“全自動お掃除トイレ”「アラウーノ」の拠点
パナソニック電工の幸田工場を見る

 パナソニック電工は、掃除が要らないトイレ「アラウーノ」を製造する愛知県・額田郡の幸田工場を、報道関係者向けに公開した。


パナソニック電工が発売する“全自動お掃除トイレ”「アラウーノ」アラウーノを製造する、愛知県額田郡の幸田工場最寄り駅はJR東海道線・幸田駅。新幹線では豊橋駅と三河安城駅の間に位置する

ブラシ掃除不要の“全自動お掃除トイレ”、シェアは1年間で5ポイントアップ


アラウーノは、便器の素材に「有機ガラス」を採用した点が特徴。陶器製よりも水アカが付きにくいという
 アラウーノは、便器の素材に「有機ガラス」という樹脂を採用したタンクレストイレで、一般的な陶器製の便器よりも、水アカが付きにくい点が特徴。食器用中性洗剤からつくる微細な泡で汚れを落とす「激落ちバブル」、回転する強力な水流「スパイラル水流」という機能も併せて、約2~3カ月のブラシ掃除が不要になるという。同社では“全自動おそうじトイレ”を謳っている。

 省エネ面では、洗浄時に排水路を上向きから下向きに動かす「ターントラップ」という排水システムを搭載することで、1回当たりに流す水の量を抑制。約20年前のトイレと比べて年間で12.700円の水道代がお得になるという。また、便座と温水洗浄機能では、使うときだけ暖めるという「ダブル瞬間方式」を採用 。電気代は、約20年前のトイレが年間7,500円だったのに対し、アラウーノでは年間2,200円と、約5,300円の節約になるという。

 陶器製の便器と比較では、「重量が軽い」というのも特徴のひとつ。アラウーノの重量(16kg)は、陶器の約58%という軽さ。パナソニック電工 住建事業本部 幸田工場の武智裕介工場長は「女性でも持ち運んで組み立てできる」としている。そのため、トラックの積載量も陶器の約2倍に増やせるため、C02削減にも 貢献できるという。さらに、廃棄後の処理法の面でも、陶器よりも埋立量を約9割以上を削減できるとしている。

便器にはよごれが落ちやすい樹脂素材を採用。さらに、泡と水流によって、水アカとはじめとする汚れを自動で掃除する陶器(左)と樹脂(右)による、水アカの付着具合の差(写真は発表会当時のもの)食器用洗剤で作り出した泡によって、汚れを取り去る「激落ちバブル」機能も搭載されている(写真は発表会当時のもの)
洗浄時だけ排水路を動かし節水する「ターントラップ」を採用温水洗浄機能は、使うときだけ便座と洗浄水を温める「瞬間式」
樹脂素材のため、重量は陶器の約半分という軽さ。女性でも持ち運べるというパナソニック電工 住建事業本部 幸田工場 武智裕介工場長

 アラウーノは、2006年12月に発売しており、2008年にはダブル瞬間方式などの機能を省いた普及モデルの「アラウーノS」も投入。11月には北京で展示会を開催し、12月には台湾市場にも発売するなど、海外にも積極に展開している。なお、海外で発売されるアラウーノは、幸田工場で生産したものを輸出しているという。

 パナソニック電工 取締役 住建事業本部長の北野亮氏は、2009年度の新築住宅件数を、100万戸を割る75万戸と、例年よりも少なく見通す一方で、アラウーノのシェアは「タンクレストイレの市場では約3割強。この1年間で約5ポイント数字を上げた」と、好調な数字を記録していることをアピールした。

 なお、アラウーノの価格帯は270,900~367,500円。アラウーノSは199,500円~231,000円。新築・リフォーム時に導入する住設機器となる。

12月には台湾市場へも展開。幸田工場で作った製品をそのまま輸出しているというパナソニック電工 取締役 住建事業本部長 北野亮氏

人の手が行き届く生産ライン


 アラウーノの生産工程は、大まかに分けると、(1)便器など大型部品の成型、(2)便器の組み立て、手入れ、(3)温水洗浄機能やリモコンなど、小型部品の組み立て、(4)各パーツを組み合わせて梱包する、という順番になる。以下、写真を中心に取り上げる。


