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家電製品レビュー
ナショナル「ななめドラム洗濯乾燥機 NA-VR1100」

~使いやすさと省エネ性が光る洗濯乾燥機
Reported by 本誌:伊藤 大地

NA-VR1100
 高機能、高価格のいわゆる“プレミアム家電”の中でも、花形といえる存在がドラム式洗濯乾燥機だ。2003年、ナショナルが発売した「ななめドラム」以降、各社がこぞってドラム式の高級機を投入し、現在、売り場はまさに百花繚乱といっていい状態にある。

 それに引きかえ、我が家はというと、学生時代に購入した一人暮らしサイズの洗濯機を使っていた。いつも許容量いっぱいの衣類を洗濯してきたせいか、相当くたびれてきている。新しい家族ができ、3人家族となったことをきっかけに、洗濯機を新調することにした。

 条件は、ドラム式であること、ランニングコストが安いこと。そこで、2006年11月当時、ちょうど発売になったばかりのナショナル「ヒートポンプななめドラム NA-VR1100」を購入した。価格はオープンプライス。購入価格は、発売直後ということもあり、278,000円だった。現在、大手量販店では16万円程度で販売されているようだ。

 購入後、およそ半年に渡って使用したので、レポートしたい。





設置場所を事前に確認しよう

 NA-VR1100の購入を決める際、まず心配したのは、置き場所である。我が家の洗濯機置き場は、多くの賃貸集合住宅がそうであるように、洗面所とバスルームへの入り口が一体になった部屋だ。広さ2畳ほどのスペースで、洗面台の横に防水パンがある。防水パンのサイズは内寸70×54cm(幅×奥行き)のもの。その上に、一人暮らし用の縦型自動洗濯機を置いて使っていた。

 置ける、置けないという次元で話をすれば、細かく寸法を測らずとも、置けることはわかっていた。というのも、最近のドラム式洗濯乾燥機は、集合住宅で事実上標準の奥行き54cmの防水パンに入るように設計されているからだ。

 このNA-VR1100、スペック上では奥行き713mmとなっており、これだけ見ると、54cm(=540mm)の防水パンには入らないように見える。しかし、713mmというのはあくまでも、一番出っ張った部分の話。設置用の足が若干内側に付いており、54cmの枠内に入るようになっているのだ。

 このほかにも、ほかに設置の上で事前に確認したいポイントは、2点ある。

 1つ目が、給水栓の位置だ。洗濯機置き場の壁面には、洗濯機に水を供給する水栓があるが、水栓の高さによって、本体と干渉する可能性がある。特に、奥行き54cmの防水パンの場合、本体の前後方向は入ったとしても、洗濯機の背中の部分が、水栓と干渉してしまっては、設置することができないからだ。本体の高さは約1m。これ以下の場合は、オプション品として、6,825円で販売されている「壁ピタ水栓」などを使用する必要がある。

 2つ目は、防水パンの排水口の位置だ。防水パンの四隅に近い場所に排水溝があれば、標準同梱品のホースで事足りるのだが、洗濯機を置くスペースの真下に排水口があると、別途、2,100円の「真下排水ユニット」を購入しなくてはならない。

 このような事情があるため、量販店などで購入し、設置を依頼する場合でも、設置場所については販売店と事前に打ち合わせることになる。購入する前に、一度メジャーできちんと測っておくことをおすすめする。

 さて、我が家の設置に話を戻そう。我が家の場合、水栓と排水に関しては、特に追加のパーツを使用せずとも設置できた。搬入から設置、動作確認までにかかった時間は20分といったところだろうか。

 なんとか入ったものの、問題になったのはドア開閉スペースだ。

 我が家では、洗濯機の前に下着などを入れる棚を置いていた。しかし、NA-VR1100では、直径約40cmの円形のドアがあり、これを開けたとき、棚と干渉してしまう。縦型洗濯機の場合、基本的に上から洗濯物を出し入れするため、洗濯機が置けさえすれば、スペースの心配がなかったため、油断していた。あわてて、棚をほかの部屋に移動させることにした。これでようやく準備完了だ。


