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パナソニックの苦い電池、ほんとに苦かった
2025年12月12日 15:32
パナソニック エナジーが10月に発売した、“苦い”コイン形リチウム電池。乳幼児などの誤飲対策として苦み成分を塗布しているもので、国内では初の取り組みとなる。実際にどれくらい苦いのか、体験取材してきた。
新製品は2つの誤飲対策を施しており、その一つは、従来品と同様に乳幼児が簡単に開封できない誤飲対策パッケージを採用し、注意喚起のピクトグラムを刻印したこと。
もう一つは新たに、乳幼児が誤飲する事故のリスクを低減するため、電池本体の負極面に、“世界一苦い”とされる成分である安息香酸デナトニウムを塗布したのがポイントだ。
製品ラインナップは、「CR2032E(1個)」、「CR2032E(2個)」「CR2025E(1個)」、「CR2016E(1個)」の3品種4品番。1個の価格は各399円で、「CR2032E(2個)」は799円。
リモコンや小型のスマートデバイスなどの多くにはコイン形電池も採用されている。東京消防庁の発表によると、2020年~2024年に東京都内で起きた5歳以下の子供の誤飲や窒息による救急搬送は5,825人に及び、そのうち約200人が電池に関連していたという。
パナソニックが、子供を持つ20代~40代の男女へ行なった調査では、未就学児の家庭内事故において最も心配しているのは、「誤飲」だった。これは「転倒」や「やけど」を上回った結果だという。
誤飲が深刻な事故につながるコインやボタン形電池ではあるが、普段の対策では防ぎきれないと感じる保護者は3割に及び、メーカーへの対策が求められていると同社は分析している。
松下記念病院 小児科部長の磯田賢一先生の説明によると、20mm以上の大型リチウム電池は、食道にとどまりやすく、食道などの消化管の粘膜に、電池の化学反応による腐食性炎症の“化学やけど”のような状態になるとのこと。
飲み込んで15分で粘膜に変化が生じ、危険な粘膜損傷は2時間で始まることで「食道に穴があく」といった、重篤な合併症の可能性も指摘。摘出した後も、後遺症などの心配がある。
苦み成分は、単に塗布すればいいということではなく、成分量が多すぎると、電池の本来の役割である通電が確実にできなくなる場合があるという。そこで、通電不良が起きにくい適切な成分量と、塗布配置を検討。社内や小学生の子供、乳幼児による、「どれくらいの量だと苦みを感じるか」といったテストを慎重に繰り返し、製品化に結び付けた。
なお、海外製品では苦み成分を持つ電池は存在していたが、パナソニック製品の強みは、電池としての性能と安全性の確保の両面でテストを重ねたことなどがある。他社製品に比べても、同等以上の製品に仕上げたという。
苦み成分以外の特徴として、使用推奨期限を、従来の5年から新モデルは10年に延長。電池の内部設計の見直しにより実現した。コイン形リチウム電池を使用する機器が増え、電池交換の頻度も高まっていることから、家庭でストックする際にも保存しやすいように改良したという。