藤山哲人の実践! 家電ラボ
第24回
4つの方式の加湿器を徹底検証! アナタにぴったりなのはどれ!?
by 藤山 哲人(2015/2/16 07:00)
前編では、一般的な加湿器の特徴や、加湿器がインフルエンザやカゼを予防する効果があることなどについて説明した。後編では、前編で紹介した4タイプの中からオススメ製品を取り上げつつ、実際に加湿してみての性能や電気代などを比較してみよう。
テストした加湿器5台と実験内容
前編でも軽く触れたが、今回テストした5機種を簡単に紹介しておこう。
メーカー名 | 製品名 | 本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 重量 | 加湿能力 | 消費電力 | 実売価格 (Amazon) |
タイガー魔法瓶 | ATC-A300 | 185×185×218mm | 1.5kg | 300mL/h | 450W | 6,900円 |
パナソニック | FE-KFK03 | 305×190×295mm | 3.1kg | 300mL/h | 10W | 14,300円 |
ダイニチ | HD-RX314 | 325×150×325mm | 3.3kg | 300mL/h | 161W | 11,640円 |
ダイソン | AM10 | 240×222×579mm | 3.4kg | 300mL/h | 55W | 48,480円 |
パナソニック | F-VKK20 | 230×230×612mm | 6.2kg | 300mL/h | 24W(加湿時) | 21,772円 |
ポットや電子炊飯器でおなじみのタイガー魔法瓶からは、お湯を沸かして加湿するスチーム式の「ATC-A300」。パナソニックからは洗濯物を部屋干しする要領で加湿する気化式の「FE-KFK03」。ファンヒーターなどを製造販売するダイニチからは、気化式にヒーターを備え急速加湿ができるハイブリッド式の「HD-RX314」。ダイソンからは超音波式なのに雑菌などが繁殖しにくい「AM10」をチョイス。また。花粉やPM2.5の季節に向け、店頭では空気清浄機+加湿器の複合タイプが売れ筋ということで、パナソニックの加湿機能(気化式)付き空気清浄機の「F-VKK20」も用意した。
いずれの機種も加湿力300ml/h。1時間当たり300ccの水を加湿できるという性能で、ダイソンは適応畳数を公表はしていないものの、気密性の高い最近の住宅なら8畳、隙間風の多い純日本建築の木造住宅なら5畳が目安となっている。
具体的な用途としては、独身世帯のワンルームや子ども部屋、寝室向けの加湿器と言えるだろう。ファミリー世帯のLDKに置く加湿器としては加湿力不足だ。
なお実験は、部屋の湿度が安定する夜中に実施した。日中だと、食事の準備で煮炊きしたり、人の出入りでドアの開閉が多く、なかなか湿度が安定しないからだ。ともかく、気象という自然が相手の実験なので、スタート時の湿度や温度を合わせるのは非常に難しく、各加湿器で3回ほど(加湿されてしまうので1日1回)データを取り、その中で一番近い気象条件同士を比較している。
部屋の広さはリビングダイニングが12畳で、キッチンが2畳という間取り。合計14畳なので加湿能力300mlのモデルでは広すぎるが、実験中ドアの開閉は一切せず、人も不在の状態で測定した。そのため実生活で加湿器を使った場合は、畳数より狭い部屋での値に近くなるだろう。
そのため各加湿器の性能を正確に比較できていない点、メーカー発表の値などと異なる点は、あらかじめご了承いただきたい。実験結果は、あくまでも参考値として見て欲しい。
個々に細かな特徴が見られるが、300ml/hなら加湿能力は互角
早速実験結果を見て欲しいところだが、ひとつ注意して欲しい点がある。今回実験に使用した加湿器は、湿度を手動で調整できない機種もあったため、自動運転した場合の湿度の変化を記録している。そのため、より湿度を高くできたものが加湿量が高いというわけではない。
たとえばダイニチのHD-RX314は50%、パナソニックのFE-KFK03は60%を目安に湿度をコントロールするため、タイガー魔法瓶のATC-A300やダイソンのAM10のグラフを見比べると低い湿度を保っている。
以下は、加湿テストで実施した運転モードと、メーカーが公表している目標湿度だ。
メーカー名 | 製品名 | 運転モード | 目標湿度 |
タイガー魔法瓶 | ATC-A300 | 強(4分半加熱、5分休み) | なし |
パナソニック | FE-KFK03 | おまかせ自動 | 60% |
ダイニチ | HD-RX314 | 標準 | 50%(初期設定) |