ついに我が家にやってきた「ななめドラム」 左開きを選択。ドア開閉スペースを確保するのを忘れずに
操作パネル

操作は簡単

【動画】おまかせコースで運転を開始するようす(WMV形式, 1.79MB)
 さっそく、本体を見ていこう。

 操作パネルのボタン数は全部で18個。というと数が多くわかりにくい、と思われるかもしれないが、18個のボタンは機能ごとにうまく分類されており、操作で悩むことはあまりない。

 まず、水量や洗濯・乾燥時間などすべて自動で設定する「おまかせ」コース操作の手順を追うと、

(1) 電源を入れる
(2) 洗濯のみ/洗濯~乾燥/乾燥のみ から選ぶ
(3) スタートボタンを押す


こういう流れになる。ボタンのタッチ回数は3回だ。さらに、前回と同じ設定で洗濯/乾燥する場合については、「入」ボタン→「スタート」の2タッチで動作が開始。衣類の重量を検知するため、ドラムが回転する。その状態のまま数秒待つと、液晶パネル部に「1.0」「0.8」などの数字が表示される。これは、適切な洗剤の量をユーザーに知らせるためのもの。1.0なら粉末洗剤をスプーン1杯、0.8なら8分目という意味だ。NA-VR1100では粉末洗剤のほか、液体洗剤も使用できるが、表示の目安は粉末洗剤が基準になっている。

 指定の量の洗剤を、操作パネル左にある洗剤ケースに入れれば、作業完了。あとはすべての作業が完了するまで、なにもする必要はない。

 「おまかせコース」の場合、「入」「切」、そして「洗濯」「洗濯~乾燥」「乾燥」のいずれかを選び、最後に「スタート」と、この6つのボタンだけで最低限必要な操作は行なえる。

 これらのボタンは操作パネル右側に固まっており、一方、細かい設定を行なうボタンは左半分に集中している。「簡単操作なら右側」、「こだわり操作は左側」という明快なメッセージが受け取れる。機械の苦手な人でも、数回使えば覚えられるだろう。

 「おまかせコース」の場合、洗濯物の量にもよるが、おおむね、洗濯から乾燥まで3時間前後で終了する。


洗浄力について

 さて、洗浄力についてだが、正直なところ、なんの不満もない。縦型洗濯機からNA-VR1100に買い換え、約半年使っている私のケースにおいて、洗い上がりに不満を感じたことはない。

 次に、乾燥について。まず、結論から言うと、シワが生じるのは避けられない。しかし、現在のところ、シワが付く問題を根本的に解決した製品はなく、洗濯乾燥機という製品ジャンル全体が抱えている問題といっていい。シワが寄らない製品がいつか開発されることを期待しつつ、ここではうまくシワとつきあっていくポイントを紹介することにしよう。


綿100%のデニムをそのまま乾燥した。ほかの洗濯物と絡んでシワができている ポリエステルが25%入ったポロシャツ。ほとんどシワがなく、そのまま着られる状態

 まず1つ目は、乾燥するときはなるべく、同時に処理する衣類の量を減らすことだ。乾燥時に生じるシワの主な原因は、洗濯物同士が絡まった状態のまま、水分が抜け、乾燥してしまうことにある。逆に言うと、洗濯物同士が絡まらなければシワを最小限に抑えることができるというわけだ。

 2つ目は、洗濯と乾燥の作業を別々に行なうこと。具体的には、脱水まで終わった後、一度中身を取り出して、絡んだ洗濯物をほどき、洗濯物を干すときのようにシワを伸ばしてやるとよい。一手間かかるが、この一手間でかなりシワが減らせるのだ。もっと踏み込むと、乾燥前に、綿100%などシワのつきやすい衣類だけ取り除き、手干しするという手もある。

