【特別企画】
メーカーに聞く、最新空気清浄機のポイント:三洋電機編
~新型インフルに効果の“電解水”で、家庭に安心と安全を
新型インフルエンザの感染が世間を騒がせているなか、身近な感染防止策として「空気清浄機」が注目されている。そこで今回は、空気清浄機のメーカーに最新モデルの特徴とポイント、市場動向などについて話を伺った。
三洋電機は、同社独自の電解水技術「ウイルスウォッシャー」機能を搭載した加湿空気清浄機「ABC-VWK14B」および空気清浄機「ABC-VW26B」の2機種を、年末商戦に向けて投入した。
いずれも発売日は9月1日だったが、三洋電機家電事業部企画統括部家電商品企画部アメニティ企画課・井浦嘉和担当課長によれば、その前から予約が殺到し、11月の生産分まで埋まってしまったという。9月中旬に開催した量販向けのプライベートイベントでも、展示のための製品が確保できず、試作モデルを展示するという状況だった。
同社の空気清浄機がこれだけ高い注目を集めている背景には、ウイルスウォッシャーが新型インフルエンザに対して抑制効果があることを、8月18日に世界で初めてアナウンスしたことが影響している。
三洋電機では、群馬県衛生環境研究所と共同で、ウイルスウォッシャーによる新型インフルエンザに対する抑制効果を検証。電解水と新型インフルエンザウイルスを10分間接触させることで、ウイルスの感染価(ウイルスの感染力を表す値)を99.9%抑制できることを実証したという。実験に用いたのは、業務用機器に搭載される「除菌エレメント方式」のユニットで、家庭向け製品に搭載されている「除菌電解ミスト方式」とは仕組みが異なるが、電解水を利用するという点では同じものといえる。
このニュースは8月18日に発表されたが、その直前の8月15日は、当時の麻生太郎首相が新型インフルエンザ対策本部長として、新型インフルエンザによる死者が出たことを報告し、国民へ注意を喚起していた。しかも、19日にはウイルスウォッシャーを搭載した新たな空気清浄機が発表されたことで、製品に対する問い合わせが殺到。「リリースやカタログに掲載している電話番号のすべての電話が鳴りっぱなしの状態。約1週間はその対応に追われた」(井浦氏)という事態に陥った。
問い合わせの内容は、新型インフルエンザウイルスの抑制に関して、記事以上にさらに詳しい情報を求めるものと、“実際に製品はいつ購入できるのか”“予約はできるか”“価格はいくらか”といったものだったという。
「今年前半から加湿空気清浄機に対する需要が増大しており、前年に比べて2倍規模での生産計画を立てていたが、それを大きく上回る注文を得ている。予約だけで出荷計画分が埋まっており、多くの販売店、お客様にご迷惑をおかけしている」(井浦氏)
同社はさらに増産体制を敷く方針だが、全量を中国で生産しているため、柔軟に生産量を拡大できないという問題もある。当面は品薄状態が続くことになりそうだ。
ウイルスウォッシャーは、塩化物イオンが含まれる水道水を電気分解することで、「次亜塩素酸」と「OHラジカル」という2種類の活性酸素を含む電解水を生成する技術のこと。この電解水の中には、1立方cmの中に次亜塩素酸とOHラジカルが、8,000兆個以上も含まれているという。
ウイルスウォッシャー搭載機種では、この電解水を空中に放出することで、2つの活性酸素がウイルスを取り囲み、ウイルス表面のスパイク(たんぱく質)を分解、無力化する。次亜塩素酸は“持続力"、OHラジカルは“即効性”があるとされ、除菌効果が長持ちしやすいという。
ウイルスのほかにも、花粉やダニなどのアレル物質などを99%抑制する効果もあるとのこと。「ABC-VWK14B」などの加湿空気清浄機では、加湿する水そのものを除菌し、部屋の隅々まで電解水を飛ばすことができるという(除菌電解シャワー機能)。
