三菱、断熱材の薄型化でサイズそのまま容量が増えた冷蔵庫「置けるスマート大増量」
■買い替え需要を意識した大容量なのに「置けちゃう」サイズ
置けるスマート大増量 MR-JX60W |
三菱電機は、幅685mmで容量600Lの冷蔵庫「置けるスマート大増量 MR-JX60W」を11月16日より発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は34万円前後。
買い替え需要を意識して、本体幅をスリムにした冷蔵庫。同社によると、2013年度の冷蔵庫需要は約405万台で、そのうち約8割が買い替え需要に当たる。買い替えの際にユーザーが意識することとして、省エネ性能や価格以外に大容量を挙げる人が多く、自宅に設置できる横幅の中で最大容量の製品を選ぶ人が多いという。
新モデルではこの点に着目して、本体幅をそのままに庫内の容量を大きくした点が特徴。大容量化に当たっては、断熱材が課題となった。従来モデルでは、省エネ性能を高めるために断熱材の量を多くしており、そのために庫内のスペースが少なくなっていたという。そこで、新たな断熱構造を持つ、厚みを抑えた断熱材を開発。強度のある高密度ウレタンを使う事で、壁面の厚さを低減し、大容量化と省エネ性能を両立したという。冷蔵室の壁面の厚さは従来の45.4mmから29.5mmに、冷凍室の扉面は従来の100mmから40mmにそれぞれ薄くなっている。
これにより、MR-JX60Wは本体幅685mmで容量600Lを実現。これは、本体幅サイズに対しての容量としては、業界最大で、同社10年前の機種と比較すると本体幅は同じで容量は145L増えている。
本体幅を抑えながら、大容量を実現するために、断熱材の薄型化を進めた。従来より狭いスペースへ均一にウレタンを充填する独自の技術を採用している | 左が今回採用している薄型の断熱材、厚さは29.5mm。右は従来のもので、厚さは45.4mm | 冷凍室の扉の厚さの比較。左が従来の100mm、右が新モデルの40mm。扉や壁面が薄くなったことが、大容量化の鍵となった |
右が2002年に三菱が発売したモデル「MR-S46D」。本体幅は今回のMR-JX60Wと同じだが、容量はMR-JX60Wの方が145L多い | 10年前のモデルが容量600Lを実現するには、もう1つ小型の冷蔵庫が必要だった | 冷蔵室内 |
製氷室 | 三菱独自の「瞬冷凍室」。-7℃で冷凍することで、食材の細胞破壊を抑えて、食感を残した冷凍ができる |
冷凍室 | 野菜室 |
■使う時だけ浮き出る操作パネルなど、機能も充実
本体機能では、過冷却現象を応用した独自の瞬冷凍技術「切れちゃう瞬冷凍」機能を従来より継承。食品の細胞破壊を抑えながら、食品全体を均一に凍結するため、凍結前の食感を維持できるほか、-7℃で冷凍するため、包丁で簡単に切れ、小分けや解凍の手間が省けるという。
製氷部分は、製氷皿・給水経路・給水ポンプ・給水タンクが全て取り外しで、水洗い可能。製氷には、ミネラルウォーターも対応する。
野菜室では、野菜から出る水分を逃さないために、密閉度を向上した。また、より野菜の水分を維持する「うるおい保存」に設定した場合、ほうれん草をラップなしで保存しても約89%の水分が保持されるという。
過冷却現象を応用した独自の瞬冷凍技術「切れちゃう瞬冷凍」。冷凍した食材をそのまま包丁でカットできるので、小分けや解凍の手間が省けるという | 野菜室は密閉度を高めて、野菜の水分が逃げにくい構造とした。野菜の水分保持率を高める「うるおい保存」設定も用意する |
使い勝手の面では、使うときだけアイコンが浮かび上がる「タッチdeアシスト」を新たに採用。操作しない時にはパネルがない状態なので、見た目がすっきりし、手入れも楽に行えるという。
本体前面の操作部。使わないときは何も表示されていない状態 | 指で触ると操作アイコンが浮かび上がる仕組み | 操作アイコンは大きめで、わかりやすい |
センサーで各部屋の温度と全ての扉の開閉状況を検知し、各部屋に合わせた運転を自動で行なう「部屋別おまかせエコ」を搭載する |
