藤本健のソーラーリポート
発電診断から売電の収支計算まで
太陽光発電の支援サービス「エコめがね」を使ってみた

 「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)


今回紹介する太陽光発電の支援サービス「エコめがね」のトップページ

 コンピュータやAV機器をはじめとするハイテク機器と比較して、太陽光発電が優れているのは、年月が経っても陳腐化しないこと。もちろん、各メーカー間で性能アップ競争は繰り広げられているものの、太陽電池の発電効率やパワコンの変換効率は10年前、20年前と比較しても、さほど大きな違いはない。確かに価格は徐々に下がってきているが、補助金を勘案すれば、パソコンや液晶テレビのような値下がりはしていないのだ。

 ただ、ここ4、5年で大きく進化した機能がある。それが、発電量などを見るモニター機能。筆者が太陽光発電を導入したのは2004年末だったが、当時のモニターは、単に現在の出力が見られるのと、スイッチの切り替えによって、その日の発電量、月間の累計、そしてこれまでの総発電量が数字で見れるという単純なものだった。

 しかし最近は、オプションという扱いながら、カラー液晶モニターで、1日の発電量の時間ごとの推移や、月間で日ごとの推移がグラフで見れるほかに、家庭での電気の使用量、売電量、買電量が見れるなど、かなり楽しいシステムになってきている。またメーカーによっては、こうしたデータをインターネット経由でメーカーへ送信し、問題がないかをチェックしてくれるサービスを行なうところが出てくるなど、付加価値部分が強化されていて、ちょっと羨ましく思っていた。

我が家の太陽光発電システムのモニター。2004年末に導入したため、機能は数値を表示するだけと非常に簡単なものになっている最近のモニターは、発電量をグラフで表示したり、カラー液晶を使用するなど、かなり楽しいシステムになってきている(写真は京セラ「エコノナビット」)

 そんな中、NTTスマイルエナジーという会社が、昨年の11月1日、「エコめがね」というユニークなサービスをスタートさせた。以前、社長のインタビューを行なって記事にしたことがあったが、「エコめがね」のサービスは、まさに筆者のような古いシステムを使っているユーザーに最新鋭のモニターシステムを提供し、さらにさまざまな特典が付いてくるというもの。個人的にも非常に興味があったので、これに申し込み、昨年12月8日から使っている。この「エコめがね」がどんなサービスなのか、ユーザーの観点からいろいろと紹介してみよう。

エコめがねの取り付けは簡単。自宅の無線ルーターとセンサーをWi-Fiで接続

 「エコめがね」は有料のサービスで、「発電量や電気の消費量を見える化してくれるクラウド型のサービス」だ。簡易型のHEMS(Home Energy Management System:家庭内エネルギー管理システム)のセンサーを取り付け、Wi-Fi経由で各種測定データをNTTのサーバーに飛ばして使う仕組みになっている。

 料金体系的には2つのプランがある。1つは、このセンサーを買い取るプランで、この場合初期費用31,500円に月額使用量390円がかかる。もう1つはレンタルプランで、この場合は初期費用0円で、月額使用量が980円となる。筆者の場合はレンタルプランを選択したのだが、筆者自身がNPO法人「太陽光発電所ネットワーク(PV-Net)」という団体のメンバーであったこともあり、オープニングのキャンペーンでちょっと割引された月額使用量で加入することができた。

 申し込み後、すぐにNTTスマイルエナジーから電話があって、工事日の調整を行なった。また「無線LANのルーターが設置されていること」を確認されたほか、「分電盤に小さな穴をあけること、壁にビスを打ち込む」ことについて了承してほしい、という確認もあった。当日は、工事担当者が1人やってきて1時間ほどで簡単に取り付けてくれた。

 写真を見ても分かるとおり、分電盤を開いて、この内部にある電線に、計4つのCTというパーツを取り付ける作業を行なっている。このCTで流れる電流を検知するのだ。そこから細いケーブルでお弁当箱サイズのセンサーボックスへつなぎこむという作業を行なっている。

我が家の分電盤。ここに電流を検知するCTを取り付ける取り付けはエコめがねの工事担当者が行なう。取り付け時間は1時間ほどと簡単分電盤を取り付けたところ

 このセンサーボックス自体は単三電池4本で駆動する。ここからWi-Fiで、筆者の家の無線LANルーターへと接続しているのだ。もちろん、ここでSSIDやパスワードが必要になるので、それを伝えて設定を行なっている。工事担当者に聞いてみたところ、工事したのに無線LANルーターが設置されていなかったり、パスワードなどが分からず、設置できなかったというケースもしばしばなのだとか……。ここはぜひ確認しておきたいところだ。

