やじうまミニレビュー
サンワサプライ「雷ガードタップ TAP-SP209」
サンワサプライ「雷ガードタップ TAP-SP209」 |
今年は各地で竜巻が発生したり、ひょうが降ったりと不安定な天気が続いている。なかでも身近で頻繁に起こるのが落雷だ。ニュースなどを見ていると、木に落ちて燃え上がってしまった映像や、電線に雷が落ちて家の電力計が溶けたり燃えてしまったという映像も流れている。
そこでお勧めしたいのが、サンワサプライ製のコンセントに挿すだけで家電を落雷から守ってくれるテーブルタップ「雷ガードタップ TAP-SP209」だ。
メーカー | サンワサプライ |
製品名 | 雷ガードタップ |
品番 | TAP-SP209SV |
希望小売価格 | 2,730円 |
購入店舗 | Amazon.co.jp |
購入金額 | 1,529円 |
■電線を直撃する落雷より、電磁波で広範囲に流れ込む雷サージの方が怖い
落ちた雷の高電圧が家の中に入ってくる経路としては、おもに次の3つがあり、それぞれに雷対策がされている。
まずは「電源線」。電柱から家に引き込んでいるコンセント用電源だ。電柱にある「トランス」と呼ばれる装置などに「避雷器」や「アレスタ」と呼ばれる装置が取り付けられていて、電柱や電線に落雷しても家まで雷が流れないように対策している。
また、電話線やADSL回線もある。電話線が家に入る直前に、外壁などに取り付けられている「保安器」と呼ばれる装置で、雷が家の中に入らないようになっている。
テレビのアンテナ線は、取り付けた業者によりけりだが、電話線と同様に、保安器が取り付けられている場合がある。
電柱の上に乗っているトランスと呼ばれる装置。近所の電柱間の電線には6,600Vの電気が流れているので、トランスで100Vや200Vに電圧を下げている。極論するとACアダプタのようなもの。その中などに避雷器が取り付けられている | 電話線を家まで引き込んだ先には、必ず雷避けの保安器が取り付けられている。写真中央の四角い箱の中に保安器がある |
このようにある程度は雷対策がされているものの、雷の高電圧は、電線などを雷が直撃したときだけに流れるものではない点が怖い。電線が直撃しない場合でも、落雷した周辺に電磁波が生じて、この電磁波が一時的に高電圧を発生させる場合がある。理科の授業で勉強した、電線に磁石を素早く近づけたり遠ざけたりすると電気が発生する「電磁誘導」に似た「静電誘導」という、静電気による現象が原因だ。
電線を巻いたものを作り、ここに磁石をくぐらせると電気が流れる。これは磁石による「電磁誘導」と呼ばれる現象だが、雷の場合は磁石ではなく静電気で電気を発生させる「静電誘導」と呼ばれる現象が起きる | トランスは数軒の家の電力をまかなうので、引き込み線はかなり長くなる場合がある。雷が電線に直撃しなくても、静電誘導で発生する雷サージが一番怖い |
電源線には避雷器が取り付けられ、“ある程度”は安全になっているものの、近くの電柱や木に雷が落ちると、トランスから家までの引き込み線の周りの電磁波が変化して、一瞬だけ高電圧・高電流が家の中に入ってきてしまう場合がある。
このようにして、色々な経路から落雷や電磁波によって家の中に入ってきた高電圧・高電流の電気を「雷サージ」と呼ぶ。
今回紹介するサンワサプライのテーブルタップは、この雷サージから電子機器を守る、最後の砦だ。
■落雷から守ったタップは使い捨て? どうやって雷から機器をガードするのか
万が一、家のコンセントに雷サージが入ってくると、各部屋のコンセントの電圧は通常100Vか200Vであるのに、一瞬だけ数千V以上の電圧になってしまう。もしコンセントにパソコンや家電のプラグを差し込んでいると、それらの機器にも雷サージが流れ、機器を破損したり、最悪火災を招く恐れがある。
それを防止するために、この雷ガードタップでは、雷サージが入った瞬間にテーブルタップ内部にある回路が機能して、タップにつながっている家電などを守るようになっている。その一瞬の過程は次の通りだ。
雷ガードタップの中に入っている、雷サージから機器を守る回路。白い箱状のものが「バリスタ」で、寄り添うように立て掛けてある白いカプセル状のものが温度ヒューズ |
1)雷サージを検出する回路が電圧を検知
通常は100Vの電気が流れるが、雷サージは数千V以上の電圧なので、これを一瞬で検知する。
2)「バリスタ」が回路をショートさせ、接続された機器まで流れないようにする
「バリスタ」と呼ばれる部品は、先の写真にある白い四角いもの。サンワサプライの製品情報では「新開発の雷サージ吸収素子X3」と呼ばれているが、雷サージから機器を守るカナメの部品だ。
通常時はバリスタの中にあるスイッチがOFFだが、雷サージを検出するとスイッチがONになり、2本の電線をショートさせる。電気は流れ易い経路を通るので、コンセントにつながれている機器にはほどんど雷サージは流れず、バリスタを経由してコンセントのもう片方に流れていく |
