カネカ、“世界初”5色に光る有機EL照明デバイス

~スタンド照明の試作品を300台限定で販売
カネカが今春より世界展開する、有機EL照明デバイスのサンプル

 カネカは、白/赤/橙/青/緑の5色に光る有機EL照明(OLED)デバイスを、国内では3月22日に、欧州では4月中旬に発売する。販売価格は未定。

 有機EL照明は、薄型で面発光ができる点が特徴の光源。拡散板などの光学部材も不要で、従来光源よりもデザイン性に富むほか、温暖色のやわらかい光が得られる点、エネルギー効率が高い点なども利点となる。

 今回販売されるパネルは、標準で全24種類。形状は「正方形A(40mm四方)」、「正方形B(77mm四方)」、「長方形A(170×17mm)」、「長方形B(170×32mm)」の4パターン、光色は2種類の白(色温度2,500Kと3,000K)、青、緑、赤、橙の6パターンが用意される。寿命は光色によって異なり、白は15,000時間、青は10,000時間、そのほかは30,000時間。調光は無段階で可能。調色はできない。なおカネカでは、有機ELに5色のパターンを用意した点について“世界初”としている。

バーカウンターに導入した例有機ELの光が氷に反射するカネカの有機EL照明デバイスの特徴
調光しているようす

 カネカでは有機EL照明デバイスを、レストランやホテルなどの店舗照明、高級住宅用のデザイン照明、有機ELを組み込んだ家具・建材など、高級品市場をターゲットとして、照明・建材・住宅設備メーカーなどに販売していくという。また、欧州市場では、白熱灯のような柔らかい色調が好まれることから、有機EL照明の“有望市場”として、デザイン照明市場を中心に販路を開拓するとしている。

 高級品市場への事業を展開した後は、性能向上とコストダウンを図り、一般住宅やオフィス照明、自動車内装照明などの市場に事業を拡大する。さらに、重点地域に北米や中国を加えて、世界市場で有機EL照明のデバイス事業の本格展開を加速していくという。売上高としては、5年後に約200億円、10年後に約1,000億円を目指す。

カネカの菅原公一 代表取締役社長
 有機ELは現在、照明器具として市販されている例は少ない。しかし、カネカの菅原公一社長は、「有機EL照明は環境負荷が少なく、クリーン。面光源で軽く薄いなど、従来の照明とは大幅に異なる特徴を備えている。照明のスタイルそのものを根本的に変える可能性がある」と期待を見せた。
当初は店舗や高級住宅をターゲットとする。また地域では、日本・欧州を皮切りに、北米・中国も目指していく売上高としては、5年後に約200億円、10年後に約1,000億円を目指す

コストを抑えて量産できるのは「薄膜太陽電池の技術利用」と「製造会社の事業譲受」

カネカの取締役常務執行役員 永野広作氏

 カネカの取締役常務執行役員 永野広作氏によると、カネカの有機ELパネルの製造コストは、従来と比べて約1/10に抑えることができるという。

 「市場では現在“有機ELは高価”という評価を受けているが、当社は生産コストを1ケタ下げている。従来の有機ELは、1平方m当たりの単価が200万円程度だったが、1年以内に20万円程度を目指す。2020年には10万円を切り、5万円以下を達成することを考えている。また、現在の生産能力は、年間で約1万平方mだが、2015年には年間約10万平方mとしたい」(永野氏)

 生産コストを抑えられた要因としては、薄膜太陽電池システムの技術や、有機EL生産メーカーの子会社化があったという。

 「(生産コストが抑えられたのは)当社が従来から集中的に開発してきた、薄膜太陽電池システムを応用展開した結果。光を電気に変える薄膜太陽電池と、電気を光に変える有機ELパネルは、原理がよく似ている。また当社は昨年、白色有機ELパネルの量産技術と生産技術を持った東北デバイスから事業を譲り受けた(現、OLED青森株式会社)。当社が培った技術と組み合わせることで、他社に先駆けて、照明用有機ELの量産化技術が確立できた」(永野氏)

薄膜太陽電池システムの技術を応用することで、コストが抑えられたというカネカは2010年、白色有機ELパネルの量産技術と生産技術を持った会社「東北デバイス」から、事業を譲り受けた


試作品は「300台限定・ライティングフェア限定」で販売

発表会会場で展示されていた、光源に有機ELパネルを採用した照明器具。ライティングフェアにて、いずれかが限定販売される

 発表会の会場では、同社の有機EL光源パネルを使用した照明器具の試作品「デスクライト」、「ライトオブジェ」、「シェードランプ」の3製品が公開された。

 デスクライトは、アーム部に正方形の有機ELパネルを4個搭載した卓上型のライト。ライトオブジェは、有機ELパネルを搭載したL字型のユニットを組み合わせて、光のオブジェを作るというインテリアライトで、「シェードランプ」は、部屋の隅に置く間接光となる。

 これらの試作品は、3月8日から11日まで、東京ビッグサイトで開催される「ライティング・フェア 2011」にて、300個限定で販売されるという。販売されるのは3製品のうちのどれか1つ。価格は未定だが、永野氏は「10万円を切るような価格に」としている。

デスクライト。光源に有機ELパネルを4つ採用している横から見たところ。器具の薄さがよく分かる
インテリアライトの「ライトオブジェ」L字型のユニットを組み合わせて使用する。電源は充電式
部屋の隅に置く間接光の「シェードランプ」裏側から見たところ。シェードの裏側に有機ELパネルが貼り付けられている


埼玉の主婦がデザインした有機EL照明、ミラノに展示

デザインコンペ「カネカ OLEDデザインコンペティション2010」で大賞に選ばれた「Pieces of Light」

 発表会では同時に、有機ELを用いたデザインコンペ「カネカ OLEDデザインコンペティション2010」の表彰式も行なわれた。

 同コンペのテーマは、有機ELを使用した「美しき日本の酒場を彩る、新感覚あかりオブジェ」。大賞1名には100万円のほか、カネカが試作品を制作。試作品は4月にイタリア・ミラノで開催される家具・インテリア用品の国際展示会「ミラノ サローネ」において、カネカの会場で展示される。

 最も優れたデザインに贈られる「大賞」に選ばれたのは、埼玉県の主婦・森田文子さんによる「Pieces of Light(ピーシズ オブ ライト)」。有機ELパネルのコンパクトさ、薄さを活かし、外殻で覆って繋げることで、自由に軽々と酒場を漂うイメージを表現したという。

有機ELパネルと補助ピースを組み合わせ、パズルのように自由に作ることもできるPieces of Lightをデザインした、主婦の森田文子さん(右)。左はコンペの実行委員長を務めた、カネカの新規事業開発部 有機EL事業開発マネージャー 河野正彦氏カネカはイタリアのデザインイベント「ミラノサローネ」に出展するが、Pieces of Lightはカネカのブースで実際に展示されるという
こちらは優秀賞の「FLAP(フラップ)」。2枚のパネルが羽を広げるように立ち上がる佳作の「SINARI(シナリ)」。三角形のパネルを用い、面発光ながらも“しなり”を表現している佳作の「STARPH(スタラフ)」。光源のプレートを本体に差し込むことで、はじめて明かりが点灯する
佳作の「CHO-CHO light(チョウチョウ・ライト)」。蝶のような有機ELパネルが、起き上がりこぼしで動くアイデア賞の「HEX-FLEX」。折り紙の要領で光が折り畳める、「遊び」を重視したライト





(正藤 慶一)

2011年2月15日 17:51