神原サリーの家電 HOT TOPICS
ホーロー仕上げの内なべが可愛い! 同時調理「ふたりのタクック」の魅力に迫る
by 神原サリー(2015/3/10 07:00)
2012年2月にタイガー魔法瓶から発売された「タクック」は、ご飯とおかずが同時に作れると注目を浴びた調理家電。一人暮らしの若い女性をターゲットにし、当初目標8,000台だったが、わずか2カ月で3万2,000台を売り上げるほどのヒット商品になった。
同年12月には、シニア層に向けた上位モデル「おとなのタクック」を発売。2013年にはファミリー向けの「みんなのタクック」が発売されるなどターゲットを広げ、着々とファンを広げている。
そんな「タクック」の4代目となるモデルが、2014年12月に発売された。次なるターゲットは30~40代のDINKSでその名も「ふたりのタクック」だ。
内なべをホーロー仕上げにし、本体カラーはホワイト、ブラック、サクラの3色展開。内なべのカラーも、ホワイトとブラックモデルにはホワイトを、サクラにはピンクの内なべが付属している。炊飯容量も3.5合炊き、5.5合炊きの2モデルそろえるなど、さらに力を入れている様子がうかがえる。
新モデル「ふたりのタクック」のデザイン面を中心とした商品開発のポイントやメニューのこと、海外展開についてを取材してきたのでご紹介したい。後半では実際にごはんとおかずを作ってみた様子もレポートする。
初代のタクックはまるでオーディオのようなデザインにして、ワンルームの狭い部屋に住む1人暮らしの若い女性でも、生活感を出さずに置いておきたくなるようなデザインが目を引いた。
前面のパネルを開くと操作部が現れるという方式も従来の炊飯器にはなかったデザインだ。その後、炊飯方式にIHを取り入れ、デザインも落ち着いたシンプルなものにしたのがシニア向けの「大人のタクック」だった。
ターゲットは35歳前後のディンクス
今回の「ふたりのタクック」は操作ボタンが通常は全く見えず、角を丸くしたスクエアなデザインが特徴。特に内なべのホーロー仕上げが心に響く。
タイガー魔法瓶・ソリューショングループ 商品企画チームの金丸等氏は「今回のターゲットは35歳前後のDINKSです。こうした人たちはインテリアにこだわり、食生活にもそれぞれのこだわりがある。有機野菜を食べる人、玄米を好む人など。でも、お互い働いていて忙しいのも事実。そんな人たちが望むのは、どんな家電なのかを真剣に考えました」と語る。
10万円クラスの高級炊飯器で炊くごはんが美味しいのはわかっていても、さすがにそこまでは手が出ない。かといって安価なものほど生活感が出るし、ある程度の予算は出そうと思っている購買層。
「炊飯器の専業メーカーとして、5万円前後の炊飯器を選ぶ基準のようなものをしっかりと見定めなければならないと思ったのです。炊飯器は見せたくない家電の筆頭とも言われているからこそ、それを払しょくする必要があるのではないかと」と金丸氏。
5.5合炊きの炊飯器を持っている人の中で、いつも2合しか炊いていない家庭が全体の40%にも達する。それなら3~3.5合炊きのもので十分のはずだが、なかなかそのサイズでおいしいごはんが炊ける炊飯器は少ない。またデザインの点でも生活感があふれるものばかり。そこで、まずはデザインから商品開発に入ったのだという。
感性に訴える家電を作りたかった
同社のソリューショングループ 商品企画チームデザイン担当の石川慎二氏は、「ふたりのタクック」ついて次のように語る。
「とにかく感性に訴えるような製品を作りたかったのです。そこで考えたのが内なべにホーロー技術を採用することでした。ホーロー鍋とは熱伝導のよい鋼にガラスの膜を張ったもので蓄熱性に優れており、色のバリエーションが豊かで愛着の湧くような仕上がりになり、ファンも多いですよね。ガラス加工というのは、土鍋に釉薬をかけるのと同じようなものですから、土鍋炊飯器を作っている私たちが手掛けるのは、意味のあることなのです」
とはいえ、炊飯器の内なべにこのホーローを採用するのは、苦労が多かったという。色ムラが出来たり、泡のようなものが出来てしまったりと、なかなか思い通りの色が上がってこず、色の調整に苦心を重ねたのだ。
ところで今回、本体にはホワイト、ブラック、ピンクを採用し、その名をそれぞれ「ハク」「スミ」「サクラ」としている点にも、これまでとは一線を画す思い入れが感じられる。