ダイソン | AM10 | 自動 | なし |
パナソニック | F-VKK20 | うるおいアロマ(自動) | なし |
この条件を前提にグラフを見ていただこう。
今回は、湿度40%の状態から実験を開始後、4時間での湿度変化を各機種ごとにグラフで表している。
ご覧のように、4時間後の湿度は、パナソニックのF-VKK20(緑)のみ約50%となっているが、ほかの加湿器はすべて50%を超えている。特に、目標湿度を設定していないタイガー魔法瓶のATC-A300(赤)とダイソンのAM10(水色)の2機種は、70%に迫る数値まで湿度が上昇した。
加湿が始まるまでの早さに注目すると、ダイニチのハイブリッド式(オレンジ)が、スイッチONと同時に加湿を開始しているのが目立つ。また、目標値の50%に達しても少し高めの湿度を保持しているようなので、ドアの開閉で乾いた空気が部屋に入っても、設定湿度が保たれる。
パナソニックのFE-KFK03(黄緑)とF-VKK20も、気化式ながら加湿が始まるとグングン湿度が高まりうるおう。FE-KFK03は目標が60%なので急速に加湿するが、目標湿度が公表されていないF-VKK20は50%を目安にしているというのがグラフから読み取れる。
ダイソンのAM10は超音波式なので、スイッチONですぐ加湿がはじまるはずだが、実際にミストが出始めたのは7分後。これはその間に水を紫外線で除菌しているためだ。また、自動モードの目標湿度は設定されていないが、約65%としているようだ。2時間半を過ぎた時点で一瞬グラフが下がっているが、これは湿度が約65%に達したため、ミストをOFFにして湿度を調整しているからだ。
タイガー魔法瓶のATC-A300は、湿度を設定できない。スイッチをONにしてお湯が沸き蒸気が出始めると、以降は4分半加熱しては5分休みを繰り返す。そのためグラフでは赤い線がノコギリの刃のようにギザギザになっている。また湿度制御をしていないため、入れたぶんの水でどんどん加湿する。しかしこの実験では、4時間使ったところでちょうど水がなくなり(電源自動OFFとなる)湿度は67%程度となった。
電気代は気化式が一番安く、1日運転しても約4円!
気になる消費電力と電気代に着目してみよう。グラフは実験を行なった4時間の消費電力&電気代だ。
結果としては、気化式のパナソニックの2台(FE-KFK03/F-VKK20)が最も省エネ。電気代は4時間で0.66円なので24時間付けっぱなしにしても、4円ほどしかかからない。これなら電気代を気にせずに使えるだろう。
一方、本来は気化式なみに省エネで電気代も安い超音波式だが、ダイソンのAM10は、4時間で3.08円と高くつく。24時間換算すると18.5円程度。その理由は、羽のない扇風機が常にONになっているためだ。
一般的な超音波加湿器は、超音波ユニットでミストを発生させるだけだが、ダイソンは送風して部屋全体を潤すようにしているため、加湿器+扇風機を使っている状態となる。それゆえ、一般的な超音波式加湿器より電気代がやや高め。
逆に、やや電気代が安めに出たのがダイニチのハイブリッド式(HD-RX314)だ。現在の湿度と設定湿度に大きく差がある場合は、温風ヒーターを使って急速に加湿するため、ドライヤーのように電力を多く消費する。しかし、設定湿度前後で安定している時は、温風を当てずに送風するだけなので電力は気化式並み。
今回の実験では、開始時の湿度が40%、設定湿度が50%だったのでヒーターはそれほど使わず、4時間で2.42円、1日換算で14.5円と電気代が安くなっている。ただヒーターを使うのは、運転を開始した時点での湿度と設定湿度との差が激しいときだけなので、電気代が高くなるといってもたかが知れたものと思ってもいい。なお、ヒーターを一切使わないecoモードも搭載しているので、電気代の安い気化式としても使える。
やはり飛びぬけて電気代が高いのは、タイガー魔法瓶のスチーム式(ATC-A300)。お湯を沸かすには、それなりの電力が必要となり4時間で18.3円の電気代がかかった。24時間使うと電気代はおよそ110円となり、これが1カ月ともなれば結構な額になる。今回は4分半加熱して5分休む「強」で実験したが、1分半加熱して5分休む「弱」を使えば電気代を節約できる。
毎日のことだから……給水のしやすさも使いやすさを大きく左右する
さて電気代以上に気にしたいのは、「水の入れやすさ」だ。何しろオンシーズンは、少なくとも1日1回は給水するので、加湿器の使い勝手を大きく左右する。
ポイントは2点。凄く単純だが、デザイン重視でこれがおろそかになっている加湿器が多いので注意しよう。
1) 給水中でもタンクが自立するか?
