家電製品レビュー

我が家を改造してガスコンロからIHに! 三菱IH導入体験記

 一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)が11月1日を「IHクッキングヒーターの日」と制定し、啓発活動を活発に行なっている。

 累計国内出荷台数は1,101万台を突破しているそうで、各メーカーによるIHクッキングヒーター(以下IH)の発表会や説明会が増えてきた。最新のIHは高火力でお手入れもラク、さらにグリルが進化するなどの魅力を伝えており、興味津々。

 しかし、我が家で使っているのはガスコンロ。もし200VのIHにするなら、工事が必要となる。今回は、三菱のIHをモニターとして導入し、率直に感じたメリットとデメリットについて、前後編でご紹介していく。

IHクッキングヒーターがついに我が家にやってきた!
メーカー名三菱電機ホーム機器
製品名3口IH びっくリングIH 75cmワイドトップ
型番PT34Hシリーズ(CS-PT34HNWSR)
実売価格13万800円

各メーカーの製品を見て三菱のIHが我が家にあっていると思ったワケ

 そもそもIHとはどういう仕組みなのか。IHは電磁誘導加熱(Induction Heating)のことで、電磁線の働きで鍋自体をヒーターのように発熱させる技術だ。

 鍋を直接加熱するため、約90%という高い熱効率を実現し、エネルギーロスを抑えて強い火力を生み出す。油の温度設定が簡単にでき、タイマーで自動消灯も可能。ゴトクなどの凹凸がなく、フラットでサッと拭けることも魅力だ。直火ではないため、ガス漏れの心配や、コンロまわりに置いた箸などに火が燃え移ることがなく、最近は安全面の側面からお年寄りにも人気となっている。

 我が家には食べ盛りの子どもが二人いて、食事作りは毎日スピードとの勝負だ。常にごはんとおやつを待ち構えている状態で、キッチンに立つ時間も長い。結婚してから15年以上、ガスコンロで調理してきたので、スムーズに移行できるものが望ましい。

 今年の3月に行なわれたJEMA主催のIHクッキングヒーターに関する説明会では、アイリスオーヤマ、パナソニック、日立アプライアンス、三菱電機ホーム機器のIHが一堂に集まり、それぞれ実演が行なわれ、特徴を知ることができた。その中で「我が家に合うかも」と思ったのは、三菱のIHだ。

 理由は、ガスで使い慣れている「つまみ」があること。ピッピッピッとボタン操作で火力を調整するよりも、直感的に操作したい。火力は天面にあるLEDによって表示されるので、遠目でも一目で火加減がわかる。

 また、左側のコイルが大口径で26cmもあり、大きなフライパンや鍋も鍋肌までしっかり加熱できることも魅力だ。子ども二人が食べ盛りで、とにかくたくさん食べる。一度に作る量が多く、我が家では大きな鍋を使うため、火力が強く、量が多くても炒め物などがしっかり作れそうな点も気に入ったのだ。

三菱のIHは左側のコイルが大きく、30cmの大きめの鍋やフライパンでもムラなく加熱できるという

 ただ、気になるところもあった。パナソニックと日立は、グリル皿で直接魚などが焼けるようになっているのに対し、三菱はいまだに網を使っている。三菱だけは熱風循環加熱式なので、魚はもちろん、揚げない唐揚げ等もおいしくできそうだが、部品点数が多いので洗う手間などはどうなのか、実際に使ってみなければわからない。

 細かいところまで見て色々考えたのだが、操作性や火力の強さなど、全体のバランスを考えると、やはり我が家には三菱が合っているように感じた。そこで貸し出し依頼をしてみたところ、IHクッキングヒーターをモニターとして提供していただけるとのこと(工事費も含む)。ただし、環境や場所によって工事内容が大きく変わるので、手続き等はすべて自分で行なうという条件だった。

