藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム
飛行機でも使われる消臭スプレーで汗をかいてもずっと無臭。アースのN.act
2023年8月29日 07:05
ものすごく汗かきな家族がいる。夏になると洗濯物は一日にパンツ1枚、シャツ1枚というペースでは賄いきれなくなるし、何度も入浴するのでバスタオルも都度使う。一人で一日に3~4人分の洗濯物を出す。それでなくても我が家は5人家族なので洗濯物量が多い。結局、軽く10人分に至る日もあり、干し場所の取られ具合もエグい。
とにかく日々洗っても洗っても、干しても干しても次から次。汗で濡れても夜まで我慢しろ、と言いたくなるかもしれないが、汗をかいた服をそのまま着続けると肌が荒れてかわいそうなのだ。それに汗で濡れた衣類はそのまま着ているとものすごく臭くなる。
そう汗をかいて乾いて……を繰り返すほど衣類は臭う。そのうちそこに黒い点々が浮き出てくるが、これはカビだ。えるしつているか。着たままでも服にはカビが生えることを。そしてカビアレルギーでも肌はかぶれたり、湿疹が出る。その滲出液でさらに服は汚れる。脱いで着替えないほかないのだ。
一方……。
真夏においても筆者自身は一日に一度しか風呂には入らない。が、割と見た目涼しく無臭である。汗をかかないわけではない、思秋期、更年期真っ盛りなのでめちゃくちゃヘンな汗はよくかく(主に脇汗)。でもここ数年の私には「N.act(エヌアクト)」がある……。
「MA-TTM (Matching Transformation System の略。革新的な酸化制御技術)」については、3年前に二度ほどここの連載でも触れたことがある。が、残念ながらあまり注目されなかった。そしてこの3年を通して界隈を観察し続けてきたけど、ほとんど話題に上がることもなかった。
個人的には解せない気持ちであるが、確かに世に広めるのが難しいということは分かっていた。MA-Tは説明しにくいのだ。作用機序を。説明されてもよく分からないのだ。作用機序が。
全日空商事やマンダムによる先行品を追ってアース製薬からMA-Tを使用した「N.act(エヌアクト)」が発売されたのは2021年、2年前のことだ。モノ用の「除菌・消臭スプレー」と「肌用クリーンミスト」(の携帯版)の3製品が出た。
折しもコロナ禍の除菌ブームがあった時期だが、思ったほど世の中に知れ渡らなかった。先の記事でも触れたがMA-Tを用いた除菌消臭剤は香料もなく刺激性もなく引火性もないなどの理由で、航空機内や空港内、医療機関やスポーツ施設といった公共空間では、だいぶ以前から活用されている。全く自覚なくこの恩恵に浴している人は少なくないはずだ。
しかしなぜ一般に行き渡りにくいのかとよくよく考えたときに、ああ、と思い当たるのは、香料も刺激性も「無い」ことだった。
無い。
例えば筆者は汗をかくなどして臭くなりそうな折、「N.act(エヌアクト)」の「肌用クリーンミスト」を脇下などにスプレーしてタオルで軽く拭き取るなどするのだけど、ほとんど「水」を、ただスプレーした感しかない。
スースーもしないし香料的な香りもしない。ヒリヒリもカッカもしない。ただ、あのむわっとするにおいは消えるし、さっぱりもする。その効果は確かにわかる。自分では。
手指に使う時も同様だ。手のひらにスプレーしタオルで拭く。香料もなく刺激性もなく本当に水って感じだけど、その後ベトベトしにくくなるので菌が減ってる感はする。実感する。
でも、いかにも「消毒、しましたーーー!!!」とアピールするものは、ない。「超、効いてまーーーす!!!」と、それっぽい香りがするわけでもない。
やった感。やってる感。やってます感。が無い。無いのだ。MA-Tは、なにせ99.9%「水」だから。
“ない”べきところに“ある”と、その存在を実感するけど、“ない”べきところに“ない”ままである分には、そのなさを理解しにくい。
しかし不快ではない、という基本の地平というのは“ない”べきところに“ない”ことこそにある。
【無】の快適さ。
これは、実際に無になってみないと、もしかしたら分からないのかもしれない。
筆者自身、MA-Tは一種の人類の叡智だと思っているのだけど、「よく分からない作用機序の除菌・消臭」と聞くだけで「怖いかも」という反応が存外多いのも(家人含め)理解はできる。とにかくまあ新しいものだから。後日どんな健康被害が訪れるか分からないから。怖い。確かに。
でも既存の「消毒用エタノール」や「次亜塩素酸ナトリウム」や「過酸化水素水」や「塩化ベンザルコニウム」や「二酸化塩素」等による除菌・消臭が、どのような作用機序で行なわれているのか、果たして理解しているのだろうか。という疑問もなくはなかったりする。石鹸やボディーソープなどの「界面活性剤」も決して無害ではないのだけど。
かくして真夏においても観劇クラスタである筆者は、他人の体臭の気になりやすい密な場にしばしば足を運んでいる。
もしどこかで筆者に出くわした折には、怒らないのでぜひ周囲を「くんくん」してみて下さい。
参考資料:MA-Tとは(日本MA-T工業会)