ニュース

ディスプレイ搭載の冷蔵庫など、ハイアールが家電業界に革命

新参者が家電業界に革命を

ハイアールアジア 代表取締役社長兼CEOの伊藤嘉明氏

 ハイアールアジアは、戦略発表会「Haier Asia Innovation Trip! 2015」を開催した。同社の代表取締役社長兼CEOの伊藤嘉明氏が、今後の同社の取り組みなどについて自らプレゼンテーションした。

 ハイアールは、中国資本の大手家電メーカーで、6年連続世界シェアNO.1を獲得している。ハイアールアジアは日本を含むASEAN諸国を管轄する会社で、旧三洋電機の事業体をハイアールが引き継いだ形で2012年1月に設立した。

 伊藤嘉明氏は、2014年3月にハイアールアジアのCEOに就任、就任時から「第二の創業」、「革命」という言葉をたびたび口にしており、今回の戦略発表会では同氏の具体的な戦略が明らかになった。

 伊藤氏は、「家電業界において新参者だからこそ、革命を起こせる。閉塞感のある家電業界で何か面白いことを起こしたい」とし、具体的な3つのビジョンを挙げた。

代表取締役社長兼CEOの伊藤嘉明氏が全てのプレゼンテーションを行なった
伊藤氏が掲げた3つのビジョン

冷蔵庫をインターネットデバイスにする

 まず1つめは、「家電を利用した新しいビジネスモデルの構築」。

 「家電の買い替えスパンは冷蔵庫だと8~10年、もっと長く使っている人もいる。製品を売って終わりではなく、次の買い替えの間にもっと新しい価値を提供していきたい」とし、液晶ディスプレイを搭載した冷蔵庫「DIGI」を紹介。

 冷蔵庫の扉部分に液晶ディスプレイを搭載したもので、画面は同社のサイトから購入する。例えば、アクアリウムの画面を購入し、その後に魚だけを単品で購入するなどの仕組みも想定しているという。

液晶ディスプレイを搭載した冷蔵庫「DIGI」
前面パネルの表示を変えることができる
アクアリウムの表示にしたところ
魚の数を増やすこともできる
表示デザインなどの購入による収益モデルを想定している

 DIGIについては「冷蔵庫をインターネットデバイスとして考えれば、可能性はさらに広がる。冷蔵庫に入っているものをスキャンして、賞味期限を知らせたり、足りない食材をネットでそのまま購入することもできる。あるいは離れて暮らす家族の行動を確認するコミュニケーションツールとしても使える」と話す。製品は現在開発中で、発売時期は未定。

 またコンテンツプラットフォームとして、ネットワーク接続された液晶ディスプレイを活用したいわば“デジタル額縁”「intergallery」事業もスタート。

「intergallery」事業では第一弾として有名アーティストのポスターを配信する
今後の展開としては、アートやエンターテイメント、ブランドの広告など様々なことが可能

 「これは単なる額縁ではない。ハードウェアはソフトウェアの乗り物でしかないので、我々はまずハードを普及させることに注力する。なるべく安い価格で製品をばらまいて、コンテンツ事業で勝負していく。前職で、音楽と芸術は国境を越えるということを学んだ。第一弾として、アコースティックなポスターを配信する」。現在開発中で、サービス開始時期は未定。

 企業向けにも新たな取り組みをスタートする。冷蔵庫を企業に無料で貸し出し、中身を提供する「OFF ICE(オフアイス)」という取り組みで、高級でヘルシーなアイスやスムージー、スープなどを提供するというもの。すでにサイバーエージェントで、テスト導入しており、好評を得ているという。

 「我々は冷蔵庫を作る会社だが、それをただで提供するという取り組み。その代わり中身を利用する。オフィスでちょっと小腹が減った時に食べたくなるような、少し高級なアイスなどを置く。ゆくゆくは高付加価値商品のテストマーケティングにも活用が可能」