今年の新製品では、この電解水の効果を高めるために、加湿方式をディスク式からフィルター式に変更。フィルターに保水効率の高い素材を採用することで、従来製品に比べて1.5倍の除菌スピードが実現できるという。しかも、フィルターの着脱を簡単にし、もみ洗いするだけで手入れをできるようにし、10年間交換不要によるランニングコストの削減も図っている。
「従来のディスク方式では、ディスクに付着するカルキ成分を取り除くため、加湿用の水タンクとは別に、カルキ回収タンクを備えていたが、加湿用の水を給水するのに加えてカルキ回収用の水を捨てる、といった手間がかかっていた。新製品では、手入れの手間は大幅に削減している」(井浦氏)
一方、空気清浄機の基本性能を大きく左右する集塵フィルターには、アレルブロック除菌フィルター、高集じんフィルター、カーボン脱臭フィルターの三層構造を持ったアレルブロック高集じん除菌フィルターを採用。加湿空気清浄機では前方左右から、また空気清浄機では前面下方向から吸塵するという。また、後方はすっきりとしたデザインとすることで壁に寄せて設置できるようにした。
さらに、光センターを用いることで、適切な加湿と空気清浄を自動コントロールする機能も搭載。室内が暗くなると自動で静音運転に切り替える「おやすみ自動運転」の機能も搭載している。
●“赤ちゃんを育てる家庭にも安心、安全を届けられる”
井浦氏によれば、昨年まではウイルスウォッシャーの認知度が低く、まず機能の説明から入らなくてはならなかったという。しかし、「今年の場合、新型インフルエンザウイルスの抑制効果をいち早く発表できたこともあり、認知度が一気に高まった。これをビジネスチャンスと捉え、量販店店頭でも積極的な訴求を展開したい」という。
店頭POPやカタログでも、今年の年末商戦では初めてウイルスウォッシャーの機能を前面に打ち出し、その効果をアピールする考えだ。空気清浄機のカタログも、最初のページからウイルスウォッシャーを説明する内容になっている。
「ウイルスウォッシャーを搭載した空気清浄機はわずか2年前から発売したものだが、この技術が業務用分野で多くの実績を持っていることも同時に訴えたい」(井浦氏)
実際、ウイルスウォッシャーを搭載した業務用の空気清浄機は、国連本部内の医療室待合室や、アメリカ・JFK空港など空港の診療所、映画館「ワーナー・マイカル・シネマズ」の国内26劇場、学習塾の日能研、予備校の河合塾など、人が多く集まる場所に多く導入されている。
「こうした場所で利用されている製品はいずれも業務用に開発された製品だが、これを家庭向けにオーバースペックにならないようにし、さらに操作性を高めたのが今回の加湿空気清浄機および空気清浄機となる。手入れのしやすさ、使い勝手の良さという点でも進化を遂げており、使っていただくことで、より満足度を感じてもらえるはず」(井浦氏)。
現在、三洋電機では、ベネッセの妊娠/出産/育児ブランド「たまひよ」とタイアップした子育て世代向けの「家族でにこにこプロジェクト」を実施しており、空気清浄機もその1つの製品に位置づけられている。
井浦氏は「水道水を利用するウイルスウォッシャーは、赤ちゃんを育てる家庭にも安心、安全を届けられる製品だという強みがある。また、お年寄りも安心して利用できる。今年度は、加湿空気清浄機1機種、空気清浄機1機種のラインアップに留まっているが、実績を重ねることで、ラインアップに拡充にも取り組みたい」と、今後を展望する。
三洋電機の空気清浄機ビジネスは、今年度の取り組みをきっかけに大きく拡大することになりそうだ。
●新型インフルエンザウイルスへの効果発表で、発売前なのに予約が一杯
三洋電機の加湿空気清浄機「ABC-VWK14B」。9月に発売したが、発売前から注文が殺到。11月の生産分まで予約で一杯になったという |
いずれも発売日は9月1日だったが、三洋電機家電事業部企画統括部家電商品企画部アメニティ企画課・井浦嘉和担当課長によれば、その前から予約が殺到し、11月の生産分まで埋まってしまったという。9月中旬に開催した量販向けのプライベートイベントでも、展示のための製品が確保できず、試作モデルを展示するという状況だった。