 ちなみに、この電池は半年程度に1度交換すればいいという長寿命なシステム。交換時期になるとメールでお知らせがやってくるとのこと。筆者の場合、設置して8カ月ほどになるが、1回しかメールは来ていない。また予めパナソニックのニッケル水素電池「充電式EVOLTA(エボルタ)」が付属しているとともに、その充電器もセットでもらえる。筆者の場合、普段からなるべく待機電力は少なくしたいと思っているので、「HEMSの設置で常に電気を使うのは嫌だな……」と考えていたが、これなら安心だ。

エコめがねのセンサーボックス部屋の柱などにセンサーボックスを取り付けるセンサーボックスは、Wi-Fiで筆者の家の無線LANルーターに接続される

 なぜ、こんなに消費電力が少なく動いているかというと、常にWi-Fiでデータ交信をしているのではなく、測定した結果を1時間に1度送っているだけだからだ。実際に設置後、1時間ちょっとしたところで、測定結果が確認できるようになった。


エコめがねなら売電・買電の収支や待機電力までわかる

 さて、ここからが本題。その測定結果とはどんなもので、どのように確認できるのかを見ていこう。前述のとおり、「エコめがね」はクラウド型のサービス。したがって、インターネット経由でブラウザを通じて各種情報を見ることができる仕組みになっている。当初はパソコンのみの対応だったが、現在はiPhone/iPad、Androidのアプリも登場している。そう、クラウド型だから、自宅で発電量などが見られるだけでなく、外出先でも現在の発電量や使用電力量などがいつでもチェックできるというのは、面白いところだ。


iPhoneでも利用可能iPadでも閲覧できた

 まず「エコめがね」のサイトにアクセスし、ID、パスワードを入力してログインすると「今日の実績」、「7月のあゆみ」といった画面が現れる。画面を見ると分かるとおり、「今日の実績」をみると、今朝から今までに発電した電力量と使った電力量、またそれを電気代に換算した結果や収支が表示される。また「7月のあゆみ」のほうは、今月のこれまでの収支と、このまま月末まで行くと、どの程度の収支となるかの予測が表示されるのだ。

 さらに、「エコグラフ」へと進むと、もっと詳細なデータが表示される。画面上のタブを見ると分かるとおり、「電気代収支」、「電力量」、「今月末見込み」、「売った電気の割合」、「使った電気の量」といった項目がある。

ログインするとまず表示されるのが「今日の実績」と「7月のあゆみ」。その日の実績と月単位での見通しを教えてくれるこちらが詳細なデータを表示する「エコグラフ」。写真は売電量と買電量の差を示す「電気代収支」

 この項はそれぞれ面白いので、簡単に紹介していこう。

 まず「電気代収支」は、その名のとおり“電気代として儲かっているのか、損しているのか”を示すもの。時間ごとの詳細なデータはもちろん、日別の表示もできる。

 この電気代収支とは、売った電気代と買った電気代の差のこと。つまり、ここでいう収支とは、あくまでも「電力会社とのやりとりにおける収支」なので、「太陽光発電したものを自家消費することで買わずに済んだ」分については除外されている。たが、画面左下には、自家消費分を含む実質的な利益として表示されるのは面白いところだ。

 こうした電気代の単価は、大雑把な概算値というわけではない。電力会社ごとに異なる設定がされているのはもちろん、各家庭ごとに異なる契約形態にともなく単価の違い、そして燃料サーチャージなどもすべて反映させた形で計算されているのだ。もちろん、そのためには、事前に契約形態を設定しておく必要があるわけだが、これは申し込み時のフォーマットに記入するようになっているほか、「エコめがね」のサイト上で修正することも可能だ。

電気代収支は、日別での表示も可能電気代収支では、電力会社や電気代の単価などを、すべて反映することができる

 次に「電力量」だが、これは電気代ではなく、単位がkWhの形で電力量表示させたもの。やはり時間帯別と日別での表示が用意されている。

 ここでちょっとユニークなのは、7月のリニューアルの際に追加された「待機電力」の表示。これは“「過去3日間における、最も消費の少ない時間帯の消費電力量を『待機電力』」と見なしたもの”。節電型の生活スタイルを確立する上で、1つの参考になりそうだ。

 「今月見込み」は、その月の実績を元に、1カ月の結果を予測するというもの。もちろん天気の変化によって予測結果と実績は異なるが、結構それっぽい、実際の数値に近い予想をしてくれるのは面白い。

「電力量」は、電気代ではなく使用電力量でグラフを表示する。「待機電力」が算出されるのがおもしろいこちらは「電力量」の日別の表示「今月見込み」は、当月の実績を元に、翌月の実績を予想するというもの。これが意外と当たる

