イベントレポート ライティング・フェア2013

持ち運べるテーブルライトなど、有機ELを使った照明器具が多数登場

 照明機器・技術の展示会「ライティング・フェア2013 第11回国際照明総合展」が、3月5日、東京ビッグサイトで開幕した。会期は8日までの4日間。入場料は1,500円だが、Webサイトの事前登録で入場無料となる。本誌では家庭用の照明器具を中心にお伝えする。

三菱電機は“有機ELカフェ”でアピール。光源がどこにあるかわからないテーブルライトも

 LEDに続く新しい照明として注目されているのが「有機EL照明(OLED)」。面発光で目にやさしい光を送る点、薄くて軽い点が特徴となる。一般向けに発売されているケースはまだまだ少ないが、ライティング・フェアではさまざまなデザインの有機EL照明が展示された。なお、本稿で取り上げる器具は、特に記述がない限りすべて参考出品となる。

 三菱電機照明のブースでは、「OLED CAFE」と称し、有機EL照明を中心とした明かりで、カフェ空間を演出するスペースが設けられた。

三菱電機照明のブース
「OLED CAFE」という、有機EL照明を中心としたスペースが設けられた

 同ブースでまず目に入ったのが、アルファベットの「Z」の形のような形状をしたデスクスタンド「origami」。上面のパネル全面に有機ELパネルが付いており、有機EL光源ならではのやさしい面発光が特徴だ。

 天井から吊り下げるペンダントライトでは、水滴をイメージし、曲面で構成された「drop」、鏡のシェードでパネルの明るさを反射させ、視覚的に明るさ感を与える「Tower」もあった。いずれも従来のペンダントライトではあまり見られない、有機ELのパネルを活かしたデザインが特徴となっている。

上面のパネル全面に有機ELパネルが付いた「origami」。アルファベットの「Z」のような形状が面白い
水滴をイメージしたという「drop」
シェード内部に鏡を使い、視覚的な明るさ感を与える「Tower」
こちらは有機ELの四角形を活かした形状のペンダントライト「Luminio」
パネルのカラーが変えられるデモも行なわれた

 「moon river」は円形のテーブルライトだが、中心部が透明なのに、外周の曲面部だけが光っている、どこが有機ELの光源かわからないデザインが面白い。実際は本体内部に有機ELが設置されているのだが、光の屈折率により見えない仕組みになっている。光源の存在を消し去った、不思議な照明器具だ。

外周部だけが光る不思議な構造の「moon river」
実は光源となる有機ELパネルは写真中央にある

カネカ、ヨーロッパのデザイナーによる意匠性の高い有機EL照明

カネカのブースの入り口には「有機EL照明事業を通じて、新しいあかり文化の発展に貢献する」というメッセージが記されていた

 世界で初めて5色に光る有機ELを開発するなど、有機ELに力を入れるカネカのブースでは、ヨーロッパのデザイナーによるデザイン照明が多数展示されていた。すべて参考出品となる。

 「Wind-Mill Luminaire」は、その名の通り風車(ウインドミル)のように有機ELパネルを円状に12枚並べたデザインが特徴。配線は剥き出しだが、暗闇で光ると、まるでひまわりのように映るのが面白い。

ひまわりのようなデザインの「Wind-Mill Luminaire」
実はパネルを円形につないでいるだけ。配線も剥き出しなのが面白い

 また、「JAPANESE MODERN」と題された展示では、和室に合うようにパネルを整然と配置。四角いデザインが、ふすまから漏れる明かりのように見え、和の雰囲気が感じられる。

 さらに、鏡を配置することで、パネルが奥まで続いているように見せる器具も展示。空間に奥行きを見せたい場面に向きそうだ。

「JAPANEASE MODERN」のコーナー。四角い形状がまるでふすまのようだ
天井付近には、紙のシーリングも設置されていた。これも有機EL照明を使用している
パネルを縦に並べた器具
横から見ると、パネルが鏡に反射して、奥行きがあるように見える
カネカのブースでは、このほかにも多数の有機EL照明が展示されていた

