大河原克行の「白物家電 業界展望」

日本の家電をもう一度復活させたい――パナソニック・アプライアンス社の次の一手

パナソニック アプライアンス社の高見和徳社長

 パナソニックが、2014年4月に、白物家電事業を担当しているアプライアンス社のなかに、テレビ、ビデオ、オーディオなどのコンシューマ向けAV製品事業を統合してから半年を経過した。

 すでに一部製品において、技術やノウハウの融合効果が発揮されており、今後、その動きはますます加速することになる。一方、国内では「Jコンセプト」と呼ぶ新たなシリーズ製品を投入。シニア層をターゲットとした取り組みを本格化させる。

 また、欧州やアジアにおける白物家電事業の体制強化も取り組んでおり、海外事業の成長も、2018年度の家電事業2兆円の達成に向けた重要な鍵になる。パナソニック アプライアンス社・高見和徳社長に、パナソニックのアプライアンス社の今後の取り組みについて聞いた。

テレビ/ビデオ/オーディオチームと白物家電チームが融合

――2014年4月から、白物家電を担当していたアプライアンス社のなかに、AVCネットワークス社が担当していたテレビ、ビデオ、オーディオなどのコンシューマ向けAV製品を統合したわけですが、半年を経過してなにか成果は出ていますか。

高見 今のアプライアンス社の副社長は、すべてAVCネットワーク社からきた人たちです。純粋に白物家電をやってきたのはむしろ私だけ。ですから、名前はアプライアンス社だが、実際にはAVCネットワークス社の人たちで経営しているようなものです(笑)。また、そこに旧パナソニック電工の人たちも加わっています。

 AVCネットワークス社の経営センスを、アプライアンス社に融合した形でビジネスしているというのが今の体制です。製品面では、統合前からすでにいくつかの成果が出ています。

 たとえば、ガラスドア冷蔵庫のガラスドアを取り付ける技術はプラズマテレビの製造ノウハウを応用することで実現したものです。デバイスそのものを融合するということもありますが、モノづくり技術でもお互いのノウハウを融合する動きが出ています。

肌の状態を確認し、仮想的にメイクした映像を表示する鏡。9月にベルリンで開催したIFA 2014のブースでコンセプト展示されていた。

 9月にベルリンで開催したIFA 2014のパナソニックブースでは、コンセプト展示として、鏡に向かうだけで肌の状態を確認したり、その日のスケジュールに最適なメイクなどを紹介する近未来の様子を体験できるようにしましたが、これも、1年以上前から、お互いが一緒になって開発してきたものです。来年には、AVCネットワークス社の技術をもっと取り入れた白物家電を出していきたいと考えています。

――アプライアンス社は、テレビ事業などを統合したことで、一気に営業利益率が落ちました。パナソニックの4つのカンパニーのなかで、営業利益率が最も低く、2%台となっています。2018年度に営業利益率5%以上を全社目標とするなかで、どう巻き返しますか。

高見 2018年度の営業利益率5%台は、必ず達成します。できる限り前倒しにしたいとも考えています。では、そのためにはどうするのか。白物家電という観点でいえば、ひとつは、ビルトイン機器を増やす取り組みを開始します。これは収益性の高い製品分野に踏み込むことにもつながります。

 また、利益がとれる地域への投資を加速する。カナダやアジア、欧州、日本といった市場がこの対象になります。ここでは、プレミアゾーンの製品構成比を高めることに力を注ぎます。一方で、ODMからの買い入れも増やす考えです。これは、利益率を引き上げることにはつながりませんが、ボリュームを増やすための取り組みとなります。

アジアの富裕層をターゲットとしてパナソニックの存在感を高めていく

――アジアでは、APアジアを設立することを明らかにしていますね。

高見 APアジアは、来年春の設立予定ですが、すでに準備作業を開始しています。ここで最終的に目指しているのは、日本に頼らない体制の確立。アジアだけで完結ができる仕組みを作り上げます。また、エアコン、冷蔵庫、洗濯機をはじめとして、アジア向けの商品ラインアップの強化を進めていきます。

 早いものではこの秋からアジア向け製品として出てくるものもあります。そして、10月中旬以降、日本で生産した製品もアジアに展開するつもりです。これは、アジア地域の専門店を1,000店舗に絞って展示販売することになります。これにあわせて、日本のメーカーらしいマーケティング、韓国や中国のメーカーではできないような日本のメーカーだからこその展開を、日本生産の製品導入とともに行ないます。