 「売った電気の割合」とは、その言葉通り、発電した電気のうち、どのくらいを売電に回せたかを表すものだ。昼間に節電すればこの比率は大きくなり、それだけ儲かることになる。ちなみに売電単価は、最近設置した人なら42円/kWh、2010年3月以前に設置した人なら48円/kWhと設定されている。画面右側には、「エコめがね」に加入している人の平均が表示されるので、みんなと比較してどうなのかが知れるのも楽しい。

 そして「使った電気の量」は、1カ月間に使用した電力の合計を時間帯ごとに表示するというもの。ここでも、ほかの人の平均と自分を比較できるようになっている。これを見る限り、筆者の家はかなり節電型の生活ができていることが確認できる。

 なお、最初の電気代収支に関しては、「エコ貯金」という形で、通帳のような表示がされるのも面白いところ。売電のほうが買電より多ければ貯金が貯まっていく形になっているわけだ。

「売った電気の割合」は、発電した電力をどれだけ売電に回せたかを表すもの。エコめがね加入者の平均値と比較できるのは楽しい「使った電気の量」は、1カ月に使用した電力の合計を時間帯ごとに表示するというもの。筆者の家はかなり節電型のようだ

最大のメリットは、太陽光発電システムが正常に作動しているか否かがわかること

 さらに「エコめがね」の本当の価値は、ここから先にある。筆者が考える一番のポイントは「太陽光発電 見守りレポート」というものが得られること。これは、「最大発電実績」および「累計発電実績」から自分の家に設置した太陽光発電システムが正常に動作しているかをチェックするというものだ。

 残念なことながら、太陽光発電システムを設置する人の中で、設置した時点で満足してしまい、あとは放置している人が多いのは事実。しかし、実際には設置後にトラブルが起こるケースは少なくないため、正常に発電しているかをチェックするのは非常に重要なことなのだ。

 確かに、完全に壊れてしまえば、電気料金などから気づくと思うが、実際には3割とか4割出力がダウンする、といった壊れ方をするので、なかなか気づかないのが実態。そうしたトラブルを発見する上で、「エコめがね」は大きな役割を果たしてくれるのだ。

エコめがねの価値は、システムが正常に動作しているか否かを見分ける「太陽光発電 見守りレポート」が使えることだ定格出力に基づく“理想出力”と、実際の発電量実績を比較して、評価をしてくれる

取り付け位置や傾斜角度を入力し、その結果から数値が導き出される

 この推定発電量は、前述の電力会社との契約形態の設定と同様に、予めパネルの出力や屋根の方角、傾きなどを登録した結果から導き出されるようになっている。方角は、東、南東、南、南西、西……などから選べるようになっており、筆者の場合、南を選択したが、実際のところは南南東。可能であれば、もう少し細かく設定できるとよかったのに……とは思っているところだ。

 現在のところ、各月とも、最大発電実績は85%程度、累計発電実績は80%程度。「エコめがね」のキャラクターである「さるる」が「いいかんじ」と言ってくれているので、大きな心配はなさそうではある。

東京電力が測定した値と比べて誤差もある

 と、嬉しい機能満載の「エコめがね」だが、使ってみたところ問題点もいくつか感じた。その一番大きな点が、実際の電力量と「エコめがね」のHEMSセンサーの計測結果との誤差だ。

 当初、1日の発電量を見たときから、モニターが示す数値と比較して“ちょっと少ないな”と思っていたが、いつ見ても1割程度少ないのだ。筆者の使っているモニターは発電量についてkWhの単位での整数表示(少数以下切捨て)しかされないので、そこでの誤差もありそうだが、それなら本来大きめに表示されるはず。しかしセンサーでの測定結果は小さく表示されるので、別の問題のようだ。もちろん、モニターの表示も絶対的なものではないので、「エコめがね」のほうが正しいという可能性も否定できない。

 そこでもう1つ調べてみたくなったのが、東京電力が検針した結果の伝票との比較だ。先ほどのエコグラフには、売電金額や買電金額は表示されていたが、その電力の表示はなく、表示されていたのは発電量と使用量。しかし、売電金額、買電金額が表示されるということは、これらについても計測されているはず。

 と思って探してみると、実は詳細データを入手する方法があった。トップページにある「CSVダウンロード」を使うことで、細かな情報をCSV形式でダウンロードすることができ、Excelなどのソフトで確認することができる。これを見てもわかるとおり、ここには消費電力量、発電電力量、買電電力量、売電電力量、自家消費電力量のそれぞれが細かく表示されている。ただし、ここで入手できるのは月初から月末までの月ごとのデータ。一方、東京電力の検針は月末に行なわれるわけではなく、家ごとに違ってくる。したがって、それに合わせて比較する必要があるので、筆者の手元に届いた伝票の検針の日付にしたがって合算し、それぞれの誤差をチェックした結果が以下の表だ。

