第45回:除湿機とは


カビの発生を防ぎながら衣類を自然乾燥。“部屋干し”派の強い味方

空気中の湿気を回収する「除湿機」。写真はシャープの「コンビニクーラー CV-W80CH」
 除湿機とは、空気中の水分を液化して回収する機器のことです。もともとは室内の湿度を下げることに使うものですが、最近は洗濯物をすばやく乾燥するために用いられるケースが増えています。

 例えば梅雨の時期、雨の日が続いている時には、洗濯物を常に室内に干している人も多くなるでしょう。しかし、室内干しが多くなると、結露も増え、カビが発生してしまう心配もあります。そこで、除湿機を利用しながら室内干しをすれば、洗濯物を素早く乾燥できます。さらに室内のジメッとした空気も乾燥できるため、結露やカビの発生も防げます。

 除湿機を利用した衣類乾燥は、乾いた風を当てるだけなので、基本的に自然乾燥となります。洗濯乾燥機のように、熱風を利用した衣類乾燥では、衣類が傷んだり、縮んだりすることがありますが、除湿機を利用した衣類乾燥ではその心配がありません。

 また、ほとんどの製品では持ち運びやすいようキャスターや取っ手が付いているため、お風呂場や脱衣所など、湿気の溜まりやすい箇所に移動して使うこともできます。


 このほか、ダイキン工業の「クリアフォース」や日立の「クリエア7」のように、除湿だけでなく加湿と空気清浄を一台に収めた機種なら、冬の加湿後の室温低下による結露を防ぐこともできます。マンションなど気密性の高い住宅が増えた現在では、除湿機が活躍する場面がかなり多くなっていると言っていいでしょう。

最近では送風機能にこだわることで、部屋干しの洗濯物を素早く乾燥することを狙った製品が多い脱衣所や風呂場など、湿気の多い場所に持ち運び使うこともできる除湿だけでなく、加湿・空気清浄機能を搭載したダイキン「クリアフォース」。加湿のしすぎを防いで結露を抑える運転モードも備えている

 

除湿機には3種類の方式。お勧めは一年中使える「ハイブリッド式」

 ひとくちに除湿機といっても、水分の回収方法は製品によって異なります。現在市販されている家庭用の除湿機では、「コンプレッサー式」、「デシカント式」、「ハイブリッド式」という3種類の方式がメインとなっています。

 一番のお勧めは、季節を問わず使えるハイブリッド式です。梅雨時から夏にかけて利用することが多いなら、温度上昇が比較的少ないコンプレッサー式、冬に使うことが多いならデシカント式を選ぶと良いでしょう。

 それぞれの方式についてもう少し細かく見てみましょう。まずコンプレッサー式ですが、これはエアコンなどで利用されているコンプレッサーを利用して除湿する方式です。コンプレッサーで空気を冷却することで、空気中の水分を液化させて回収し、水分が回収されて乾燥した空気を室内に放出して、湿度を低下させます。気温が高い程、コンプレッサーと空気の温度差が作り出せるため、より除湿能力が高くなるため、夏季の使用には向いています。また、消費電力も低めとなっています。

 ただし、ファンに加えてコンプレッサーも動作するため、動作音が大きいという点や、冬場など室温が低い状態では除湿能力が落ちるという欠点があります。また、エアコンの室内機と室外機が一緒になったような構造のため、コンプレッサーの冷却時に発生する熱も一緒に室内に放出されます。空気を冷却して除湿する仕組みではありますが、使い続ければ室温は上昇します。

コンプレッサー式の除湿機(三菱電機「サラリ MJ-H100DX」)コンプレッサー式の内部構造。エアコンのように熱交換器やコンプレッサーが備えられている(シャープ「コンビニクーラー CV-U71」)

 対するデシカント式は、主にデシカント(ゼオライト)と呼ばれる吸湿剤を利用して、空気中の水分を吸着して除湿する方式です。押し入れなどに入れて利用する除湿グッズに近い構造と考えるとわかりやすいでしょう。しかし、吸湿剤が吸着できる水分の量は限りがあります。そこで、ヒーターを利用することで、吸湿剤が吸着した水分を蒸発させて吸湿性を再生し、さらに蒸発した水分を含んだ熱気を、室内から吸い込んだ空気で冷却させることで、水分を結露させて回収します。このような仕組みのため、吸湿剤を円盤状にして、ゆっくり回転させながら水分の吸着/ヒーターによる再生を繰り返すものが多くなっています。

 このような構造のため、室温の低い冬場でも優れた除湿能力が得られる点や、比較的動作音が小さいという特徴があります。しかし、ヒーターを利用するために消費電力が大きく、また室温はコンプレッサー式よりも大きく上昇してしまうという欠点があります。そのため、夏の使用には向きません。

象印の除湿機「水とり名人 RV-GB100」はデシカント式デシカント式は本体内の吸着剤で水分を回収するため、室温に関係なく除湿できる。ただしヒーターを使うため、夏場は高温になる点に注意(ダイキン「クリアフォース」発表会パネルより)

 最後のハイブリッド式は、コンプレッサー式とデシカント式を組み合わせたものです。室内の温度によって方式を切り替えて動作するため、季節を問わず、常に優れた除湿能力が発揮されます。つまりこれを購入しておけば、1年中季節を問わず使えるということになります。ただし、他の2つの方式を1台の機種に詰め込んでいるということもあって、価格は高めとなっています。

ナショナル(現・パナソニック)のハイブリッド式除湿機「F-YHD100」F-YHD100では、温湿度に応じてコンプレッサー/デシカントを自動的に組み合わせて最適に運転する「インテリジェントハイブリッド制御」が特徴
コンプレッサー/デシカント/ハイブリッド式の内部構造の違い

除湿能力・タンクの容量もチェック


除湿運転後はタンク内に水が回収される。容量が少ないほど頻繁に捨てる手間があるため、大容量のものを選びたい
 このほか、1日当たりの除湿量を示す「除湿能力」にも注目です。除湿能力に優れる製品の方が、当然素早く除湿できます。なるべく短時間で衣類を乾燥させたいなら、除湿能力に優れる製品を選択しましょう。

 また、同時に水を貯めるタンクの容量も要チェックです。いくら除湿能力に優れていても、タンクの容量が少ないと、頻繁に水を捨てなければならなくなります。除湿能力とタンク容量双方に余裕のある製品を選ぶようにしましょう。


【除湿機】の、ここだけは押さえたいポイント

・室内の湿度を下げて、カビの発生を防ぎながら衣類を素早く乾燥できる
・「ハイブリッド式」は一年を通じて使用できる
・夏に向くのが「コンプレッサー式」、冬に向くのが「デシカント式」
・除湿スピードを左右する「除湿能力」、排水の手間を省く「タンク容量」の数値が高い方が良い

2009年5月15日 初版




2009年5月15日 00:00


平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑 誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを 執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。