やじうまミニレビュー

無印良品「防災セット」

~被災時に実際に役立ったアイテムを厳選した防災セット
by すずまり


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


実際に役立ったアイテムを厳選し、持ち運びやすいバッグに収納

無印良品「防災セット」

 昨年の震災後、自宅の備えについて改めて考えさせられた。静岡県出身のためか、子供の頃から地震への備えについては意識しており、以前から非常用持ち出しリュックは用意していた。しかし、あれこもこれもと詰め込み過ぎてしまい、とても重い。その時がきたら、パッと持ち出せるかかなり不安な状態だ。

 在宅ワークが基本の筆者は、もしものことが起きた瞬間に、自宅にいる可能性は高い。それがこんな状態では困る。“本当に役立つもの”はなにか、見直さなくてはならないと感じている。

 とはいえ、“本当に役立つもの”が何であるかは、実際に不自由な生活を強いられた人でなければ分からない。そこで選んだのが、今回ご紹介する無印良品の「防災セット」だ。この「防災セット」には、実際に東日本大震災の被災者の声を参考に集められた、必要最低限のグッズが収納されている。


メーカー無印良品
製品名防災セット
販売価格13,000円

 グッズは、ポリエステル製の四角い難燃バッグの中に収納されている。バッグのサイズは300×345×120mm(幅×奥行き×高さ)で、持ち運びやすいようにショルダーベルトがついている。収納時にはショルダーベルトを折りたたんでボタンで固定できるので、全体的にスッキリした状態が保てる。

 バッグの中に入っているのは、「軍手」「圧縮フェイスタオル」「非常用給水袋」×2、「携帯スリッパ」「非常用ローソク」×2、「布テープ」「単四形アルカリ乾電池4本パック」「防災ラジオ」「ウェットティシュー」「絆創膏」そして「防災冊子」の11点。バッグを合わせた総重量は約2.25kgなので、女性でも楽に持ち運べる。

 なお、この製品は東日本大震災直後に販売開始し、何度も完売になっている人気商品。筆者は店頭で購入したが、ネットストアでは現在販売されていないようだ。新しい形での販売を検討しているのか、この製品の再販はないのか、現時点で不明だが、セットに含まれている多くの製品は、無印良品で購入できるので、気になったものがあればチェックして欲しい。

折りたたまれた持ち手がついているボタンを外すとショルダーになる蓋を開けると中には防災セットが
防災セット一式。左から、ウェットティシュー、非常用ローソク、軍手、防災ラジオ、布テープ、携帯スリッパ、単四アルカリ乾電池、防災冊子、非常用給水袋防災セットを取り出したあとのバッグ目につく場所にも、さりげなく置いておけるサイズとデザイン


 では、具体的にセット内容を見てみよう。

【1】軍手、携帯スリッパ

 身を守るのに役立つグッズで、忘れたくないのが「軍手」と「携帯スリッパ」だ。

 軍手の素材はポリエステル85%、綿10%、レーヨン5%。小さめな女性の手にもフィットしやすいサイズ。手を守るだけでなく、冬は防寒用の手袋としても活躍するだろう。

 携帯スリッパは、側生地はポリエステル100%、底面はポリウレタン、底芯材はポリエチレン製。シンプルだが底に厚みがあり、散乱したガラスの破片や危険物などによる怪我を避けられそうだ。

ちょうどよいサイズの軍手携帯用スリッパ芯がしっかりしていて、厚みがある

【2】布テープ

 「布テープ」は少々小ぶり。上に文字が書けるため、もしものときは、どこに避難するかなど、油性マジックで書いて目立つ場所に貼り付けることで、伝言メモとしても活用できる。その他にも、ビニールシートをつないだり、ダンボールを使って仕切りを作ったり、掃除に使ったりと用途は広い。

布テープコンビニなどで手に入る布テープ(右)よりもコンパクト油性マジックで上から文字をかいて貼れば、伝言メッセージにもなる

【3】非常用ローソク

 停電時の明かりに欠かせない「非常用ローソク」は、パラフィンワックスと綿100%の芯でできており、ポリカーボネイトのカップが付属する。使用する際は、カップに入れた状態で、受け皿に置いてから点火する。ただし、マッチやライターは付属しない。

非常用ローソク明かりがあると安心できる。ただし、使用する際は周辺でガス漏れがないかどうか、よく確認したい

【4】ウェットティシュー

 「ウェットティシュー」は、140×200mm(幅×長さ)の100枚入りで、ほぼ無臭。水が乏しい環境で、衛生面をサポートする欠かせないアイテムだろう。

ロール状のシートが1枚ずつ取り出せるタイプ容器の中不織布の、ごく普通の「ウェットティシュー」だ

【5】圧縮フェイスタオル

 「圧縮フェイスタオル」は、手のひらサイズのキューブ形に圧縮されたものを、ほぐして使用する。展開後のサイズは340×840mm(同)。展開直後は全体が薄いが、綿100%なので、吸水性にまったく問題はない。両手でこするようにやさしく揉み込むと、パイルの柔らかさが戻ってくるので、肌ざわりの心配も不要だ。「防災セット」に入っているのは1つだけだが、タオル類の用途は広いため、あと3~4個用意しておき、隙間に入れておくと安心ではないかと感じた。

手のひらに乗るほどコンパクトな「圧縮フェイスタオル」ほぐす前はお菓子のようだ少しずつほぐしていく
ほぐしただけでは65cm程度だが、さらにのばしていくと84cmになる薄手だが、吸水力は確かいったん水に濡らして乾かした後のタオル