省エネ性能では、センサーで各部屋の温度と全ての扉の開閉状況を検知し、各部屋に合わせた運転を自動で行なう「部屋別おまかせエコ」機能を従来機種より継承。冷やしすぎを防止することで、約10%の省エネにつながるという。
本体サイズは685×735×1,821mm(幅×奥行き×高さ)。各室の容量は冷蔵室が309L、野菜室が122L、瞬冷凍室が43L、冷凍室が126L。本体カラーはロゼシャンパン、クリスタルホワイト、ロイヤルウッド、シャイニーブラウンの4色。
ラインナップとして、本体幅650mm、容量520Lの「MR-JX52W」、高さを1,691mmに抑えた幅685mm、容量550Lの「MR-JX55LW」、高さ1,691mm、容量470Lの「MR-JX47LW」も同時発売する。機能は同等で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は順に30万円前後、32万円前後、28万円前後。
冷蔵庫の高さがネックとなって、大容量タイプを導入できなかった人向けに高さを1,691mmに抑えたモデルも用意。幅685mm、容量550Lの「MR-JX55LW」(左)。右は高さ1,821mmのMR-JX60W | 高さ1,691mm、容量470Lの「MR-JX47LW」 |
■新コンセプトは「スマートクオリティ」
三菱電機 常務執行役 リビング・デジタルメディア事業本部 本部長 梅村博之氏 |
会場では、三菱電機 常務執行役 リビング・デジタルメディア事業本部 本部長 梅村博之氏が三菱家庭電器事業部門の新トータルコンセプトを発表した。新しいコンセプトは、「スマートクオリティ」で、家庭電器事業における提案強化と事業拡大に一層取り組む構えだ。
同氏は新しいコンセプトについて「東日本大震災以降、生活者の意識や価値観が大きく変化し、電気メーカーに求められるものも変わった。これらの流れを受けて、新コンセプトを打ち立てた」と説明した。スマートクオリティという言葉には「スマート(賢い・つながる・ムダがない)な技術により、社会・暮らし・製品・人をつなぎ、明日の暮らしのクオリティ向上を実現する」という狙いが込められているという。
三菱の家庭電器事業部門では、従来「超高齢化社会」への備えを意識して、ユニバーサルデザインやエコ性能を前面に打ち出した「らく楽アシスト」「ユニ&エコ チェンジ!」「節電アシスト」の3つをコンセプトとしてきた。梅村氏は、コンセプト変更の理由について「スマートグリッドやスマートハウス、発電・蓄電・節電システムなどの電力インフラトレンドの加速を受け、コンセプトも変えた。従来のスマート電化からスマートハウスへ各事業領域をつなぐ、シナジー効果も期待している」と話した。
三菱電機は、神奈川県鎌倉市の三菱電機 情報技術総合研究所内に実験用住宅施設「大船スマートハウス」をオープン。太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)を連携して制御するパワーコンディショナーを設置し、家庭用エネルギー管理システム「HEMS」と併用することで、災害などで1週間停電しても過ごせるスマートハウスの実証実験を行なっている。梅村氏は、「来年度以降にはスマートハウスの事業化を目指している」と話し、スマートハウスへの取り組みを一層強化していく構えを見せた。
会場では、「スマートクオリティ」のイメージキャラクターとしてモデル・女優の杏さんが登場。杏さんを起用した理由としては「暮らしの本質を見つめ、暮らしのクオリティを高めていく、そんな新しい暮らし方を率先して歩んでいる」イメージとスマートクオリティのイメージが共通したからだという。
三菱電機の新しいコンセプト「スマートクオリティ」 | イメージキャラクターを努める女優の杏さん | 杏さんには梅村本部長より花束が手渡された |
杏さんは、今回の起用に関して「このような大きな役目をいただいて、少し緊張しています。でも、私自身学びながら、これからの生活にも活かしていきたいと思っています」とコメントした。
(阿部 夏子)
2012年8月21日 14:17