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花粉症対策に役立つ家電といえば空気清浄機。写真はシャープの加湿空気清浄機「KC-W80」
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空気清浄機とは、室内の空気を浄化する空調機器のことです。一般家庭向けの空気清浄機では、室内のホコリや花粉、ダニの死骸といった、いわゆる「ハウスダスト」と呼ばれている非常に細かな粒子を除去したり、室内のニオイを除去するといった用途で利用されることが多くなっています。
もともと一般家庭向けの空気清浄機は、たばこの煙やニオイを除去する目的で利用されていました。しかし、1995年に発生したスギ花粉の大量発生で花粉症という言葉が一般に認知されたこと、さらに当時のテレビの情報番組で空気清浄機が花粉の除去に有効と紹介されたことにより、たばこ対策から花粉やハウスダスト対策の機器として一気に普及し始めました。
現在では、花粉やハウスダストの除去だけでなく、脱臭、加湿、除湿と、様々な機能が搭載されるようになって、室内の空気をきれいにするだけでなく、室内環境を快適にする機器として大きく進化しています。
● 一般家庭の空気清浄機は「ファン集塵式」が基本
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多くの空気清浄機が、本体内のファンで空気を吸い込む「ファン集塵式」を採用している
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空気清浄機には大きく分けて3つの方式がありますが、ほとんどの空気清浄機では「ファン集塵式」を採用しています。
ファン集塵式は、本体内にファンを搭載して室内の空気を吸い込み、本体内に取り付けたフィルターでハウスダストやニオイをキャッチし、きれいになった空気を吹き出すというものです。非常に細かなホコリもキャッチする「HEPAフィルター」や脱臭用のフィルターなど、複数のフィルターを搭載することがほとんどとなっています。室内の空気をしっかり攪拌するため、大型のファンを内蔵する製品が多く、本体が大きかったり、ファンが勢いよく動作するとうるさいといった欠点がありますが、ハウスダストやニオイをキャッチする能力は、他の方式よりも断然優れます。
他の2つの方式は、「電気集塵式」と「イオン集塵式」と呼ばれるもので、基本的な仕組みは、どちらもプラズマ放電を利用して室内のホコリなどを帯電させて電極に吸い寄せるというものです。ただ、電気集塵式は、業務用としては多く存在しますが、一般家庭向けの製品はほとんどありません。またイオン集塵式も製品数は少なく、さらに本体周囲のごく狭い範囲でしか効果が発揮されないなど、集塵能力はファン集塵式に大きく劣ります。
そういった意味では、「一般家庭向けの空気清浄機 = ファン集塵式」と考えていいでしょう。
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空気清浄機内部に吸い込んだ空気は、HEPAフィルターなどのフィルターで集塵する(写真はシャープ「KC-W80」)
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多くの空気清浄機には脱臭用フィルターも搭載されている。中にはペットのニオイ対策に特化した製品もある(写真はアイリスオーヤマの加湿空気清浄機「KC-350CX」)
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● トレンドは「イオン機能」「加湿機能」「気流制御」
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イオン発生機能と加湿機能を備えた、パナソニックの加湿空気清浄機「F-VXD50」
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現在市販されている家庭向けの空気清浄機では、花粉や細かいホコリなどのハウスダスト、部屋のニオイなどを取るという基本的な用途はもちろん備えていますが、機能をさらに追加することで、室内環境をより快適にする製品が増えてきています。
追加された機能の中でも、ここ1~2年ほどで一気に増えてきたのが、イオン機能と加湿機能です。
イオン機能は、集塵方式としてのイオンではなくて、プラズマ放電によって発生する「OHラジカル」という物質を室内に放出して、花粉やカビ、ダニの死骸、ウイルスなどを分解・不活性化したり、より強力な脱臭能力を実現するという用途に利用されています。このイオン機能の効果は、各メーカーが第三者機関による検証結果が公表されており、それ以前に広く普及していた「マイナスイオン」のような、効果が非常にあいまいなものではないでしょう。 [→「イオン機能」とは]
加湿機能は、乾燥する冬場の室内の湿度を高めることで、肌のうるおいを保ったり、静電気の発生を抑える、ウイルスの活動を弱めて風邪やインフルエンザの感染を予防するという目的で、これまでも単独の機器(いわゆる加湿器)として広く利用されてきました。しかし、空気清浄機と併用されることが多く、湿度が高くなると先ほどのイオン機能の能力が向上することもあってか、徐々に空気清浄機に搭載される例が増えてきました。別々に使うよりも設置場所が少なくするという利点もありますので、現在では加湿機能の搭載がほぼ主流になっています。
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ダイキンの加湿空気清浄機「うるおい光クリエール MCK75J-W」は、1分間の風量が「業界No.1の大風量」という7.5立方mで、素早く加湿できる点が特徴
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加湿空気清浄機は本体内部に水タンクを備えている(写真は三菱電機「ラクリアエア MA-517DK」)
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そして、もう1つ機能面で見逃せないのが気流制御です。これは、本体から勢いよく吹き出る空気の向きを、ルーバーを利用して部屋隅々に届くように自動的に変化させたり、狙った場所にピンポイントで吹き出すといったものです。気流制御のある製品のほうが、部屋の空気のかくはんもしっかり行なえます。さらに、空気清浄機の吹き出し口の前に立ってピンポイントで空気を浴びることで、服に付いた花粉を一気に除去するというような使い方もできます。
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シャープの空気清浄機では、本体後方に斜め20度の角度で空気を放出する
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風を壁に沿わせることで、部屋全体の空気を循環させる狙いがある
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これら付加機能は、空気清浄機に絶対必要というものではありません。しかし、あった方が室内環境をより快適に保てることは間違いありませんので、購入時にはどういった付加機能が搭載されているのか必ずチェックするようにしましょう。
● 購入時には機能面だけでなく「適用床面積」も必ずチェック
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しっかりと空気をキレイにするためには、適応床面積に余裕があった方が望ましい。家電量販店の店頭で必ず表示されているので、購入前には確認しておきたい(写真はイメージ画像)
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空気清浄機を選択する時に、機能とともに重要なチェックポイントとなるのが「適用床面積」です。
適用床面積とは、その空気清浄機がどの程度の広さの部屋で有効に利用できるのかを示す指標です。適用床面積は、製品のカタログなどに必ず記載されていますので、空気清浄機を設置しようと考えている部屋の広さに合った製品を必ず購入するようにしましょう。設置場所の面積よりも適用床面積が狭いと、当然本来の能力が発揮されなくなってしまいますので要注意です。
ちなみに、購入時には、できれば設置場所の面積よりもかなり余裕のある適用床面積の製品を選択することをおすすめします。適用床面積に余裕があれば、当然それだけしっかり花粉やハウスダスト、ニオイの除去が行なえることになります。無闇に余裕を持たせる必要はありませんが、大は小を兼ねますので、予算の許す範囲内で、適用床面積に余裕のある製品選択をおすすめします。
【空気清浄機】の、ここだけは押さえたいポイント
・イオン機能で除菌・脱臭したり、加湿で空気を潤すなどの機能を盛り込んだ製品が多い ・適用床面積に余裕を持った製品の方が効果が高い ・ファンで空気を吸い込みフィルターで集塵する「ファン集塵式」が主流
2009年3月6日 初版
■URL
現代家電の基礎用語一覧
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/
加湿器/空気清浄機/除湿器 関連記事リンク集
http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/air.htm
■ 関連記事
・ 第35回:除菌・消臭効果を謳う「イオン機能」とは(2009/02/06)
・ 第21回:HEPAフィルターとは(2008/10/16)
2009/03/06 00:02
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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