 最後の3つ目は、シワの付きにくい化繊混合の衣類を選ぶことだ。綿や麻など、天然素材はやはり、シワが目立つ。ところが、ポリエステルなど化繊がちょっと入っているだけでも、シワの付き具合は全然違う。さらに「形態記憶」などの機能を持ったシャツだと、シワ自体、ほとんど付かなくなる。

 というわけで我が家ではNA-VR1100の導入以来、下着や靴下など、シワが寄ってもあまり気にならないものを除き、綿100%の衣類をほとんど買わなくなった。もっとも、衣類の素材に関しては好みや肌に合う、合わないといった要素もあるのですべての人に勧められる方法ではないが、単純にシワを回避するという面では、もっとも有効な対応策だ。

 ここで紹介した3つの対応策は、いずれもシワがつきやすいという問題の根本を解決するものではない。しかし、ユーザーが機械に一歩、歩み寄ることで洗濯乾燥機の弱点を多少なりともカバーできる。


「おうちクリーニング」と「棚乾燥」でクリーニング屋いらず


 次に、「おまかせコース」以外の運転モードについて見ていこう。ざっと列挙すると、「ナイト」「お急ぎ」「柔らかプラス」「約40℃消臭」「約60℃除菌」「おうちクリーニング」「毛布」「槽洗浄/乾燥」の8種類がある。このうち「槽洗浄/乾燥」はメンテナンスのためのもので、洗濯とは関係がない。

 「ナイト」は運転音を控えめに、その代わり時間を長くというモード。「お急ぎ」は最短144分で洗濯~乾燥が可能なモード、といった具合だ。各運転コースの詳細については、下の表を参照いただくとして、ここでは実際に私がよく使っている「おうちクリーニング」について、説明したい。


運転モード一覧(取扱説明書より引用)

 「おうちクリーニング」とは、ウールのセーターなど一般的に、洗濯機で洗えないとされる衣類を洗浄するコースだ。おうちクリーニングモードでは、乾燥はできず、洗濯のみのコースとなっている。

 このモードではドラムに水を溜め、回転させるのでなく洗浄液に浸けたまま、揺り動かすようにしてやさしく洗うことで、デリケートな衣類の型くずれを防いでいる。洗える衣類は、ドライクリーニング推奨を意味する「ドライ」マークがついたもの。洗剤には液体洗剤を使用する。

 この洗浄モードと組み合わせて使うと良いのが、「棚乾燥」だ。棚乾燥とは、その名の通り、スチール製の棚をドラム内に設置して、ドラムを動かさずに乾燥させるモードだ。おうちクリーニングで洗ったスラックスなどを、棚で乾燥させると、実に仕上がりがよい。また、一般的な乾燥と異なり、棚に置かれたままの状態で温風を吹きかけるため、シワも寄らない。


まず、ドラム内に棚を取り付ける スラックスなどをたたんで棚におけば、シワを付けずに乾かせる 靴を乾燥させてみた。わずかに素材が縮んだが、つま先の部分までしっかり乾いていた

 棚乾燥で乾かした後は、アイロンで折り目を付けてやれば、キレイに仕上がる。洗濯と乾燥の作業が分かれており、アイロンがけもしなければならないため、多少の手間はかかるが、これまで自宅で洗えなかったスラックスが、気軽に洗濯できるので重宝する。ユーザーにはぜひ試してもらいたい機能だ。


洗浄中の動作音は静か。余裕を持たせた設置が重要

【動画】洗浄時のようす(WMV形式, 2.21MB)
 運転中の動作音だが、洗浄時はとにかく静か。ドラムの回転も緩やかでモーター音がかすかに聞こえるほど。どちらかというと、ドラム内の水が跳ねている音の方が大きいくらいだ。スペック値では約30dBとなっている。カタログ表記で使われる基準では「柱時計の振子、ささやき声」とされる音量だ。感覚的にもそれに近い。洗濯中のNA-VR1100の横で読書をしても、まったく気にならないレベルだ。

