藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

トップバリュのカビ取り洗剤がほぼ100均価格で手応えアリ

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です
イオントップバリュのカビ取り用洗剤。購入時の金額は118円と安い

正直なところ、人の人生における「カビ取り」の優先順位などしれたものだと思う。家事・掃除分野で行なわれる浴室など水周りの「カビ取り」作業のことだ。

人によっては生まれてこのかた「カビ取りなどしたことがない」こともあるだろう。子供や学生に限らず大人でも。そもそも子供にお手伝いなどで「カビ取り」をさせるのは、安全面から、あまりよろしくない。

市販の「浴室用カビ取り剤」と呼ばれる商品の主成分は次亜塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウムだ。次亜塩素酸ナトリウムは「カビ取り」目的のみならず、一般細菌やウイルスに作用する塩素系除菌漂白剤として広範に使用されている。

それ自体は劇物ではないものの、混ざる(触れる)相手が悪いと致死性のある塩素ガスを発生させ危険だ。また皮膚や、特に目に付着すると失明の恐れがある。

水酸化ナトリウムの方は5%を超えると劇物に指定されている。なので「浴室用カビ取り剤」は子供に使わせていい道具ではない。とはいえ、こすり洗いなどなら良いかといってもカビ胞子を吸い込むことになり、そもそも子供にカビ掃除自体、あまりおすすめできない。

もろもろの危険性を案じ、家庭の掃除に次亜塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを用いたカビ取り剤一切を使用しない人もいる。日本の気候風土では住生活から完全にカビを排除することなど不可能であり、それも一つの見識といえるだろう。

また木材のほかモルタルや漆喰、タイルなどを多用していた時代の家庭の風呂場などはカビが生えていて当たり前だったはずだ。

ただ近年、住まいそのものの気密性が上がり、浴室がプラスチック(FRP)のユニットバスに取って代わられた頃から、カビに対しての感受性も全般的に上がりだした。浴室に見られるカビが居間や寝室などの居室でも当たり前に見られるようになっていることと住まいの密封度、ライフスタイルの多様化も切り離せないだろう。

年間通して水があり温度が高くカビの生育に適した浴室はカビの温床となりやすい。ここのカビ対策の一環としての「カビ取り」作業の必要性や優先度を人生のどの時点で高く位置付けるかはそれぞれの事情によるだろうが、およそ一度気にし始めたら無視するのが難しい存在となる。とにかく黒くて目立つのだ。とりわけ浴室に生えるカビは。

というところで今回ご紹介するイオントップバリュのカビ取り用洗剤の特筆すべき点は、とにかくその価格にある。一般的な「浴室用カビ取り剤」の約半額から3分の1、筆者が購入した金額は税込で118円だった。

世の中の生活雑貨の多くのジェネリックが存在する100円ショップでも、浴室用カビ取り剤は扱われていないことが多い。ただキッチン用漂白剤として次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした商品が扱われているため、世の節約術ではよくこのキッチン用漂白剤を浴室掃除に転用するというワザが紹介されていたりする。

次亜塩素酸ナトリウムを主成分としている

ただ他のスプレー容器に移し替えるなどの危険な作業が必要で、安全面でも手間暇でもスプレー状の商品になっているほうが良いのは違いない。

筆者は市販のカビ取り剤の効果を見る目安に、自宅の浴室排水口周りのエラストマー樹脂に入り込んだ黒カビ(おそらくは「クラドスポリウム」ではなく「フォーマ」)の漂白され具合を長年参考にしている。これがじつに厄介でしつこいカビなのだ。このエラストマー樹脂に入り込んだカビと筆者との闘いの歴史は短くなく、約20年に至る。

引っ越してきた建物の新しい浴室設備に対し、筆者は体調不良で半年ほどまともな掃除をすることができなかった。そのため一夏を越えた浴室は秋口、無残にもカビに侵されていたのだ。その後、イタチごっこが続いている。

さてこの黒カビに向けて、スプレーする。荒めの泡になった液剤が排水口周りにこんもり盛りあがる。しかし10分ほど経って見てみると泡はすっかり消えている。従来品に比べ泡の「持ち」は決して良いとは言えない。

平面でこれでは、おそらくは壁面の目地、シール剤等に生えたカビに対してはスプレーだけでは効果を与えるのはいささか難しいだろう。とはいえ黒カビはだいぶん薄くなっており、まずまずの手応えはあった。価格からすれば相応より上出来である印象だ。

件のエラストマー樹脂、また壁面シール剤などに対しても、キッチンペーパーを短冊状に割いてカビ取り剤を湿布させるような方策を取れば、より強度を増す結果が期待できる。およそ主婦、主夫としてカビ取り剤を使いなれた人には、おすすめできる、使いこなしやすい商品であった。

藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして21年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、大1、中3、小5の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。