長期レビュー

日立「ビッグドラム BD-V3100」 その1

~なぜ今、“ビッグドラム”なのか
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「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



日立「ビッグドラム BD-V3100」

 ドラム式洗濯機は、サイクロン式掃除機、IHクッキングヒーター、オーブンレンジと並んで、白物家電売り場の中でも花形の位置を占める製品だ。省エネ、節水、動作音も静かで乾燥までやってくれるドラム洗濯乾燥機はまさに、今の時代を象徴した製品であることは疑いないだろう。

 私自身も、2006年にパナソニックの「ヒートポンプななめドラム」を購入して、およそ2年半に渡って使ってきた。ドラムを傾けることによって使用水量を減らし、洗濯から乾燥までを一気にやってくれるその性能は、これまで2万円の格安洗濯機を使っていた身にとっては、衝撃以外の何者でもなかった。

 今回、長期レビューとして、再びドラム洗濯乾燥機を購入するにあたり、なぜ日立のビッグドラムを選んだのか。第1回となる今回は、ドラム式のこれまでと今のトレンドをおさらいし、選んだ理由と導入までをお伝えしたい。

「ななめドラム」が切り開いたドラム式洗濯乾燥機


2003年にパナソニック(当時は松下電器)が発表した「NA-V80」
 今現在、主要メーカーが発売しているドラム式洗濯乾燥機は、いずれもドラムをわずかに上方に傾けた形状をしている。これは、2003年にパナソニックが発表した「NA-V80」に遡る。NA-V80以前にも、欧米の形状をそのまま持ち込んだ、ドラムが真横に設置された機種は存在したが、いずれも販売は伸び悩み、一大勢力を築くには至らなかった。

 しかし、ドラムを傾けた日本オリジナルのドラム式「NA-V80」のヒットを受けて、各社も追従した。現在、すでに撤退してしまった三菱電機を除く、パナソニック、東芝、日立、シャープ、三洋の国内大手メーカーはいずれもドラム式を10万円以上の高級機と位置づけ、先端の開発成果を投入する対象となっている。

 たとえば、パナソニックは圧倒的な省エネ性能、東芝は洗濯機から冷風が出るエアコン機能、日立は大型ドラムによる洗浄力、三洋は水を繰り返し使う節水機能、シャープは毛布など大物も洗いやすいバンパー機構をウリにしているし、すでに撤退してしまったが、三菱電機の製品は、ドラムそのものが状況によって角度を変える、という斬新な機構を取り入れたものだった。

パナソニック、東芝の2強だった省エネ競争は新たなステージに

 だが、ユーザーがもっとも気にするスペックであり、メーカー間の比較、競争のポイントになっているのはやはり、消費電力量だ。

 洗濯乾燥機において、もっとも電力を食うのは乾燥行程。ここにどうやってテクノロジーとノウハウをつぎ込むかがメーカーの力の見せ所だ。この省エネ性能において、常にトップを走ってきたのがパナソニック。2005年にヒートポンプを取り入れて、6kgの洗濯~乾燥で消費電力を4,000Whから1,840Whへと大幅に削減し、追従する他社に圧倒的な差を付けた。

各社2005年~2008年モデルの、6kg洗濯~乾燥時の消費電力量。BD-V3100を含め、一部機種は7kg洗濯~乾燥のデータになっている

 翌2006年は、東芝もヒートポンプを搭載することで1,600Whとし、パナソニックに肉薄するが、パナソニックも1,450Whとし引き離す。2007年には東芝がひっくり返しトップに立つが、2008年モデルでパナソニックが追いつく――という具合に、パナソニックと東芝という、ヒートポンプを搭載した2強がドラム式洗濯乾燥機の省エネ化を引っ張ってきたのがこれまでの構図だ。2008年に発表されたモデルでは両社ともに1,000Whを割り、6kgの洗濯~乾燥にかかる電気代はおよそ20円前後のところまで来た。2003年の初代ななめドラムと比べると、1/4になったことになる。