 脱水中は39dB。「図書館の中」とされる40dBに近い音量だ。ただ、高速でドラムを回転させるため、本体が振動しているせいもあるのだろう、感覚的にはもうちょっと耳障りに感じる。騒音のことを考えると、なるべく本体の横や上にモノを置かないほうがよい。というのも、脱水時の本体の振動によってモノが細かく震え、二次騒音を生み出す可能性があるためだ。

 我が家でもNA-VR1100が来た当初、本体の横にぴったりとスチール製のラックを置いており、脱水時の振動でラックと本体が細かくぶつかり合い、騒音が起きていた。「うるさいなあ」とは思っていたが、機器固有の問題ではなく、横に置いたラックが原因と気づいたのはもう少し後だった。というわけで、設置時には多少周囲に余裕を持たせることをおすすめする。

 乾燥時の音量は42dBと、スペック上は脱水時より大きい。音の大半を占めるのが、ヒートポンプユニットの動作音だ。音としては、エアコンの室外機に近い。体感上ではドラムの高速回転などを伴わないせいか、脱水のほうが音が大きく聞こえる。いずれにしても、洗面所のドアを閉め切ってしまえば、居間にいてうるさく感じる音ではない。


【動画】脱水時のようす。洗濯機の上に置いたコップの水面で揺れの程度がわかる(WMV形式, 1.61MB)
【動画】乾燥スタートのようす。ヒートポンプユニットの立ち上がる音が聞き取れる(WMV形式, 2.23MB)
【動画】乾燥中のようす。ほとんど揺れはない(WMV形式, 929KB)

スチールラックをぴったり設置したことが騒音の原因だったので、離しておくことにした ドラム内部。水の使用量が少ないせいか、水の跳ねる音はあまり聞こえない 調子が悪くなった際に、サービスセンターに見てもらった。ダンパー不良で交換となった

乾燥運転時に湿度上昇も、締め切った部屋でなければ問題なし

 乾燥機能を使用している間の、湿度上昇を気にする人もいるだろう。そこで、洗濯~乾燥までの動作中の温度と湿度をおよそ3時間に渡ってモニタリングしてみた。試験した部屋の広さは約2畳。集合住宅によくある、風呂場と洗面所と洗濯機置き場が一体になったスペースだ。測定機器はNA-VR1100のすぐとなりに置いてある。

 まず、一般的な生活を送っている場合、このスペースの温度と湿度はどのように推移しているのかを調べた。なにもしない状態でドアを閉め切ると、室温は26℃、湿度は58%程度。ためしにシャワーを浴び、風呂場から出てくると、一気に湿度が70%を超え、室温も29℃まで上がる。

 風呂上がりの状態から、しばらく放置していると湿度62%、室温26℃に落ち着いた。それでは、ここで洗濯をスタート。スタートした時点での作業完了予想時刻は3時間後。45分で洗濯と脱水、残りの時間で乾燥、といった時間配分だ。

 洗濯・脱水中の温度/湿度は、ほとんど変動がない。45分経過したところで、洗濯・脱水が終わり、乾燥が始まった。徐々に湿度が上がってくる。ヒートポンプでは、湿った空気を冷却・除湿し、乾いた空気に変え、再度乾燥に利用する仕組みであることは前述の通りだが、除湿しきれずに庫外に放出した水分が部屋の湿度を上げているわけだ。

 たっぷり水分を含んだ衣類に温風を当てるため、とくに乾かしはじめの段階で、湿度の上昇が著しい。乾燥開始から40分後に、工程中で最高となる68%になっている。ここを境に、湿度は徐々に下がっていく。乾燥開始から40分で、衣類に含まれた大半の水分を飛ばし、残りの80分で仕上げをするというイメージだ。


温度・湿度の推移グラフ

 なお、乾燥開始から80分後のところで、一気に湿度が58%まで落ち込んでいるが、これはテスト状況を確かめるためにドアを開けたことが原因。今回のテストのように、狭い空間に閉じこめて乾燥させれば、湿度が上がるのは事実だが、ドアを開けたまま乾燥運転をさせれば、湿度変化はわずかで、日常生活に影響を及ぼす範囲ではないことも測定データから読み取れる。