同社の空気清浄機がこれだけ高い注目を集めている背景には、ウイルスウォッシャーが新型インフルエンザに対して抑制効果があることを、8月18日に世界で初めてアナウンスしたことが影響している。
三洋電機では、群馬県衛生環境研究所と共同で、ウイルスウォッシャーによる新型インフルエンザに対する抑制効果を検証。電解水と新型インフルエンザウイルスを10分間接触させることで、ウイルスの感染価(ウイルスの感染力を表す値)を99.9%抑制できることを実証したという。実験に用いたのは、業務用機器に搭載される「除菌エレメント方式」のユニットで、家庭向け製品に搭載されている「除菌電解ミスト方式」とは仕組みが異なるが、電解水を利用するという点では同じものといえる。
8月には、「ウイルスウォッシャー」技術が新型インフルエンザウイルスを99%抑制すると発表された | 新型インフルエンザウイルスの抑制効果の検証内容。電解水と新型インフルエンザウイルスを混ぜることで、感染を抑制する効果があったという |
このニュースは8月18日に発表されたが、その直前の8月15日は、当時の麻生太郎首相が新型インフルエンザ対策本部長として、新型インフルエンザによる死者が出たことを報告し、国民へ注意を喚起していた。しかも、19日にはウイルスウォッシャーを搭載した新たな空気清浄機が発表されたことで、製品に対する問い合わせが殺到。「リリースやカタログに掲載している電話番号のすべての電話が鳴りっぱなしの状態。約1週間はその対応に追われた」(井浦氏)という事態に陥った。
問い合わせの内容は、新型インフルエンザウイルスの抑制に関して、記事以上にさらに詳しい情報を求めるものと、“実際に製品はいつ購入できるのか”“予約はできるか”“価格はいくらか”といったものだったという。
三洋電機 家電事業部 企画統括部 家電商品企画部 アメニティ企画課 井浦嘉和担当課長 |
同社はさらに増産体制を敷く方針だが、全量を中国で生産しているため、柔軟に生産量を拡大できないという問題もある。当面は品薄状態が続くことになりそうだ。
●水の電気分解で生成した2つの活性酵素で除菌。最新モデルでは除菌スピードアップ
ウイルスウォッシャーは、水道水を電気分解し、「次亜塩素酸」「OHラジカル」という2種類の活性酸素を生成する技術 |
ウイルスウォッシャーの最大の特徴は、水道水を利用しているという点だ。
ウイルスウォッシャーは、塩化物イオンが含まれる水道水を電気分解することで、「次亜塩素酸」と「OHラジカル」という2種類の活性酸素を含む電解水を生成する技術のこと。この電解水の中には、1立方cmの中に次亜塩素酸とOHラジカルが、8,000兆個以上も含まれているという。
ウイルスウォッシャー搭載機種では、この電解水を空中に放出することで、2つの活性酸素がウイルスを取り囲み、ウイルス表面のスパイク(たんぱく質)を分解、無力化する。次亜塩素酸は“持続力"、OHラジカルは“即効性”があるとされ、除菌効果が長持ちしやすいという。
ウイルスのほかにも、花粉やダニなどのアレル物質などを99%抑制する効果もあるとのこと。「ABC-VWK14B」などの加湿空気清浄機では、加湿する水そのものを除菌し、部屋の隅々まで電解水を飛ばすことができるという(除菌電解シャワー機能)。
一般家庭で使用される空気清浄機では、電解水のミストを空気中に放出する「除菌電解ミスト方式」を採用している | 業務用など大型の機器では、電解水を含ませた「除菌エレメント」というフィルターに空気を通す構造になっている |
電解水がウイルスと接触することで、ウイルスのタンパク質を破壊、人への感染力を抑制する効果がある | カビ菌や花粉などのアレル物質、ニオイにも効果があるという |
今年の新製品では、この電解水の効果を高めるために、加湿方式をディスク式からフィルター式に変更。フィルターに保水効率の高い素材を採用することで、従来製品に比べて1.5倍の除菌スピードが実現できるという。しかも、フィルターの着脱を簡単にし、もみ洗いするだけで手入れをできるようにし、10年間交換不要によるランニングコストの削減も図っている。
