藤山哲人の電力自由化対策室
第1回:肉や野菜と同じように安い店から電気を買える「電力自由化」
by 藤山 哲人(2016/1/13 07:00)
毎日の生活に必要な肉や野菜の食料品、そして日用品は近所のスーパーで購入する。
「そんなことは常識」なのだが、それが今まで通じなかったのが「ガス」と「電気」だ(水道はお役所管理)。関東なら東京電力、関西なら関西電力と地域ごとの電力会社から買うほかなかった。でも今年の春からは、電気をどの電力会社から買うかが選べるようになる。これが2016年4月からスタートする「電力自由化」だ。
「電力会社を選ぶ」というのは、これまでなかった経験。どうやって選べばいいのか、そもそも電力自由化とは何なのか? この連載では、各社から今後発表されるであろう料金プランやサービスなども含めて、分かりやすく解説していく。
実は電力自由化はすでに始まっている。これまでの電力会社に加えて、安く電力を提供する新興会社、風力や太陽光などクリーンな発電を謳うエコな会社など、いわゆる電気を売る店側は続々と設立されているのだ。一方電力を消費する工場などの企業も、業務形態などに合わせて電力の仕入先を変えている。
2016年4月からはじまる電力自由化は、一般家庭でも電力会社を選べるようにしましょう! というものだ。電気を多く消費する個人商店や個人事業では安い電力会社から買ったほうがいいだろう。でも将来に向けた環境問題が気になるという人は、クリーンエネルギーで発電する電力会社を選ぶという場合もある。
さまざまな特色を打ち出している新興の電力会社ではあるが、老舗の電力会社もあぐらをかいているばかりではない。施設面では、発電で出た廃熱を利用してさらに低温でも発電機を稼動できる最新式の発電機を導入し、安く環境にも優しい設備を増強したり、ソーラーや風力などの自然エネルギーの活用にも力を入れている。ソフト面では、時間帯や消費パターンによって電力料金を安くしたり、スーパー同様にポイント制を導入したりといったサービスをはじめる。
こうして一般家庭でも、自分のライフスタイルにあった電力会社を選べるようになり、ピッタリの電力会社を見つけることが電気代の節約になる。しいては自分たちの子孫に、よりよい地球を継承していける一端となるのだ。
電気を選ぶってどういうこと?
携帯電話は、通信会社ごとの電話本体と回線があり、会社を選べば自動的にその会社の通信回線網を使うことになる。でも電気の場合はチョット話が違う。家にあるコンセントは、電力会社別に別れるわけでもなく、家の前の電柱だって関東だと東京電力の送電網。近所の鉄塔の高圧送電線も東京電力のものだ。
これでどうやって違う電力会社から電気を買うのか? と不思議に思うかもしれない。でも発電する電力会社と、送電する送電会社に分けて考えるといい。
今のところ各地方の送電会社は、これまでどおり関西電力や東京電力といったコレまでの会社だ。私たちが新興の発電会社から電力を購入すると、この送電網を通して各発電会社から電気を買うことになる。逆に新興の電力会社から見れば、私たち消費者の元に電力を送るため、東京電力なりの送電網を間借りしているということだ。
これを図にまとめるこんな感じになるだろう。
つまりどこの電力会社から電気を買うにしても、今家にあるコンセントがそのまま使えるし、ブレーカーなどもそのままでOK。交換の必要があるのは、屋外にある電力量計(円盤がクルクル回るヤツ)だが、電力量計そのものや交換工事費などは一切かからない。
また電力会社を乗り換える場合の手数料も、今のところ無料という話。私たち利用者は手数料など無料で、電力会社を切り替えられるという。
詳細は今後の発表を待つことになるが、電力会社の乗り換えは携帯電話のそれよりはるかに簡単。手数料もかからず、自分のライフスタイルなどにピッタリの電力会社から電気を買えるようになる。
電力会社ってどう選べばいいの?
さまざまな特色を打ち出してくる新興の電力各社。インターネットや携帯電話と電気のセットメニューがあるほか、各種ポイントが使えたり、それをマイレージに変換できたりと電気代以外の割引サービスも充実している。
また東京電力のように毎月の電気代を自動的にグラフ化し、家計簿の支援をしてくれるようなWebサービスを展開している場合もある。
変わりどころでは、鉄道会社の参入などもあり、今後も不動産など異業種が参入してくる可能性も十分にある。そんな中で、自分に合った電力会社を見つけるのは、一筋縄では行かないだろう。
でも共通して言えるのは、生活インフラと電力がセットになっている場合が多いので、月々の支払いが高いものと電力をセットにするのが第1段階だろう。たとえば月々のインターネットや電話代などの通信費が高ければ、通信会社と提携している電力会社を選ぶメリットは大きい。
また各社が提供するポイント制だが、それを1社にまとめるようにしている場合は、月々の支払いが大きい電気代だけにポイントもたまりやすくなるはずだ。
他のインフラと電力をまとめるつもりはないし、ポイントもこれまでもままで十分という場合は、そのまま放置してしばらく様子を見てもいい。2016年4月から(一般家庭の)電力自由化となり、電力会社が選べるが、とくに変更の申し出をしなければ、従来どおりの電力会社から供給を受けられるのであせる必要はない。
筆者がひとつだけアドバイスしておきたいのは、それほど電気を使わない大半の家庭は、電力会社を変えたところで劇的に電気代が安くなるということはないという点だ。詳細は連載で説明していくことにするが、「電力と何かをセットすることではじめてメリットが出る」と考えてもいいだろう。