 さて、室温のほうだが、これも湿度よりやや遅れて上昇する傾向があった。だが、これも締め切った状態で2℃上がるくらいなので、ドアを開けてしまえばほとんど影響はないと見られる。


乾燥フィルターの掃除が面倒

 使用後のメンテナンスについてだが、頻度の高い作業は乾燥フィルターと排水フィルターの掃除だ。

 乾燥フィルターは、循環させた温風を濾過して、衣類の繊維や毛クズなどをキャッチし、ヒートポンプユニットに入り込まないようにするためのものだ。本体右側上面に引き出し式のカートリッジが付いている。カートリッジを取り外すと、メッシュ状のフィルターが現れる。乾燥運転後には、ここに洗濯した衣類の繊維がフェルト状になって積もっている。これを毎回、取り除かないと空気の循環効率が悪くなり、消費電力に影響が出るらしい。

 もちろん、洗濯した後の衣類を乾燥させる際に生じたものだから、不潔さはないのだが、毎回ということもあって、乾燥機能の便利さに感激している時期が過ぎると、だんだんおっくうになってくる。特に私の場合、乾燥機能付きの洗濯機を使うのが初めてなので、余計にそう感じるのだろう。エアコンだけでなく、ここも「フィルターお掃除ロボット」があればなと思ってしまう。

 「基本は日干し」という人はともかく、日常的に乾燥機能を利用する人は、まず、洗濯機の横にゴミ箱を置いておくことをおすすめする。ゴミ箱がないと、取り除いたゴミを捨てに、わざわざゴミ箱の部屋に行かなければならないからだ。


乾燥フィルターは本体上部から取り外せる ふわふわの繊維がびっしりと積もっている フェルトのような感触。乾燥後の衣類から出たもので、不潔さはない

左が取り除いた後の部分。右が使用してそのままの状態 さらに取り付け部分にも2つ、フィルターが存在する。こちらは月に1度、掃除することが求められている

 さらにもう一歩踏み込んだ対策としては、ハンディクリーナーを用意するという手もある。もともと、ハンディクリーナーで一気に吸い取ってしまえば、苦労なくフィルターをキレイにできる。ホコリが溜まりやすい洗濯機の下などの掃除用も兼ねて、安価なハンディクリーナーを1台買っておいても損はないだろう。

 一方、排水フィルターの方は、乾燥フィルターと同じく、「乾燥するたび」に掃除することが求められているが、乾燥フィルターほどゴミが溜まらない。あくまで個人的な印象だが、週に1回程度で十分だと感じた。


排水フィルター。ヘドロのようなゴミが溜まる ティッシュなどでゴミを取り除いた後、水ですすいでキレイにする 洗剤ケース。古くなった粉末洗剤はカビの原因になりやすいので、たまに水洗いしてやるとよい

 もう1つ、洗濯機でいうと洗濯槽の黒カビが問題にされることが多い。たしかに、洗剤の溶け残りを養分として、黒カビがびっしりと生えるという話はよく聞く。しかし、これに関して洗濯乾燥機ではあまり気にする必要はないと思っている。とにかく、定期的に、できれば毎日、乾燥機能を使えばよいのだ。

 NA-VR1100にも「槽洗浄/乾燥」というメンテナンス用の運転モードが用意されているが、運転終了まで4回の注水を行ない、水を使った場合で11時間、温水を使っても6時間もかかる。これを頻繁に行なうことを考えると、乾燥機能を定期的に使う方が、無理なく続けられるメンテナンスであることは明らかだろう。


まとめ ~使いやすさと省エネ性が光る

 最後に半年間使ったうえで、現在感じていることをまとめておきたい。

 ドラム式洗濯乾燥機に対してのイメージは導入前と導入後で180度変わったと言って良いと思う。私が導入前に抱いていたイメージは「なにか新しいモノ」「多機能」といったものだった。言い換えれば、これまでの洗濯機とまったく違うものを期待していたと言っていいかもしれない。