 工事の手順をどうしたらいいのか、全くわからなかったのだが、せっかくの機会なので自分で調べてやってみることにした。

単相3線式であれば問題なし、単相2線式であれば工事が必要

 IH(200Vタイプ)に変更するには、電圧が200Vであることが必須のため、単相3線式であるか確認しておく。分電盤に3本の線または子ブレーカーが上下にあればOK。

 分電盤を確認したところ、我が家は単相3線式だったので、電力会社に相談する必要はなかった。単相2線式では100Vしか使用できないため、電力会社に連絡して工事をしてもらう。

 現在は単相3線式の家庭がほとんどとのことだが、わからない場合は電力会社に問い合わせて確認したほうが安心だ。

分電盤に3本の線、または子ブレーカーが上下にあれば問題ナシ。電線からは3本のケーブルがつながっている

工事担当者に来てもらい、正確な見積をとってもらう

 次に、IHを設置するための工事会社に連絡をする。修理や設置などを専門に行なっている会社で、品物も一緒に持ってきてもらえることになった。ガスコンロからIHに変更する場合は、200VのコンセントをIHの下に取り付けなければならない。そのために、分電盤から配線する工事が必要になる。

 さっそく日程を調整し、工事の担当者に来て家の構造を確認してもらう。

 見積当日、担当者はどのように配線したら効率的で家の美観を損ねないか、天井裏を見て確認し、地下に潜り、数時間にわたって構造をチェックしていた。我が家の間取りでは柱などの関係で、ケーブルを壁の内側や床下に引き込んで見えないように配線するのは難しいとのことだ。

寸法を測る
床にももぐって床下の状態を確認する
分電盤近くの天井裏をチェック。見積で数時間かかった

 そこで提案されたのが、壁に穴を開けて外壁にいったんコードを出し、キッチン近くの外壁から中に引き入れる方法だ。家の中の見えるところにケーブルが這っているのも鬱陶しいので、その方法でお願いすることにした。

 費用の見積りは後日送られてきたが、配線器具・ブレーカー代、配線工事費、IHクッキングヒーター設置工事、古いガスコンロの回収を含めて7万円(税抜)だった。

 見積をしていただいた担当者によると、これは家の外側に配線した工事費用であって、内側の配線では価格も大きく変わるとのこと。我が家のように外配線するのは工数もかかるため、比較的価格は高めとのことだ。

 見積が納得できたら、工事日を確定するのだが、その前に大事な工事がもう一つある。

ガス会社に連絡して、ガスを止める

 忘れてはいけないのが、今まで使用していたガス栓を止めることだ。工事日が決まったら、直前にガスを止めてもらう。午後から工事であれば、午前中にガスを止めてもらうのもよいだろう。早めに止めてしまうと料理ができなくなってしまうので、ギリギリで止めるようにする。

 管轄のガス会社には「IHクッキングヒーターに変えたいので、今まで使っていたガスコンロの元栓を止めたい」と電話で伝えた。IHクッキングヒーターの工事と搬入は午前中からだったので、前日の夕方に来てもらう。ガスを止める工事は30分ほどで終わり、請求された費用は6,100円(税抜)だった。

 給湯はガスを使っているため、ガス会社に連絡して復帰の作業をしてもらえば、ガスコンロに戻すこともできる。

いよいよ工事とIHクッキングヒーターの設置!

 工事日の当日、朝10時に担当者がやってきた。外壁に穴を2箇所開け、外にケーブルを這わせる工事を着々と進める。分電盤の中に空きがなかったため、IH用のブレーカーは別に設置された。

 終わったのは午後3時近く。こちらは何かするわけではないが、途中で何度か確認する必要があり、つきっきりに近い。思ったより時間がかかる大規模な工事という印象だ。工事担当者によると、分電盤とキッチンが近く、家の中を配線できるのであれば、もっと短時間で終わり、工事費用も安くすむとのことだ。

外壁に穴を開ける。業者は安さで選ぶより、腕のよいところで選ばないと後悔しそうだ
ケーブルを外側から回していく
分電盤の中にケーブルを新たに接続する
カバーをつけ、穴にケーブルを通す
ケーブルまわりは完成!

