藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム
柔軟剤の入れすぎは逆に臭くなる? 「そもそも」の目的に合った無印を選ぶ
2023年8月22日 07:05
「よく分からないけど、それはそういうもの」として、よく分からないまま行なったり使ったりしている物事というのは、身の回りに、普段の生活に、家事に、思いのほか多いものではないかと思う。
最近、ちょっとどうしたものかと思っていることに、カードやスマホでの決済行為がある。
筆者宅の子供の年長者は成人している世代なので違うのだが、中学に入りたての末の子供の育った環境では、せいぜい駄菓子を扱っているお菓子チェーン店で、算数の勉強がてら小銭で駄菓子を買わせた程度でしか「お金」に触れる機会がなかったような気がする。
親が子供の前で見せる購買活動すなわち、カードを「ピッ」、スマホのバーコードを見せて「ピッ」。これでお金とは? と問われても。「よく分からないけど、それはそういうもの」。
いわんや家事においてをや。
しばらく前のことだが、話の流れで若い男性が夏の体臭や洗濯の失敗を気にして「柔軟剤は必ず2杯入れるようにしている」と言い、周囲の人も「それはいいアイディアだね」と反応する場面があった。
ビックリした筆者が「え、ちょっと待って。それやると逆に洗濯物臭くなるんですよ」と言ったところ、非常に驚かれた。
「なんでですか、匂いが濃くなってより効果があるんじゃないですか?」
「え、ていうか柔軟剤は、そもそも匂いを付けるために入れるもんじゃないですよ?」
「そうなんですか?! だってCMで、香り香り言ってるじゃないですか?」
「え、だったら芳香剤っていうでしょう。柔軟剤の柔軟の意味ないでしょう」
「じゃ柔軟剤って、そもそもなんなんですか?!」
そう、そもそもなんなのか「よく分からないけど、それはそういうもの」としてよく分からないまま行なったり使ったりしている。
「柔軟剤」はそもそも、衣類に石油由来などの合成繊維が増えてくるにつれて、そして合成洗剤が増えてくるにつれて一般化した。それまではなかったものだ。
当初ごわつきやすく、静電気の発生しやすかった合成洗剤で洗った化繊の衣類の「すべり」を良くしたり、静電気を発生しにくくする(パチパチさせないほか、微細な汚れを引き寄せて黒ずみにくくする)といった効果のために使用されるようになった。
洗濯、洗って濯(すす)ぐ行為ののちに、ある程度「残留させる」(ヘアリンスと同じ)ように使用されるのが、柔軟剤だ。つまり「洗って濯ぐ」の洗濯に必須なわけではない。
「よく分からないけど、それはそういうもの」としてボンヤリ使うものでは、本来ないのだ。
実際のところ化繊であっても、スポーツウエアなどへの使用はメーカーからは勧められていない。吸水性が失われたり、残留分がバクテリアのエサになり、異臭の原因になることもあるからだが、これがあまり知られていない。
加えて近年、俎上に上がっているのが柔軟剤の香料による香害の問題だ。
消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省による「その香り 困っている人がいるかも?」との香害啓発ポスターは、2021年の登場時の文言を今年「困っている人もいます」に改めた。表現を強めたかたちだ。
ただそういわれても、「そもそも」の目的で柔軟剤を使いたい向きもある。そこでの無印だ。使ってみたが、確かに「無」だった。本当になんのにおいもない。「無」香。
商品ページには「使用用途:衣類洗濯時の摩擦・静電気を抑える」と記載されている。目的もシンプルで、「そもそも」に合致している。
主成分は陽イオン系界面活性剤(エステル型ジアルキルアンモニウム塩)で、別に珍しくもない。市販の柔軟剤の9割がこれと同じ主成分だ。原料の「パーム油」という植物由来は、こだわりポイントのようだけれども。
「まあまあ分かったから、それはそういうものとして、あえて使う」「だいたいわかったから、あえて、使わない」
どちらでもいいだろう。
でも「あえて」のところで、大人として、消費者として。あえて、踏ん張り、選び、行なったり使ったりしていきたい。
「よく分からないけど、それはそういうもの」
子供に自らの営為の意図を問われ、そう答えたとき、きっと子供は親に幻滅している。そんな気がするのだ。