 確かに、洗濯から乾燥まで一気に行なえることや、これまで洗えなかったものも洗えるようになったことなど、実際に使って「便利だなあ」と感心した部分もある。

 しかし、それ以上に今、この製品に対して感じているのは「使いやすさ」と「省エネ性」という、洗濯乾燥機にとってもっとも基本的な部分がしっかりしているなということだ。

 特に省エネ性能には驚かされた。

 ワットチェッカーを仕掛け、15日間、合計19回の洗濯・乾燥で使用し、消費電力量を計測したところ、22kWhだった。これは料金に直すと484円、1回あたりだと約25円ということになる。

 実際のコストは、これに水道代が加わるわけだが、我が家では洗浄と1回目のすすぎに風呂水を使用しているので、1回のコストは30円弱といったところだろう。NA-VR1100では、風呂水を汲み上げるホースが標準で付属するので、追加コストなしで風呂の残り湯が利用できる。

 導入当初、家人も電気代が上がるのが怖く、「乾燥機は雨の日だけ」と思っていたようだ。しかし、導入から半年経った今、毎日のように乾燥運転をしている。しかし、NA-VR1100の購入以後も電気代、水道代が顕著に上がった様子はない。

 使いやすさについても同様だ。決して機械に詳しくない家人が、迷うことなくモードを使い分けている。もう2年も3年も使ってたんじゃないかと思うくらい、生活になじんでしまっている。

 こうして考えてみると、導入前に想像していた「劇的な変化」ではなく、ずっとやさしく、静かに、生活を変えてしまった。きちんと振り返らないと、その変化に気づかないくらい、穏やかな変化だ。

 使えば使うほど、使いやすさと省エネ、この2点に徹底的にこだわって作られたことが感じられる。定番商品として安心して勧められる製品だ。




【参考1】ヒートポンプとは

NA-VR1100に搭載されているヒートポンプユニット

 ヒートポンプは、エアコンにも採用されている技術で、ごく簡単に言うと、「熱を移動させる」システムだ。気体に圧力をかけると熱が生み出され、膨張させると熱が奪われる原理、熱は高いところから低いところへと移る原理を用いている。

 エアコンを例に取ってみよう。エアコンでは、室外機と室内機の間で、熱を運ぶ媒体となる冷媒を循環させている。冷房時は室内で冷媒を膨張させ、部屋の熱を奪い、室外機に熱を放出。暖房時は逆に、室外機を冷やすことで屋外から熱を取り込み、室内へ送り込む仕組みだ。

 別の言い方をすれば、室内と室外の間で、温度差を作り出す仕組みといってもよいかもしれない。室内が暖かければ室外は冷たく、室内を冷やせば室外に暖気を排出するというわけだ。

 では、これを洗濯乾燥機に導入するとどうなるのか。まず、冷媒を圧縮し、熱を生み出す。この熱で暖めた空気を、ドラム内に送り込み、衣類を乾燥させる。いわば、ドラム内を“暖房”している状態だ。

 “室内を暖めれば、室外は冷たくなる”という原則は先ほど説明した。では、ドラム内を“暖房”しているとき、冷やされている部分はどこになるのか。エアコンでは、室外機から冷気を出してしまうが、ななめドラムではこの冷気を外に逃がさない。冷気をムダにせず、ドラム内を通過し、水分をたっぷり含んだ空気を除湿するのに使うのである。

 湿度の高い夏の日に、冷たい水の入ったコップを置いておくと、コップの周りに水滴がつくのと同じ原理だ。

 除湿され、乾いた空気は再び暖められ、乾いた暖かい空気となってドラム内に吹き込まれる。このサイクルを繰り返すことで衣類を乾燥させている。


【動画】ヒートポンプの原理。洗濯乾燥機に入ったものは、エアコンでいうと、室内機と室外機がセットで搭載されている形になる(WMV形式, 583KB 資料提供:松下電器産業) 【動画】ヒートポンプ動作時のイメージCG(WMV形式, 2.69MB, 資料提供:松下電器産業) 【動画】ヒートポンプで除湿された水が滴る様子(WMV形式, 832KB, 資料提供:松下電器産業)


