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気象警報と連携して、かしこく蓄電する「クラウド蓄電システム」

クラウド蓄電システムの仕組みを解説した、シャープ株式会社 エネルギーシステムソリューション事業部 副事業部長 兼 システム第二技術部長の かど野 勝氏

 シャープは、住宅向けの「クラウド蓄電池システム」として、「ハイブリッド パワーコンディショナ JH-55FM3P」、「リチウムイオン蓄電池本体 JH-WB1503」、「マルチエネルギーモニタ JH-RWL6W」の3機種を5月26日に発売する。希望小売価格は合計で356万円(税抜)。

 同社では、ネットワーク上で情報を管理する「クラウドサーバー」と連携し、電気料金プランの多様化や季節や時間帯により変化するユーザーの電力使用状況に合わせた、エネルギーマネージメントを実現する仕組みをクラウド蓄電池システムと称する。なお、当システムを利用するには、別途「クラウドHEMS JH-RTP4/JH-RTP5」が必要となる。

 今回発表されたのは、ハイブリッド パワーコンディショナ(以下、パワコン)の定格出力の大容量化、リチウムイオン蓄電池本体の容量倍増、さらにこれらの製品発表に合わせた、「クラウドHEMS」(発売中)のソフトウエアバージョンアップの内容となる。

上がハイブリッド パワーコンディショナ JH-55FM3Pで、下の2台がリチウムイオン蓄電池本体 JH-WB1503
マルチエネルギーモニタ JH-RWL6W。電力の使用状況などを確認できる

電気を自宅で消費する時代へ向けた取り組み

 パワコンや蓄電池の容量アップにいたった背景として、かど野氏は「高騰する電気料金や固定買取費の減少により、蓄電池市場は2020年には2014年度の約20倍になると予測されています。また新築住宅における屋根の形状が、2013年頃から片流れが増加したことによる、太陽光発電システムから得られる電力の大容量化に対応するためです」と述べた。切妻(きりつま)や寄棟(よせむね)が多かった2002年の構成割合と比較すると、2013年には寄棟の構成比が半分以下に減少している。

蓄電池市場は、電気料金の高騰や固定買取費の減少により、2020年度には2014年度の20倍以上に拡大すると予測される。今後は、発電した電気を自宅で消費する時代へ移行するという
2013年頃より新築住宅の屋根の形状は、より多くのパネルを設置できる片流れが寄棟のシェアを奪う形で増加している
従来機と同じサイズで定格出力を5.5kWにアップし、入力回路を3回路へ増加した

 パワコンは、従来機と同サイズながらも、定格出力を30%アップの5.5kWとし、入力回路を2回路から3回路へと増やした。回路を3系統に増やすことで、既存の屋根でのパワコンの置き換えに加え、今後、形状のバリエーションが増加しそうな屋根にも対応できるとする。

 例えば、6.7kWや3面設置(寄棟屋根 南/東/西)の太陽光発電システムの場合、従来の4.2kW(2回路)のパワコンでは、太陽光パネルと蓄電池を繋ぐために2台のパワコンが必要だった。

 それが新しい5.5kW(3回路)のパワコンの場合、1台で接続可能となる。これにより、1台のパワコンで太陽光パネルや蓄電池を設置可能なユーザーの比率は新設で85%、既設だと90%に向上するという。なお2014年モデルは新設35%、既設20%だった。

切妻や片流れなど、大容量の太陽光発電システムと蓄電池を1台のコンバーターで繋げる
既設の4回路モデルのパワコンでも、ストリングコンバータを併用することで、配線を組み替えることなく置き換えできる
2015年モデルのパワコンでは、1台で設置可能なユーザー比率が大幅に向上する

 さらに、使える電力が1.5kWに規制される停電時や、電力会社による出力抑制によって2.0kW以上を売電できない場合も、余剰分を最大2.0kWまで自動で蓄電池にためられるため、発電した電力を無駄なく利用できるとする。

年々大容量化する太陽光発電システムと蓄電池

 また、太陽光発電システムの大容量化に伴い、容量4.8kWhの蓄電池2個を繋げて設置する仕組みを開発し、合計容量を9.6kWhに増加させている。

 容量4.8kWhの蓄電池2台を繋げる仕組みにこだわったことについてかど野氏は、「容量9.6kWhの蓄電池を設置するには、決められた強度を確保するためにコンクリートで基礎を作らなねばならず、工期が長くなります。容量4.8kWhの蓄電池を2台繋げる場合は、簡易的な基礎工事で設置できるため、工期を約1日に短縮でき、施工費用も抑えられます」と述べた。

使える電力が1.5kWに規制される停電時や、電力会社による出力抑制によって2.0kW以上を売電できない場合も、余剰分を最大2.0kWまで自動で蓄電池にためる
容量4.8kWhの蓄電池2個を繋げる仕組みにしたことで、工期を約1日に短縮。施工費用も抑えられる

クラウドHEMSとの連携で停電時にかしこく蓄電

大規模な停電に備え、気象警報と連携。警報が発表されると自動で蓄電する

 クラウド蓄電池システムは、クラウドHEMSと組み合わせることで、大規模な停電の可能性がある大雨や暴風などの気象警報と連携可能となる。

 具体的には、気象警報の発表をクラウドサーバーが取得した時点で、自動的に蓄電池への充電を始め、停電になるまで放電せずに待機する。そして、停電するとためていた電力の放電を開始する。

 すでにクラウドHEMSを導入済みのユーザーも、ソフトウエアをバージョンアップすることで気象警報との連携が可能となる。

 また、クラウドHEMSの将来の展望として、「2015年度には消費電力量や発電量、生活パターンなどを学習し、ユーザーの要望に合わせた電気の使用法などを提案していきます」(かど野氏)。それ以降も、2016年移行の電力小売自由化や発送電分離に向けて、複雑化する料金プランに対応する。

 なおクラウド蓄電池システムは、東京ビッグサイトで2月25日~27日に開催される太陽電池/太陽光発電システムの国際商談会「PV EXPO 2015」に出展される。

中野 信二