CSVデータで細かな情報もダウンロードできるCSVデータと、東京電力の伝票から、エコめがねの誤差をチェックしてみた。ややズレはあるようだ

 これを見ると分かるとおり、発電量は14%程度少なく表示され、買電量は7%程度多く、売電量は6%程度少なく表示されているとい結果になった。

 逆に言うと、いずれの項目も本来よりも悪く表示されていたので、「エコめがね」の表示結果を楽観して眺められるというわけだ。これは前述の見守りレポートに対してもいえそうなので、本来の調子はもう少しよさそうと考えていいのだろう。

 でも、なぜこうした誤差が出てしまうのか。これはセンサーの測定方法が関係していそうである。そもそも、ファライトコアを巻いてのセンシングなので、直接電力量を見ているわけではなく、電流を見ているわけわけだ。本来なら電圧も同時に測定すべきだが、そこが測定できないので、100Vなどと仮定して測っているはず。これがきっと誤差の大きな原因になっているのだろう。

 また電流の測定にも誤差がある可能性もあるため、結果として、この程度の違いがでてしまっているわけだ。結果に増減があるわけではなく、常に同じ程度の誤差が出ているのだから、その係数を掛けることで、誤差は縮まりそうではあるが、さすがにそこまでの調整はできないようだ。

無線LANのルータを抜くと、データが取れなくなる

 もう1点、問題点というか注意点をあげると、「エコめがね」に加入したら、基本的に無線LANのルーターの電源を落としてはいけない、ということ。実は、正月休みに5日ほど旅行に出かけたために、家を留守にしたことがあった。その際、待機電力抑制のために無線LANのルーターの電源を落としてしまったのだ。

 まあ、1週間程度であれば、HEMSシステムがデータを保持していてくれるだろう、との期待の元……。ところが帰宅後、電源を入れなおしても抜け落ちたデータは復旧しなかった。すぐにサポートに連絡をしてみたが、保持できるのは数時間分だけとの返事で、どうすることもできなかった。この点については、今後電源を落とさないように気をつけたいと思う。

CO2の排出量取引も利用できる

CO2削減効果による排出権取引により、環境保護活動の支援や環境関連商品の所得に利用できるメリットも

 ここまでが筆者が利用している「エコめがね」のサービス。実はこれ以外にも、「エコフラワー」というユーザーに直接のメリットの出るサービスも用意されている。

 これは、別途、無料での入会登録が必要になるのだが、太陽光発電によって発電した電気のうち、売電できずに自家消費した分をカウントするというもの。ご存知のとおり、太陽光発電など再生可能エネルギーでの発電においてはCO2を発生させないため、相対的に見てCO2の削減効果がある。一般的な家庭に設置する太陽光発電では年間約1tの削減効果があるといわれているが、その削減効果=環境価値を排出量取引を用いてユーザーに還元するための仕組みがエコフラワーなのだ。

 売電した分の環境価値は電力会社に渡されてしまうが、自家消費分に関しては手元に残るので、それを「エコめがね」の運営元であるNTTスマイルエナジーを介して売ることで利益を得ようというわけ。もっとも、それほど大きな金額になるわけではないので、お金で還元するのではなく、貢献度を画面上の花のアイコンとポイントで表示するとともに、たまったポイントに応じて環境保護活動の支援や環境関連商品などの取得に使用できるようになっている。

 筆者の場合、前述のNPO団体である太陽光発電所ネットワークを通じて、同様のシステムにすでに加入済みであるため、エコフラワーに入会する資格がなく使っていないのだが、そうでない人ならぜひ入っておくべきサービスだろう。

高いモニターを導入しなくても便利に使える。あとは精度だけ

 以上、「エコめがね」に関して、さまざまな方向から見てきたがいかがだろうか? 個人的には、iPhoneなどを通じて、外出先からでも発電状況が常にチェックでき、人にも見せられるというのがとても楽しいと感じている。まあ、外出先からというのはともかく、グラフィカルに表示できるモニター機能は、いまの太陽光発電システムを導入すれば、液晶モニターを使うことで、ほぼ似た情報をチェックすることはできる。ただし、液晶モニターは通常オプション扱いになっており、結構高いのも事実。メーカーや機能にもよるが、4万円程度から高いものだと10万円を超えるのだ。

 したがって「エコめがね」は月額利用料がかかるとはいえ、オプションのモニターをとりつけずに、これで代用すれば負担感も減るのではないだろうか? また個人的には、常に電気を消費する液晶モニターを導入するというのも、節電の観点からはあまり好きになれないので、「エコめがね」の利用方法には賛成だ。あとは、もう少し精度が上がってくれると嬉しいところだ。





2012年7月26日 00:00