・(1)便器などの大型部品の成型

 大型の成型器を用いて、便座やカバーなど、大型のパーツを成形する。できあがったパーツの仕上がり具合は、すべて人の目でチェックしている姿が見られた。

大型の機械を使い、便器の各パーツを作るできあがったパーツ。写真はフタや便座部分に当たるできあがりは必ず従業員がチェック

・(2)便器の組み立て

 次に、成形したパーツを便器として組み立て、研磨する。こちらも仕上がりを従業員がチェックし、研磨も人の手で行なっている。この工程では写真撮影が許可されなかった。


・(3)温水洗浄機能やリモコンなど小型部品の組み立て

 便器全体が仕上がった後は、温水洗浄機能やリモコン、ターントラップ部分など、各パーツの組み立てに移る。1つの作業台で従業員1人が作業をするセル生産方式を採用している。この工程では、ほとんどの従業員が女性だった。

 また、できた製品の一部を抜き取って、耐熱、耐冷、強度などの検査も行なわれている。

小型部品は、人間の手で作られる。写真はリモコンを作っているところ完成したリモコンはこのようになる
こちらは温水洗浄便座部分を組み立てているところ。女性の従業員が多いが、工場によれば「女性の細やかさが活きる」とのこと作業台に従業員が1人付くセル生産方式を採用。柔軟な生産に対応するというこちらはターントラップ部分を組み立てているところ

・(4)便器と温水洗浄機能の組み合わせ、梱包

 できあがった便器と温水洗浄機能を組み合わせ、梱包。アラウーノが軽いこともあって、女性従業員でも1人で難なく仕事をこなす姿があった。

最後は便器と温水洗浄機能を組み合わせる。アラウーノが軽いため、女性従業員一人でも問題なく作業がこなせていた梱包して出荷準備が完了。このパッケージが自宅に届くことになる

 工場を見学して特徴的に感じられたのが“手作り感”が強いところ。便器など大型のパーツは機械で作られているが、仕上がり具合のチェックや、温水洗浄機能・ターントラップといった根幹となる機能の組み立てなど、製品の本質に関わる部分では、必ず人間の手や目が行き届いている。


生産法や集塵機を改良するなどCO2削減も目指す


 幸田工場は、アラウーノなどサニタリー事業のほか、洗面化粧台などの水回り設備も生産している工場。アラウーノの生産は2009年春より開始している。所在地は愛知県額田郡幸田町大字野場赤柿4-3。

 同工場では、CO2削減など環境対策の取り組みも行なっているという。例えば、アラウーノの場合は、アニール(歪みを取るための作業)時間を短縮するなど、製造工法を変更することで、アラウーノ1台を生産する際の電力量を抑制しているという。

 また、洗面化粧台の製造時には、製造時に発生する粉塵を一括して集める大型集塵機の使用を止め、各工程ごとに粉塵を集める、小型の機械に変更。工程毎に集塵機のON/OFFが生後できるため、消費電力を抑制。これにより、「約56%のCO2削減が達成できる」(武智工場長)という。

 このほか、洗面化粧台やキッチン設備などを体験できるコーナー「幸田道場」も開設している。

 工場見学や「幸田道場」の体験会は、新築住宅の購入、リフォーム希望者に対して随時催されているという。

幸田工場では、アラウーノなどのサニタリー設備のほか、洗面化粧台など水回り商品も生産している「水回り商品研究所 幸田道場」と銘打たれた体験設備も用意されている。新築やリフォームを希望する場合、工務店からの紹介などで利用できるという



(正藤 慶一)

2009年12月14日 13:10