 まだ詳細は触れられませんが、たとえば、シンガポール、インドネシア、マレーシアには、高級なコンドミニアムがあり、かなり建設が進もうとしている。こうした高級コンドミニアムのモデルルームに、日本製であるパナソニック製品の展示ブースを設け、そこで販売提案を行なうといった取り組みがそのひとつです。来年春に向けて、この取り組みはもっと積極化したいと考えています。

 日本製製品に対する支持はアジア圏では高い。我々の想定以上に富裕層が増加しており、実際に住んでいる家を訪問すると、素晴らしい環境の家に住んでいる。そこにあわせた品質、デザイン、性能の商品が求められており、日本製が注目されている。プレミアムモデルの提案によってパナソニックの存在感を高めていきたいと考えています。

 アジアでは、商品ラインアップ強化、マーケティング強化を進め、その次にR&Dの強化を進めます。製品開発の体制を中期的視点で強化するとともに、生産拠点を含めてどうするかといったことも進めたいですね。白物家電とAV機器との違いのひとつに、製造拠点への投資規模の差があります。白物家電は大きな投資がかかるため、すべてを一から作り上げることが難しい場面もあります。その点も考慮しながら体制を作り上げたいと思っています。

欧州市場ではビルトインを強化、まずはシェア10%を目指す

――一方、欧州市場においては、これまでにも苦戦してきた感じはありますが。

高見 今回のIFA 2014のタイミングで、いよいよ欧州の家電メーカー、ゴレーネとの共同開発製品を市場に投入することができました。まずは洗濯機を市場投入しましたが、来年には冷蔵庫にも共同開発の幅を広げ、欧州における製品陣容をさらに強化したい。さらに冷蔵庫、洗濯機以外にも増やしていくことも考えています。

ゴレーネは欧州の中堅家電メーカー。生産体制での協業を軸に共同開発も行う。写真はIFA 2014のゴレーネブース

 欧州は、いいものを求める傾向が強く、単価も高いので利益を確保しやすい。また、欧州では、ビルトインの製品が高い人気を誇っており、ここも強化したい。これは単価上昇にもつながることになるからです。ゴレーネとはビルトイン機器でも協業していきたいと考えています。

 さらに、これまで、テレビはテレビ、白物は白物という商談だったが、これを一緒に商談できるようになったことで、相手の顔色もずいぶんよくなった。欧州市場でもいい反応が出ています。

 今、パナソニックの欧州におけるシェアは、5%以下。エアコンは2桁のシェアを取っているが、全体をみると、まだ存在感がありません。シェアが10%を超えると激しい競争領域へと入ることになりますが、まずはそこを目指したいと考えています。

――9月のIFA 2014の展示内容は、パナソニックの欧州市場での事業展開にどんな影響をもたらしますか。

ゴレーネとの協業により開発した洗濯機

高見 欧州向け白物家電では、やはりゴレーネとの提携強化に尽きます。それにより、これからも商品陣容を強化していきたい。また、ゴレーネとの提携によって、欧州に自前の白物家電工場を持たなくてもよくなったという点も大きい要素ですね。ゴレーネのセルビア工場はまだまだ生産を拡大できる余地があり、白物家電の大物製品の生産はここでできるようになる。中国から運んでこなくていいというメリットは極めて大きい。

 また、パナソニックは、チェコに工場を持ち、AVC製品を生産していますが、さらに、燃料電池についても、日本から持ってくるのではなく、欧州で生産することも検討したいですね。欧州は専門誌でのナンバーワンの評価を得ることが、売れ筋になる条件。パナソニックは省エネという点で強みがある。また、最近では静音に対しての要求が高く、様々な製品で、静音への期待度が上がっている。そしてデザインも重要である。専門誌でどれだけ多くナンバーワンを取れるかが鍵になるといえます。2018年度には家電事業2兆円のうち、3,300億円が欧州。現在、2,800億円の規模から拡大させることになります。

 成長を担うのは白物家電。IFAで発表し、欧州から市場投入するテクニクスは、欧州では圧倒的認知度があります。私自身もこれを復活させたいという気持ちがありましたし、ユーザーからも要望があった。そして、モノづくりにおいては、音のマニアの方々の要求を何度も何度も聞いて、最終的な音質を作っています。ただ、高級オーディオの市場規模そのものが限られていますから、売上高で成長を牽引するのは難しいといえます。

