パナソニック、藤沢のスマートタウンに3MWの太陽電池と蓄電池を導入

~ローン控除も期待できるポイント制度も
Fujisawa サウスティナブル・スマートタウンの完成予想図

 パナソニックは、2014年春の街開きを予定している神奈川県藤沢市のスマートタウン・プロジェクト「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン(以下、Fujisawa SST)」について、1日に事業の進捗状況に関する発表会を開催した。 


現地では造成が開始。タウン内のサービスを提供するマネジメント会社を設立

 Fujisawa SSTは、藤沢市内のパナソニックの工場跡地に建設が予定されているスマートタウン。同タウンでは、各住戸に太陽光発電システムや家庭用蓄電池を採用するなど、パナソニックならではソリューションを提供することで、新しい街づくりとサービスを実現することを狙っている。開発所在地は神奈川県藤沢市辻堂元町6-4-1。面積は約19ha(約6万坪)。住宅は約1,000戸が計画され、計画人口は約3,000人。総事業費は600億円。

パナソニック(旧松下電器)の工場跡地を、スマートタウンとして活用する開発計画。住宅だけでなく、商業施設や公共施設も設置されるFujisawa SSTの今後の計画。街開き(入居開始)は2014年春を予定している

 今回の発表会では、8月に土地区画整理事業の認可を取得し、9月にインフラ造成に着工した旨が報告された。さらに、パナソニックとパートナー企業の出資により、マネジメント会社「Fujisawa タウンマネジメントカンパニー(仮称)」を、2013年3月に設立することを明らかにした。

 マネジメント会社では、同タウンで展開される8つのサービス(エネルギー/セキュリティ/モビリティ/コミュニティ/ヘルスケア/クラブサービス/ファイナンス/アセットマネジメント)を、ワンストップ(ひとつの窓口)で提供。サービス事業者と地域住民、施設事業者、自治体との連携による全体の運営を推進し、新たな暮らしの価値を生み出すコミュニティの熟成を支援するという。また、産官学による連携や、住民の声を活かした新たなサービスを創造し、街の運営を事業化していくという。

新会社で行なわれるサービスは8分野に及ぶタウンマネジメント会社は社会変化に応じて進化するサスティナブル(持続可能)な組織になるという

太陽電池と蓄電池の出力は3MWずつ。ローン控除の恩恵もあるポイント制度も

 新会社が実施する具体的なサービス内容についても明らかにされた。エネルギー関連では、太陽電池と蓄電池の発電規模が、それぞれ3MW(メガワット)ずつになると発表された。これは、個別分散型としては街全体で世界最大規模になるという。

 セキュリティに関しては、街の出入口や公共の建物などスマートタウン全域に、防犯 カメラやセンサー付きのLED街路灯などのセキュリティ連携システムを導入。停電など非常時にも、必要な本数の街路灯が光るという。同社ではこれを「バーチャル・ゲーテッドタウン」としており、国内で初めての大規模導入になるという。

各住戸に太陽電池と蓄電池、それらを上手にコントロールする「エネマネ」を搭載。街全体では、太陽電池・蓄電池の発電出力は3MWずつとなる街の出入口には、防犯カメラ「見守りカメラ」が設置される人の動きを感知すると点灯する「センサー付きLED遊路灯」も設置される

 自動車や自転車などのモビリティとの連携では、電気自動車や電動バイク、電動アシスト自転車のシェアリングサービスを実施。また、自宅まで車を届けるレンタカーサービスや、充電バッテリーをレンタルする「バッテリーステーション」も実施する。

 このほか、節電するほどポイントが貯まり、ローン控除などの恩恵が得られる「Fujisawaスマートポイント」や、街で生まれた太陽エネルギーの売電で得た収益を街の緑化に活かす「Fujisawa アセットマネジメント」などのサービスも計画されている。

電気自動車、電動バイク、電動アシスト自転車のシェアリングサービスも行なわれる「バッテリーステーション」では、各モビリティの充電バッテリーがレンタルできる家までレンタカーを用意する「宅配レンタカー」サービスも実施される。運営会社はオリックス
さらに、節電するとポイントが貯まる「Fujisawaスマートポイント」も実施される。ポイントを貯めると住宅ローン控除などのメリットもあるというスマートタウンで発電→売電した電気を、街の緑化として利用する「Fujisawa アセットマネジメント」
CO2排出量の制限やライフライン確保など、環境・安全目標も掲げられている