「従来のディスク方式では、ディスクに付着するカルキ成分を取り除くため、加湿用の水タンクとは別に、カルキ回収タンクを備えていたが、加湿用の水を給水するのに加えてカルキ回収用の水を捨てる、といった手間がかかっていた。新製品では、手入れの手間は大幅に削減している」(井浦氏)
加湿方式を、保水効率の高いフィルター式に変更。従来よりも除菌スピードを1.5倍に速め、10年間のフィルター交換不要を謳っている | 従来モデルは、写真の「ディスク」を使って加湿していた |
一方、空気清浄機の基本性能を大きく左右する集塵フィルターには、アレルブロック除菌フィルター、高集じんフィルター、カーボン脱臭フィルターの三層構造を持ったアレルブロック高集じん除菌フィルターを採用。加湿空気清浄機では前方左右から、また空気清浄機では前面下方向から吸塵するという。また、後方はすっきりとしたデザインとすることで壁に寄せて設置できるようにした。
さらに、光センターを用いることで、適切な加湿と空気清浄を自動コントロールする機能も搭載。室内が暗くなると自動で静音運転に切り替える「おやすみ自動運転」の機能も搭載している。
●“赤ちゃんを育てる家庭にも安心、安全を届けられる”
井浦氏によれば、昨年まではウイルスウォッシャーの認知度が低く、まず機能の説明から入らなくてはならなかったという。しかし、「今年の場合、新型インフルエンザウイルスの抑制効果をいち早く発表できたこともあり、認知度が一気に高まった。これをビジネスチャンスと捉え、量販店店頭でも積極的な訴求を展開したい」という。店頭POPやカタログでも、今年の年末商戦では初めてウイルスウォッシャーの機能を前面に打ち出し、その効果をアピールする考えだ。空気清浄機のカタログも、最初のページからウイルスウォッシャーを説明する内容になっている。
「ウイルスウォッシャーを搭載した空気清浄機はわずか2年前から発売したものだが、この技術が業務用分野で多くの実績を持っていることも同時に訴えたい」(井浦氏)
実際、ウイルスウォッシャーを搭載した業務用の空気清浄機は、国連本部内の医療室待合室や、アメリカ・JFK空港など空港の診療所、映画館「ワーナー・マイカル・シネマズ」の国内26劇場、学習塾の日能研、予備校の河合塾など、人が多く集まる場所に多く導入されている。
「こうした場所で利用されている製品はいずれも業務用に開発された製品だが、これを家庭向けにオーバースペックにならないようにし、さらに操作性を高めたのが今回の加湿空気清浄機および空気清浄機となる。手入れのしやすさ、使い勝手の良さという点でも進化を遂げており、使っていただくことで、より満足度を感じてもらえるはず」(井浦氏)。
ウイルスウォッシャーを搭載する機種は、業務用の空間清浄機や加湿器、ファンヒーターなど多数用意されている | 業務用のモデルは、空港や映画館、学習塾など、人が集まる場所に設置されている |
現在、三洋電機では、ベネッセの妊娠/出産/育児ブランド「たまひよ」とタイアップした子育て世代向けの「家族でにこにこプロジェクト」を実施しており、空気清浄機もその1つの製品に位置づけられている。
井浦氏は「水道水を利用するウイルスウォッシャーは、赤ちゃんを育てる家庭にも安心、安全を届けられる製品だという強みがある。また、お年寄りも安心して利用できる。今年度は、加湿空気清浄機1機種、空気清浄機1機種のラインアップに留まっているが、実績を重ねることで、ラインアップに拡充にも取り組みたい」と、今後を展望する。
三洋電機の空気清浄機ビジネスは、今年度の取り組みをきっかけに大きく拡大することになりそうだ。
2009年10月27日 00:00
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