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電気を使い果たしても、充電すれば繰り返し使える電池が「充電池」。写真は三洋のニッケル水素充電池「eneloop(エネループ)」
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前回は使い切りの「乾電池」を取り上げましたが、今回は、繰り返し使える“二次電池”の「充電池」について取り上げます。
充電池とは、電池内部の電気を使い果たしても、充電すれば繰り返し使える電池のことです。正確には「蓄電池」「充電式電池」と言いますが、一般的には「充電池」が普及しているため、本稿でもこの表記を採用します。
現在実用化されている充電池には様々な種類がありますが、その中で家電製品で広く利用されている充電池として、ニカド/ニッケル水素/リチウムイオン充電池の3種類が挙がります。これらは電圧や性質がそれぞれ違うため、使用されるシーンもさまざまです。以下に、登場した時系列にしたがって紹介していきます。
● 大電流でモーターを使う機器に有効も、自己放電やメモリー効果が気になる「ニカド」
最も古参なのが、負極材に水酸化カドミウム、正極材に水酸化ニッケル、電解液に水酸化カリウムを採用する「ニッケル・カドミウム充電池」です。略してニカド電池(ニッカド電池)とも呼ばれます。
ニカド充電池は、大電流が取り出せるという特徴があり、モーターを駆動させる充電池として広く利用されています。しかし、容量が少なかったり、自己放電が多かったり、まだ電気が残っている状態で継ぎ足し充電をすることで、充電容量が減少してしまう「メモリー効果」が発生するといった欠点があります。有害物質のカドミウムが含まれていることもあって、以前ほど多くは利用されなくなっています。
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大電流が取り出せるニカド電池は、掃除機などモーターを使う機器に利用される
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こちらは乾電池形のニカド電池。容量が少ない、継ぎ足し充電ができない、有害物質を含むといった点から、最近ではあまり見かけなくなった
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● 電池容量はニカドの倍以上、乾電池形でお馴染み「ニッケル水素」
ニカド充電池の欠点を補う形で登場したのが、「ニッケル水素充電池」です。正極材に水酸化ニッケル、電解液に水酸化カリウムを利用するのは一緒ですが、負極材はカドミウムでなく水素吸蔵合金を採用しています。ニカド充電池に対し倍以上の容量を実現していたり、またカドミウムを含まないということで、ニカドからの置き換えが進みました。
基本的にはニカド同様、自己放電やメモリー効果といった欠点もありますが、最近ではこれらの欠点を抑えたニッケル水素充電池も見られます。ハイブリッド自動車、一部のシェーバーや電動歯ブラシの電源として使われていますが、一番有名なのは「eneloop」など、乾電池に置き換えられる電池形のものでしょう。これについては後述します。
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ニッケル水素電池は、ハイブリッドカーなど車の電源として使用される
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電源にニッケル水素電池を採用する、パナソニックの電動歯ブラシ「ドルツ・リニア音波ハブラシ イオン EW1045」。最新モデルではリチウムイオン電池が採用されている
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乾電池形の充電池の主流といえばニッケル水素充電池だ(写真はソニーのサイバーエナジー)
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● ノートパソコンや携帯電話など、モバイル機器は「リチウムイオン」
ノートパソコンや携帯電話、デジタルカメラでは、「リチウムイオン充電池」が採用されています。最近では、シェーバーや電動歯ブラシなどでも搭載されているケースが多くなっているようです。材料には、負極材にグラファイト、正極材にコバルト酸リチウム、電解液に炭酸エチレンまたは炭酸ジエチルを利用しています。
リチウムイオンでは、高電圧が得られることや、メモリー効果や自己放電が少ないという利点があります。しかし、容量以上に充電する「過充電」や、容量以上に電気を発する「過放電」によって、高発熱や発火、さらには爆発といった危険が伴う危険性もあります。そのため、市販されているリチウムイオン電池にはさまざまなな安全回路が盛り込まれています。
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リチウムイオン電池は、ノートパソコンやデジタルカメラ、携帯電話の電池として使用される
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パナソニック「ラムダッシュ ES-LA90」など、小型家電製品でリチウムイオン電池を搭載する機種が増えてきている
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● 乾電池のかわりに使えるのは「ニッケル水素」が主流
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自己放電やメモリー効果を抑え、乾電池の代用として使えるニッケル水素充電池が増えてきている。写真は「eneloop」
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最近では、三洋電機の「eneloop(エネループ)」や、パナソニックの「充電式エボルタ」など、乾電池と同じ円筒形の形状をしたニッケル水素充電池が多数販売されています。これらは電池を利用する家電で利用できるように、この形状になっています。
乾電池形のニッケル水素充電池は、乾電池に比べると1本あたりの価格はかなり高価ですが、充電することで1,000回以上繰り返し利用できるため、トータルでのコストは乾電池に比べてかなり有利になります。また、使い捨ての乾電池の利用を減らすことで、資源の節約にも役立ちます。しかも、メモリー効果や自己放電など、ニッケル水素充電池特有の欠点も大幅に解消されているため、使い勝手も大きく向上しています。
使用上の注意としては、ニッケル水素充電池の定格電圧は1.2Vと、乾電池の定格電圧の1.5Vよりも若干低くなっています。そのため、電気製品によっては、正常に利用できない場合もあります。とはいえ、よほどの高電圧の製品でなければ、ほとんどの電気製品で乾電池のかわりとして利用できると考えていいでしょう。
● 放電と逆の電流を流すことで充電
充電池が電気を発するする仕組みは、電池内部の素材が化学反応を起こすことで電気が生まれます。これを放電と呼びますが、電池が放電する仕組みは基本的に乾電池と同様です。しかし、乾電池では電池内の化学反応が終わってしまうと放電ができず、その電池は寿命となってしまいます。
では充電池はなぜ、電池容量が空になった後も、充電することで電気が回復するのでしょうか。
充電池では、化学反応が終わって放電ができなくなった後、充電池に対して放電時とは逆の電気を流すことで、内部が放電とは逆の化学反応を起こし、放電前の状態に戻せるようになっています。これが充電というもので、充電池が繰り返し使える仕組みです。
充電池を発明したのは、フランスのガストン・プランテという物理学者でした。プランテは1859年、負極剤に鉛、正極剤に二酸化鉛、電解液に希硫酸を使った充電池「鉛充電池」を発明しました。放電が進につれ、正極から発生した水で希硫酸が薄まり、化学反応が起こりにくくなってやがては放電が行なえなくなります。しかし、正負逆の電気を流すと、放電時と逆の化学反応が起こり、希硫酸から水が奪われて希硫酸の濃度が戻り、再度放電が行なえるようになります。
充電池にはさまざまな種類がありますが、放電と充電を行なう基本的な仕組みは、鉛充電池と同じです。
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ニッケル水素充電池「eneloop」の構造。放電とは逆の電流を流すことで充電できる
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eneloopは自己放電を抑制し、放置しても電池容量が減りにくくなっている
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【充電池】の、ここだけは押さえたいポイント
・繰り返し充電して使える ・ニッカド電池はモーターを使う機器に使われる ・乾電池のかわりに使えるのはニッケル水素充電池 ・リチウムイオンは携帯電話やパソコンに使われる
2008年12月12日 初版
■URL
現代家電の基礎用語 バックナンバー
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/
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2008/12/12 00:03
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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