 最後に古いガスコンロを外し、新しく設置したコンセントにIHのプラグを差し、はめ込む。今後、IHを交換するときは、新しいIHのプラグを挿すだけとなるので、簡単にできる。

古いガスコンロはスポッ! とはずれた
外した後は空洞に。ここにIHクッキングヒーターを入れる
IHは重さ32kgで、はめ込むのも大変そうだった
はめ込むことができた。位置は微調整する
こちらがIH用のコンセント。システムキッチンの裏側に入れてふだんは見えないようにする
完成!

 一通り工事を終えて、ガスコンロからIHクッキングヒーターに変更するのは、率直に言うとやらなければならない工事が多く、手続きも大変だったな……という印象だ。新築やリフォーム時にIHへ変更するというご家庭が多いというのも納得だった。

 いったん設置してしまえば、プラグの抜き差しだけになる。家をオール電化にしなければ、ガスに戻すことも可能だ。システムキッチンなので規格は決まっており、大抵のビルトイン式ははめこんで使える。

地味だけど大事! IH対応の鍋やフライパンは事前に選んで準備しておく

 もう一つ、大事なことは鍋やフライパンなどの調理器具を準備することだ。我が家はずっとガスコンロだったため、IH対応のものに交換しなければならない。IHの工事をする前に準備しておかなければ、すぐに料理ができなくて困る可能性もあるので大事なポイントだ。

 IHにはディッシュパンと天ぷら鍋が付属していたが、それ以外で必要であれば、鍋やフライパンなどは早めに準備しておく。

天ぷらをするときは必ずこの天ぷら鍋を使う
ディッシュパンも付属していた。パエリアやパンなどが作れる

調理器具については、各メーカーが推奨しているのは一般財団法人 製品安全協会の「IH」または「CH/IH」マークが付いている200V対応のもの。IHクッキングヒーターのポテンシャルを引き出し、効率よく調理できるという。

一般財団法人 製品安全協会のマークがついているものが安心だという

 可能であればメーカー推奨のシリーズがあるので、そこから選んでおけば安心だ。ただし、その条件で探すと、ガスコンロで使用できるような軽いタイプのものはなく、しっかりした重いものばかりとなる。調理器具は、ガスコンロのほうが選択肢は広く、安い調理器具で満足できるのであればコストも安く済む。

 IHは焦げ付きも少なく、鍋類が長持ちするため、思い切って高いものを購入したとしても、長期間きれいな状態で使い続けられるのはメリットと言えるだろう。

ガスコンロから違和感なくIHに移行できた

 工事を終えたときはまだ暑い時期だったが、初めて使ってみて驚いたのは台所が暑くなりにくく、空気がよどみにくいこと。そして、操作も思いのほか簡単で、スムーズに移行できた。

 ガスの場合だとつまみを回して少しずつ炎を見ながら火力を調整していたが、LEDで火力の強さが一目でわかるため、とてもわかりやすい。保温などのごく弱火にするのも簡単だ。中腰になって炎を見ながら調整し、うっかり消してしまって再点火……といったこともなくなった。超とろ火にしたいときも、つまみを回して一番弱くしておけばよい。

一目で火力がわかるLEDは便利!

 止めたいときは、つまみを押し込むだけなので、パッと操作できる。そして、「煮物モード」があり、吹きこぼれないように自動で調整してくれるのもありがたい。

 ガスのときは、つきっきりになることが多かったが、IHにしてからは食材を切ったり、洗い物をしたり、別のことに集中できるようになっている。火力も強く、チャーハンもパラパラにできた。

 次回は実際にIHを使い、使い勝手や気になった点などの詳細をレポートする。

つまみがあるので直感的に操作できる。消すときは押し込めばいい
火力がめちゃくちゃ強くてびっくり

石井 和美