藤本健のソーラーリポート

“世界最高の変換効率”を謳う太陽光パネルメーカー、米サンパワーの強みとは?

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)
サンパワーの太陽光発電パネル「E20」。モジュールの変換効率は20.1%で、“世界最高の変換効率”を謳っている

 太陽電池の性能を示す指標としてもっとも重要なものが変換効率だろう。一般に変換効率の高いものほど価格も上がり、人工衛星などに搭載される高価なものは、セルベースで37.7%といった数値を記録しているものもある。

 一方で、一般の人が入手可能な住宅用の太陽電池で世界最高の変換効率を打ち出しているのは、東芝が販売する20.1%(モジュールベース)というもの。この太陽光パネルのモジュールを開発しているのは東芝自身ではなく、アメリカのメーカーであるSunPower Corporation=サンパワー社だ。

 これまで住宅用の太陽電池の技術力では日本メーカーが優位に立ってきたが、なぜサンパワーは日本企業を抑えて変換効率トップを達成できるのか、そしてその開発力はどこにあるのか。サンパワーの日本法人である、SunPower Japanの代表、杉原孝志氏に話を伺ってみた(以下、敬称略)。

1985年にシリコンバレーで創業し、欧米でメガソーラーが成功

――サンパワーという会社ですが、馴染みのない読者も多いと思うので、簡単に会社概要を教えてください

SunPower Japan 杉原孝志代表

杉原:当社はアメリカのシリコンバレーにある企業で、1985年に、スタンフォード大学の教授であったリチャード・スワンソン博士が中心となって設立されました。彼自身は昨年会社をリタイアしていますが、そのスワンソン博士が弊社の「バックコンタクト」といわれる、電極を裏面に配置したセルの構造を開発・発明し、それを単結晶シリコンに提供することで高効率を実現した、というのが当社のビジネスの中核にあります。

 現在、住宅用太陽光パネルの発電効率において“世界最高”を記録しておりますが、「単結晶」で「バックコンタクト」を、四半世紀に渡り一貫してやってきたのがサンパワーという会社です。

 会社としては2004年にアメリカの株式市場「NASDAQ(ナスダック)」に上場し、その上場以降順調に売り上げを伸ばしてきています。具体的には2011年で2億5,000万ドルの売り上げ規模となっており、現在世界中の従業員数が5,000〜6,000人となっています。

――そんなに大きな会社なんですね。現在は太陽光関連以外のビジネスもしているのですか?

 いいえ、太陽光に特化した会社であり、ほかのビジネスはしていません。研究・開発という最上流から、末端のセールスまでを手がける、垂直統合した形になっています。原材料であるポリシリコンは外部から調達していますが、それ以外のすべてをカバーしているといっていいと思います。

――世界中とのことですが、各国で同じようにビジネス展開をしているのですか?

 太陽光のビジネスはやはり各国ごとに制度が違うために、展開の方法やビジネスへの力の入れ方も違ってきています。やはり政府が補助金政策を打ち出しているところ、またFIT(フィードインタリフ:固定価格買取制度)に力を入れていたり、税金面での優遇が得られるところなどで伸ばしてきたという背景があります。アメリカではメガソーラーなどのパワープラント(発電所)と住宅用を並行して展開してきたのに対し、ヨーロッパはパワープラントがメインとなり大きな成功を収めてきました。

 一方、日本では、住宅の需要が高い市場なので、80〜85%が住宅用となっています。もっとも日本でも昨年から固定価格買取制度がスタートしたので、今後比率は大きく変わってくると思います。

高効率の秘訣は「バックコンタクト」。損失が少なく朝・夕方の発電量も高い

――サンパワーの製品は高効率であるということが最大の特徴といって良いですか

パネルの特徴はなんと言っても、モジュールで20.1%という変換効率の高さ。その理由は「バックコンタクト」にあった

 はい。高効率でより多くの発電ができるという当社のシステムのメリットを最大限生かせる場所ということで、住宅の屋根に適しています。とくに面積が限られる日本の住宅にとって当社製品は大きな意味を持つと考えております。

 現在、国内で販売しているのは「E20」と「E19」という型のもので、発電効率がそれぞれ20%台のモジュールパネルと19%台のモジュールパネルとなっています。具体的には「E20-250NE」、「E19-240NE」という型番であり、それぞれ20.1%、19.3%となっています。いずれも12×6の72セルのモジュール構成です。ちなみに、産業用としては「E20-327W」という、12×8の96セルという製品も出しています。