通常の電圧では高い抵抗を持つバリスタだが、高電圧を検出すると抵抗が低くなり、コンセントの刃をショートさせた状態にする。ショートさせるイコール危険と思ってしまいがちだが、雷サージが入っている時点ですでに危険なので、これは緊急措置だ。
このようにコンセントの刃をショートさせた状態にすると、電気は流れ易い方向に流れるという特徴があるので、そのほとんどがバリスタを通して、コンセントの片方の刃に流れるようになる。つまりテーブルタップに接続した家電などの機器には、電気が流れなくなり、擬似的にプラグをコンセントから抜いた状態にする。
3)バリスタが加熱し壊れそうになると別系統で電源を遮断
バリスタが加熱すると、温度ヒューズか溶けて回路を断線させ電気を流さないようになる |
高電圧・高電流の雷サージのほとんどがバリスタを通るため、バリスタは非常に高温になる。なおサンワサンワサプライの雷ガードタップでは、6,000Vまで耐えられるバリスタを使っているので、4,000~5,000Vと言われる一般的な雷サージ(電磁波に起因するもの)であれば、問題なく耐えられるだろう。
しかし、雷が引き込み線に直撃するなどの稀なケースで、それ以上の電圧がかかり、バリスタが異常に高温になってしまうと、やがて壊れてしまう。
そこでサンワサプライの雷ガードタップは、バリスタの温度上昇を検知して高温になると、回路を遮断する温度ヒューズも搭載している。先の写真では、バリスタに寄り添うようについている円筒形の部品が温度ヒューズだ。
こうして2段構えで雷サージから、タップにつながっている機器を守るようになっている。
さて雷ガードタップが雷サージから家電などを守るしくみはわかったが、すべての雷サージを遮断できるというワケではない点に注意して欲しい。これもごく稀なケースだが、電柱から家の引き込み線を雷が直撃した場合などは、機器を守り切れない場合もあるらしい。
スイッチをONにしても緑のランプが点灯しない場合は、買い替えのサインだ。おそらく温度ヒューズが切れてしまっているのだろう |
ちなみに取扱説明書には「タップについているランプが緑に点灯しない場合は、新しいものに買い換えてください」とあった。それ以上に詳しい説明がなかったので、これは筆者の推測になるが、1段階目のバリスタで雷サージを防げた場合は、少し放置してバリスタが冷えればタップは以降も継続して使えると思われる。ランプが消えるという場合は、バリスタが高温になり壊れてしまい、2段目の温度ヒューズが切れてしまった場合だろう。この場合はさすがにタップを買い換える必要がある。
■若干コンセントの間隔が短いが、安全で使い安いテーブルタップ
さてここまで最大の特徴である雷ガードのしくみを見てきたが、テーブルタップとしての使いやすさを見てみよう。
雷ガードタップの間隔は30mm。これはほかのコンセントと比べると若干狭めだ |
・コンセントの間隔は30mmと一般的なタップに比べ詰め気味
コンセントとコンセントの間は30mmとなっている。一般的なテーブルタップだと35mmほどあるので少し詰まり気味の感じだ。ただ3つ口ある壁コンセントよりは、5mmほど広い。
3つ口の壁コンセントは25mmなので、雷ガードタップはそれより5mm広い | 一般的なテーブルタップは、だいたい35mmとなっている |
2つ口の壁コンセントも、間隔は35mmだ | 間隔が35mmあると、3つ股ソケットなどを挿しても互いに邪魔をしない | 雷ガードタップは30mmなので、使い方によっては互いが邪魔し合ってコンセントに差し込めない場合もある |
普通のプラグを挿すぶんにはまったく問題ないが、ACアダプタや規定の1,500W以内で3つ股に分かれたソケット(コーナータップ)や、パソコンの電源コードにあるアース付きのコンセントなどを差し込む場合は、となりのコンセントに若干ぶつかる場合もある。
・一括集中スイッチで待機電力の節約に便利
すべてのコンセントを一括してON・OFFできるスイッチが付いており、待機電力の節約に便利だ。またスイッチをONにすると横にあるLEDが緑に光るので、状態は一目瞭然だ。
・口数は全部で6つと余裕
5つのコンセントが上に配置され、残り1個は大きなACアダプタなどを挿すために横についている。口数としてはまったく問題ない。もちろん、最大1,500Wまでという点に注意する必要がある。
6つのコンセントの電源を一括してON・OFFできるスイッチがあるので、待機電力の節約に便利 | コンセントの数は、上部に5つ、側面に1つある。数としては申し分ないが、最大1,500Wまでなので、大電力のホットプレートやドライヤーなどを接続する場合は注意 |
・プラグは180度回転するので隙間にもピッタリ収まる
プラグが180度回転するので、壁コンセントにピッタリくっつけられ、狭い隙間でも安全に使える。またプラグには穴が開いているので、抜き差しがカンタンにできる。
