、退院の時点ではスマホやPCの小さな文字は読めず、仕事ができるようになるか不安でした。
退院と前後して行なったのは、スマホやPCの表示を設定で拡大すること。iPhoneでは、「設定」の「画面表示と明るさ」から文字サイズの拡大や、文字を太くすることができます。ホーム画面に並ぶアイコンのサイズも大きくしました。
これらの変更を行なう前は、今使っているiPhone 7を大画面のPlusに買い替えねばならないかなと思っていましたが、これで事足りています。文字が大きいので一度に表示できる情報量は減りますが、仕方ありません。
VoiceOver(ボイスオーバー)に頼っていた頃と比較すれば雲泥の差です。老眼対策で大画面のスマホを選ぶ人も多いですが、携帯性や取り回しを犠牲にしたくないのであれば、小さい画面のまま表示を拡大して使う方法もアリではないでしょうか。
同じようにPCも文字の表示やアイコン、マウスポインターを設定で拡大しました。当初の視力ではメニューバーの文字も読めませんでしたから、実際には人に頼んでやってもらいました。VoiceOverの設定の時と同じで、急な障害では誰かにお願いするしかありません。
帰宅してからは原稿書きも再開したのですが、最初はWordの文字を2cm角ぐらいに表示させていました。読むよりも書く方が目を集中させるためか、より文字を大きくしないとツライのです。視力の回復とともに小さくしていき、今は数mm~1cm角ぐらいに落ち着いています。
こうして、なんとか仕事復帰したのですが、日常生活には拡大表示の機能はありません。商品の説明や飲食店のメニューなど、印刷された文字などが読みにくい。スーパーの買い物でも、たとえばCook Doなど、合わせ調味料に書かれた必要とする材料が読めず立ち尽くす。挽肉のグラム数をガン見するなど、周囲からは怪しかったでしょうね。
そのためルーペをいくつか購入してみましたが、もっとも活躍したのはiPhoneの拡大鏡アプリでした。
あらかじめ「設定」→「一般」から「アクセシビリティ」画面を開き、「拡大鏡」をオンにしておきます。あとはホームボタンを3回連続して押すと、拡大鏡が起動します。
普通のルーペよりいいのは、画面を静止画として固定できることです。動かしても読めますし、後からでも確認できる。似たようなことは以前からやってはいました。老眼で見えにくい小さな文字を、スマホのカメラで撮って拡大する。機能的には同じですね。
先ほど、大きなスマホはいらなかったと言いながら、iPad Pro(10.5インチ)を購入しました。第一の目的は、校正作業用です。出版社から送られてきたPDFに修正を加える作業ですが、以前はプリントして赤ペンで書いていました。しかし視力的に難しいので、画面を拡大しつつ作業できるタブレットが必要になりました。
タブレットはdマガジンなどの電子書籍を読むのにも最適です。これまた当たり前のようですが、視力が衰えているとピンチアウトで拡大できないと、どうしようもありません。紙の書籍はまだ目への負担が大きすぎて読めないので。
読むのが無理なら、音声で朗読してくれるオーディオブックが良いのではと、 AmazonのAudible(オーディブル)に入ってみました。目を使わないのは確かに楽です。横になりながらでも、電車や自動車での移動中も気軽に書籍の内容をインプットできる。読み上げの速度は変更でき、1.25倍速1.5倍速で再生すれば短時間で本の内容を把握することができます。
ひとつ、Audibleの欠点は、目次に文字情報がないことです。1章、2章、3章と並んでいるだけ。それぞれの章にジャンプして再生することはできますが、内容を選んで再生できません。
また書籍のラインナップ自体もそれほど多くはありません。月額1,500円なので、月に2冊も読めば元は取れますが、自分の好みや必要性に合っていないと意味ないですよね。1カ月間無料で体験できるので、その辺りを確認した上で継続利用するかどうかを決めるといいと思います。ですが自分の場合は、本の嗜好が偏っているのか、興味のある本ほどオーディオブックどころか電子書籍にもなっていません。読みたいのにKindleにもなっていないのかと残念に思うことばかり。
まぁ、対応していたところで、以前買った本が“積ん読”になっているように、最後まで読むかどうかは別ですけどね。