 なお、カネカの有機EL照明は、東京のレストランバー「銀座 水響亭」に導入されるなど、一部で実用化がスタートしている。

持ち運べる有機EL、化粧に最適の有機EL――「有機ELといえば山形」

「有機ELといえば山形」というネーミングのブース

 会場には「有機ELといえば山形」なるブースも出展していた。これは、Lumiotecや東北パイオニアなど、山形県に居を構える有機EL関連のメーカーや研究機関が集まって参加しているもの。ブース内には、各社の試作品が展示されていた。

 この中で目にとまったのが、浅野製作所、有機エレクトロニクス事業化推進センター、タンジェントデザインによる「Candle Light」と「Ribbon」。どちらも20mm幅の細長い透明パネルが光るテーブルライトで、乾電池駆動のため持ち運んでランタンとしても使用できる。

写真は「Candle Light」。細長い有機ELパネルが内蔵されている
写真は「Ribbon」。乾電池駆動のため、持ち運んでランタンのように使用できる

 山形大学とオーガニックライティングによる「Basic-01」も、持ち運びできる有機EL。こちらは電源にリチウムイオン電池を内蔵しており、USBで接続して充電できる。明るさは3段階に切り替えられ、無線による点灯制御も可能という。最も明るい場合の連続点灯時間は約2時間。首から提げたり、足元灯にするなど、さまざまな使用法があるという。

 色が選べるという有機ELの特徴を活かしたのが、山形県産業技術振興機構による「透明パネル0707/1402」。赤・青・緑に光る3枚の透明有機ELパネルを重ね合わせることで、さまざまな光の色が演出できる。暮らしの中で使うものではなく、有機EL照明の新たな使い方や用途などのアイディアを発想するためのものという。

「Basic-01」も、電池内蔵式で持ち運べる有機EL照明
電源はリチウムイオン電池で、USB充電にも対応する
無線による明るさの制御もできる
「透明パネル0707」は、カラーのパネルを重ねて色を演出するパネル
赤・青・緑の三原色を組み合わせて、有機ELの使い型や用途を発想するためのものという
縦長の「透明パネル1402」も用意される

 小型の明かりではこのほか、デスクライトやベッドサイドで使用する「ORIGAMI」も公開された。4枚のパネルのうち1枚に有機EL照明が付いており、使用しない際は折り紙のように折りたたんでコンパクトにできる。

デスクライトやベッドサイドで使用する「ORIGAMI」
使わない時は、写真右側のようにたためる

 ペンダント照明では、木製のフレームを採用した「Man Nen 灯」、白色のアクリル板にパネルを3枚並べた「YUKI AKARI」、和紙のシェードが付いた「MIKOTO」などが公開された。このうち「YUKI AKARI」は山形県米沢市の料亭「吉亭」、「MIKOTO」は山形県上山市の温泉旅館「名月亭」にて、実際に使用されているとのこと。

木製のフレームを採用したペンダントライト「Man Nen 灯」
白色のアクリル板にパネルを3枚並べた「YUKI AKARI」。山形県米沢市の料亭「吉亭」で実際に使用されているという
和紙のシェードが付いた「MIKOTO」は、山形県上山市の温泉旅館「名月亭」にて使用されているという

 このほか、有機ELの色の良さを活かした製品も展示された。「オーガニックライト・美麗(BIREI)」は、高い演色性の有機ELパネルを採用。鏡の横に置くことで、自分の肌の色を正しく理解し、肌色に合ったベストな化粧ができるという。

 「アートステージ(展示台)」は、有機EL照明を内蔵した置き台。置く物の本来の色を正しい色で映すことに加え、紫外線や熱が少ないというメリットもある。美術品の展示に向くという。

「オーガニックライト・美麗(BIREI)」は、演色性の高い明かりで、肌に合った化粧ができるという
「アートステージ(展示台)」は、置く物の本来の色を正しい色で映すという

正藤 慶一