プラグの刃は180度回転するので、家具の裏にあるコンセントなどにも差し込める | 指を引っ掛けられる穴が開いているので、プラグの抜き差しが楽にできる |
・ホコリなどでショートしない安全プラグ
プラグの刃の根元は、樹脂で絶縁されている(電気が通らないようになっている)ので、長い間壁コンセントに差し込んでおいてホコリがプラグに溜まっても、ホコリによってショート・火災が発生するトラッキング火災予防の安全なプラグになっている。
プラグの刃の根元が絶縁されているので、コンセントに挿して長期間経ち、ホコリが積もっても火災が発生しないようになっている |
・タップの長さは2mなので、最近の住宅ならほぼ足りる長さ
古い日本家屋では、コンセントが1部屋に1つしかない場合が多く、長さ2mでは若干短い。しかし最近の住宅であれば、1部屋に2個以上のコンセントがあるので、2mもあればたいていは事足りるはずだ。
・丈夫な二重被ふくコードなのにやわらかく、取り回しが楽
本製品のコードは、断面積2平方mmの2本の電線をそれぞれビニールで被ふく(絶縁)し、さらに2本まとめてビニールでさらに被ふくした、頑丈な二重被ふくコードになっている。同様のコードはパソコンの電源コードなどにも使われており、非常に硬く配線しづらいものだが、このテーブルタップのコードは、非常にやわらかく配線が楽にできる。
・壁などに取り付けられる穴があるので便利
テーブルタップの裏側には、2本のネジで壁などに固定できる穴があり、タップをスライドさせて固定・取り外しができるようになっている。残念なところは、ネジを取り付ける間隔が数値で示されてるだけという点。パッケージの一部に、実際のネジ取り付け位置などを印刷して欲しかった。
あらかじめ壁などにネジを打てば、縦横どちらでも固定ができる | このような取り付けネジの位置をパッケージにぜひ印刷して欲しい |
・オーディオマニアなどには便利なアース表示
タップのそれぞれのコンセントには、差し込みの大きさと“N”の表記でアース(クール)側がひと目でわかるようになっている |
通常の電気機器を使っているぶんにはほとんど気にしなくてもいいが、オーディオマニアにとっては非常に重要なアース側の表示がある。コンセントの差し込み口の長さに合わせて“N”の刻印があるので、アース側がひと目で分かる。
ただしプラグ側には、どちらの刃がアースなのかを示す刻印がない。これはぜひ改善してもらいたいところ。検電器などを使って調べるといい。
注意:ここで言う「アース」は、エアコンや電子レンジなどから出ている緑色の電線の「アース線」とは異なります。これらの機器のアース線は、絶対にコンセントの刃のアースに差し込まないでください。アース線は、必ずネジなどで止めるアース端子に接続してください。
■どんなところに雷ガードタップを使えばいいか?
実は、このタップよりも一番安く手軽に雷サージから機器を守る方法がある。それは、コンセントからプラグを抜いてしまうことだ。しかし、雷鳴が近くに来てからプラ グを抜くのは非常に危険。なぜなら次の瞬間に落雷するかも知れないからだ。まだ雷鳴が遠くでかすかに聞こえるうちにプラグを抜くのがベストとなる。
次に手軽な方法が、壁コンセントから取っている電源を、すべてこのテーブルタップを経由して電源を取るようにすること。こうすれば、雷サージからは無敵だ。しかしそれは非現実的なので、ポイントを絞って、使った方がいい機器を挙げていこう。
比較的コンセントが外し易い機器は、雷が来る前にコンセントを抜いてしまうのが、雷サージ対策に効果的 | 雷サージはスイッチをスパークして流れてしまうので、ブレーカーをOFFにしてもあまりが効果はない |
すこし電気に詳しい人だと「屋内のブレーカーを切ってしまえばいいのでは?」と思うかもしれない。しかし、雷サージほどの電圧になると、ブレーカーを切ってもスパーク(放電)して、電気が流れてしまうので、根本的な対策にはならないことに注意しよう。
ここではコンセントが家具の裏などにあって、プラグを抜き辛いという想定で、効果的に雷ガードタップが使えるシーンに絞っていこう。
・高価な家電やAV機器
何十万円、もしくはそれ以上する高価な家電やAV機器は、雷ガードタップを使って落雷時の保険とするといい。
・パソコンの電源
パソコン自体はそれほど高価ではなくなった今だが、怖いのは落雷によるデータ消失だ。重要なデータが記録されているパソコンは、雷ガードタップを使ってデータ消失防止に使える。
・テレビやラジオなど
雷を伴うような豪雨の場合は、がけ崩れや河川の氾濫など多くの災害が発生する恐れがある。雷サージで居間のテレビやラジオが壊れてしまうと、情報収集ができなくなるので、ぜひ雷ガードタップで機器を守りたい。
不安定な天気で落雷の被害が相次いでいるが、夏に掛けての台風やゲリラ豪雨の備え、雷ガードタップを導入し、大切な家電を守っていただきたい。
2012年 6月 8日 00:00
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