――単結晶自体は、日本のメーカーを含め、多くの太陽電池メーカーが開発しています。そうした中で、なぜサンパワーは“世界最高効率”を実現できているのでしょう

 多結晶、薄膜など色々ある中で、多くのメーカーの主力製品が単結晶になってきていますが、その中で当社の太陽電池セルが最高効率を実現できているのは、やはり「バックコンタクト」であるということが大きいと思います。

 バックコンタクトとは「裏側で接続する」という意味で、すべての電極を裏面に集めているため、表面はシリコン面だけです。太陽光を遮るものはなく、太陽光をロスなく取り入れることができます。

サンパワーのパネルの断面図。表面にシリコンを、裏面に電極を配置した「バックコンタクト」構造になっている

 ただ、バックコンタクトのメリットは、単に効率がよくなるというだけではありません。信頼性の向上という面でも大きく寄与しています。

――信頼性の向上とは、どういう点でおっしゃっているのでしょう

 太陽電池の故障のメカニズムを見ると、85〜90%は電極の腐食または電極の切断によるものだといわれています。通常の太陽電池は電極が上面にあり、金属のペーストをシリコンの板面に印刷する形で取り付けられています。しかし、シリコンと金属での熱膨張率に違いがあるため、電極の温度があがるとストレスとなり、ひびが入ったり、切れてしまうのです。

裏面の電極には銅の基板を採用。電気がロスなく取り出せるうえ、故障の可能性も低くなるという

 ところが当社のパネルでは、電極を裏側に配置するバックコンタクトと同時に、電極に銅の基板を採用しています。銅は非常に抵抗率が低く、金属面積を増やしたことで抵抗損失を減らし、電気が流れやすくなっています。これにより、発生した電気を接触面でロスすることなく取り出せるとともに、故障の可能性が低くなります。

 また、長寿命の「N型シリコン」を使っているのも大きな特徴です。これにより初期の光劣化(光の照射を受けることによる劣化)が少なく、ほぼ0%です。このようなさまざまな面から信頼性が高くなっているのです。

――それ以外にも、通常の単結晶シリコン太陽電池と違う点はありますか?

 N型シリコンであることとともに、短波長、長波長の光の取り込みが多いというのも特徴です。具体的にいえば、朝と夕の発電量が多くなります。さらに、反射防止膜に工夫をしており、直入射のものは垂直に採り込むだけでなく、斜めからの入射においても反射を減らし、取り込めるようにしています。

――なるほど、バックコンタクトというのは、いろいろなメリットがあるのですね。でも、そうであれば他社も真似てくるのではないでしょうか?

 もともとこのバックコンタクト方式は当社が基本特許を取得していましたが、特許自体はすでに切れてしまっています。とはいえ、量産につなげるための周辺特許はいろいろと押さえているので、法律面である程度守られています。また、仮に他社が真似たとしても、コスト的に見合うものにするのは難しいだろうと考えています。長年の経験があるからこそできる技術なのです。

――その太陽電池の生産はどこで行なっているのですか?

 セルはフィリピンのマニラとマレーシアで行なっています。それに対し、モジュールは地産地消ということで展開しており、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカに1つずつ工場を置いています。アジアはマニラにモジュール工場があるので、日本で販売している製品はマニラから届く形になっていますね。

日本国内で東芝と連携した意味とは?

――ところで日本の住宅用の太陽電池は、サンパワー自らが販売するのではなく、東芝から発売する形になっています。このように東芝と組んだいきさつなどを教えてください

 「国内での太陽光発電に注目が集まる中、東芝は、高効率でかつ信頼性の高い製品を探していました。一方で当社は、日本マーケットに進出したいと考えていました。しかしゼロから立ち上げるのは難しい、とくに住宅用として展開するのは極めて難しいだろうし、ブランディングも難しそうだと考えており、パートナーを探していました。その両者のニーズがうまくかみ合ったことから、2010年4月から販売サービスをスタートさせました。

日本では東芝の太陽光発電システムに、サンパワーのパネルが搭載されている。画像は設置イメージ図
広告キャラクターにはフリーアナウンサーの高島彩さんが起用されている

――その結果、東芝から現在、住宅用の太陽光発電システムが販売されているわけですが、パワコンについてもサンパワーの製品なのですか?