【6】非常用給水袋

 災害時、水を確保するのに便利なのが「非常用給水袋」。トートバック風で、本体内側はポリエチレン製、外側はナイロン、持ち手はポリプロピレン製。使わないときは折りたたんでコンパクトに収納でき、開けば4Lの水を繰り返し持ち運べる。2個入りなので8Lの水を入れておけるというわけだ。

 ひとり暮らしの場合、綺麗なバケツを常備しているケースというのはあまり聞いたことがない。筆者宅も掃除用の小型のバケツが1つあるのみなので、このようなアイテムはとてもありがたい。

トートバッグ風の非常用給水袋底の様子口にはジッパーがついており、運ぶ際に水がこぼれるのを防いでくれる
持ち手には、4Lの水を入れて持ち運べるだけの強度がある手に食い込みにくい

【7】手回し充電、防水仕様、携帯電話も充電できる防災ラジオ

 防災セットの中で、もっとも注目したいのが「防災ラジオ M-JR20」だ。携帯電話やスマートフォンがあっても、混乱時には基地局やバッテリーの問題で使えなくなってしまう可能性も高い。ラジオが情報を得る貴重な手段になる。個人情報が詰まったパーソナルな製品でないので、1台あれば周りと共有できるというのもメリットだ。

 サイズは110×45×75mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約320g。防水仕様(JIS IPX4等級相当)で、凹凸のほとんどないシンプルな四角いフォルムをしている。FM・AMラジオのほかにLEDライト、携帯電話充電機能やサイレン機能が搭載されており、携帯電話充電用の接続コードと、充電用のプラグが3種類、ストラップ、ラジオ受信シールが付属する。

アンテナを伸ばした状態上から見た様子。左から、ライトスイッチ、充電ランプ、同調インジケータ上から、選局つまみ、電源・音量つまみ、AM/FM切替スイッチ、端子パッキン

 ラジオの電源は単四乾電池2本。さらに、3.6V 300mAhのニッケル水素電池も内蔵しており、本体のハンドルを回すことで充電もできる。充電用のハンドルは左右どちらでも回せる。1分間に120回転すると、ラジオなら約60分、携帯電話の連続待受時間として約15~90分、連続通話時間としては1~3分が可能になる。また、ライトは約30分、サイレンなら約5分間連続して使用できる。

 拙宅内においては、FM・AMラジオともに受信感度は良好だった。LEDライトは強力とは言い難いが、こたつテーブルサイズのスペースなら、十分照らし出せるだけの明るさはある。乾電池が切れても、情報にアクセスでき、明るさも確保できるというのは、大変心強い。ぜひ常備したいアイテムだ。

防災ラジオ(型番:M-JR20)一式。本体以外は、左からストラップ、ラジオ受信シール、携帯電話接続コード、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルをカバーするプラグ3種「防災セット」の乾電池はここで活躍。単四乾電池2本で動作する(アルカリ乾電池推奨)。なお、乾電池で携帯電話の充電はできないライトのスイッチを入れる
手回し充電でもこの明かりを確保できる端子パッキンの中には、イヤホン端子と、携帯電話充電端子がある充電は側面のハンドルを引き出して行う。実際に回すときは、本体を縦に置いて押さえてからのほうが、ハンドルを回転しやすい

 携帯電話やスマートフォンの充電については、付属の3つのプラグで、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルに対応している。同梱されていた適業機種一覧では、NTTドコモなら「*-01C」までサポートしているようだ。ただし、スマートフォンの充電には対応していない。また、携帯電話でも、完全に放電した場合の充電はできないので注意しよう。

 なお、製品のさらに細かい情報はこちらのレビューをご覧いただきたい。

付属のコードとプラグを使って携帯電話を接続取扱説明書と、充電プラグ適業機種一覧(2011年版)


「防災冊子」を読んで、今一度点検してみよう

 防災セットの中には、実際に東日本大震災の被災者の体験をもとに、何が起きるか、そのとき何に困ったか、何があると便利だったかが簡潔にまとめてある「防災冊子」が入っている。

 冊子の中では、防災セットに含まれているアイテム以外にも、なるほどと思わされたものが多数紹介されていた。布テープへのメモにも使える「ノック式油性ペン」、ホコリを防ぐ「マスク」や、「レインコート」、カットすれば、マスク、タオル、ハンカチ、下着にもなる「バスタオル」、食器洗いを不要にでき、応急手当にも使える「食品包装ラップ」など。ここで挙げたのは一例だが、筆者にとってレインコートは盲点だった。雨はもちろん、防寒機能ももち、さらにはホコリから守る効果もあると知って大変参考になった。

防災冊子生の声とともに、あると便利なアイテムが紹介されている

 この防災セットの中には水や食料は含まれていないため、これ1つで十分とはいえないが、必要だと思われるものが一通り揃っている印象。「被災者の声」から作ったというコンセプトもうなずける。

 なおバッグには、自分で選んだグッズも収納できるように少し余裕が設けられている。ここに、自分なりの持ち出したいものやセットになっていない防災グッズなどを詰めておくことで、さらに使い勝手があがりそうだ。

 もしもの時の備えは、つい“あれもこれも”となりがちだが、自分で持ち出せなければ意味がない。上手にまとめて、持ち出せるように準備しておくことが大切。まずは、このバッグに入る範囲で、必要なものを今一度考えてみたい。





2012年 5月 17日   00:00