「定番のカラーとしてホワイト、ブラックはすぐに決まりましたが、あと1色というとき、そんなに派手ではない淡いパステルカラーにしたいと思いました。1人用の『わたしのタクック』、2代目モデルで採用した淡いピンクをブロッサムピンク=サクラのピンクと呼んでいることもあり、ふたりのタクックのピンクのモデルをサクラと呼ぶことにしたのです。そこから、ハク、スミという呼び方も決まっていきました。言葉の受ける印象も大きいのでよかったのではないでしょうか」と石川氏。
丸みのあるスクエアなフォルムや操作部についてはどうなのだろうか。
「お気に入りのなべなら出しておきたくなる。そうでないものは隠してしまいます。愛着を持ってもらえるデザインのために大切なのは、丸みなのではないでしょうか、四角過ぎると生活の中でかえって目立ち過ぎてしまうもの。丸みを持たせることでやさしさが加わり、部屋の中の調和が生まれるのです」
「ものに対するこだわりを持つ世代に向けて企画されたタクックだから、とことんデザインを追求した」と語る石川氏。
「今回、3.5合と5.5合の2シリーズ出していますが、デザインは3.5合の小さいほうをベースに考えました。2人暮らしでも旦那さんがたっぷり食べるという場合、ごはんもおかずも多く作りたいという家庭もあるだろうということで、3.5合のデザインをそのまま大きくした設計で5.5合サイズを作ったのです」
スマートフォンの操作に慣れた世代ということで、アプリのようなデザインの操作パネルも特徴的だ。
「同時調理という新しい提案をしているタクックなので、使いやすさの点でも新しさを打ち出したいと考え、スマホの操作感に近いものを狙っています。昨年秋に発売したフラグシップモデル「土鍋圧力IH炊飯ジャー THE炊きたて」の炊飯器に採用したモーションセンサーをつけ、人が近づくまでは一切のボタンを見せないという点でも美しいデザインになったと思います」
「同時調理ボタン」の新採用でメニューも幅広く
これまでは通常の「炊飯」ボタンを押すだけでおかずも調理できるのが特徴だったタクックシリーズ。ごはんを炊き上げる水蒸気で、上にのせたおかずの食材に火が通り、炊飯完了と同時におかずも出来上がるというおまかせ調理家電だ。「ふたりのタクック」では新たに「同時調理」ボタンが追加され、おかずも作りたいときには、このボタンを押すように改良されている。
「実は今まで、おかずも作る場合には炊き込みごはん系のものが作れなかったのです。白米をそのまま炊く場合と微妙に制御が変わってくるために、おかずを作る際に火が通りすぎたり、時間が足りなかったりということになり、炊き込みの場合は単体で作ってもらうようにおすすめしていました」と金丸氏。
実際レシピブックには、炊き込みごはんとおかずの同時調理メニューが充実している。取材の際にも「サーモンのクリーム煮ときのこピラフ」を試食させてもらったが、タクックに食材や調味料を入れ、スイッチを入れて放っておくだけで、栄養豊かでおいしい食事が作れることに心から感心してしまった。
「ファミリー向けの『みんなのタクック』をベースに、炊き込みごはんものも加えて、このターゲットにふさわしいメニューを載せています。タクックは万が一、食材に火が通っていなかったなどということがないようにと考えて、オリジナルのレシピで調理することを遠慮していただいています。そのため、レシピブックが命ともいえます。基本となるメニューづくりには料理研究家の方に協力をお願いしていますが、分量を最適化するのは私たちの仕事。ここが実はかなり大変なのです」
同時調理ボタンできちんと火が通り、おいしく仕上がるように考えられたレシピだが、±10%の範囲なら分量は好みに応じでアバウトでも大丈夫なのだという。基本を守りながら、あまり神経質にならずに料理を楽しめるのがタクックということだろう。
海外6カ国でもその国に合わせたメニューで展開
国内では累計50万台を販売しているタクックシリーズだが、実は中国、台湾、香港、シンガポール、ベトナムなどのアジア5カ国と米国でも発売して、人気を集めている。
早く炊ける長粒米を食べる国では、それに合わせたメニューを考案し、お国柄に応じた調味料を使うなど細部にまで気を配った日本ならではの提案が好評だ。フィリピン、マレーシアでも一時販売していたが、価格高騰で撤退し、先の6カ国で2015年4月時点で15万台の販売見込みだという。
炊飯器本体も日本のようにIHなどは採用せず、内なべは薄いアルミ仕様のものを使っているところがあるのも、国ごとの物価や炊飯事情に合わせているから。今後の展開が楽しみだ。
ふたりのタクックで料理してみました!
