第46回:コンプレッサーとは


エアコンや冷蔵庫など、ヒートポンプを搭載した家電には必ず「コンプレッサー(圧縮機)」が搭載されている

 省エネ化が進むエアコンと冷蔵庫には、いずれも「コンプレッサー(圧縮機)」という装置が共通して搭載されています。コンプレッサーは機器の内部に組み込まれているため、一般ユーザーが目にする機会はほとんどありませんが、エアコンや冷蔵庫だけでなく、エコキュートや一部の洗濯乾燥機などの“ヒートポンプ家電”を動かすためには必須の装置で、省エネ化するための重要な役割を担っています。

ヒートポンプを循環するための“心臓部”

 コンプレッサーとは、エアコンや冷蔵庫などに組み込まれる「ヒートポンプ」装置において、冷媒を圧縮(=compress)するための部品のことです。

 「ヒートポンプ」については以前当連載でも紹介しましたが、簡単に言えば冷媒を移動することで、特定の場所から熱を奪い、その熱を別の場所で放出する装置のことです。コンプレッサーは、この冷媒を循環させる「ポンプ」のような役割を果たしています。

 コンプレッサーは、ヒートポンプのサイクルの中で、冷媒を圧縮します。この時、冷媒は気体となっていますが、気体は圧力が高くなると、それに伴って温度も高くなる性質があります。そのため、圧縮後の冷媒は高温・高圧の状態となっています。この熱を使って、エアコンの暖房運転やエコキュートの給湯は行なわれるわけです。

 熱を失った後の冷媒は、毛細管、膨張弁、蒸発器といった装置を経て減圧され、気体へと変わります。冷媒が液体から気体へと変わる際に、冷媒は周囲の空気の温度を奪います。この冷気を、エアコンでは冷房に、冷蔵庫では冷蔵や冷凍として使用します。そして、気体となった冷媒は、再びコンプレッサーが圧縮するというサイクルになっています。

 ヒートポンプがエアコンや冷蔵庫の“心臓部”なら、コンプレッサーはヒートポンプのさらに“心臓部”に当たる存在と言えるでしょう。

洗濯乾燥機のヒートポンプの。冷媒を圧縮することで、ヒートポンプを循環させるポンプのような役割を果たしているコンプレッサーのカットモデル。写真中の△マークの順に、冷媒がコンプレッサー内部を通る (三洋電機の2段圧縮コンプレッサー)


インバーターでモーターを調節し省エネ。コンプレッサー自体のエネルギーロスも抑制

 冒頭も述べたとおり、コンプレッサーは、コンプレッサーはヒートポンプを採用した家電、つまりエアコンや冷蔵庫の省エネ性能の差に深く関わってきます。

 というのも、コンプレッサーは基本的にモーターを利用して動きますが、このモーターが高速で動作できれば、素早く冷媒を圧縮でき、ヒートポンプで作り出す冷気・熱のパワーが高まります。逆に、モーターを低速で動作させれば、冷気も熱も弱まります。ヒートポンプのモーターの回転数制御が、省エネの重要なポイントとなります。

 従来のコンプレッサーのモーター制御は、単なるON/OFF制御でした。そのため、コンプレッサーを動作させると常にフルパワー動作となってしまい、細かな温度制御ができないばかりか、消費電力も高くなっていました。そこで、細かくコンプレッサーのモーター動作を制御するために採用されるようになったのが「インバーター」です。インバーターの導入により、コンプレッサーのパワーを自在に制御できるようになって、細かな温度制御が可能となり、無駄な電力消費が抑えられる、ということになります。


 また、コンプレッサー自体を効率化することで、省エネ効果をアップすることもできます。

 コンプレッサーが冷媒を圧縮するにはさまざまな方法があり、例えばエアコンで搭載されることの多い「スクロール式」「ロータリー式」は、スクロール式は、渦巻き状のパーツを2つ組み合わせて、冷媒を巻くように、ロータリー式は、円形のピストンを回転させながら冷媒を圧縮します。また、冷蔵庫で搭載される「レシプロ式」は円筒形のシリンダー内をピストンが往復することで冷媒を圧縮するという簡単な構造となっています。

 しかし冷媒の圧縮時には、コンプレッサーを回転させたり動かしたりすることで、摩擦などによる機械損失が発生してしまいます。そのため、各社ともエネルギーのロスが少なく、効率に優れるコンプレッサーの開発に力を注いでいます。

日立の冷蔵庫に搭載されているコンプレッサー。冷蔵庫は庫内だけを冷やせば良いためレシプロ式のコンプレッサーを搭載することが多い。大量のエネルギーは出せないものの、一定の能力を徐々に出す点には向いている左のコンプレッサーの構造図。摩擦によるエネルギーのロスを防ぐなど、コンプレッサーを改良している


エアコンのコンプレッサーは、基本的には室外機に搭載されていることが多一方、冷蔵庫は庫内に搭載されていることが多い。写真はコンプレッサーを天井付近に設置することで、庫内スペースを増やした、ナショナル(現パナソニック)の冷蔵庫「NR-F531T」



【圧縮機】の、ここだけは押さえたいポイント

・エアコンや冷蔵庫などに搭載されたヒートポンプを動かすための“心臓”
・冷媒を圧縮し、ヒートポンプのサイクル内を循環する機械
・インバーターにより回転数を制御することで、細かい温度調節が可能に
・省エネ化のため、圧縮時のエネルギーロスが抑えられるよう改良が進んでいる

2009年5月22日 初版




2009年5月22日 00:00


平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑 誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを 執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。