 当社はパワコンは作っていません。アメリカでは住宅用のシステムを当社が直接販売していますが、日本ではOEMでの供給をうけての販売であり、当社開発の製品ではありません。東芝が調達しているパワコンを当社のパネルと組み合わせたうえで、システムソリューションとしての販売を行なっています。

――もともと国内のマーケットは、シャープ、京セラ、三洋電機(パナソニック)、三菱電機の4社が牽引してきたという経緯があります。ここ最近になって中国などの海外メーカーを含め、一気に多くのメーカーが参入したという印象がありますが、東芝のシェアはいかがですか?

 シェアについては私どもから言える立場にはありませんが、出荷量は着実に伸ばしてきています。これまでに150MW以上を出荷しており、2012年の出荷量は2011年実績に対して倍増しています。これは、やはり高効率が受け入れられているためだろうと考えています。

太陽電池パネルの価格は基本的には下がっていくもの

――確かに小さい屋根でも大きな発電ができるように、高効率のシステムを導入するというニーズはあると思いますが、ここ最近でパネルの価格が急速に値段が下がっているようにも思います。この辺はいかがですか?

 確かに価格は全体的に低下しており、当初の予想以上の値下がり率ではありますが、やはり太陽電池の価格は下がっていくものです。現状は補助金やFIT、いろいろな施策によって助けてもらっている業界ではありますが、いずれグリッドパリティ(太陽光発電など再生可能エネルギーの発電コストが、既存の商用電力と同じ、またはそれより安くなること)が必ず来るでしょう。そこに向けてのコスト低減を絶え間なくやっていくことも、我々の使命だと考えています。

 価格低下の加速は予測を超えた面もありますが、市場のプライスダウンが我々にとってついていけないというほどではありませんので、今後も努力はしていきます。それよりも高効率である他社にないアドバンテージを持っているので、東芝といっしょに拡大していきたいと考えています

――国内において競合するのはどこですか

 やはり同じ高効率を謳う「HIT太陽電池」を出すパナソニックでしょう。東芝の製品は既築物件に強いという面もありますので、この辺をテコにさらに広げていっていただければと思います。

25年後も87%の出力を保証。産業向けは今年一杯が勝負

――ユーザーにとって、価格、性能とともにもう1つ気になるのが保証についてです。この辺はどうなっているのでしょうか?

 東芝は10年保証に加え、有料の15年パワフル保証、20年パワフル保証といったサービスを展開していますが、当社は直接エンドユーザーではなく、東芝に対して保証をおこなっています。具体的には商品保証25年、出力保証25年となっています。

 ちょっと分かりにくいかもしれませんが、簡単にいえば商品保証というのは、何かの拍子に割れたとか壊れたということに対する保証です。それに対し、出力保証というのは本来出るはずの出力を下回った場合に保証するというもの。いずれも結果的には出力があることが前提となるので、出力保証だけを考えるのが分かりやすいでしょう。

――25年間、出力を保証してくれるのですか?

 やはり経年劣化というものがあるため、保証する出力は少しずつ下がっていきます。納入してから5年間は、スペック上の出力の95%、5年過ぎたら-0.4%の劣化率で計算していき、25年目は87%の出力を保証する形になっています。仮にそれを下回ると保証の対象となり、修理や交換ということになります。もっともこれは当社と東芝との取り決めであるので、ユーザーに対しては東芝との保証契約に沿って補償される形になります。

――なるほど、よくわかりました。最後に日本国内での住宅以外の展開についても教えてください

産業用は、固定買取価格が42円/kWhとなる今年いっぱいが大きな勝負になるという。写真は12×8の96セルの産業用「E20-327W」

 先ほど申し上げたとおり、現状は80〜85%が住宅用となっていますが、理想は住宅用と産業用の比率が50対50くらいになるのがいいと考えています。そこまでいかなくても、少なくとも70対30くらいには達成できればと。

 住宅用においては100%東芝に販売をお願いしているのに対し、産業用は別の流通ルートも模索しているところです。2012年度の固定買取価格は42円/kWhとなっていますが、今後価格は下がっていくと予想されます。そう考えるとやはり今年いっぱいが大きな勝負だろうと考えています。

 ただし、メガソーラーのような大規模なものではなく、工場の屋根の上やマンションなどの設置は今後どんどん増えていくと思われますので、ここに対してはより注力していきたいと思います。

――ありがとうございました

(藤本 健)