藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

禁断の洗剤THE POWERの凄さ しつこい焦げが笑えるほど落ちた
2025年10月2日 08:05
「五徳の焦げが落ちない」――。家事歴25年の筆者だが、この問いには長く悩まされてきた。けれど最近、ようやくひとつの答えにたどり着いた。それは「THE POWER」という、ちょっと危ない道具だ。
そもそもこの四半世紀、住まいや暮らし周りの仕事をする中で、気づいたことがある。世の中には、常にキッチンがピカピカな状態でないと料理ができないタイプの人と、そうでない人がいる。
そして、これは完全に筆者の私感なのだけれど、楽しんで料理を作れるのは、圧倒的に後者だ。億劫がらずに易々と炊事にあたり、そのうえ美味いものを作る。
周囲を汚すことを恐れず、煮物も焼き物も炒め物も揚げ物まで何でもござれな人のキッチンほど汚れやすいのは道理だ。料理のため、もちろん鍋釜などはスルスルと洗うし、それらはキレイ。でも五徳なんかは当然のように後回しで、だって五徳が多少焦げていようと、炒め物が不味くなるわけもない。
ところで掃除の困りごとを募ると、結構な頻度で寄せられるのがそんな五徳の汚れ、焦げだったりする。
「ほんとあの焦げが落ちない、あれどうしたら良いんですか?」「100均とかでそれっぽい擦る道具を買ったりしてチャレンジするんですけど、まともに落ちた試しがない」
ああ、わかります、わかります。あれね、めっちゃ模範解答を言うならですね、「料理の度に食器洗いと同時に洗う」、そうするべきなんですよね。もし食洗機があるなら、食洗機を回す際に毎回五徳まで突っ込むんです。入るサイズなら、そうすれば大体はキレイになるんですけどね。
でも毎回なんて洗わないでしょう。私だって洗いません。うちのも普通に焦げてます。で、めちゃくちゃ汚れて、焦げ過ぎて、うっかり着火するくらいじゃない限りは、洗っても「まあまあ」のところで妥協して使い続けていくほかないんじゃないでしょうかね。つまりピカピカにするのは諦めるんです。
自分の中でのキレイのボトムラインをどこに引くか。まあ、何でもそうですけど。みたいな回答になってしまうわけだ。しかし筆者は知っていた。この「まあまあ」のラインを大きく引き上げる秘策は、なくはないことを。
基本的に筆者はプロユースの洗剤の類を素人が使うのはよろしくないと思っている。効果の高さは危険性と紙一重で、多くの人は裏面の注意事項も読まない。
この連載でも、あまりプロプロしい商品について多く紹介しないのは、正直おっかないからである。そういう意味で錫村商店の「THE POWER」は、怖い。怖いくらいに焦げが落ちるから。面白いようにドロドロズルズルと取れるから。
「THE POWER」の、ちょっと危ない香りのジェルは、五徳の凹凸にも粘り付き、1時間程度は持ちこたえてくれる。ただやはりラップなどで覆った方が密着度は高くなるだろうが、とにかくジェルを汚れに貼り付ける。
筆者はズボラでせっかちなのでラップも面倒だし2時間も待てないため、ほぼ1時間で擦り出すのだけれど、それでもあの焦げの7割がたは落ちる。
手につくとまずいので、1.ゴム手袋の上に、さらにポリエチレン手袋を重ねて装着、2.焦げとり用のヘラブラシ(100均)を用意、3.ラップで覆った五徳のジェルを1~2時間後にヘラブラシなどで擦る、4.焦げとともにジェルを拭い、最後にしっかりすすぐ、といった手順で行なうのだが……おお、取れる取れる。取れる。笑ってしまう。
うん、良い、これで十分、上出来だ。だって五徳に限らず、キッチンの全ては1回でも調理をしたら、どんなにピカピカに仕上げたところで水の泡となるのだもの。
掃除のプロはいい。「ピカピカにした」その瞬間をゴールとして対価を得るのだから。でも家庭で「そこ」はゴールにできない。完璧にキレイなままでは生活できない。すぐさま汚されることを憂いてはいけない、その理不尽さを、どこかで納得しておかねばならない。家庭の掃除である限り、掃除は果てなきループだ。
だからプロユースの洗剤で危険を顧みずに汚れ落としをするというのは、家庭で行なう限り純然たる家事ではなくほぼ「娯楽」、つまり相当に趣味性の高いことなのだと、筆者は思っている。
そう、この掃除は「娯楽」なのだと割り切って使ってみてください。「THE POWER」。すこぶる面白いのは保証します!


