長期レビュー

パナソニック「ヒートポンプななめドラム NA-VR5600」

~センサー技術で新たな世代に突入したななめドラム
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「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



ヒートポンプななめドラム NA-VR5600

 高級白物家電の代名詞的な存在といえる、ドラム式洗濯乾燥機。私自身も、2006年にパナソニックのななめドラムを、2009年は日立のビッグドラムをそれぞれ購入し、使用してきた。AV機器や携帯電話に比べ、進歩のスピードが遅い印象のある白物家電だが、すくなくとも、このドラム式洗濯乾燥機については例外である。数ある2009-2010年モデルの中から、レビュー対象として、なぜパナソニックのななめドラムを選んだのか。それを説明する前に、まずは現在のトレンドをおさらいしてみよう。

メーカーパナソニック
製品名ヒートポンプななめドラム NA-VR5600
購入価格218,000円
購入店舗ヨドバシ.com



ドラム式洗濯機 2009-2010年モデルのトレンドとは

 いまや、洗濯乾燥機の高級モデルといえばななめドラム方式、というのは多くの人が知るところだろう。台数の上では、今も縦型洗濯乾燥機が圧倒していることに変わりはないが、一方で、各メーカーの技術競争が加熱しているのは、やはり最高級クラスのドラム式だ。

2003年に発売された初代ななめドラム「NA-V80」
 パナソニックは日本におけるドラム式洗濯乾燥機のパイオニアとして、2003年に初代ななめドラムを発表。縦型とは比べものにならない節水性と、洗濯物を取り出しやすい、ななめ上を向いたドラムという新しい発想で、新ジャンルを確立した。東芝、シャープ、日立、三洋、三菱といった大手メーカーもこの流れに追従。2005年~2006年くらいまでがいわば、“ななめドラム第一世代”といっていいだろう。

 第二世代は、“省エネ競争”である。この口火を切ったのは先駆者のパナソニック。2005年にヒートポンプを使って乾燥する仕組みを取り入れ、6kgの洗濯~乾燥で消費電力を4,000Whだった消費電力を1,840Whへと半減させ、競合を圧倒したが、翌年、すぐに東芝がヒートポンプ搭載機で巻き返す。ドラム式で出遅れた日立も排熱を再利用する独自機構を2008年に投入し、2005年から2008年までの3年で、省エネ競争は、洗濯~乾燥で1,000Whを切るところまで来た。

 そして2009-10年モデルだが、省エネ競争の流れは引き継ぎつつも、さらなる付加機能を模索する流れに変わってきた。パナソニック、シャープ、東芝が新型インフルエンザの流行を背景に、空気清浄機などで注目されたイオン技術を洗濯機にも投入。洗濯物のニオイや除菌効果を謳う。さらに2強のパナソニック、東芝は、縦型に比べ劣るとされる、洗浄力に着目。衣類にかける水流を改良し、洗浄力アップを図っている。

【2009-2010年モデルの最高級グレードの概要】
メーカー製品名洗濯~乾燥の
消費電力量
特徴
パナソニックNA-VR5600860Whヒートポンプ、ナノイーイオン搭載
東芝TW-Z9000760Whヒートポンプ搭載
日立BD-V3200950Wh強力な風で衣類のシワを伸ばす「風アイロン」機能搭載
三洋AWD-AQ40002,400Wh水を繰り返し使い節水する「アクアループ」機能を搭載
シャープES-V5102,050Whプラズマクラスターイオン搭載


 省エネ競争自体も、新たなステージに踏み出した。東芝がヒートポンプを抜本的に改良し、約760Whとトップに立った。だが、パナソニックは衣類の量と汚れ具合を検知して無駄な運転を減らし、省エネするセンサー技術「エコナビ」を搭載。スペック値は約860Whと東芝に譲るものの、実使用時の効力で優位性をアピール。これら2社と、950Whの日立を合わせた3社が、省エネ競争のトップグループはアンダー1,000Whの領域で競争を続けている。

 こうした流れにある2009-2010年モデルの中で、パナソニックの「NA-VR5600」は第三世代の幕開けに位置づけられる製品だと思っている。最大の理由は「エコナビ」を搭載していることだ。

 この背景には、各社開発が進み、スペック上の消費電力の削減幅が徐々に小さくなっていることが挙げられる。第二世代の競争の結果、消費電力量は縦型洗濯乾燥機の1/3、1/4の水準に達しており、今後、毎年10%、20%の削減はあっても、ヒートポンプで劇的に変わった第二世代の時のように、いきなり半減、ということは考えにくい。

 とすると、規格で決められた一定条件下で測定した、ある意味で「死んだ」数値であるスペック値を追求するのではなく、センサー技術などで実使用時の消費電力を削っていく、パナソニックのアプローチが今後、主流になる可能性は高い。

 これはまさにエアコンが辿ってきた道で、ハードウェア的な改良が飽和すると、人や部屋の形状などをセンシングして制御面から省エネ性能を高めるのが、2~3年前からのトレンドで、今や主流になりつつあるだ。ドラム式洗濯乾燥機は、エアコンほど研究開発が進んだ分野ではないが、こうした方向に進むのは容易に想像できる。

 来るべきセンシング制御の時代に向け、最初に舵を切ったのがパナソニック、ということだ。これがNA-VR5600をレビュー対象に選んだ最大の理由である。

発展途上のドラム式。“成熟度”も選ぶカギに

 しかし、それだけではない。2006年、2009年と2台のドラム式洗濯乾燥機を使ってきた「経験」もある。

 それはスペックや、量販店で実機を見ただけではわからない「使い勝手」だ。たとえば、ビッグドラムに買い換えた際、規定量内でも衣類を詰め込むように入れるとエラーが起こりやすい、全自動モードで乾燥までしたときの乾き具合、など細かな、だが使い続けると気になる違いがいくつかあった。そこで感じたのは、まずはこのジャンル自体が発展途上だということ。メーカーに限らず、一世代違うだけで、ドア開閉の感触が微妙に違ったり、洗剤ケースの文字表記が違ったりと、細かな改良が積み重ねられている。“枯れた”ジャンルである縦型洗濯乾燥機では、モデルチェンジごと細部に渡って変更が加えられることは、そうそうない。

 なにが言いたいかというと、今、この黎明期の段階では世代を重ねた先行者、つまりはパナソニックが有利ではないかと考えた。というわけで、“実質消費電力”を削る新たなアプローチを採り、もっとも世代を重ねて熟成された、パナソニックのななめドラムを選んだわけだ。

 そしていよいよ設置。築20年オーバーのマンションに引っ越したため、防水パンがない。そのため、排水はホースを伝って風呂場に流す方式を取る。設置は試運転も含め、20分ほどで終了。スペースに余裕はないが、なんとかドアを開いても干渉しないように設置できた。

洗面台の脇に設置古いマンションのため、水道の蛇口の高さが合わないかろうじてドアを開くスペースを確保した
細かい改良が加えられた洗剤ケース。液体か粉末かがわかりやすいように、黒い色が付いている乾燥した際に生じる綿状のゴミを集める乾燥フィルター。頻繁に掃除が必要になる部分だけに、扱いやすさが求められる

 カラーは、ノーブルシャンパンである。シャンパンといってもベージュといった印象で、明かりによってはホワイトに間違えるくらい、淡い色だ。

 さて、今回は、トレンドのおさらいと設置までをお届けした。次回はいよいよ、洗濯と乾燥の基本性能についてお伝えしたい。



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2010年1月15日 00:00