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ヤマハ発動機の電動アシスト自転車「PAS Brace」
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電動アシスト自転車とは、電動モーターによって人力の補助を行うことで、楽に走行できる自転車のことです。モーター付きですが、特別な免許は要りません。また、モーターだけでは走行できず、基本的にペダルに力が加わっている場合にのみモーターの駆動アシストが働くようになっています。
一番のメリットは、発進時や低速走行時にモーターがペダルをこぐ力を軽減できる点です。そのため、坂道を登る際にも無理に力を入れず、楽に走行できます。また、重い荷物や子供を乗せて走行する場合や、お年寄りなど足腰の弱い人でも、モーターの補助によって走行開始時のふらつきが抑えられるため、転倒などの危険が大幅に低減できます。安全に走行できるという意味でも、非常に魅力的な製品と言えます。
モーターを駆動する電源は、専用のバッテリーを使用します。バッテリーは基本的に着脱式で、家庭のコンセントで充電します。走行距離は製品によって異なりますが、フル充電で20kmから60kmほどの距離を走行できるものが一般的です。種類としては、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池が利用されるケースが多く、特にリチウムイオンは高価な上位モデルでの採用が多く見られます。中には、ブレーキをかける際にバッテリーの充電ができる「回生機能」を搭載することで、100km以上の長距離を走行できる製品も登場しています。
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「PAS Brace」に搭載されているモーターユニット
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モーターユニットはペダルの付け根部分に搭載されていることが多い。写真はパナソニック「チタンフラットロードEB BE-EPV」
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前輪のホイールにモーターユニットを搭載する機種もある。写真は三洋電機「eneloop bike(エネループバイク)」
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「eneloop bike」の全体写真。サドル下の「eneloop」のロゴが見える部分がバッテリー
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専用の充電器にバッテリーを取り付けて充電する
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三洋電機「エナクル」シリーズで搭載されているバッテリーの中身
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また、走行速度が上がるほどモーターのアシスト力は低減され、時速24km以上の高速になると、モーターの補助は完全になくなります。そのため、無理にスピードを出しすぎる心配もありません。要はモーターは、あくまで人力による走行をサポートする場合にのみ作動します。そのため、電動アシスト自転車は法的にはバイクやスクーターとしてではなく、自転車とほぼ同じ扱いとなり、一般的な自転車とほぼ同じ感覚で利用できます。これも、電動アシスト自転車の最大のメリットと言えます。
ただし、モーターやバッテリーを搭載しているために、一般的な自転車よりもやや重く、20kg台以上の製品が多くなっています。そのため、バッテリーが切れて電動アシストが得られなくなった場合には、走行がかなりきつくなる可能性も十分考えられます。長距離の走行にはあまり向かないでしょう。
● 補助力の規制が緩和されアシスト力がアップ。より楽に走行できるようになった
2008年12月1日より、道路交通法施行規則が改正されて、電動アシスト自転車の補助率が向上しました。
従来の規則では、電動モーターによる駆動力の補助率は、人力1に対して1、つまり全駆動力の50%が上限として定められていました。しかし、2008年12月1日より、人力1に対して2、つまり全駆動力の66%まで上限が緩和されたのです。この規則改正によって、電動アシスト自転車の電動モーターによる補助をより強力に利用できることになりました。
より正確に言うと、人力1に対して2の割合で補助が行えるのは、走行速度が時速10km未満の場合に限られます。速度が時速10kmを超えると、徐々に補助の割合が下がり、時速24km以上では従来同様に、補助がなくなります。
低速走行時での補助率が高まったことで、坂道を、これまで以上に楽に走行できるようになります。それに加えて、走行開始直後のふらつきも大幅に低減されることになります。より楽に、また安全に走行できるという意味からも、この規則改正は大いに歓迎できるものと言っていいでしょう。
【電動アシスト自転車の新補助率】
走行速度 | 最大補助力 |
時速10km未満 | 人力1に対して最大2 (全駆動力の66%) |
時速10km以上 24km未満 | 人力1に対して「2 - (走行時速 – 10) ÷ 7」 |
時速24km以上 | 0 |
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2008年12月に、アシスト基準が改正される前の基準。人力と動力のアシスト比は1:1で、人力を越えるアシストは発揮されなかった(資料元:三洋電機)
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新基準では、時速10km以下の場合に「人力:動力 = 1:2」のアシストが可能になった(資料元:三洋電機)
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● 法的には自転車と同じ扱い。ペダルを漕がない「モペット」に注意
電動アシスト自転車は先ほど紹介したように、電動モーターの力のみで走行できないため、法的には自転車と同様の扱いを受けます。そのため、運転免許は必要ありませんし、ヘルメットの着用や自賠責保険への加入も必要ありません。道路交通法では、原動機付自転車(いわゆる原付バイク)ではなく、一般的な自転車に相当する「普通自転車」という基準に適合しています。そのため、道路の路側帯、自転車の走行が認められている歩道なども、問題なく利用できます。当然ですが、2人乗りや夜間の無灯火走行、飲酒運転などは禁止されています。
ただし、電動モーターを搭載した自転車の中には、電動アシスト自転車として区分されない製品も存在します。その多くは海外製のもので、ペダルを漕がずに、電動モーターのパワーだけで走行できてしまうようなものです。そういった製品は「ペダル付きの原動機付自転車」――いわゆる“モペット”として区分されますので、原付と同等の規制を受けることになります。もしこのモペットで、ヘルメットを装着しなかったり、歩道を走行するなど、自転車と同じ感覚で使用した場合は検挙されることになります。
【電動アシスト自転車】の、ここだけは押さえたいポイント
・坂道を楽に走行。走行開始時のふらつきも抑えられ、安全性も向上する ・運転免許証やヘルメットは不要。一般的な自転車と同様に使用できる ・自転車を漕いでいない時、または時速24km以上の高速の場合にはアシストしない ・2008年12月の規制緩和で補助力がアップ ・バッテリーがなくなるとただの重い自転車になってしまうので注意
2009年1月23日 初版
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現代家電の基礎用語 バックナンバー
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/
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2009/01/23 00:02
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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