 一方で、IFA 2014における展示で迷ったのが、コンセプト展示のひとつとして公開した次世代キッチンです。火をかける場所を選ばないクッキングヒーター「Freestyle induction hob」や、Freestyle induction hobを利用して上下から熱を与えて調理できる「3D griller」、プレート上で冷たいままで保存できる「Cool plate」、熱をかけて自動的にかき混ぜることができる「Auto Stirrer」などがありますが、見た人たちが、どこまで読みとっているかわからないものの、ここには、様々なアイデアか入っており、要素技術開発が伴うものも入っている。

高見社長がIFA 2014のパナソニックブースの見どころのひとつとしたコンセプト展示「Better Living Tomorrow」
パナソニックブースでは「和」を前面に打ち出した展示も行なった

 また、パナソニックが収益性を高めることができるものも入っています。デジタルイメージング技術とネットワーキング技術、インテリジェントコントロール技術、各種センサー技術と、家電技術を融合したことで実現する新たなソリューションだといえます。こうした技術をみせることで、パナソニックの先進性を感じてもらえたと思っています。

――米国および中国での展開はどう考えていますか。

高見 米国では、冷蔵庫および洗濯機を、ニューヨークやカルフォルニアといった一部の市場に向けて展開しようとしましたが、サービス体制の構築が難しく、方針を変えました。

 いま、北米市場向けには、コールドチェーンを強化したいと考えています。また、白物家電事業については、米国よりも、カナダに重点をおきたいと考えています。カナダの販売会社を活用して、白物家電を販売するためのプロジェクトをスタートしており、ビルトイン機器についても、カナダではすでに販売を始めています。これは、近いうちに明らかにできると思います。

日本のモノづくりから生まれる家電を、もう一度復活させたい

パナソニックはシニア向け家電のJコンセプトを発表した

――日本市場向けには、9月17日に新たなコンセプト家電 「Jコンセプト」シリーズを発表しました。この基本的な考え方について聞かせてください。

高見 家電というのは、一人一人の生活に密着した製品です。日本のモノづくりから生まれる家電を、もう一度復活させたいという想いで取り組んだのが、「Jコンセプト」シリーズです。

 日本という市場を中心に考え、とくに、シニア世代がどういう思考や、どんなトレンドのもとに白物家電を選択するのかということを分析し、約2年をかけて、商品ごとにプロジェクトを組んで開発を進めてきた製品です。プロジェクトのなかには、パナソニックを卒業した先輩の方々にも参加していただき、様々な意見をいただきました。これらの世代の方々は、製品にこだわり、デザインにもこだわる。そして、自分仕様を求め、一律な提案で利かないという側面がある。まさに「目利き世代」です。

 こうした方々の意見を伺いながら、製品化を進めました。まずは、第1弾製品として、ルームエアコン、掃除機、冷蔵庫の3製品を発表しました。今後は洗濯機や炊飯器にもラインアップを拡大し、来年5〜6月には、6、7製品ぐらいがラインアップできる予定です。Jコンセプトシリーズでは、2016年度に500億円、2018年度には1,000億円を目指しますが、この考え方はシニア層にだけ通じるものではないと考えています。次の製品に、Jコンセプトを選んでくれる若い世代もいるのではないでしょうか。さらに、将来的には通常製品にもこの考え方を持ち込みたいと思っています。

 一方で、Jコンセプト製品に限らず、いま、パナソニックでは、すでに2016年度の商品づくりの準備に入っています。また、2018年度には、パナソニックが創業100周年を迎えるのを記念したモデルも投入する予定です。

最重点市場は日本とアジア

――GEやシーメンス、ボッシュなどの動きに代表されるように、世界的に家電業界の再編が見られています。

高見 我々も、2001年頃に、GEとの提携について模索した時期がありました。しかし、モノづくりに対する考え方の違いがあり、それを断念した経緯があります。また、ボッシュとは、電子レンジをはじめ、部品レベルでの協業はあります。家電メーカーの再編は、それぞれの会社が今後のことを考えた事業戦略の上で遂行しているものであり、いまこそ家電に資源を投入するべきだと考えている会社もある。ここ数年間は、各社とも、どこに力を入れるべきかを模索する時期にあるといえるのではないでしょうか。

 パナソニックは、2018年に向けては家電2兆円を目標にしている。これをどうするのかといったことに主眼をおいて、成長を目指していく。最重点市場は日本とアジア。ここに重点的に投資をしていくことになります。しかし、宣伝投資額は、海外向けがまだ少ないという印象があります。トータルのマーケティング投資を国内から海外に、もっとシフトすることを考えてもいい。国内市場の構成比は10%。残りの90%に対して、どう攻めていくのかということをもっと考える必要があります。それによって、海外事業の成長を加速させたいですね。

――ありがとうございました。

(大河原 克行)