ハイアールの冷蔵庫を無償で貸し出す「OFF ICE(オフアイス)」という取り組み
冷蔵庫はただで貸し出すが、中に入れるモノはハイアールが提供する
高付加価値商品のテストマーケティングにも活用が可能としている

持ち歩ける重量200gの洗濯機「コトン」

持ち歩けるハンディ洗濯機「コトン」

 2つ目の戦略としては、「既存分野でのイノベーション」を掲げる。

 「我々は冷蔵庫や洗濯機を作る白物家電屋さんだが、その枠にとらわれず、みんながワクワクできるような取り組みを進める」

 最初の製品としては、持ち歩けるハンディ洗濯機「コトン」を提案。外出先で手軽に使える染み抜き機で、オフィスやレストランなどでも手軽に使える点が特徴。発売は3月上旬からで、価格は10,800円(税込)。AQUAオンラインストアでは本日より予約販売を開始している。

 そのほか、スーツなどについた焼き肉や油、タバコなどのニオイをオゾンで除去する「スーツリフレッシャー」も今年春の発売を予定している。スーツやジャケットなどをハンガーにかけて、一晩おくだけで、除菌、消臭することができるという。

 「デザインについては、プロに任せたいと思っている。今日の発表会を見て、興味があるというアパレルメーカーは是非連絡いただきたい」

重量は200gで外出先などでも手軽に使える
スーツなどについた焼き肉や油、タバコなどのニオイをオゾンで除去する「スーツリフレッシャー」
本体土台部分

革張りの冷蔵庫や、スケルトン洗濯機など

 3つめは「家電の嗜好品化」を掲げる。

 「日本の家電業界は非常に厳しく、日々価格や性能の追いかけっこをしている。その追いかけっこに巻き込まれるのではなく、嗜好品を高めた製品を提供していきたい。家電製品というのは、長く使うものなので、どうしても飽きのこないデザインが選ばれがち。それを変えたい」と話し、スマートフォン感覚で使える冷蔵庫カバーを提案する。

 冷蔵庫カバーには、ディズニーとライセンス契約を結んで、ミッキーマウスやアナと雪の女王などをラインアップする。発売は2015年春を予定する。

ディズニーのキャラクターカバーを装着した冷蔵庫
カバーは簡単に外すことができる

 また、嗜好品を高めたラインナップとして2014年6月に戦略的パートナーシップを結んだamadanaブランドの家電製品をラインナップする。レザー張りの冷蔵庫や、デザイン性にこだわった縦型洗濯機、二槽式洗濯機、トースターなど、いずれも高いデザイン性が特徴。いずれも2015年夏頃に発売を予定。

 「これまでの洗濯機や冷蔵庫には使わなかった素材をあえてつかっている。個人的には世界一カッコ良い洗濯機だと思っている」

アマダナデザインのトースター
冷蔵庫
取っ手の部分にレザーカバーが装着されている
前面レザー張りの冷蔵庫
ホワイトとベージュの2色が展示されていた
左から二槽式洗濯機、ステンレスを採用した縦型洗濯機
現在開発中のスケルトン縦型洗濯機

 また、現在開発中の製品として、「洋服をキレイにしているところをみたい、というところから開発をスタートした」というスケルトンの洗濯機も紹介した。

 約1時間半の発表会は、終始、伊藤氏のプレゼンテーションによって進められた。伊藤氏は、今回の戦略発表について「まだ第一弾に過ぎない」とし、最後に「今のような黒モノ(テレビ、オーディオ機器など)、白モノ(洗濯機、冷蔵庫、エアコンなど生活家電)のような分け方はこれからなくなっていくだろう。我々は、中国資本の会社ではあるが、社員のほとんどは日本人だ。しかし、そんなことは関係ない、我々がテリトリーとしているのはアジア10カ国であって、我々は知恵を集結して、アジアにエキサイトなものを提供していかなければならない。それが責務だと思っている」と語った。

阿部 夏子