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LED照明に情報を埋め込む技術を2015年にも実用化
~LEDに照らされた商品をスマホで撮影するだけで、その商品の情報を表示
(2014/11/17 14:49)
富士通研究所は、LED照明でモノへ照射する光に、ID情報を埋め込むことで、モノに情報を付与、モノからID情報を復元できる照明技術の開発に成功した。2015年度中にも実用化を目指すという。
これまでにもNFCタグやQRコードなどの識別情報をモノに貼り付けて情報を付与する方法はあったが、モノにタグを貼り付けると美観を損ねるといった問題が発生していた。
また、タグを貼付しない方法としては、GPSやBluetoothなどを用いる方法が実用化されているが、エリア単位の関連情報の配布に留まっていたり、対応できる機種が限定されていたりといった課題があった。
「目に見えない情報を光に埋め込み、スマートフォンなどのデバイスに搭載したカメラを通じて情報が確認できる点が特徴。この技術を利用することでモノ単位での情報配布を実現できる。利用者は、モノにカメラを向けるだけで様々な情報を取得することが可能になる」という。
このLED照明は一般の照明として利用することも可能だという。
開発した新たな照明技術は、カラーLEDのRGBの各色成分から発する光の強弱を時間方向で制御し、わずかに変化させることによってモノを識別するID情報を表現することが可能で、ひとつのLEDに対して、ひとつのID情報を付与することができるという。
また、RGBの各波長に埋め込んだ信号は反射時に一部が吸収されて弱くなることから、カメラで撮影した映像に対する反射を考慮する自動補正を行ない、情報検出の精度を高める技術も同時に開発したという。
通常のLED照明の代わりに、新技術を採用したLED照明でモノを照射。光の各色成分の強弱を時間方向で制御することでID情報を表現し、照射されたモノをスマートフォンなどで撮影すると、わずかな色変化の波を検出してIDを検出する。検出したIDをクラウドに問い合わせると、IDに応じた情報を入手し、スマホの画面に表示することが可能になるという仕組みだ。
スマホには、専用アプリを搭載することが必要だが、実用化段階ではAndroidやiOS用にアプリを提供できるという。
この技術を活用することで、商品にLED照明を照射しておき、スマートフォンをかざすだけで商品情報を提供することができるため、店舗やショールームでの商品情報の配布などに利用できるほか、博物館や美術館では展示物にスマートフォンをかざすだけで解説動画のスリーミング再生が可能になるといった活用が可能になるという。
富士通研究所 メディア処理システム研究所・中川章部長は、「スマートフォンの普及やクラウドにアクセスする通信環境が整備される一方、様々な場所で目の前にあるモノに関する情報を検索するといった使い方が一般化している。スマホを使って目の前にあるモノの情報を検索しやすい環境を作ることができる。観光地の歴史的建造物や看板にスマートフォンをかざせば、より詳しい情報を母国語で得られるといったサービスにも活用できる。また、舞台上のアーティストにスマートフォンをかざすだけで歌っている楽曲をダウンロードするといったことも可能になる。将来的には自動決済や配送管理などへの応用が可能になる」とする。
開発期間は約1年。黒をはじめとする様々な色においても安定した形でID情報を埋め込む点に苦労したという。
この技術は、LED照明としての活用ほか、プロジェクターにも埋め込むことが可能で、プロジェクターの画像情報から補足情報を得られるといった活用も可能だ。
さらに、街路灯の照明にこれを利用し、位置情報や観光情報などを提供することも可能になる。
「将来的にはパートナーシップにより家庭用LED照明にも応用範囲が広げることができるだろう。今回、技術発表を行なったことで、様々なアイデアが集まることも期待している」としている。
なお、同技術は、現地時間の11月19日から、ドイツ・ミュンヘンで開催される同社のプライベートイベント「Fujitsu Forum 2014」で公開される予定だ。