 さらに、Fujisawa SSTの環境・エネルギー目標も設定。環境目標では、CO2排出量を、1990年比で70%削減、生活用水を2006年比で30%削減する。エネルギー目標では、再生エネルギーの利用率を30%以上、安心・安全目標として、最低3日間のライフライン確保を掲げている。

 Fujisawa SSTに参画する企業としては、新たに電通とNTT東日本(東日本電信電話)が加わった。これでパートナー企業は、アクセンチュア、オリックス、日本設計、東京ガス、パナホーム、三井住友信託銀行、三井不動産、三井不動産レジデンシャル、三井物産の11となった。タウンマネジメント会社への出資企業、出資比率は後日決定されるが、筆頭株主はパナソニックになる予定。

Fujisawa SSTに参画する企業一覧発表会には各社の代表者も出席した

 併せて、パートナー企業が取り組む主な方針も発表された。

【参画企業がFujisawa SSTで行なう業務内容(一部抜粋)】
社名主な取り組み方針
アクセン
チュア
・Fujisawa SSTのマスタープランとタウンマネジメント会社の事業計画策定
・Fujisawa SSTモデルのグローバル展開支援
オリックス・カーシェアリングサービス、レンタカー
電通・コニュニティ/エネルギー/ヘルスケアサービス開発の協力・支援
・現地拠点を活用した各種イベントの企画・協賛
日本設計・設備の建築・エネルギー計画・デザインに関する支援
東京ガス・最新型エネファーム、ガスコージェネレーションシステムの導入
パナホーム・土地区画整理、宅地分譲への参画
NTT東日本・タウン内サービスの通信プラットフォームの提供、
並びに全戸ネットワーク化の検討
・コミュニティスペースの屋外型Wi-Fiアンテナの導入
三井住友
信託銀行
・Fujisawa SST専用の環境配慮型住宅ローン
・スマートタウン評価指標(環境不動産価値)の設計
三井不動産
グループ
・土地区画整理事業など祈願整備
・住宅分譲事業への参画
三井物産・不動産分譲事業
・集合住宅・戸建て住宅開発の参画検討

 なお、同タウンのキャッチコピーは、「生きるエネルギーがうまれる街。」に決定した。

キャッチコピーは、「生きるエネルギーがうまれる街。」に決定したFujisawa SSTでは、これまでのスマートシティとは異なり、生活者が主役になるという

住宅の価格は「決して高くない」。海外6都市にFujisawaスタイルを展開

パナソニック 津賀一宏代表取締役社長

 パナソニックの津賀一宏代表取締役社長は、スマートシティにチャレンジする意義について、「昨年、世界人口が70億人を突破し、さらに都市人口がはじめて世界人口の過半数となった。また、東日本大震災をきっかけに、都市のスマート化、エネルギーの地産地消を求める声が大きくなっている。これまでのスマートシティ構想は、その大半が政府や事業者主導による実証実験が多かったが、これからは生活者が主体となって、事業化、普及化する段階に来ている」と説明。続けて、Fujisawa SSTについては「価値提案が総合的にできる一大プロジェクト。我々にとっても一大チャレンジになる」と意気込んだ。

 また、マネジメント会社を新設する理由については「暮らしに関わる企業の英知を集めて、社会の変化に合わせて、街が進化する仕組みを構築していく。作って終わりではなく、暮らしとともに進化し続けるような、スマートでサスティナブル(持続可能)なまちづくりを行なっていきたい」と話した。

パナソニック エコソリューションズ社 竹安聡副社長
 また、パナソニック エコソリューションズ社の竹安聡副社長は、Fujisawa SSTを日本をはじめ世界6都市で展開することも発表。日本の横浜、中国の大連と天津、ロシアのスコルコヴォ、インドのハリアナ州、シンガポールのプンゴルにおいて、Fujisawa SSTで採用されたモデルのスマートタウンの導入が計画されている。

 「世界には400以上のスマートタウン計画があるが、推定の市場規模は163兆円。当社の強みが活かせる国、エリアを中心に展開していきたい」(竹安副社長)


都市人口の急増や東日本大震災の影響により、都市のスマート化とエネルギーの地産地消が求められているという世界でもスマートシティのニーズが高まっているが、このうち6都市において、Fujisawa SSTモデルが採用されるという

 また、fujisawa SSTで販売される住宅の価格については、藤沢エリアの坪単価や住宅単価と比べて「決して高くしない」程度になるという。

 Fujisawa SSTでは、14年春に街開きを実施し、全1,000戸のうち一部で入居が始まる予定。2018年にはすべての施設が完成する計画となっている。






(正藤 慶一)

2012年10月2日 00:00