取材を終えたところで実際に「ふたりのタクック」を使ってその実力を試してみることにしよう。
2つのサイズがあるが、小さくてより可愛らしさがアップする3.5合炊きのサクラをお借りして、いざチャレンジ。
最初に試したのはビーフストロガノフ&バターライス。バターライスのほうは、洗ったお米に水、スープの素、バター、塩、コショウを入れてかき混ぜれば準備OK。オレンジのクッキングプレートでビーフストロガノフを作る。こちらは1cm幅に切った牛肉100gに塩コショウをふり、薄力粉をふりかけてクッキングプレートへ。さらに薄切り玉ねぎ、マッシュルームを入れ、合わせ調味料をかける。
通常なら水を入れそうだが、ここでは一切水はいれない。合わせ調味料の水分と玉ねぎなどの食材から出る水分で十分ということなのだろう。
同時調理を選んで、炊飯ボタンを押すと57分の表示。出来上がりまでは後片付けをしたり、原稿を書いたり、思いのまま。火加減を見たり、焦げ付きを気にしたりということがないのがうれしい。
57分後。タクックのふたを開けると何ともいいにおいがする。ビーフストロガノフのほうは思ったよりも水気が出ていて、それらしくなっている。かき混ぜると牛肉にまぶした薄力粉はいい具合にとろみになってちょうどよい加減だ。バターライスはパラッとしていて、口当たりがよく、とても美味。
困ったことと言えば、1~2人分の量では市販のデミグラスソースが中途半端に余ってしまったことぐらいだろうか。これは温めてオムレツにでもかけるといいかもしれない。
豆腐のあんかけや、ピーマンの肉詰めだって出来る
そのほか試したのは、豆腐のえびきのこあんかけ。3パックセットになっている木綿豆腐1パックを使い、むきえびやきのこをのせて合わせ調味料をかけるだけで準備完了という簡単さ。木綿豆腐とむきえびに片栗粉をまぶしてからクッキングプレートに入れるというひと手間で、とろみのついた「あんかけ」になるところが素晴らしい。
ここで余談だが、タクックの調味料に「小さじ1 1/2」というのがとても多く、これを普通の計量スプーンではかるのは面倒だなと思っていたところ、「小さじ2」「小さじ1 1/2」「小さじ3/4」などさまざまな目盛のついた計量スプーンを見つけた。これは本当に便利。タクックにつけてくれたらいいと思ってしまったくらいだ。
ピーマンの肉詰め蒸しも作ってみたが、1時間近く蒸し上げることになるため、若干ピーマンの色があせてしまうけれど、ジューシーで味わい豊かに仕上がった。炊き込みごはんと組み合わせたメニューなら、タクックだけで十分。白いご飯とおかずの組み合わせのときには、タクックで調理している間に汁物を作ったり、サラダを作ったりするとより満足度の高い食卓になりそうだ。
付属のレシピブックには「ごはん+おかず」だけでなく「おかず+おかず」というメニューもあり、まだまだ試してみたいものがいっぱい。料理が苦手だったり、少しでも調理の手間を省きつつ栄養豊富な食事を作りたいという人はもちろん、料理好きな人もレパートリーを増やせる。
タクックの傍らで、ほかの料理をする楽しみを与えてくれる新しい調理家電としておすすめだ。おかずを一緒に作っても、ごはんにはにおいが移らないので、その点も安心しておすすめできる。
それにしてもピンクのホーロー仕上げをした内なべに心が躍る。愛着がわくというのは、まさにこのことだろう。タイガー魔法瓶の石川氏の狙いは的を射ていたと思う。ホーローラブなあなた、ぜひこの「ふたりのタクック」を手にとってみてほしい。