 今回、レビューする製品の源流となる初代ビッグドラム「BD-V1」は2006年に発売された。ドラム式の中では後発グループに属する。大きなドラムを採用し、洗濯、乾燥の効率を上げる基本性能重視のアプローチは斬新だったが、省エネ性能はヒートポンプ採用で先行するパナソニック(1,450Wh)、東芝(1,600Wh)に比べ、2,650Whと大きく劣っていた。翌2007年モデルでも差は埋まらず、発表会では「日立はヒートポンプを採用しないのか」という質問も出ていたほどだ。

 その日立が、満を持して2008年に発売したのが、今回レビューする「BD-V3100」だ。ヒートポンプではなく、乾燥の時に生じるヒーターの熱をできるだけ外に逃がさず、再利用する機構を採用し、消費電力量980Whとし、一気に2強に追いついた。

 大きなドラムによる高い基本性能、高速の風で洗濯物をシワを伸ばす「風アイロン」、さらにスチームでアイロンいらずにする機能と、技術志向の日立らしい盛りだくさんの機能に、トップクラスの省エネ性能を得たBD-V3100。そんなわけで、この製品を2008年モデルの中でもっとも注目すべき機種と考え、レビュー機種に決めたのだ。

置き場所だけでなく、搬入経路のチェックを欠かさずに

 さて、話を180度変えて、導入の準備に移りたい。

 こういった設置製品は、事前に業者に自宅に来てもらい、設置できるかどうかを判定する見積もり作業を依頼するのが一般的。だが、見積もりに来てもらうと納品自体が遅くなるし、見積もり、納品と2回、日程調整をしなければならず面倒だ。そこで、ヨドバシ.comのような通販サイトで買う際の注意点をまとめたい。

 ドラム式洗濯乾燥機を購入する上でまず確認しなければならないのは、置き場所の確保と搬入経路だ。実は前者に関しては、もっとも一般的な80×60cmの防水パンに合わせて各社設計しているので、さほど心配する必要はない。事前にチェックするのは、壁に据え付けられた水道の蛇口が本体と干渉しないかということと、防水パンの排水口の位置の2点。排水口の位置によっては、オプション品が必要となるからだ。

このスペースに入れる防水パンにある排水口の位置を確認。我が家の場合、右隅。この場合、特別なオプションの購入は必要ないもう1つが水道栓の高さ。背が高い機種だと、本体と水栓が干渉する可能性がある

 問題は後者だ。「ビッグドラム」という名前の通り、この製品は幅が700mmを超えているため、狭い階段を登らなければならない集合住宅などだと、そもそも家まで辿り着けない、なんてことも生じうる。

 我が家に設置に来た業者の方も、「マンションだと、家に入る以前に搬入経路でNGのケースが多いんです。玄関までたどり着けば、一安心です。そこまで来て入らないってことはそんなにないですね。そこは、お客様が入念にチェックしてますから」と言っていた。

エレベーターを降りて、共用の廊下を通る。廊下の幅も事前にチェックしよう玄関から我が家へ洗面所へ引き入れる。バリアフリー設計の我が家でも、あまり余裕はなかった
防水パンに設置。男性2人がかりだ水回りなのでアースも付けてくれる水栓にホースをセット
排水口にホースを取り付けるこのパイプが外れると大変なことになるので、念入りに確認設置終了!

 まとめると、ドラム式洗濯乾燥機を買う際にチェックする項目とその順番は、

(1) 製品の寸法を確認
(2) 搬入経路を確認。自宅の廊下やドアだけでなく、トラックから玄関までの経路も入念に
(3) 置き場所の確保
(4) 排水口の位置を確認

 ということになる。これだけの情報があれば、今すぐにでも注文ができる。ちなみに、今回は注文後最短1週間でお届け、ということで注文から納品までにちょうど1週間かかった。

 いよいよ設置できたところで第1回はおしまい。第2回目は実使用時の消費電力を検証したい。



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2009年5月14日 00:00