デザイン重視の超音波式の加湿器に多いのが、給水中に自立しないタンク。逆さまにすると尖っていて流しに立たず、ずっと手を添えていなくてはならず面倒だ。
2) 給水口が大きいか?
給水口が大きいと一気に水を入れられるので、素早く給水できる。腕が入るほど大きいと、中も洗いやすいので使い勝手が格段に向上する。
お手入れせずに手軽に使いたいならスチーム式のタイガー「ATC-A300」
電気代の高さが目立ちがちなタイガーのATC-A300だが、それを上回るメリットもある。それがお手入れの手軽さだ。他の加湿器は、どうしても湿気で雑菌が発生しやすいが、湯沸かしするスチーム式なら、毎回お湯を沸騰させるので雑菌はほとんど死滅する。
働き盛りの独身世帯や単身赴任など、お手入れにかける時間がもったいないという人にオススメしたい。
万人向けで電気代も安いパナソニックの「FE-KFK03/F-VKK20」
電気代の安さと細かな湿度コントロールで、一日中電源を入れっぱなしにしておいても電気代が気にならないパナソニックのFE-KFK03と、加湿空気清浄機のF-VKK20。部屋干しと同じ仕組みの気化式とはいえ、加湿能力は他の加湿器に見劣りすることはない。
常に湿っている内部のフィルターや水の受け皿のお手入れが少し面倒だが、月に1回で構わないという点は助かる。ただし、フィルターの手入れを怠るとカビ菌が繁殖するので注意して欲しい。
どんな人にも、どんな部屋でも、どんなときでも、平均点以上は出せるオールマイティーな加湿器だ。
寝室や子ども部屋などに便利なダイニチの「HD-RX314」
多様な湿度コントロールができ、自分の快適さを調整できるのがダイニチのハイブリッド式加湿器「HD-RX314」。書斎や寝室、子ども部屋といった、スポット的に人がいる部屋で使いたい。
ハイブリッド特有の素早い加湿力、設定湿度に達してからは気化式と同じ安い電気代で湿度をコントロールできるというメリットがある。非常にコンパクトという点も見逃せないだろう。
2週に1回のお手入れが必要になるが、フィルター+水受け皿を引き出し、そのままお風呂で洗えるので思ったより面倒ではなさそうだ。ハイブリッド式も気化式と同様に、フィルターの手入れを怠るとカビ菌が繁殖する。
デザイン性が高く超音波式の弱点を克服したダイソンの「AM10」
一般的な超音波式の「雑菌が発生しやすく、雑菌を含んだ水をミスト状にして噴霧する」という弱点を克服したダイソンのAM10。紫外線を水に照射することで、99.9%のバクテリアを除菌できるという。ダイソン特有のデザイン性も大きなポイントとなるだろう。
超音波式では珍しい湿度のコントロール機能に加え、送風により部屋を均一に加湿する点も見逃せない。寝室やワンルームの居間などにオススメ。ただし、送風によって体が冷える可能性があるので、設置の際は本体の向きに気をつけて欲しい。
一方、若干だが一般的な超音波式より電気代が高く付いてしまう点、その洗練されたデザインゆえ、お手入れでの分解掃除が面倒な点が課題と言える。
ライフスタイルに合わせて加湿器を選ぼう
2回に渡ってお届けした加湿器の選び方、オススメ加湿器はいかがだっただろうか。今回はワンルームや寝室、子ども部屋というように8畳程度を加湿するオススメ機種を紹介してきた。
しかし前編の4つの方式の加湿器と、今回紹介したデータなどから、ファミリーのLDKで使う大型の加湿器選びに迷うこともなくなるだろう。
機種が多すぎて絞り込めなかったみなさん、価格がピンキリでどれを選んでいいか迷っていたみなさん! 今すぐ自分のライフスタイルにピッタリの加湿器を選んで欲しい。