【参考2】ヒートポンプによる省エネ効果

 ところでこのNA-VR1100、2006年11月の発売以降、他社の追従を許していないスペックがある。それが省エネ性だ。

 NA-VR1100は、乾燥にヒートポンプを用いることにより、消費電力を削減している。衣類を乾かすには暖かい空気が必要だが、これまでの洗濯乾燥機ではこれをヒーターで暖めていた。電気エネルギーを熱エネルギーに変えるのはロスが多く、効率が悪い。

 一方、ヒートポンプの場合、電気で直接熱を作り出すのではなく、電力でコンプレッサーを動かし、冷媒が持つ熱を集める仕組みだ。直接、熱エネルギーに変えるより、効率が良く、消費電力量も大幅に削減できるわけだ。

 もう1つは節水性だ。ななめドラムでは、その名の通り、ドラムをななめに傾け、ドラムの角の部分に水を溜めて洗浄するため、節水性が高い。しかし、ななめドラムであっても、使用水量をなかなか削減できない工程があった。それが、ヒーター乾燥の際の水冷除湿だ。

 湿った空気を除湿するために、空気を冷やす必要があるということは前述の通りだが、ヒーター式の乾燥では、これを、水で冷やして除湿していた。「乾燥するのに水を使う」理由はこのためだ。

 では、ヒートポンプの省エネ効果がどれほどのものか、スペックで確認してみよう。

歴代ななめドラム 省エネ性能比較

機種名 NA-V80 NA-V81 NA-VR1000 NA-VR1100
ヒートポンプ ×
洗濯/乾燥 8kg/4.5kg 8kg/6kg 8kg/6kg 9kg/6kg
使用水量 130L 150L 65L 63L
洗濯~乾燥
1回の水道料金
29.64円 34.24円 14.82円 14.364円
消費電力量 2,900Wh 4,000Wh 1,840Wh 1,450Wh
洗濯~乾燥
1回の電気料金
63.8円 88円 40.48円 31.9円
洗濯~乾燥
1回のトータルコスト
93.44円 122.24円 55.3円 46.264
※数値は6kg洗濯・乾燥時。NA-V80のみ4.5kg洗濯・乾燥時のデータを使用


 まず、使用水量から。ヒートポンプ搭載以前の2004年モデル「NA-V81」では、洗濯のみで75L、洗濯~乾燥時で150Lもの水を使用していた。つまり、洗濯に使うのと同じくらいの水を、乾燥でも使っていたことになる。

 これが、ヒートポンプ搭載の2005年モデルでは「NA-VR1000」で洗濯時69L、洗濯~乾燥時65Lへと劇的に水量を削減している。NA-VR1100では洗濯容量が9kgと1kg増えたため、水量も85Lへと増えているが、洗濯~乾燥時の水量はさらに2L削減され、63Lになっている。

 カタログ表記時の水道料金は1立方mあたり228円。これを基準にNA-V81とNA-VR1100の洗濯~乾燥時の水道料金を比較すると、NA-V81が1回約34円、NA-VR1100が約14円という計算になる。

 ついでに、電気代についても比較してみよう。ヒートポンプを搭載していないNA-V81の洗濯から乾燥までに消費する電力量は4,000Wh。一方、NA-VR1100は同条件で1,450Whまで削減している。電気料金に換算すると、約88円(NA-V81)から約32円と半分以下になる。

 水道、電気の双方を合わせると、1回分のコストはNA-V81が約122円、NA-VR1100が約46円。その差は歴然だ。





URL
  ナショナル(松下電器産業株式会社)
  http://national.jp/
  製品情報
  http://ctlg.national.jp/product/info.do?pg=04&hb=NA-VR1100
  洗濯機 関連記事リンク集
  http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/washer.htm

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2007/07/19 00:04

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